ガンダムブレイカーDASH   作:彦星七

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闘魂!ダブルゼータ!

トーナメント戦の2回戦は、15分後に行われるらしい。

俺は1回戦を1分以内に終わらせたから、次の体験相手が誰になるのかをゆっくりと見守ることができた。

そして程なく、その相手も確定した。

 

「2回戦の相手は堂山ショウ……ダブルゼータのショウか」

 

モニターに映された名前を見て呟いた。

もちろん会ったことはない。

だが知らない名前ではなかった。

 

堂山ショウは模型雑誌にも作品を投稿しているほどのガンプラビルダーだ。

実際に俺もその作品を参考にしてガンプラを作成したこともある。

一方でガンプラバトルのプレイヤーとしても有名だった。

自らが好きだと公言しているZZガンダムのカスタム機で毎度参戦していることから「ダブルゼータのショウ」と呼ばれていた。

優勝候補の1人として目されており、俺自身2回戦ではぶつかりたくなかった相手だった。

 

「トーナメント2戦目にして厳しい相手だな……」

 

1人で思わず呟く。

戦いの展開が全く読めない。

 

「大丈夫、タカヤなら勝てるって!」

 

クリスが俺の背中を叩いて激励をする。

だがクリスの言う通りだ。

別に負けが決まったわけではない。

勝負は気迫で負けたらそれでおしまいだ。

 

「気合を入れ直すか」

 

ひとまず顔を洗うことにした。

だがその向かったトイレにいたのは、他でもない堂山ショウだった。

ZZガンダムが好きというその男は、どっしりとしたZZガンダムとは対照的な華奢な優男に見えた。

 

お互い、最初は固まった。

もちろん話したことはない相手だが、次の対戦相手だと言うことは分かっている。

沈黙が流れたが、その静寂を破ったのは堂山だった。

 

「なるほど、君が噂のスーパールーキーか」

 

堂山は俺を見ながらそう言った。

俺自身はあまり意識してなかったが、トーナメント1回戦を54秒で勝利したことは、どうやら噂として広まっているらしい。

 

「はじめまして、鈴門タカヤです。堂山さんの作品はいつも雑誌で楽しみにしています」

 

当たり障りのない挨拶をする。

年齢は向こうのほうが上なのだから、今の答えで別に問題はないだろう。

だが堂山は軽く首を横に振った。

 

「緊張してるのかもしれないが、畏まらなくていい。それに僕のような大会の常連からしたら、君のように勢いのあるルーキーが1番怖いからさ」

 

そう言うと堂山はトイレから外に出た。

 

「良いバトルにしよう」

 

その言葉を残して。

堂山の言葉はお世辞か本心かはよくわからなかった。

もし本心だとしたら、堂山も多少はこちらを警戒してるのだろう。

漫画やアニメの展開で、常連の強豪がダークホースに負けるというのは王道だ。

今の場合、初めて大きな大会に参加した俺が経歴的にダークホースなのだろう。

とはいえ俺は優勝をしにきた。

トーナメント2回戦で敗れるわけにはいかない。

両手で水を掬い、盛大に顔にかけた。

 

「よし……」

 

濡れた顔を鏡で見る。

覚悟はできた。

機体、作戦、戦法、その全てで堂山を上回るだけだ。

ハンカチで顔を拭きながら、トイレを出た。

 

「トーナメント2回戦、バトルD。鈴門タカヤ選手、対、堂山ショウ選手です!」

 

トーナメントの各バトルのアナウンスがされると、それだけで歓声が湧き起こった。

俺が堂山と戦うバトルDはその中でも歓声が大きく感じられた。

 

「ダブルゼータのショウと54秒ルーキーのバトルだぞ。楽しみだな」

「でも流石に堂山が勝つんじゃないか」

 

そんな観客の声もちらほらと聞こえてきた。

俺と堂山とのバトルはそれほどまでに注目を集めているようだった。

だが印象では堂山人気の方が高いらしい。

 

「タカヤー! 頑張れー!」

 

そんな中、観客席の最前列から俺に対する熱い声が聞こえた。

他でもないクリスだ。

 

「君には熱心なファンがいるみたいだね」

 

シミュレーターで向かい合う堂山がそう言ってきた。

流石にクリスはファンというより身内みたいなものだが、堂山人気の中でアウェイを感じている俺への声援はありがたいのも事実だった。

 

「あの人が自分を応援する理由、見せてやります」

 

