私が通っている大学の近く。
大通りから裏へ少し入ったところにそのお店はある。
外から見ると落ち着いた感じのダイニングバー。
だが水曜日になると全然違う世界が待っている。
ノブを握り「定休日」の看板が掲げられた木製の扉を開けた。
「あっ! やってるやってる!」
小綺麗な店内はまるで小さなゲームセンターのように白熱していた。
もちろん食事なんかではない。
ダイニングバーだけど、全然違うことが行われている。
ガンプラバトルだ。
普通はオシャレなテーブルが置かれている店内の中央にドシンと陣取っているのは、2台のガンプラバトルのシミュレーター。
むしろ落ち着いた机や椅子は店の端の方に追いやられている。
ダイニングバーに不似合いな真っ白なシミュレーターこそが、今の店の中で主役だった。
「あら。クリスちゃん、いらっしゃ〜い」
厨房のカウンターの向こうからバトルの様子を眺めていた女性が私に気付き、声をかけてきた。
彼女がこのダイニングバー『ゴトラタン』のオーナー、堅田エレナだ。
面倒見が良くて、頼り甲斐のある女性だ。
そして同時に、店内がこんな状況になっているのも彼女が原因だった。
そもそもとして、この店はダイニングバーで間違いない。
定休日以外は、エレナさん自慢の美味しいイタリアン料理とお酒が楽しめるお店として営業している。
もちろんそんな時に店内にガンプラバトルのシミュレーターなんて置かれていない。
落ち着いた音楽が流れる心地よい空間だ。
つまり普通の営業日は、多くの人がイメージするようなダイニングバーに他ならないのだ。
だが定休日の水曜日だけは話が別だ。
水曜日になると店の中が一変する。
まず長年のガンダムオタクであるエレナさんが、ガンプラバトルのシミュレーターを物置から引っ張り出す。
すると地域のガンプラバトルのプレイヤー達がいつの間にか集まってくる。
そしていつの間にか店内は、みんなでガンプラバトルを楽しむ場となるのだった。
ちなみに店の入り口には「定休日」の看板が掲げられているから、水曜日だけは一見様お断りとなっている。
認められた人しか入られない場所だ。
ちなみに私の場合は、私がガンプラバトルプレイヤーだと噂になっていたらしく、普通の営業日にお昼を食べに行ったらエレナさんから声をかけられた……みたいな感じだった。
だから水曜日にこの店に来る人はみんな、それぞれの経緯でエレナさんと知り合い、認められた実力者ということになる。
だからこそ普通にオンラインで野良バトルをするよりも、ハイレベルなバトルをすることができるのだ。
「えーっと、今バトルをしてるのは、片方はショウタ君か」
とりあえずカウンターに腰掛けて、バトルを眺め始めた。
まず私から見て手前のシミュレーターの前に学生服の少年が立っている。
彼はが通う大学の附属高校に通っている高校生、時本ショウタだ。
幼さが残る顔付の彼は『機動戦士ガンダムOO』シリーズが好きであり、使用するガンプラも同作品に登場する機体をベースとした機体だ。
実際に今はダブルオーガンダムをカスタムしたオリジナル機を動かしている。
あと彼はガンプラの製作がすごく丁寧かつ繊細だ。
ガンプラビルダーとしての実力ならこの店の常連の中でNo. 1だろう。
ガンプラビルドの大会にも出ていると言うのだから、純粋にすごい。
「えーっと、反対側は……あれ、あのストフリ! サワっちじゃん!」
反対側のシミュレーターでガンプラバトルを楽しむ人の姿を目にした途端、私はテンションが上がるのを感じた。
そこにいたのはスレンダーなニット服とロングスカートを纏う女性プレイヤーだった。
名前は松永サワ。
ただ普通のガンプラバトルプレイヤーではなく、彼女はガンプラバトルアイドルだ。
ガンプラバトルが上手いアイドルとして売り出しており、日々トップアイドルを目指して努力している。
