【悲報】起きたらウマ娘になってたんだが【助けて】   作:らっきー(16代目)

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レースの描写が出来なさすぎて死にたくなったので誰かおまけだけ代わりに書いてください


おまけ3

 最も速いウマ娘が勝つレース。皐月賞。

 

 フォルティシームにとってはクラシック級での初めてのレースであり、彼女の掲げる目標である無敗の三冠を達成するための一つ目の山場でもある。

 

「いやあ。流石にクラシック三冠レースともなると観客の数も凄いね。大丈夫かいトレーナー。君があの中にいったら押し潰されるんじゃないかって心配なんだけど」

 

 そんなレースの前だというのに、相も変わらず減らず口を叩く彼女。

 ジュニア級での二回のG1出場は彼女に心理的余裕を与えていた。元来プレッシャーを感じにくい質だというのもあるが。

 

 ちなみにトレーナーやチームのウマ娘など、レース出場者の関係者には最前列が割り当てられるのであまり心配する必要は無かったりする。

 それを知らずに言っているのか、それとも知った上で揶揄いとして言っているのか。

 

 当然彼女はアホの子なので無知故の前者──とも言いきれない。彼女は確かに元々はレースの知識などほぼ皆無だったと言っていいが、トレーナーによる授業のおかげで改善しつつある。やる気があれば変わるものである。

 

 幾つか会話を交わして──レースの作戦などといった高尚なものでは無い。そんな難しい事を考えられるほど頭は良くない──パドックへと向かう……前に、最後の一言。

 

「それじゃあ、勝ってくるよ。勝利の栄光を君に」

 

 まるで散歩に行ってくるかのような、一切気負いのない勝利宣言。誓いを込めて、手の甲に口付けを一つ。

 

 キザな仕草が似合うのはその美貌故か。顔を真っ赤に染めて固まるトレーナーを横目に、今度こそパドックへと向かう。

 

 

 

 レースの内容について、特に語ることも無い。

 最初から先頭に立って、そのまま一度も譲ることなく最後まで駆け抜けた。文章にすればその程度の横綱相撲。

 

 無論、駆け引きが無かったという訳ではない。離されないように必死で食らいついた他の逃げウマ娘はいたし、差しウマ娘達も虎視眈々と仕掛ける機会を見計らっていた。

 

 ならば何故語ることが無いのか。答えは単純明快。スペックの差によるゴリ押しでケリをつけたからである。

 

 食らいついた逃げウマ娘を、貴様らなど知らぬと二度目の加速で引き剥がし、差しウマ娘達を眼中に無いと無視する。そこに掛かりも戸惑いも動揺もありはしない。

 

 しかし、観客にとって何の面白味もないレースだったかと問われれば、否だ。

 そもそもの話として、ウマ娘同士の駆け引きや緻密な作戦などを好むのは専門職だったり、長年レースを見ている古参のファンだったりする者達くらいである。

 分かりやすい所で言えば、逃げウマ娘の人気である。

 最初から先頭に立ち、それをキープする。勝てればそれでよし、負けてもそれはそれで大きく沈んでいく様は違った意味で見応えがある。

 勢いよく最後方から全員を追い抜いていく追込の人気も、まあ似たようなものである。

 

 そもそも娯楽としてレースを見ている大多数は頭を使いたくないのだ。推しを見つけて勝ったら笑い、負ければ泣く。

 どれほど感情を動かされるかというのには個人差が大きいだろうが、レースに人生がかかっている訳でもなし。要は気持ちよくなれるかどうかだ。

 

 長々と語ったが、簡単にまとめると観客が理想とするレースを見せつけたからこそ観客は楽しめたと、それだけの話である。

 

 

 

 ゴールを圧倒的な一番で通り抜けて、しかしフォルティシームの顔に笑みは無い。視線は遥か遠く。

 勝利に歓声を上げることなく、喜びを身体で表すこともなく。

 しかし掲げられた人差し指が彼女の意志を言葉よりも雄弁に語っていた。

 まずは一つ。無言で語られた三冠の宣言。

 ミスターシービー、シンボリルドルフの時の熱狂を人々はまだ覚えている。ならば今また一人と期待するのは必然であろう。

 

 トレーナーを探していたから視線が遠くに向いていたとか、コミュ障が観客に見られているが故の緊張で笑顔を作る余裕が無かったとか、そんな理由ではない。決して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 皐月賞を制して、しかしフォルティシームの名の広がりは緩やかなペースであった……ある時までは。

 理由としてはやはり、取材の拒否が大きい。ネットライター、雑誌、テレビメディア、全ての干渉を徹底的に拒否するその姿は最早いっそ清々しい程だ。

 

 しかし、いくらクラシック三冠という注目度の高いニュースといえどもそう何度も流す訳にもいかず、途方に暮れていたメディアの元に届いた一つのメッセージが状況を一変させた。