だから堂山へそう言った。

その言葉を受けて、堂山は「面白い」と笑みを浮かべていた。

 

「バトル開始です!」

 

アナウンスと共に一斉にバトルが始まった。

俺も操縦桿を握りしめる。

降り立ったのは、夕方の大地だった。

太陽が斜めに沈もうとしている平原だった。

 

「堂山は……」

 

あたりを見渡す。

流石に大きい機体のZZガンダムで、奇襲を仕掛けてくることはないはずだ。

来るなら正攻法。

アラートが鳴らないから、近づかれてはいない。

ゆっくりとカメラを回す。

 

「……っ!」

 

その姿があった。

そしてその機体はやはりZZガンダムのカスタム機だった。

赤とオレンジ色に塗装された機体は平原のど真ん中で腕を組んで待っていた。

「どこからでも来い」と言わんばかりだった。

背中に夕日を背負ったそのZZガンダムは、ゆっくりとメインカメラを黄色く光らせた。

 

 

──────────────────

 

「あれは…… ZZガンダムとトライオン3のカスタムか」

 

ゆっくりと近づきながら、堂山の機体を分析する。

胸部とバックパックはZZガンダムで、頭部と腕部、脚部はトライオン3のものだろう。

だがトライオン3自体もZZガンダムを元にした機体だから、外観だけで言えば、色違いの少し派手なZZガンダムのイメージだった。

ライフル等の手持ち武器はないものの、油断はできない。

ZZガンダムは全身が武器と言っても過言ではないからだ。

頭部に照射ビームを放つことができるハイメガキャノンが付いてるのが最たる例だ。

ZZガンダムと適度な距離を持って着地する。

同時に右手に持ったビームライフルの照準を合わせた。

いつでも攻撃は可能だ。

 

「来ないのかい?」

 

堂山が通信で話しかけてきた。

俺を挑発しようとでも言うのだろうか。

その言葉の奥には、攻撃を受けても返り討ちにできるという確固たる自信が感じられた。

だがこのまま膠着が続き、堂山の方から動かれるのも不味いのかもしれない。

何ぶん攻撃手段が多いZZガンダムは初手にどう来るかが読みにくいのだ。

もしかしたら既にバックパックのミサイルをロックオンしている可能性だってある。

あえて挑発に乗ってみるのも悪くないのかもしれない。

 

「では、いきます」

 

堂山に宣言する。

そして同時に右手に持ったビームライフルの照準を素早く頭部に変える。

すぐに発射。

 

戦いの火蓋は切られた。

 

頭部を狙ったビームは当然のように回避される。

だが頭部への攻撃は意外と回避が大掛かりになる。

アクション映画みたいに首だけ捻って射線を避けることもあるのかもしれないが、大概の場合は後退りしながら避けるような感じになる。

ましてやトライオン3も頭部自体が相当大きく、後退は不可避だろう。

その思惑通り、堂山はZZガンダムを斜め後ろに下げる形で交代する。

隙はできた。

 

「あの機体に対抗できる武装は……」

 

その隙に俺はアブソリュートガンダムのバックパック左に装備されたエクスカリバーを抜いた。

ZZガンダムは装甲自体も厚い。

見たところ堂山のZZガンダムはフルアーマーではないから、流石にIフィールドを搭載している様子はない。

とはいえ普通のビームサーベルでは余程の急所を狙わない限り、決定打にはならないだろう。

それを踏まえてのエクスカリバーだった。

 

「いくぞ……アブソリュート!」

 

操縦桿を握りしめる。

アブソリュートガンダムは地面を力強く踏み込んで、ZZガンダム目掛けて飛び込んだ。

そして両手で握りしめたエクスカリバーを真っ直ぐに振り下ろした。

 

ガキッ……!

 

鈍い音が鳴った。

メインカメラの視界に飛び込んだのは、両手でエクスカリバーを受け止めるZZガンダムだった。

両腕につけられたシールドをクロスさせることで、エクスカリバーの一撃を受け止めたのだった。

思わず下唇を噛む。

まさかエクスカリバーでさえ、受け止められてしまうとは……

 

「その機体、すごい作り込んでるね。動きもかなりいい」

 

堂山から通信が入った。

どうやら俺のアブソリュートガンダムを褒めるほどにはまだ余裕があるらしい。

だがその次の瞬間、ドシンと衝撃が入った。

ZZガンダムが膝を蹴り上げたのだ。

その一蹴りは、アブソリュートガンダムをいとも簡単に跳ね飛ばした。

 

