Lyrical Lilyの子たちといろいろする 作:ユイトアクエリア
こんなんであってんのかな
有栖川学園内、一年の教室、昼休みにて。
とある男が机に突っ伏し、弱音を吐いていた。
「あ~......かったりぃよぉ......」
「仮にも紳士がそういうことを言うんじゃありません!」
それを叱る風紀委員。
「だってさ......いや、何でもない」
言い訳しようとしたが、そのあとのことを考えてやめた男。
男の名は
そして彼を叱るのは
「で、何がそんなに嫌なんです?」
「え?いや、将来が勝手に決まるのっていやだろ?」
「それは......人それぞれではなくて?」
「少なくとも俺は嫌なんだよ」
そう言ってもう一度突っ伏す。
彼の言う将来とは、いわゆる許嫁と言う奴だ。
今日の朝方、「帰ってきたら紹介するから」と言われ、疑問を返す間もなく家から出されたという。
「つか、この年で決めるもんじゃねえだろ......それって5とか6とかの時に決めるやつだよ...」
「文句が多いですわね......そんなこと言って、お相手が零士さんの好みだったらどうするんですの?」
「付き合ってください俺が一生養いますって頭下げるよ」
「えぇ......」
このようにお堅い彼女でさえも引かせてしまうほどのこの男。
と、時を同じくして、彼らの対角線上の席で全く同じ
「はぁ......。嫌だなぁ......」
「どうしたの胡桃ちゃん?元気がないの」
「うーん......みいこちゃん、好きな人っている?」
「え?ううん、いないの」
「私ね、今日は早く帰って来いって。許婚者の紹介するからって」
「胡桃ちゃんの好きな人だといいの」
「うーん......そう簡単にうまくいくかなぁ」
と、ため息をつく彼女。
同じ悩みを抱える彼ら。
さて、彼らはどうなるのか。
「いつまでうだうだ言ってるのよ、もう行くよ?」
「はぁ......わかった、わかったから引っ張んな......」
家に帰って着替えてからも、乗り気にならない零士。
それを姉が引っ張って無理やり連れていく。
「何あんた、着替えれば様になるじゃん。いつもそれで行けば?」
「勘弁してくれ、これ毎日とかメンタルもたん」
そう言いながらも、きちんと歩くあたり、さすが有栖川の生徒というべきだろう。
「......んで、なんで姉さんが付いてきたわけ?」
「あんたを紹介して向こうのご両親と楽しく話すため。父さんも母さんも行きたくないっていうから」
「じゃあ紹介なんてすんなよ......」
言い合ううちに、彼らの足が一つの家の前で止まる。
「ここ?」
「うん」
姉が呼び鈴を押し、少しした後に呼び鈴越しに声が聞こえる。
姉がそれに答え、しかるのちに扉が開く。
「行くよ」
「......腹くくろ」
お邪魔しますと言い、その家の敷居を跨ぐ咲花姉弟。
靴を脱ぎ、少しフローリングを歩くと、その家の主と、彼の許嫁の姿が見えた。
「「......本日は、よろしくおねがいします」」
「あぁ、よろしく。というか、そんな固くならないでくれ。幼少期からの仲だろうに」
そう言うその家の主は、姉弟に座るよう促す。
促されるまま座った彼の目の前に、ちょうど彼の許婚となる女性がいる。
「一応、紹介しておこうか。うちの娘の胡桃だ」
「よろしく、お願いします」
彼女が頭を下げ、それに続くように慌てて彼も立ち上がり、頭を下げる。
「ふむ......二人とも緊張しているようだね。二人で少し別の部屋に行くといい」
そう言って、白鳥家の遣いが零士と胡桃を連れ、別の部屋に連れていく。
「さて、彼らは行ったようだね。では、こちらはこちらで軽く話そうか」
「では、1時間後に」
そう言って出ていった遣いを見送ると、部屋は恐ろしいほどに静かになった。
「......行った?」
「うん、行った」
そう、彼女が言った途端に。
「「......なんで!?」」
と、二人分の叫びが部屋に響いた。
「いやほんとに!胡桃だったのかよ!」
「なんで零士君!?いや確かに遊んでたよ!?」
と、お互い状況整理ができてないようで、早口かつ大声で捲し立てる。
やがて、いうことが尽きた彼らは、肩で息をしながら床に倒れた。
「胡桃さ、嫌なら言って来いよ。こいつとなんか付き合いたくないって」
「え?なんで?」
「いやほら、露骨に嫌がるじゃん最近」
「それは、その」
この男、女心が分からない。
ずっと前から、彼女は彼に思いを寄せているというのに。
「......知らない?女の子は、好きな子にはそっけなくなるんだよ?」
「いや知らんし、そうだとしたらそっけないの意味を間違えてるぞ」
「え?」
「そっけないって嫌がるって意味じゃ......いやちょっと待て、お前じゃあそういうことか!?」
「......うん」
頬を赤らめて答える胡桃。
意味にようやく気付き、どうしたらいいのかわからなくなる零士。
この男、極度のヘタレである。
「......どうしたらいいんだ」
「え?」
「付き合うって、なにしたらいい?」
「それは、その......手、つなぐとか......?」
「じゃあ、シスターとかがいないとこでな」
「え......て、ことは?」
「色気全開のやらしい奴だったら即刻帰ってたけど、お前なら、妥協......いや、その言い方はダメか。お前なら、好きだって思える」
「ほんと?ほんとに?」
「あぁ。あとで報告に行こう」
「......!うん!」
その後、使いが呼びに来た時には、胡桃は零士の腕の中で眠っていたという。
許婚者ってわかんないわ
あと許婚者って幼少期に決めるやつなのね、初めて知った
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