地の文、別視点、ガールズラブありです。
『このデンボク、団長として、長としてコトブキムラのみなを守るためであれば、ときとして果断な処置をくだす! カイ殿も、分かっているだろう?』
「分かってるんだけどなぁ……」
長として、シンジュ団を治める者として。
『ショウ』という世界の異物めいた存在を見逃すわけにはいかない。
今回の群青の海岸への遠征の件だって、キング場を荒らすと言われている幽霊の噂にガラナちゃんの様子見が目的だけど、他にも『ショウ』さんを監視するという使命もある。
黒曜の原野の件はちゃんと覚えている。
みんなのためだと尽力して、その命を懸けてまで暴走していたバサギリを止めてくれた。
そんな女の子を、普通のポケモン好きの女の子をまだ疑わなければならないのは、酷く心を痛める。
すべてはヒスイの人々が安心して暮らせるため。
そう言い聞かせているはずなのに、もう1人の、本当のわたしの考えることは異なっていた。
見惚れた存在に、かっこよく勇ましい後ろ姿に、人とポケモンを惹きつけてやまない魅力的なショウさんの隣に立ちたい。あの人と肩を並べてみんなを引っ張っていけるような長になりたい。そして、あわよくば……。
「友達、か。何考えてるんだろうね、わたし」
ガラナちゃんはライバルで、周りに同年代の子がいなくて。
初めてなりたい、って思った子は周りからいい目では見られていない。
ぐるぐる。ぐるぐる。ぐるぐる……。混入していく悩みと素直な思いは混じりあって、黒いヘドロみたいな感情が生まれる。
いっそ長をやめて、逃げながらショウさんと一緒に旅ができればいいのに。
無責任が過ぎる。わたしには、背負うものがあまりにも多すぎるんだから。
悩んだときは、結局頼るのがこのカミナギのふえ。
笛はいい。音色はどこまでも届きそうで。自分の気持ちが相手に伝わるみたいで。
人とポケモンは分かりあえるのに、どうして人と人はこんなにも悩むことが多いんだろう。
ショウさんのポケモンとして、彼女を守れたら、この悩みもいくらか晴れるだろうに。
◇
11:通りすがりの考古学者
スレ立ておつよ
友達って?
12:名無しのトレーナー
俺らにはいないものだよ
13:名無しのトレーナー
さぁ?
14:名無しのトレーナー
しらん
15:名無しのトレーナー
ここにおるやつ、だいたいおらんやろ
16:通りすがりの流星ネキ
ネットの民ってみんなこんなも卑屈なの?
17:名無しのトレーナー
そうだよ
18:名無しのトレーナー
卑屈だからネットにこもってるんだよ
19:名無しのトレーナー
考古学ネキや流星ネキも含めて、ネットには変わり者しかおらんのよ
20:通りすがりの考古学者
いま変わり者って言ったかしら?!
21:通りすがりの流星ネキ
心外だね。わたしにだって友達はいるよ
22:名無しのトレーナー
え?
23:ショウ
ホントですか?!
24:名無しのトレーナー
マジ?
25:名無しのトレーナー
嘘とかじゃないよな?
26:名無しのトレーナー
どうしてそこで噓をつく
27:名無しのトレーナー
虚勢は自分を惨めにさせるだけだぞ
28:通りすがりの流星ネキ
想像してみなよ。顔がいい、スレンダーで適度に筋肉がついた体、おっぱいがでかい、裁縫や家事全般は余裕。そしてポケモンバトルも強いという完璧超人に友達がいないわけないだろう?
29:名無しのトレーナー
やめろ、そこまで自分を誇張するな!
30:名無しのトレーナー
逆にいなさそう
31:名無しのトレーナー
高嶺の花って、基本的に独りぼっちだよね
32:名無しのトレーナー
うちのスクールでアイドルやってる子おるけど、誰かと仲良くしてるところは見たことないな
33:名無しのトレーナー
ありえないことはないけど、いても友達少なそう
34:通りすがりの流星ネキ
なんだいキミたちは!?
わたしにはハルカっていう大切な、それはもう戦友とも呼べる友達がだね……!
35:名無しのトレーナー
煽り耐性なさすぎて草
36:名無しのトレーナー
それ以上はそのハルカちゃんに迷惑がかかるからやめような
37:名無しのトレーナー
せやぞ
38:通りすがりの考古学者
そういうものは言葉を語らないのが花よ……
39:ショウ
って、そういう話じゃなくて!
わたし、カイちゃんと友達になりたいの!
40:名無しのトレーナー
シンジュ団の長ちゃん
41:名無しのトレーナー
かわいい子ね。無知ダブピがかわいかった
42:名無しのトレーナー
あのFAマジで滾った。ちょっとROMるわ
43:名無しのトレーナー
おい。おい
44:名無しのトレーナー
ショウネキがそっち行ったぞ!
45:ショウ
任せたアルセウス!
それはさておき、友達になる方法を教えてください!
46:名無しのトレーナー
…………
47:名無しのトレーナー
えーっと……
48:名無しのトレーナー
うん
49:名無しのトレーナー
友達になってくださいって頭下げるとか?
50:名無しのトレーナー
分からん
51:通りすがりの考古学者
友達ってなんでしょうね
52:名無しのトレーナー
ここのニキネキ、頼りなさすぎて泣いた
53:名無しのトレーナー
ここで相談するのが間違い
54:通りすがりの流星ネキ
普通にポケモンバトルするんじゃダメなの?
55:名無しのトレーナー
?!
56:名無しのトレーナー
!?
57:名無しのトレーナー
そ、それは! バトルすればみんな友達理論!!!