「そうか……あれはソラトライオンの脚のパーツ……」

 

体勢を崩しながら、俺は唸った。

ZZガンダムの膝は変形時に羽として使用されているが、そのカスタム機であるトライオン3には機体全体の変形はオミットされている。

その代わりにパーツ分離時の戦闘力が強化されており、そこのパーツは鷲のような形状のソラトライオンで爪としてアレンジされているのだ。

当然にキック力は上がる。

なんならキックと同時にクローを動かすことで、敵機を抉ることもできるだろう。

だが驚くべきはそれだけではない。

堂山のZZガンダムは両手でエクスカリバーを受け止めながら、右足を上げて膝蹴りを入れた。

それはつまり、恐ろしく重心がしっかりしているということだった。

ちょっとやそっとの衝撃で転倒するような機体ではないのだろう。

片や俺のアブソリュートガンダムは地面に仰向けに倒れている。

エクスカリバーは衝撃で落としてしまった。

そんなアブソリュートガンダムにZZガンダムがドッシドッシと一歩ずつ迫ってきていた。

よく見ると頭部のハイメガキャノン砲のチャージが始まっている。

 

「悪いけど僕は勝ちに来たんだ。だから君にはここで負けてもらう!」

 

堂山がそう言うとZZガンダムは反動に備える体勢に入った。

ここでこのまま仕留めるつもりだ。

大阪大会の有力選手として、堂山には堂山のプレッシャーがあるのだろう。

だが俺だって負けるわけにはいかない……

 

いや、勝ちに来たんだ。

 

これくらいのピンチは、今のアブソリュートガンダムに超えられない壁ではないはずだ。

グッと操縦桿を引きながら、ボタンを押した。

 

「出し惜しみはできない……!」

 

デスティニーシルエットの翼が大きく開く。

そして仰向けに転んだまま、スラスターは全開に噴射した。

そしてそのまま大きな翼から光を放出しながら、地面に引きずる形で移動を始める。

 

「まだ……!」

 

とりあえず体勢は立て直したが、ハイメガキャノンは数秒間なら持続可能な照射ビームだ。

移動したところでハイメガキャノンの向きを変えられてしまうと、命中してしまう。

飛びながら立ち上がると、すぐにバックパックのウルフスベイン長距離ビーム砲を展開する。

 

「いけぇ!」

「間に合え……!」

 

ハイメガキャノンが発射される。

最初はアブソリュートガンダムがいた地面を狙っていたが、やはり起き上がった方に角度の修正をかけて来た。

だがその数秒間で、こちらのウルフスベイン長距離ビーム砲もチャージが整った。

ハイメガキャノンのビームを相殺するように、青白いビームが命中する。

そしてそのまま大きな爆発がアブソリュートガンダムとZZガンダムの間で巻き起こった。

 

「ヴィー! ヴィー!! ヴィー!!!」

 

瞬間、2本のビームが爆煙の中から飛んできた。

ZZガンダムのバックパックにあるビームサーベル兼用のビーム砲だった。

 

「ぐっ……!」

 

光の翼の高機動で、命中こそしなかったが油断はできない。

全身銃火器のZZガンダムならではの強さだった。

だが次の瞬間だった。

 

「ヴィー! ヴィー!! ヴィー!!!」

 

再びアラートが鳴った。

そして同時に何かが飛んできた。

 

「これは……!」

 

それはZZガンダムの両腕だった。

 

 

──────────────────

 

「ロケットパンチ……!?」

 

真っ直ぐ飛んできたZZガンダムの両鉄拳は途中で拳を開き、アブソリュートガンダムの肩を左右からがっしりと掴んだ。

 

「くそっ……」

 

なんとか外そうともがいてみるが、ロケットパンチのブースターの出力が想像より大きく、動くことすら厳しい。

 

これは迂闊だった。

 

そもそもトライオン3はスーパーロボットとしての要素を加えたカスタムがなされている。

そのため普通のZZガンダムを意識していると、今回のロケットパンチのような想定外の攻撃を受けることもあるのだ。

 

そんなロケットパンチの攻撃を解き外そうとアブソリュートガンダムの身体を動かしていたその時だった。

俺はあることに気がついた。

 

「これはケーブル……!?」

 

ロケットパンチのブースター側の根元からケーブルが伸びているのが見えた。

腕から伸びるケーブルは、まるでジオングを思わせるような……

 

「まさか……!?」

 

一瞬、嫌なことが頭をよぎった……その時だった。

 

グォン!

