目指すはくそつよウマ娘   作:缶詰マン

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(ここだと何もかいてないので実質)初投稿です。
追記
《ソフィア》さん、《吉野原》さん、誤字報告ありがとうございます


あなたはどうやら生まれ変わったらしい

 あなたは転生者である。

……と、唐突に言われても分からないだろう。ここまでの経緯を軽く説明すると――

 まずあなたは小説家である。その日、締切間近だった小説の執筆作業に手詰まり、暫く均衡状態にあったあなたは気分転換にと散歩にでかけた。

 その際にたまたまあった、蜘蛛の巣がはってあるような神社に何の気なしに参拝しに行き、締切がなくなりますように、あわよくばウマ娘になれますようにと祈願した。

 その際に良いネタが浮かび、メモに書き出しながらここから近いコンビニによって何か糖分でも摂って執筆作業にでも戻るかと思った瞬間、足元をろくに見ていなかったのが災いして、階段で右足で小石を踏んでバランスを崩し頭が階段の角へと向かって……後は言わなくとも分かるだろう。

 気がついた時には願い通り締切がなくなった……と言うよりかは消え去った。と言った経緯がある。

 確かに願いは叶えられた。締切の事に関してはであるが。そのことは少しその神社の神様に感謝したが、もう少し何か別の方法だったりなんだったりがあるだろうし、何故1番痛い方法を選んだのかが理解しかねる。次会う機会があれば焼きたてのパイ生地を全力でぶつけてやるといった怒りの感情が勝っている。

 更に言えば、その神様はどうやら融通と気が効かないタイプの神様のようで、見た目が時代を少し先取りしすぎている母親の元に生まれ、どうやら脳ミソは悲しいかな、残念なタイプだったようで、後処理が面倒になったのかどうかは定かでは無いが1ヶ月を満たすか満たさないか位まで育てた後に最低限の身ぐるみだけ付けてコインロッカーにIN。おかげで生まれた開始早々に命の灯火が消えかけで死と生の反復横跳びをしている真っ最中である。

 腹が減ったのと普通に窮屈なのと寒いのと息苦しいので赤さんに出来る泣きの感情をフルオープンにしている。まだ死にたくはない、これから人生満喫したいのにまだ死にたくない、と言葉にはまだならないものの、このままだとまた天界へと移籍しなければならない身にも関わらず、自分で動く事は出来ない。真面目にまた死ぬかも、あまりにも終幕が早すぎる人生だったな、と半ば諦め混じりで泣いていた。

その時に、救いの手は差し伸べられた。

 

「おーい!このロッカーから泣き声するぞー!鍵貸せ鍵ィー!」

 

 少し声がした後に、少ししてからガチャリと音を立てて開けられるロッカーの扉。外の雪と夜の外気が直に触れて身体が震える。泣きながらも開けられた方を見ると、そこには若い男……か?赤さんは視力が悪いのでよく分からない。

 

「――赤ちゃん、こんな雪の中で寒さで凍えて可哀想に……まだ未来があるってのになんでここに子供を捨てんだよ……」

 

 体を持ち上げられ、さっきまで警察官が着ていた制服で身を包まれる。体温で温められた制服は凍えていた体の震えを少しづつ落ち着かせる。

 

「ここまでよくそんな気味悪いトコで耐えてたよ。すぐに暖かいトコに行かせて、飯をたっぷり食わせてやるからな……」

 

 あなたは死にかけで凍死と餓死の積み重なりこのままでミイラ化しかねなかった。まだ声は出せないために、出来ることとして心の底から感謝する事を選んだ。成長して言葉も喋れるようになったならば鶴の恩返しの如く、あの時に救って頂いた者です、あの時は助けて下さりありがとうございましたと何回でもお礼を積み重ねるつもり山々である。

 それはそれとして生まれ場所の指定ミスをしてヒト1人殺しかけた神様は1回本体下半身(ゼウス)にケツでもしばかれてしまえ、と赤さん故にまだ小さい脳の片隅に思った。

 

 