58:名無しのトレーナー
伝説の超スーパー陽キャ人かよ。たまげたなぁ
59:名無しのトレーナー
いるんだ、そういう人
60:通りすがりの流星ネキ
え。なんでそんなに意外そうなの?
61:ショウ
……それですよ!
流星ネキさん、ありがとうございます!
62:名無しのトレーナー
お、おう……
63:通りすがりの流星ネキ
ま、まぁ。それならよかったかな
64:名無しのトレーナー
頼れる流星ネキだぜ!!
65:名無しのトレーナー
流石流星の民!!!
66:名無しのトレーナー
俺、流星ネキのこと見直した!!
67:名無しのトレーナー
流星の民しか勝たん
68:通りすがりの流星ネキ
なにこの手のひらつのドリル
69:通りすがりの考古学者
教えてあげるわ。これがネットの民よ
70:名無しのトレーナー
せやせや。流星ネキ最高!!
71:名無しのトレーナー
さすが流星のコスプレイヤー!
72:名無しのトレーナー
かわいかったぞ!
73:通りすがりの流星ネキ
やめろぉ!!!!
◇
133:ショウ
そんな感じで次の目的地、群青の海岸についたぞ!
【画像】
134:名無しのトレーナー
ウミダァー!
135:名無しのトレーナー
ウミダァー
136:名無しのトレーナー
ウミダー!
137:名無しのトレーナー
あーーーーーーまなつーのじゃーーーーぼにーーーーーーー!!!!!
138:名無しのトレーナー
申し訳ないが陽キャの歌はNG
139:通りすがりの流星ネキ
本当にヒスイ地方って綺麗だよね。自然に生きてるって感じだよ
140:名無しのトレーナー
海、いい……
141:ショウ
キング場にある噂を調査して、必要なら解決って流れかな。
とりあえずカイちゃんに話聞いてくる。
そしてあわよくば友達になる
142:名無しのトレーナー
配信は?
143:名無しのトレーナー
URLくれ
144:名無しのトレーナー
俺らに百合の花を見せてクレメンス
145:ショウ
絶対ヤダ。はい、電源オフ!
146:名無しのトレーナー
あー!
147:名無しのトレーナー
ひどい。俺らはただ、2人の仲の良さをおかずにご飯を食べるだけなのに
148:名無しのトレーナー
なんとかならないんか?!
149:通りすがりの考古学者
普通に困るわね。データが取りづらくなる
150:神
分かりました。何とかしましょう。
151:名無しのトレーナー
へ?
◇
「カイさん、バトルしよう!」
「え?」
「バトルだよ、ポケモンバトル!」
バトルすればみんな友達。そんな夢物語を信じているわけではない。
けれど、わたしだってできればそうあれたらと考えている。少なくとも、カイちゃん相手には。
「……どうして? わたし、多分ショウさんより弱いよ?」
「それは、えっと。なんと言いますか……。きっかけ作り、みたいな?」
ハトーボーが豆鉄砲を食らったような顔をしている。
きっとわたしの言っていることはなにひとつ分かっていないのだろう。
価値観の違いというべきか。本当のポケモンバトルができる相手になってくれたら嬉しかったけれど、そう都合よくいかないらしい。
「えーっと……。こ、このバトルに勝った方は1つ言いたいことを言うってことで!」
「え?!」
「言ったもん勝ち! シア、キミに決めた!」
不意打ちのようにモンスターボールからシアを連れ出す。
唖然としていたカイちゃんの顔だったが、どこからともなく現れたグレイシアとイーブイによって、表情が一変する。
長としての雰囲気。負けられない。人を治める者として、怪しい異邦人に敗北を期すことは許されない。
「お願い、グレイシア! イーブイ!」
平然と2対1。まぁこのルールには慣れたよ、うん……。
さて、相手にハンデはあげるとして、グレイシアは成長していると見て間違いない。
イーブイによって隙を生み出して、グレイシアで攻撃するというのが割とベターな手段ではあるけど、ダブルバトルはトレーナーの指示がものを言う。カイちゃんにそれができるの?
まずは、藪蛇をつついて様子を見る!
「シア、早業でんこうせっか!」
『ぶい!』
厄介なのは前回いなかったイーブイ。だからこいつは早めにつぶす!
「イーブイ、同じく早業でんこうせっか! グレイシアは地面にこごえるかぜ!」
『フォオオオオオン!!』
イーブイが地面を蹴ってシアに並行する。襲ってこない?
おかしい。でんこうせっかは攻撃わざ、一緒に並走するような仲良しこよしのわざじゃない。でも相手のイーブイはカイちゃんの指示をノータイムで受け入れて実行している。
もしかして、何か策を講じてきた?!
「っ! シア、飛んで!」
『ぶい?!』
わたしは目の前の脅威に対して、慌ててシアに指示を出す。
「いま! イーブイ、たいあたり!」
『ブイ!!』
空中にむき出しになったシアにたいあたりがヒットする。
苦痛の表情と吹き飛ばされる小さな体が宙を舞う。
受け身を取るために姿勢を正しながら、その身を回転させながらバランスを取り戻すが、今度はグレイシアによって生み出された脅威が牙をむく。
無事着地したかのように思えたが、氷の地面に晒されたシアの手足が滑り、こけてしまう。
「これは……」
それで気づいた。目の前で起こっている惨状が。
眼中に広がる、氷の大地。アイスフィールドの存在を。
「これがわたしとグレイシアが生み出したショウさんへの作戦! 名付けて、純白の凍土作戦!」
『フォン!』
「……やるね」
思わず苦笑いしてしまった。
だってそうじゃないか。シアが行動するすべての領域が、すべて氷の大地に変わっているのだから。
◇
続きます。
シリアスにしないように、って思いながら書いてますが、
隙あらばシリアスになりたがりのショウちゃんが恐ろしい