 

急にアブソリュートガンダムが前に引っ張られた。

ロケットパンチが逆噴射していたのだ。

根元のケーブルに引っ張られる形でアブソリュートガンダムは前に進んでいた。

そしてその先にいるのは…… ZZガンダムだ。

堂山はロケットパンチをただの巨大弾頭にするのではなく、ケーブルをつけることでオールレンジ攻撃ができるように調整を加えたのだ。

そして回避のしようがない至近距離からハイメガキャノン砲でも叩き込もうというのだろう。

 

そこまでは読めた。

 

だがどうやってそれを回避するべきか……

ZZガンダムはもはや眼前に迫っている。

一方のこちらは両肩を押さえられており、身動きも取れない状態だ。

動かせるのは足とバックパックのみ……はいえ、バックパックと脚部スラスターをZZガンダムと反対側に噴射したところで回避が間に合うかはわからない。

スラスターを動かすが、明後日の方向に逃げられるような角度にはできなかった。

ZZガンダムに近づくような向きには簡単にできるが……

 

「いや、逆にこれか……」

 

ZZガンダムに近づく向きにスラスターを動かして、俺は気がついた。

恐らく堂山は両腕のブースターでアブソリュートガンダムを引っ張っており、自分の懐に届くタイミングも計算しているのだろう。

だが、それにアブソリュートガンダムが加速する形でスラスターを噴いたらどうだろうか。

当然、加速度も変わって到着時間も変わってくる。

もしかしたら堂山の作戦を崩すことができるかもしれない。

そう思うともう他の手は思いつかなかった。

 

「一か八かだ」

 

バックパックのの大きな羽を、機体の進行方向と逆向きに一直線になるように展開する。

そして操縦桿のボタンを押して、背面に勢いよく光を放出した。

 

「そんな……!?」

 

驚く声を上げるが、ZZガンダムの両腕でこちらの両肩を掴んでいる以上、堂山側になすすべはない。

そんなうちにアブソリュートガンダムはますます速度を上げていた。

 

「これが俺の……アブソリュートだ!」

 

両足を前に押し出す。

瞬間、アブソリュートガンダムの両足はZZガンダムに激突した。

さすがのZZガンダムもこの飛び蹴りには僅かに体勢を崩しかけていた。

 

「まだだ!」

 

そんな好機を俺は逃さなかった。

足裏のスラスターを両足共に噴射する。

肩と胸に当たっていた足裏から想定外の力がかかり、ついにZZガンダムは仰向けに転倒した。

そしてその衝撃で、アブソリュートガンダムを掴んでいたZZガンダムの両腕のブースターは停止したのだった。

 

「おぉお……!?」

 

会場からどよめきが起こったのを感じたが、今はそれどころではない。

腰にマウントしたビームサーベルを両手でそれぞれ握りしめる。

 

「これで……!」

 

仰向けに倒れて、起きあがろうとしていたZZガンダムの上に飛び乗る。

そして両手に持ったビームサーベルを、ZZガンダムの胸と腹に突き刺した。

 

あとはそれを深く刺し込めば勝てる……

 

そう思った時だった。

 

「まだだ……!」

 

堂山が鈍く叫んだ。

そしてその瞬間、動きを停止していたはずのZZガンダムの両腕が再び魂を取り戻した。

一気に噴射されるブースター。

その勢いで、アブソリュートガンダムはビームサーベルから手を離し、大きく後方の崖に背中から叩きつけられた。

 

「ヴィー! ヴィー!! ヴィー!!!」

 

同時にアラートが鳴った。

視線を上げると、そこには大量のミサイルが迫っていた。

ZZガンダムのバックパックのマイクロミサイルだ。

 

「まずい……」

 

アブソリュートガンダムは身動きも取れず、回避もできない。

動かせるのはバックパックだけだった。

咄嗟にバックパックの羽を開き、その場で光を放出する。

少しでもこちらを大きくすることで、ミサイルによる誘爆を防ぐしかなかった。

だがピンチなのはZZガンダムも同じだろう。

向こうは向こうで、アブソリュートガンダムのビームサーベルが胸と腹に刺さっている。

両腕をこちらに伸ばしているZZガンダムに、ビームサーベルを抜く術がないのだ。

 

つまり、アブソリュートガンダムはここを耐えれば、勝ちがもうそこまで来ているのだった。

手とスラスターが生きていれば、ZZガンダムのトドメを刺せる。

そうなると、もう何がなんでもミサイルを凌ぐしかない。

 