ちなみに年齢の近い私と彼女は「クリスちん」「サワっち」とお互いに呼び合うほど仲が良い。
今日はオフの日なのだろうか、アイドル活動ではなくプライベートでガンプラバトルを楽しんでいるようだった。
その2人のバトルは、私が見ている時もさらに白熱度を増していった。
そして私が見始めてから数分後。
「いぇーい! 私の勝ち!」
勝ったのはサワっちだった。
シミュレーターの脇でぴょんぴょん跳ねており、対するショウタは「後一歩のところだったのに……」と崩れていた。
「じゃあショウタ君、私専用のガンプラ作ってくれる件よろしくね〜!」
サワっちがショウタに明るくそう言った。
どうやら2人はガンプラバトルで賭けをしていたらしい。
サワっちの要求は「自分に相応しいガンプラを作ってほしい」ということだったようだ。
凄腕ガンプラビルダーのショウタに対して、またとないチャンスだったのだろう。
ちょっと酷な気もするけど……
「サワっち、ショウタ君いじめたらダメだよ〜」
カウンター席からサワっちに声をかける。
「いじめる」はもちろん本気で言ってるわけではない。
サワっちも私が来ていることに気が付いたのか、ぴょこんと顔を見せた。
「クリスちん、違うって〜。私だってちゃんと対価は用意してるんだから」
そう言って彼女が取り出したのは、新発売の自分の写真集とサイン色紙だった。
ショウタが勝てばそれがもらえたとのことだ。
確かにショウタはサワっちのファンだ。
ガンプラバトルに勝てば、写真集と色紙がもらえると言うのなら間違いなく話に乗るだろう。
そもそもよく考えればアイドルとガンプラバトルができるファンは、それだけで十分に恵まれている気もするが……
「ところでサワっち専用のガンプラって、何か要望とかあるの?」
単に専用ガンプラと言っても、その表現の仕方は様々だ。
例えばこの機体のパーツを使うとか、カラーリングに拘るとか方法はたくさんある。
そう言う要望があれば作る側としても、イメージしやすいだろう。
だがショウタは首を横に振った。
「サワさんは、僕が思うサワさんらしいガンプラが欲しいみたいで」
どうやら1番難しいお題のようだった。
そんな困っているショウタの様子を見ながら、サワっちはVの字にピースを作っていた。
自らもガンプラを作るサワっちは、その難しさがわからないわけではないだろう。
笑顔の下は悪魔のようだった。
そしてそんな様子を見ながら、カウンターの向こうでエレナさんは「ふふっ」と笑っていた。
どうやらショウタは「無茶な賭けには乗るな」という良い勉強になったようだ。
「よーし、私がショウタ君の仇をとってあげるからね!」
私もカウンター席から立ち上がる。
ショウタの肩をポンポンと叩いて、シミュレーターの方へ向かった。
「ただ私とバトルしたいだけの間違いじゃないの〜?」
サワっちはそう言うと、再びスマホをシミュレーターにかざし始めた。
彼女は連戦になるが、全く問題ないようだった。
サワっちとシミュレーター越しに向かい合う。
手元のシミュレーターで白いパネルが自動で開き、円型の台座が出てくる。
そこはガンプラをセットするステージだ。
私達は向かい合いながら、お互いにガンプラを台座に乗せる。
シミュレーターに沈み込むガンプラ。
機械の中ではガンプラの情報が認証されるのだ。
そして一瞬のうちに、操縦桿ができあがる。
そこからは私達の世界だ。
「クリス・フェルール。リュンヌガンダム、発進〜!」
「松永サワ。シンデレラフリーダム、テイクオーフ!」
私達は同時に発進した。
もちろんわざわざ声なんて出す必要なんてない。
だけどこの掛け声ひとつでテンションをMAXに上げられるのだ。
──────────────────
機体ががカタパルトを飛び出す。
モニターに広がったのは、壊れたコロニーの残骸が漂う宇宙だった。
