目指すはくそつよウマ娘 作:缶詰マン
日本ダービー。
それは、日本ウマ娘の頂点を決める1つのレースであり、三冠ウマ娘を目指すのなら避けられない1つの関門である。
そのターフにあなたが立っている――訳が無く、そもそもまだジュニア級のあなたは観客席からシンボリルドルフの走る姿を見ようとしている。
―そっれにしても、まーさかレースを見るための交通費が経費で落ちるとは思わんかったよ。お陰で唐揚げ棒が美味い事美味い事!……食うか?
「いや、その唐揚げ棒俺の金で買って食ってるだろ……よく言えるなそんな事」
―……人の金で食う焼肉は美味いって言葉あるじゃんアゼルバイジャン*1?それだよ。つーか沖野も1度わたくしの金でサイダー飲んでるから沖野が言えた事じゃないっての。自分の事棚に上げるとか、ファーきったねぇ大人ぁ。
「お前さんなぁ……そう言うから髪の毛の事で困るんだぞ」
―……………………ははは。わたくしの髪の事が、なんだって?
「いや……本当にごめん」
―わかればよろしい。……さーてさてさて、今回の日本ダービーはどうなるかねぇと。わたくしはルドルフ公に10ドルって所かな。
「おい、賭けをするな賭けを。まさかギャンブルじゃあるまいに」
―…………あー、ね。癖よ癖。なんかそんな感覚で見た方が面白いじゃん?
「いや、それはわからん」
賭けの事をわからないの一言で一蹴された事にショックを受けながら、あなたは真剣に考える。
――……確か、この辺りで改変されてなかったらシンボリルドルフが直線で抜いてって勝利して、それに憧れるトウカイテイオーがインタビュー中に話しかけるはずなんだよ。自分って言うイレギュラーがレース結果に影響していないと良いけども……。まあ、あのルドルフ公だし勝てる、だろ。自分なんてイレギュラーの1つや2つ、楽々っと乗り越えるでしょ。うん。更に20ドルをベットしとくか。
個人的には原作の進み通りに進んで欲しいと思っているあなた。ルドルフ公へと期待とドルを賭けている。
はてさて、思考を巡らせている内にそろそろレースの時間が近づいてきたようだ。さて、まだ面識こそないが、トウカイテイオーにでも会いに行くかと片手にココアシガレットを持ってその場を離れる。
―それじゃ、わたくしはより良い場所でも確保しにさすらいの旅に出ますよっと。そんじゃあの。
「おう、いってら」
……そして、あなたの姿が人混みの中に消えると同時に実況の声、そしてファンファーレが会場全体に響き渡る。
《今年もまたこの時がやって参りました!!日本ウマ娘の頂点を決める祭典・日本ダービー!!》
ワァアアッッ!!!
レース場中に湧き上がる歓声。その勢いに(うっわぁー、こりゃあだいぶぶち上がってますなぁ)と内心呟く。
観客達の歓声と共にターフの上に次々と入場してくるターフの上に次々と入場してくるウマ娘達。その中にはもちろんシンボリルドルフの姿。人気は勿論1番人気。あなたはもう何十ドルか賭けても良さそうだなと心のドルのベット数を更に増やす。
《ダービーを制した者こそが最強であると言うのはいつの時代でも変わりません!栄光を掴むため、今日もこの日の為に己の力を出し切るでしょう!!》
ウオオオッ!!!