「耐えろ……アブソリュート……」

 

胸のマシンキャノンを苦し紛れに放つ。

数多くのマイクロミサイルのいくつかに当たり、空中で爆発していた。

だがそれでもミサイルの数は多かった。

撃ち落とせなかったそのミサイルは、無慈悲にもアブソリュートガンダムに刺さった。

 

そして爆発炎上……

 

勝負あり……

みんなそう思っただろう。

 

「まだ生きてるな……アブソリュート……」

 

俺は機体状況を確認した。

確かにフレームは多くが吹き飛んでおり、左膝関節は自由に曲げられないらしい。

ガンダムとしての誇りであるアンテナも折れてしまっている。

メタリックパープルのデスティニーシルエットの羽はズタズタに割れており、目に余るほどボロボロだった。

だが崖を背にしていたことからか、スラスターに影響はないし、ウルフスベイン長距離ビーム砲も無事だった。

さらには両腕は、肩アーマーが半分ほど欠けているが、動作に問題はない。

もっと言えば、ZZガンダムの両腕は自らのミサイルで機能停止していた。

どちらかといえばZZガンダムの両腕がアブソリュートガンダムの腕を守ってくれた形になったのだろう。

そう、アブソリュートガンダムは確かに立っていたのだった。

 

俺は操縦桿をゆっくり、力強く押し込んだ。

爆煙の中から勢いよくボロボロのアブソリュートガンダムが飛び出した。

 

 

──────────────────

 

「なっ……!?」

 

会場の声が聞こえた気がした。

観客は今の一撃で堂山の勝利を確信したはずだ。

そして何より驚いているのは堂山自身だろう。

実際にZZガンダムは固まっていたのだ。

だがアブソリュートガンダムは間違いないなくZZガンダムに迫っていた。

ボロボロになって、光が出なくなった翼を広げながら。

そしてなんの抵抗もないZZガンダムにアブソリュートガンダムは組み付いた。

そしてZZガンダムに刺さったビームサーベルを両手で握りしめ、ゆっくりと押し込んでいく。

 

「なんで君のガンプラはそんなにタフなんだ……!」

 

堂山が苦々しそうに呟く。

その間にもビームサーベルはZZガンダムに突き刺さっていく。

 

あと少し、あと少しで……

 

操縦桿を握る手のひらに汗を感じた。

その時だった。

 

「だが僕は負けられない……!」

 

堂山がそう叫ぶと、アブソリュートガンダムに衝撃が走った。

ZZガンダムが最後の気力を振り絞って、胸でタックルして来たのだ。

そしてよく見ると、頭部のハイメガキャノンのチャージが始まっている。

 

「雑誌の記者も、僕のファンもいる……負けられないんだ!」

 

赤い夕焼けの中、ZZガンダムの瞳が黄色く光る。

たくさんの人を背負った堂山の気迫が感じられた。

 

だが、俺だって負けていられない。

 

「全力でバトルしたい」

「頼れる人が近くにいたから勝てました!」

「タカヤー! 頑張れー!」

 

三代、レイ、そしてクリス。

みんなの言葉が頭をよぎった。

堂山に比べると、俺を応援する人は少ないかもしれないが、それでも俺の後ろにも人はいる。

 

俺は操縦桿のボタンを押した。

 

アブソリュートガンダムがZZガンダムを押し返す。

その僅かな空間にウルフスベイン長距離ビーム砲を展開する。

そしてZZガンダムのハイメガキャノンに砲身を差し込んだ。

 

「堂山さん……俺だって負けられないんです」

 

ウルフスベイン長距離ビーム砲からビームが放たれる。

至近距離からの砲撃でZZガンダムのハイメガキャノンは誘爆し、そしてついに、ZZガンダムは制御を失った。

沈みゆく夕日を追うように、ZZガンダムが地平線に倒れ込む。

 

そして真っ赤に爆発した。

 

 

──────────────────

 

「バトルD、勝者は鈴門タカヤ選手です!」

 

アナウンスが響くと、熱狂が沸き起こった。

周りからすると無名の俺が、優勝候補である堂山を破ったことはそれほどまでに衝撃的だったのだろう。

 

「いやぁ、本当に君のガンプラは凄かったよ。速さだけだと思ってたら、ガッツも凄かった。久しぶりに痺れるバトルをしたね」

 