何も考えずに飛んでいると、スペースデブリがぶつかって戦う以前に損傷してしまいそうだ。
気をつけなければいけない。
こちらのリュンヌガンダムはフリーダムガンダムのバックパックを搭載しているから、機動性は高い。
デブリを躱しながら飛ぶこと自体は問題ないだろう。
だが速さという観点から言うと、相手のシンデレラフリーダムガンダムはストライクフリーダムガンダムがベース機であり、同じように高機動を誇る。
速さだけで勝負をしても決着はつかないだろう。
同じフリーダム系統の機体同士、どのようにバトルを展開していくか……
それを考えていた時だった。
「ヴィー!! ヴィー!! ヴィー!!」
アラートが激しく鳴る。
1対1のバトルのアラートの意味はひとつしかない。
それはまさに今、私が狙われているということだ。
そして気が付いた時には、サワっちのシンデレラフリーダムが目の前に飛び出てきた。
「クリスちん、遅いよ!」
シンデレラフリーダムがビームサーベルを振り上げ、真っ直ぐに斬りかかってくる。
「……っ!」
操縦桿を勢いよく引く。
瞬間、リュンヌガンダムは後ろ向きに倒れ込むような動きを見せる。
間一髪のところでビームサーベルを回避できた。
そしてそのまま両腰に装着しているビームライフルショーティーを手にする。
「サワっち! 私相手にそんなに潜り込んきていいの?」
ビームライフルショーティーをシンデレラフリーダムの首元に押し付ける。
普通のビームライフルの3分の1くらいの大きさのこの武器は、小回りの良さが取り柄だ。
最接近してきた相手に対しても、照準を合わせることができる。
たがサワっちは銃口を突きつけられても、慌てる様子を見せなかった。
「クリスちん、甘いよ! 私が何もしないで行くわけないじゃん」
むしろサワっちは強気だった。
そして次の瞬間、目の前にいたはずのシンデレラフリーダムが姿を消した。
いや、正確には真上に勢いよく飛翔したのだった。
そして変わって目の前に姿を見せたのは、8機のスーパードラグーンだった。
それぞれの先端は輝き始めており、今にもビームを発射しようととしていた。
「やばっ……!」
慌てるように左腕に装着したシールドを前に押し出す。
次の瞬間、大きな衝撃が走った。
リュンヌガンダムは体勢を崩し、目の前にはシールドの破片が舞っていた。
ドラグーンの一斉射をギリギリのところで受け止めたのだが、集中砲火を受けたシールドは破壊されたのだ。
「そこっ!」
漂うドラグーンを撃墜しようとビームライフルショーティーを撃ち放つ。
とは言え、無理な体勢からの射撃が当たるはずもない。
加えてドラグーンはサワっちの操作でギリギリのところで僅かに位置を変えており、こちらのビームが当たるはずもなかった。
だがこちらとしても、ドラグーンがリュンヌガンダムに対する照準を外したこの一瞬を無駄にはしたくない。
バックパックの翼を最大展開し、スラスター全開で移動を始める。
そもそもオールレンジ攻撃の性格上、停止している対象には絶大な効果を発揮するが、動いている対象にビームを当てるのは難しい。
とはいえ、油断はしてられない。
移動する私を、サワっちのドラグーンが私を追いかけ続けてくるのだ。
時に熱線を放ち、私の進路を妨害しようとしてくる。
「サワっち、また上手くなってるじゃん……!」
思わず唇をグッと噛み締めてしまう。
もともとサワっちはドラグーンなどの遠隔兵器を使用したオールレンジ攻撃は得意としていた。
だからこれまでのバトルでも、サワっちのオールレンジ攻撃は当たり前のように見てきた。
だが今回はこれまでのバトルとは違うようだった。
実際、先ほどの接近戦で自身の体の後ろにドラグーンを隠しておくという高等テクニックを披露された。