 あなたは養子になった転生者――もとい、ウマ娘である。少し成長した後に頭上と尻辺りに少し違和感があると思って触ってみたらウマ娘でありそうな耳と尻尾があったので、あなたは見事にもう1つの願いも叶えられた訳である。それはそうとここに転生させた神様はノー情報バグ込みの女神転生最速RTAしろ。

 ちなみに養子先はまさかの警官の兄貴である。なんの巡り合わせかと思ったが、どうやら兄貴が何としてでも俺が引き取る!と意地になったらしく、最初はいや別の育て親に育ててもらった方が良いと保健所も食い下がったのだが、最終的にだったら勝手に引き取るなりなんなりしやがれ持って行きやがれと根負けして引き取られたそう。ヒトの命ってこんな簡単に取引される物なのかと子供ながらに嫌な気分になった。

 余談だが、その交渉にかかった時間は凄まじい程に長く、引き取られる頃には既にそこそこの年齢になってしまっている。その間に誰かと仲良くなったりなんだったりは一切無かったし、場所が場所なだけに、後色々とあってさっさと離れたかったので良かった所。

 閑話休題。

 引き取られた際に、ここが暫く滞在する家だぞと言われても連れて来られた家は相応に成長したはずにも関わらず、それでもまだ全貌が見えない程に大きく、暫くここで過ごしてその後に警官の兄貴――もとい、養父の家へと連れられる事になったらしいと医者の人からこっそりと盗み聞きをした。

 あなたは兄貴がまさかのメジロ家の人と知り、驚きで顎が外れるかと思う程の衝撃を受けた。養父は本家では無く、分家の方、それもかなり小さい部類らしいのだが、それでも大きすぎる収穫である。一瞬神様に感謝したが、だったらスタート地点をもう少し良い環境にしてほしかったと思い直し、不満を漏らしていた。

 

 

 時の流れと言うものはかなり速いもので、いつの間にやらあなたは引き取られて早2年経過している。

 友達や親友とも呼べる関係はメジロドーベルとゴールドシップの2人だけである。交友関係が狭いと言われても仕方ないが、交友関係においては小説と同じように、質より量の考え方は許されざる物で、出来た友達の仲を更に深めるのが重要だとあなたは考えている。メジロドーベルは自作の少女漫画を見せ、ゴールドシップは時たまゴールドシップの家に拉致されたりするのでかなり良い関係性になっていると思っている。

 

 話は変わるが、現在のあなたにとって最も恐ろしいものといえば、一番に兄上、二番に本気で怒った時の養父で、三番に他の人よりもかなり多い、抜けてゆく髪の毛達である。

 まだ青少年――この場合は少女か?そうであるにも関わらず、栗色の髪の所々の色素が薄くなり白髪が点々と生えてきた。あなたの個人的感想では、ウマ娘となっても尚ハゲ弄りされるのはあなたにとって実に遺憾で、ストレス。いっそここで開き直ってこれは新しいデザインだ、決して白髪じゃない。抜け毛はそれに適応するための準備だと誤魔化せば受け入れられるのでは、と後ろから追ってくるキレ方ヤーさん……兄上から逃げて自室に閉じこもりながら考える。

 

「なあ妹よ。わしが楽しみにしとった冷蔵庫のショートケーキ、何処やった?あのなぁ、高校受験シーズンで大層勉強しとんのや。それで息抜きしよかと思うて下降りて冷蔵庫開けたんよ。無いねんな。犯人だれじゃ。はよ言うたら許したる」

 

 言動とは反対に壊さんばかりの勢いで叩かれる扉。勢いもあって完全にカチコミを彷彿とさせる。初めの時は少し凄みを感じさせるだけだったのが今や完全にソッチの職業のお方へと変貌している。

 何より怖い。大真面目にそろそろ扉が吹っ飛んでもおかしく無い頃合である。何か良い方法は無いと模索するも、一行に見つからない。冷や汗が吹き出し、それを手で拭う瞬間。良い案を思いつき、それを実行に移した。

 結果から言うと、友達のゴールドシップを売った。先程あなたの家に来ていた為、罪を擦り付けるのに都合が良いと考えたからだ。兄上は謝罪した後に自転車でそれなりに近いゴールドシップの家へと全速力で向かった。