そう言いながら、堂山が歩み寄って来た。

そしてゆっくり俺に向かって右手を差し出した。

俺は最初は驚いたが、すぐに堂山の手を握り返した。

 

「こちらこそありがとうございました。堂山さんともバトルを糧に優勝を目指します」

 

そう握手をした。

その瞬間、どこからともなくシャッターがあちこちで光った。

堂山のバトルを追っていたホビー雑誌のスタッフ達だった。

そしてそのスタッフ達に俺はすっかり目をつけられてしまったらしい。

 

「タカヤおめで……ってあれ〜!?」

 

雑誌のスタッフ達は俺を祝福しようとしたクリスを割り込ませずに、ぐいぐいと近づいてくる。

 

「月刊◯◯ガンプラの者ですが、堂山さんへの勝利おめでとうございます!少しだけインタビューを!」

「雑誌、◯◯ホビーの者です!おめでとうございます!こちらもインタビューをよろしいでしょうか!」

 

雑誌のスタッフ達は逃してくれなさそうだった……

 

 

──────────────────

 

そこから5分くらいは、質問攻めだった。

途中、自らのバトルを勝利したジョニーさんが「うちの自慢の店員です!」と取材を引き受けてくれたことで、俺は脱出できたのだった。

 

精神的に疲れ切った俺は喉が渇き、自動販売機を探していた。

そんな俺を廊下で待っていた人がいた。

 

「勝利おめでとう。流石だね」

 

「三代!?」

 

そこに立っていたのは三代ユイだった。

いつもの黒のレザージャケットを着ている。

聞けば、わざわざ応援に来てくれたらしい。

 

「来てくれたんだ。ありがとう」

「本番でバトルするって約束したでしょ。負けてもらったら困るから」

 

三代は当然と言わんばかりだった。

だけどその瞳は、これまでの俺の勝利を疑っていないようだった。

 

「それにしても災難だったね。まだ優勝ってわけでもないのに」

 

雑誌のスタッフの声がする方をチラッと見て、三代は言った。

 

「でも優勝したらもっとすごいよ。私がそうだったし……」

「そ……そうか。忠告ありがとう」

 

三代とそんなたわいもない話をしていた時だった。

 

「バトルF、勝者は明野トシキ選手です!」

 

観客席からドッと歓声が湧いた。

どうやらあるバトルが終わったらしい。

その様子を見ていた三代が口を開いた。

 

「やっぱり来た……ガンダムAGEスミロドン……」

「えっ……?」

 

突然のことで何のことかわからなかった。

だが、三代はバトルFの勝利選手が使っているガンプラを見ているようだった。

 

「明野トシキ、優勝候補の1人で多分決勝に来るよ。あのガンプラ強いから」

 

「バトルしたことがあるのか?」

 

俺が尋ねると三代は静かに、ゆっくりと頷いた。

 

「イベントで一回。決着はつかなかったけど、私のブッドレアを追い詰めて来た……」

 

殺すような声で三代はそう言った。

その声が俺に緊張感を与えた。

三代の機体、トールギスブッドレアは機動力と火力、接近戦全てに優れた機体だ。

三代の操縦テクニックもあって、かなり強い。

それを追い詰めたというのだから、その「ガンダムAGEスミロドン」という機体は相当に強いのだろう。

 

俺はその時、大阪大会最大の敵を見つけたのだった。

 

 

──────────────────

──────────────────

◯主要キャラクター紹介4

①堂山 ショウ(ドウヤマ ショウ)

年齢:29歳

性別:男性

使用機体:ZZガンダムヒート

 

大阪で人気のガンプラビルダー。

複数の模型雑誌に作品を投稿しており、特に塗装を得意としている。

ガンプラバトルは趣味に過ぎないが、それでも大会の決勝戦に進出する程のスキルを持っている。

愛するZZガンダムで進軍していく様から、ガンプラバトルでは「ダブルゼータのショウ」の異名を持っている。

好きな食べ物は牛丼。

 

 

◯登場ガンプラ紹介5

①ZZガンダムヒート

頭:ガンダムトライオン3

胸:ZZガンダム

腕:ガンダムトライオン3

脚:ガンダムトライオン3

背中:ZZガンダム

色:赤・オレンジ・黄色・白

堂山ショウが使用するガンプラ。

ZZガンダムをこよなく愛する堂山が1番カッコいいと、1番強いと思って作成したガンプラ。

基本性能で武装が多いZZガンダムにトライオン3のパーツを用いることで、全身を武装として仕上げた。

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