知らない間に、彼女のオールレンジ攻撃の質は上がっていたのだ。
「お褒めに預かり光栄!」
サワっちはそう言うと、速度を上げた。
そしてすぐに私の横に並びかけてきてくる。
横を見ると輝く白と水色、そして鮮やかな青が映えていた。
サワっちのシンデレラフリーダムはストライクフリーダムガンダムがベースであり、その見た目もストライクフリーダムとほとんど同じだった。
しかしよく見ると顔はビルドストライクガンダム、胸と下半身はガンダムラヴファントムといったように独自にアレンジされている。
その特徴的なラヴファントムの足のつま先は透き通る水色のメタリック塗装がなされており、その名に恥じない機体だった。
アイドルのサワっちが、ステージで輝くシンデレラをイメージして作り出したガンプラなのだ。
ベースのストライクフリーダムがデザイン性が高い機体であり、シンデレラフリーダムも見た目の完成度は十分に高い。
戦っている私も惹かれそうになるような映える機体だった。
そしてストライクフリーダムをベースにしているということもあり、戦闘能力だけで言えばまず問題ないだろう。
「でもサワっち、そんなに最初から飛ばして大丈夫なの?」
横並びで高速移動するシンデレラフリーダムに問いかける。
最初からドラグーンを使い、青く輝く光の翼を展開し続けているシンデレラフリーダムの状況では、極端なエネルギー消費をしていることは間違いない。
そうすると必然的に長期戦は厳しくなってくるはずだ……
だが当のサワっちは、全く気にしていないようだった。
「だってシンデレラは12時までしか舞踏会に参加できないじゃん!」
私にそう言ったかと思うと、サワっちはさらに機体を加速させた。
リュンヌガンダムと横並びだったシンデレラフリーダムは、一気に前へと突き抜けた。
そのまま私との間に、ある程度の距離ができたのを確認して、そして急停止した。
回転して姿を見せたシンデレラフリーダムは、手のルプスビームライフルと腰のレールガンを既に発射体勢に移していた。
さらに腹部のカリドゥス複相ビーム砲もチャージが始まっている。
「撃ち合いだね!」
私もサワっちに応じるように、足裏のスラスターを逆方向へ噴射させる。
そしてその反動のまま、バックパックのバラエーナプラズマ収束ビーム砲を展開した。
ゆっくりと狙っている暇はないが、ビームライフルショーティーをメイン武器にしている私は早撃ちには慣れている。
砲門を展開しながら睨み合う2機のガンダム。
そして……
「あったれー!」
「シュート!」
同時にフルバーストが放たれた。
双方から放たれた閃光は、あるものは打ち消し合い、またあるものは相手の機体を掠めていく。
どうやら、こちらもサワっちも致命傷を与えられたわけではなさそうだ。
だが、だからと言って安易に射撃を止めるわけにはいかない。
そもそも私もサワっちもお互いにフリーダムのパーツを使う者として、フルバーストの弱点はわかっているつもりだ。
決して難しいことではない。
それはフルバーストは命中すると一撃必殺の攻撃になる一方で、外れると相手に対して大きな隙を見せてしまうということだ。
カリドゥス複相ビーム砲やバラエーナプラズマ収束ビーム砲といった照射ビーム砲は、発射開始から終了までに数秒かかってしまう。
強力な照射ビームは反動も大きく、真っ直ぐに狙おうと思えばスラスターなどを上手く利用して調整するしかない。
その間は移動や体を動かすことは、ほぼ無理に等しいだろう。
だから照射ビームが外れてしまうと言うことは、死活問題になる。
そもそもこれは機体と一体化している照射ビーム砲全般的な欠点と言えるだろう。
サザビー、V2アサルトバスターガンダム、フリーダムガンダム、ガンダムAGE1フルグランサ等々挙げるとキリはないが、いずれの機体も腹部やバックパックに照射砲が配備されている。