 

『取材はダービー勝利後に』

 

 たった一言の、あまりにも大胆な宣戦布告。

 

 負けを考えて試合に臨むバカがいるかとは言うが、勝ちしか考えないのもやはりバカであろう。

 ともかくそんな大胆な──或いは無謀な──宣言に、話題に飢えたメディアが食いつかないはずもなかった。

 

 あるメディアは大胆不敵なチャレンジャーとして、別のメディアは唯我独尊のヒールとして。

 扱いに差はあれど、間違いなく言えることが一つ。世間の注目は彼女へと集まった。

 

 目立ちたがりの弁えないビッグマウスか、或いは自分の能力への絶対的な自信か、はたまた誰にも予測出来ない意図があるのか。

 答えは一ヶ月後のダービーで分かるだろうと、誰もが胸を躍らせた。

 

 コミュ障を拗らせたのをトレーナーにバレないように、こっそりと取材お断り宣言をして、トレーナーに取材は受けなきゃダメだよと怒られたから慌てて訂正の言葉を送ったウマ娘なんていないのである。ましてやその送った文章の内容のあまりの酷さにトレーナーに30分ほど怒られてポーカーフェイスの裏で泣きそうになっていた銀髪のウマ娘などいる訳がない。

 

 

 

 

 

 5月。日本ダービー。三冠の三つのレースの中でも最も古く、そこでの勝利は最高の栄誉とされる。

 

 パドックに姿を現した白銀の彼女に誰もが期待をした。皐月賞のような圧巻のレースを。三冠の二つ目を。

 

 夢を見たがるのは人類に共通した欲求だ。自力で現実にしたり、他者に託したり、夢は夢のままにしておいたり。形に違いはあれど誰もが現在よりも素晴らしい物を夢想する。

 

 大勢の期待を背負って、しかし彼女に気負った様子はない。何故なら勝利を確信しているから。

 他のウマ娘の敵対的な視線も、観客達の好奇の視線も、彼女にとっては全て平等に価値がない。

 ……というか、気づいていない。やっぱり美人は目立つなあ、美しすぎて申し訳ない。ぐらいにしか考えていない。鈍感もここまでくれば才能である。

 

 

 

 ゲートに入って、スタートの合図を皆で待つ。

 バチバチと敵対的な視線を向けられているが、フォルティシームは相も変わらず気にしない。まあこの場に限って言えば、ゲートが開くと同時に飛び出なければならないのに余計な物に意識を向ける方が愚かと言えるのかもしれない。

 

 真っ先に飛び出して先頭を奪ったのはやはりと言うべきかフォルティシーム。逃げウマ娘として当然の権利とでも言うかのように他の17人を引き連れて長い縦列を作る。

 この時点で、僅かに出遅れた他の逃げウマ娘達にはフォルティシームがスタミナ切れで沈んでくれる以外の勝ち筋が無くなった。逃げながら脚を溜められるような規格外を相手に、無理に仕掛けるのは自殺行為だ。

 だから限りなく可能性がゼロに近いと分かっていてもそれに賭けるしかない。

 

 一着をとれるとしたら、やはり差しウマ達だろうか。だが彼女達も難しい選択を迫られている。即ち、いつ仕掛けるのか。

 仕掛けるのが早ければフォルティシームとのスタミナ勝負になり、遅ければ差し切れる程の距離が残らない。

 

 差しウマ達が望みを託したのは最終直線前の坂道。

 どんな化け物だろうと坂道では速度が落ちる。その積み重ねが逃げウマの傷となるはず。

 そこを捉える。差し切って見せる。

 事前の打ち合わせも言葉も無かったが、差しウマ達の心は一つとなった。

 ともかく今は耐える。耐えてみせる。そして坂道を終えた最後の直線で差し切ってみせる。例え、それが私でなかったとしても構わない。あのビッグマウスに私達を見くびったことを後悔させてやるのだ。

 

 彼女達は知らない。絶対の王者というものを。

 

 違和感があったのは、第一コーナーから。時が進むにつれ確信へと変わる。

 下り坂も登り坂も、我関せずと平地の様に駆けていく白銀。坂道では速度が落ちる? そんな貴様ら凡愚共の尺度で私を測るな。

 

 必死で背中を追う。差は縮まらない。可能な限り速度を維持して坂道を登る、降りる。差は縮まらない。ギリギリを攻めたコーナリングをする。差は縮まらない。

 肺が破れそうな程に呼吸をする。脚が砕けそうな程に力強く地を踏みしめる。差は縮まらない。白銀の背中には追いつけない。

 

 全力を出し切った。120%の走りをした。追いつけない。敵わない。

 

 

 

 レースの結果について、最早語るまでもない。フロックでもなんでもない勝利。

掲げられた二本の指が全てだ。




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男トレ×フォルティシーム

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