ますます盛り上がる歓声。自分がもしこの所に立つ事になった時もこのような歓声に迎えられるのかと思うと、あなたは一瞬身震いをして、再び探し始める。
―あそこに居るのが……トウカイテイオーかなっと?……YES、正解だった。んじゃ、行きますか。
あなたは目標の幼少期トウカイテイオーを見つけた後、なるべく自然に見えるように少しずつ近づいて行く。
―はーい、少し通りますよー、少し開けて下さると幸いでーす。……Good。んま、これくらいでしょ。
その位置はトウカイテイオーの隣。近くに寄ったからと言って何かある訳でもないが、顔を見たくなったのだ。……あなたの自己満足であり、更に原作へとさらっと介入しているのであまり大きな改変はしたくないと言う気持ちとは反しているが、そもそも自分が入った事でどうせ何かしらは崩れているので大幅に変わらないならちょっとは大丈夫理論でやっていたりする。
「んしょ、んしょ……」
レース場の柵へと背伸びをして、日本ダービーを見ようとしている、まだ幼いウマ娘。
彼女の名前はトウカイテイオー。シンボリルドルフに憧れるウマ娘の内の1人。今はまだ憧れるだけではあるが、将来の戦績は誇れる物になっている。
それはさておき、背伸びをしても中々見えにくいレースの状態にやきもきしている。
「うぅ……見えにくいよぉ……」
「……どうしたのさ、お嬢さん。見えにくいのか?」
「え?え、えっとぉ……うん、見えにくくって……」
「へぇー……それじゃあ、膝に乗る?多分それよりかは見えやすいハズだからさ」
そう言って、隣にいたウマ娘はしゃがみ込んで立膝をし、自分の太ももをポンポンと叩く。
「いいの!?……えっと、ありがとうございます!!」
「Good、お礼が言えるのは良い事だぞ」
「えへへ!」
そんな会話の後、彼女は嬉しそうな表情を浮かべて、その太ももの上へと座る。少し高いが、決して登れないくらいの高さ。そして、どうにか座った後は先程まで見えなかったダービーを更に高い視点から見る事が出来た。
「あ!見えた!……えっとぉ…」
「別に敬語は要らないから、友達に話しかける感覚で大丈夫よ」
「え、あ……ありがと!」
「うん、そんな感じ」
ダービーがしっかりと見える嬉しさのまま観戦するトウカイテイオーだったが、膝に座らせてもらっているウマ娘の口に咥えている物が気になる。
「……おねえちゃん、それってなあに?」
「ん、口に咥えてるのか?これはココアシガレットで、菓子だけども……1本いるか?」
「ううん、だいじょうぶ。おかあさんが知らない人からおかしはもらっちゃいけないって言ってたから」
「それはかなり良い教育を受けてもらってますな。その教えは大切にした方が良いモンだ……さて、レースも近づいて来たら誰が勝つか、楽しみだなぁとでも」
「おねえちゃんが勝って欲しいのはだれなの?」
「そりゃあ勿論、シンボリルドルフただ1人よ」
「わあ、ボクとおなじ!」
「それはGoodだな……あ、ほれ、始まるみたいだぞ」
トウカイテイオーは目を輝かせながら、ダービーへと目を向けた。
《各ウマ娘が一斉にスタートを切りました!》
時刻は進み、第4コーナーから直線に入る地点。観客のボルテージも上がり、誰がダービーの勝利を飾るか今か今かと待ちわびている。
《最後の直線、シンボリルドルフは6番手!後方も一気にやってきた!》
「シンボリルドルフさーん!がんばれー!」
「速いな!勝てるぞこりゃあ!……お嬢さん、少し耳を塞ぐことを推奨するよ」
すると、彼女はトウカイテイオーを下ろした後に手で拡声器を作り、スゥと腹が膨れそうなまでに息を吸った後に周りよりも一回り大きい歓声を上げた。
「――やったれルドルフ公ゥーーーッ!最高峰の実力、見せたれェーーーッ!」
瞬間、それに呼応するかのようにシンボリルドルフが外から加速する。
《シンボリルドルフ、外から回った!残り200m!外からルドルフ!外からルドルフ!外からシンボリルドルフが来たァーっ!》
彼女は再び元の体勢へと戻ったが、トウカイテイオーはその事を忘れたのか、そのまま観戦をしていた。彼女はそれを知ると、同じように立って観戦し始めた。
《シンボリルドルフ、強いッ!並ぶこと無く抜き去って行く!これは強いッ!2番手3番手をちぎっていった!そのまま――》
『ゴールインッ!』
その実況の声がなった直後、一際大きい歓声がレース場を揺らした。
「うっっわぁ、強すぎでやんの……ははっ、改めて見るとほんっと…バケモンじゃないか、リアルチートかよほんっと……」
「わぁー……!ルドルフさん、すごぉい……!ボク、ルドルフさんの所に行ってくる!おねえちゃんも行くの?」
「んー……あー、わたくしは面倒なんでこの後帰るわ。それじゃあ、また会う時があれば」
「……うん、わかった!じゃあ、なまえだけおしえて!」
「……そう簡単に教えたら面白くなくなるだろうて」
その声にトウカイテイオーの耳は垂れる。
「…あーはいはいはいしゃーないなぁー!わかったよ、ヒントは出すから、それで勘弁。確かなぁ…今年中にとあるG1に出るんよ。そのG1を探しあてたらわたくしの名前が枠と番号と同時に出るはずだから、それが答えよ。だから、それで教える。それじゃあ、また会う日まで」
「……は、はい!さようなら!」
そういって、彼女――あなたは、人混みへと紛れていった。
「原作よりも少し差が大きいくらい……かな?あれは。対して影響なかったし良かった良かった――うん、美味しい」