ZZガンダムに至っては頭部だ。
どれに関しても発射中に機体を動かすことは難しい。
私の近くだと来田模型店のジョニーさんがサザビーをよく使っているが、タイミングの難しさから腹部のメガ粒子砲はあまり使用していない。
そして今、リュンヌガンダムもバラエーナプラズマ収束ビーム砲の一撃が終わるまでは動くことができない。
僅かに優位を取ろうとビームライフルショーティーを手に取りシンデレラフリーダムを狙ってみる。
だなサワっちが機体を絶妙に傾けているようで、上手く狙いが定まらなかった。
そんなことを言ってる間に、双方の照射ビームは収まった。
こうなると普通次は先手必勝の追撃に移るのだが……
「えっ、弾切れ!? ヤバっ!」
サワっちが驚きの声を上げた。
カチカチ! と操縦桿を押しているがシンデレラフリーダムは移動以外何もしてこなかった。
思えば、シンデレラフリーダムは最初から全回で攻撃をしかけてきていた。
どうやら先程のフルバーストが、残り弾数にトドメを刺してしまったらしい。
サワにとって最悪の、私からしたら最高のタイミングで弾切れを迎えたようだ。
「チャンス!」
もちろんこの好機を逃す私ではない。
ビームライフルショーティーを腰に戻し、すぐに両手でビームサーベルを抜く。
もちろんビームサーベルなのにも理由はある。
なぜならシンデレラフリーダムは弾切れだが、機動力は健在だからだ。
下手に射撃で落としに行くより、直接刺しに行ったほうが早いだろう。
操縦桿を押し込む。
リュンヌガンダムがトップスピードに達し、真っ直ぐにシンデレラフリーダムに突撃する。
一方のサワっちもこの状況で、なお諦めていなかった。
「まだ……させない!」
サワっちが弾切れのドラグーンを操作し始める。
そしてなんとドラグーン自体を、直接激突させる迎撃ミサイルのように発射してきた。
「こんな……ファンネルミサイルじゃないんだから……」
キラキラと水色に輝くドラグーンがリュンヌガンダムにヒットしていく。
シールドが残されてないリュンヌガンダムに防御の術はない。
だからと言って追尾性のあるドラグーンを回避するのは不可能に近いだろう。
一つ一つが大きいドラグーンは、リュンヌガンダムの頭部と右腕を破壊した。
だがそれでもリュンヌガンダムの勢いは止まらなかった。
「いっけぇえええ!!!」
リュンヌガンダムが左手に握ったビームサーベルを突き出す。
その一撃はシンデレラフリーダムの胸のど真ん中を貫いた。
Battle Ended!
──────────────────
「やったぁあああ!!」
「まけたぁあああ!!」
声が同時に響いた。
ガッツポーズを取る私と、足を踏んで悔しがるサワっち。
反応は真反対だったが、お互い熱を爆発させていた。
「あと一歩だったのにー!」
サワっちは本気で悔しがっていた。
確かにドラグーンを弾丸として直接ぶつけてくるのは奇策だった。
だけどリュンヌガンダムが、その一歩上に行けたからこその勝利だっただろう。
「んふふ。クリスちゃん絶好調ね」
バトルを見ていたエレナさんが私に拍手する。
確かにバトルだけで言えば、エレナさんの言う通り調子良いのかもしれない。
チームクルタ模型店で挑んだグループバトル淀川杯では公式大会を見事に優勝できた。
その後もちょくちょくと野良バトルをしているが、負けた記憶はない。
そしてそのことに気がついていたのは、エレナさんだけではなかった。
「ここんとこ負けなしだもんねー」
サワっちが「うんうん」というふうに頷く。
そしてそのまま何かに気がついたかのようにハッとした顔を見せた。
「まさかクリスちん、噂の彼のおかげ!?
確かタカヤ君……だっけ?」
サワっちはいきなりびっくりな発言をした。
まさかここでタカヤの話が出てくるとは思わなかった。
「そんなことはないってー!