 許せ、ゴールドシップ。君はとても良い友人であったが、君の元ネタがいけないのだ。3連覇を賭けた宝塚記念の時の2万円はこの事をもって返した物としよう。

 

 

 あなたは中学生3年生である。

 あなたは中学生からトレセンに入るルートではなく、高等部から入るルートを選択し、現在はただの中学生である。トレセン学園に入学したいといった旨の事は既に親に相談しており、入学許可をもらっている。後は受験勉強を控えるのみだが、そこも兼ねて本気で受かる為のトレーニングを重ねている。

 この歳になると多くの人は反抗期を迎えるが、あなたは人生2周目を攻略している最中なので反抗する暇が無い。反抗期の体力を全てこの後に来るかも知れない本格期に備えて練習に全て使っている。

 ちなみに友人はあの2人以降、未だに誰もできていない。他のクラスメイトからボッチを極めたウマ娘と言われれば、あなたが真っ先に挙がる事だろう。

 閑話休題。

 母親が偶然にも元トレーナーだったのでそれに甘えて効率的なトレーニングを積んでいる。食事にも気を使ってもらい、筋肉の付きやすくなる食事を摂り、日々の努力を怠らないように努力している。とはいっても、体に異常をきたさない程度ではあるが。後たまにサボってたりする。本気で受かるつもりはあるのだろうか。

 さて話題は変わるが、昨今はミスターシービーがシンザンのころから長年達成されることのなかった三冠、しかも菊花賞のタブー――「ゆっくり上り、ゆっくり下る」――を破った事で盛り上がり、世の中もそのムードが支配している。そこであなたにちっちゃい野望が芽生えた。

 

『このまま2年後にくるだろうシンボリルドルフに次いでクラシック三冠取ってそっからG1をシンボリルドルフより勝ったら世論がめちゃくちゃおもろなるんやないか?そうやったら3年連続三冠ウマ娘誕生で大荒れ確定やろて』

 

 ちっちゃい、とはなんだったのかと疑う人も多いだろうが、これがあなたにとってのちっちゃい野望なのだ。シンボリルドルフの所属するシンボリ家は大きいが、あなたは分家とはいえ一応の所属はあのメジロ家のウマ娘なので、出来ない道理は無い。目指すは無敗の三冠ウマ娘。できれば凱旋門賞制覇。具体的にはディープインパクト以上。

 目指すのに良い目標が出来上がったので、あなたは良い表情である。無論練習もいつもに増して身が入った。

 トレセン学園合格目指して頑張るぞ。えい、えい、むん。

 

 

 もし、まだ日もそこまで登りきらず、青々しい草木が生い茂り、爽やかな春風が運ぶ涼しさ(と花粉)と共に桜の花弁舞う校舎が鎮座する正門の前。そこでただ1人ギャングダンスを踊っているウマ娘がいたのなら、そのウマ娘は紛うことなきあなたである。

 あなたはトレセン学園の入学試験に見事合格し、家でも勿論小躍りしたものの、実物を見るとそれはそれは貫禄ある外装にまたも心踊ったあなたは誰にも迷惑をかけないからと1人踊っているのがここまでの推移である――ちなみに花粉クソザコウマ娘のあなたは防塵マスクとゴーグルを装備している。プラスで制服や意外と潜り込みやすい尻尾に花粉が付いて入学式中に花粉症を起こす事を防ぐ為に全体を覆う黒いフード付きのコート。

 傍から見れば、紛うことなき不審者である。辺り5mに近づく者はいない。あなたの奇行を見てそれに何かしらのツッコミを入れるという行動が、最早メジロ家のいつもの光景と化し、そのツッコミ役であるドーベルも身を引く程。

 これでもあなたは新入生代表挨拶のスピーチをするウマ娘である。しかも試験結果を2桁台前半で通過している。アホだったりバカでない辺りがこの奇行の意味のわからなさを増長させている。

 This is you.

 ちなみにダンス中に白いシルクハットにCBの文字のついたウマ娘――まさかの三冠ウマ娘、ミスターシービーが参戦した。存外ノリがよかったので、彼女とは美味い酒が飲めそうだ。

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