そもそもタカヤには大阪大会に出て欲しいのに、なんか乗り気じゃなくて……」
てきとうに話を逸らすためにそう言った時だった。
「でもそれって単にクリスちんの運び方が上手くないだけじゃない?」
サワっちがそう言ったのだ。
さっきまでとは違う真剣な顔だった。
「運び方?」
「うん。クリスちんって参加させようとグイグイいっちゃうタイプでしょ? そこだと思うなー」
サワっちに言わせればタイプが違うということだった。
やる気が少しあったとしても、周りから強い刺激を与えられると逆に萎縮してしまう人もいる。
そういう人達は別の方向から心の火を燃やしてあげれば良いのだという。
「何かがきっかけでやってみたいとタカヤ君自身が思えたら、簡単に話が進むと思うよ」
サワっちがそうアドバイスしてくれた。
タカヤ自らが参加しようと思えるようなきっかけを作れば良いのだという。
「きっかけか……」
次の問題はそこだ。
なんだろうかと頭を捻る。
だけど今まで失敗してきた分、考えれば考えるほど頭の中でぐるぐるしてしまう。
考えて、棒立ちになっていた時だった。
「ガンプラが好きならビルドの方はどうですか?」
割って入ってきたのはショウタだった。
彼は今まで会話に参加してなかったから、突然でびっくりした。
だがそのアイデアは、私がついに思いつかなかったものだった。
これまでの私はガンプラバトルをプレイしたり、大会に出ようとしたりしていた。
つまりバトルの方ばかり注目していたのだ。
だけどガンプラバトルはガンプラあってのもの。
ビルドというのは面白い着眼点かもしれない。
一度ガンプラビルドを軸に話を進めていって、そこから大阪大会に持って行くのはありだろう。
そうなるとなんとなくプランイメージも湧いてくる気がした。
「うん、ガンプラビルドってのは確かに良いかも!」
店内に私の声が響いた。
偶然にもシーンとしていた時で、みんなの視線が私に集まっていた。
少し恥ずかしい。
でも……
「クリスちゃん、応援してるわ」
エレナさんの言葉が私の背を押した。
遊びに来た『ゴトラタン』だったけど思わぬ収穫があった。
みんなのアイデアと応援を武器に、私のタカヤ大阪大会作戦は大きく前進したのだった。
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◯主要キャラクター紹介2.5
①堅田 エレナ(カタダ エレナ)
年齢:43歳
性別:女性
イタリアンダイニングバー『ゴトラタン』のオーナー。
最初は普通のダイニングバーだったが、秘められたガンダム愛を抑えきれずにガンプラバトルシミュレーターを購入した。
店名は特に好きな作品『機動戦士Vガンダム』の登場機体の中で、それっぽい響きのものを選んだという。
好きな食べ物はトマト。
② 松永サワ
年齢:19歳
性別:女性
ガンプラバトルが得意な『ガンプラアイドル』として活動する女性アイドル。
ガンプラバトルの公式イベントや配信に出演したりする。
事務所に所属しておりマネージャーも付いているが、本人の意向で使用するガンプラは自ら作成している。
勝ち負けに拘らないバトルができる「ゴトラタン』が好きで、常連の1人になっている。
好きな食べ物は炒飯とピラフ。
③ 時本ショウタ
年齢:16歳
性別:男性
ダイニングバー『ゴトラタン』の常連の高校生。
『機動戦士ガンダムOO』シリーズを特に好んでおり、バトルでは同作品のガンプラのカスタム機を使用している。
ガンプラビルダーとしての才能もあり、ホビー雑誌に作品を応募したりもしている。
『ガンダムアイドル』松永サワのファンであり、公言していないがゴトラタンでそのことを知らない人はいない。
好きな食べ物はフライドポテト。
◯登場ガンプラ紹介2.5
①シンデレラフリーダムガンダム
頭:ビルドストライクガンダム
胸:ガンダムラヴファントム
腕:フリーダムガンダム
脚:ガンダムラヴファントム
背中:ストライクフリーダムガンダム
色:胸は黒、他は白をそれぞれベースとして、部分的に青色と薄水色のメタリック塗装。
松永サワが製作し、使用するガンプラ。
機体全体としてはストライクフリーダムとよく似ている。
足のつま先とドラグーンが薄水色のメタリック塗装になっており、松永サワのこだわりとなっている。
また松永サワがオールレンジ攻撃を得意としているため、特にドラグーンの操作性を高めた調整がなされている。