鉄血のオルフェンズ 捧ぐは愛と忠義と憐憫と   作:フラペチーノ

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ガンダムUCEで150連してナイチンゲールが出なかったので初投稿です(全ギレ)。


原作前
0 オルフェンズと養父


エピローグ0

 

 厄祭戦という人類の未曾有の危機から三百年ほど経った世界で。P.D.325という年号には様々なことがあった。

 

 二年前の地球における大きな戦いから、治安維持組織であるギャラルホルンの内部腐敗が公となり、地球・宇宙問わず秩序が崩壊。これによって海賊や地球の各国がギャラルホルンへ叛意を示して多数の戦争行為が勃発していた。

 

 それらを抑えるのはギャラルホルンの役割だったが、如何せん戦線が広がりすぎた。そのせいで抑えられず火の海に消えた国やコロニーもあった。

 

 そんな混乱期の折、場所はヴィーンゴールヴ。海洋上に建設された巨大なメガフロートでギャラルホルンの地球本部が存在する、ギャラルホルンにとっては最重要拠点だ。

 

 なにせ今の時代の軍事力の象徴たるMSの生産施設に加え、ギャラルホルンを牛耳るセブンスターズの居住区も存在し、セブンスターズの会合もここで行われる。

 

 そんな施設の廊下を、一人の女性士官が走っていた。ジュリエッタ・ジュリス。ダークイエローの短い髪に青緑色の瞳をした、月外縁軌道統合艦隊アリアンロッドに所属するMSパイロットで、エースとして期待されて専用機も渡されるような人物だ。

 

 その彼女が、孤児でありながら軍人としての教養や礼儀作法は抑えているジュリエッタが緊急事態だという訳でもなく走る。他の上官などに見付かれば叱責されるだろう。

 

 それでも彼女は走る。嫌な胸騒ぎがしたからだ。

 

 ジュリエッタは幼い時からこの妙な勘には助けられてきた。士官学校時代もこの勘に従って行動して、悪い結果になったことはない。

 

 その勘が嫌な感覚を促してくるものの、急ぐなとも告げている。この相反する感覚が気持ち悪くて、結果として走っていた。

 

 目指す場所は彼女の所属するアリアンロッドの司令、セブンスターズの一角であるラスタル・エリオンの元。直属の上司の執務室だ。

 

 そこに近付くにつれ、彼女は知己の人物が近くにいることを感じ取る。彼女の家族とも言っていい男性で、同じくギャラルホルンでパイロットをしている歳が近いながらも少し上の男性だ。

 

 彼も孤児だったようで幼い時からお世話になってきた。彼女と同じくラスタルに拾われたものの、彼はアリアンロッドに所属しておらず経済圏の警戒をする部隊に所属していた。

 

 

 そんな彼が、ラスタルの執務室の方にいると感じ取る。違和感が増した。

 

 

 なにせ最近、木星圏で幅を利かせているテイワズという複合企業が内輪揉めを起こして大きな戦闘行為があったばかりだ。宇宙も混乱していて、ギャラルホルン内部もキナ臭い噂が多くなっている。

 

 ギャラルホルンはここ二年ほど、ずっと警戒態勢を敷いている。そんな折でも恩人であるラスタルの元に顔を出さなかった兄貴分が何故かラスタルを訪れている。

 

 

 心臓の鼓動が、早くなった。

 

 

 脳は行くなと告げる。心臓は逸って足を速める。相反する心身だったが、身体は結局執務室に辿り着いてしまった。

 

 中は防音で、声などは漏れていない。それでもジュリエッタは中にラスタルと彼がいると確信していた。

 

 重要な話をしているのかもしれないと、勘も合わさってインターホンを押す指が躊躇してしまう。

 

 

 その躊躇がいけなかった。

 

 

 ターン! という、軽いながらも明らかな銃声音が中から聞こえた。軍属であるジュリエッタが聞き間違えるはずがない。

 

 一瞬頭が真っ白になるも、叩き込まれた軍人としての習性から腰のハンドガンを取り出して撃鉄を上げていた。そしてインターホンを押すことなくテンキーで執務室のパスワードを入力していく。

 

 ジュリエッタはラスタルの腹心の部下として執務室へ中からの許可なく入るためのパスワードを教わっていた。それを素早く打ち込み、扉が横開きするのと同時に銃を前へ向けて突入する。

 

 そこで見たものは──。

 

 

「ら、ラスタル様……? 」

 

 

 左腹部から赤い血痕を露わにしている直属の上司、筋肉質でガタイの良い壮年の男性であるラスタル・エリオン。彼が執務用の机に背を持たれながら俯いている姿と。

 

 その凶行を実行したであろう、金髪に金の瞳。爬虫類を思わせる縦に長い瞳孔が特徴の、左手にハンドガンを持ってこちらを向く長身の男性。

 

 いつから一緒だったか、ジュリエッタは覚えていない。それでも一番古い記憶では彼と一緒にいた。そしてこれまたいつの間にかラスタルに拾われていて、学年こそ違うものの幼年学校にも一緒に通いもした。

 

 幼少期の大半を一緒に過ごした人だ。常識を、戦い方を、この直感のようなものを教えてくれた大恩ある人だ。兄と呼んでいた時期もある人だ。

 

 そんな人が、ラスタルに凶弾を放ったという事実が受け入れられなくて、構えていた銃を持つ手が震えていた。

 

「か、カイン……? あなたが、あなたがラスタル様を撃ったのですか⁉︎ 」

 

「状況判断が鈍いぞ、ジュリエッタ。オレ以外の誰が、ラスタル様を撃ったという状況証拠が残っている? 」

 

「マクギリス・ファリドの狗に成り下がったというのは本当のことだったか! 」

 

 そういう話があった。セブンスターズの一角、ファリド家の実質的当主マクギリス・ファリドは青年将校に声をかけ、一大勢力を作り上げていると。そのメンバーにカインも含まれていると。

 

 あくまで噂話。それを聞いたジュリエッタも馬鹿らしいと本気にしなかった。マクギリスが怪しいことと、カインのことを信じていたからこそそんな眉唾な話に乗るとは思っていなかった。

 

 カインへの信頼の裏返し、とでも言うべきだろう。

 

 だが、裏切られた。実際にラスタルは撃たれた。

 

 だから脳が警鐘を鳴らしてでも、右手の銃をカインへ向ける。

 

「や、めろ……ジュリエッタ……」

 

 ラスタルの呟くような声。

 

 それが搔き消えるように、執務室に一つの銃声が響いた。

 

 弾丸は撃たれたラスタルと同じように、首謀者の左脇腹に突き刺さる。

 

 それと同時に、ジュリエッタの瞳からは存在しないと思っていた液体が滝のように零れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラスタルとて、初めから家の力でアリアンロッドに所属していたわけではない。軍を指揮する者として、もちろん士官学校に入れられた。ラスタル自身はそのことを苦にしていなかった。

 

 家の仕来りに従うことも、この世のことを憂うことも、等しく特権階級のセブンスターズに産まれた自分の役目だと疑っていなかった。

 

 そんなラスタルはギャラルホルンの士官学校でも優秀な成績を残してこのまま何もなければアリアンロッドに所属できるだろうというエリート街道を突き進んできた。

 

 問題があるとすれば。

 

「ラスタル様。周辺住民への聞き込み、完了しました。不審な漂流物などは確認できなかったということです」

 

「まだ自分は一介の士官学生です。セブンスターズの跡取りだとしても、そんな贔屓をしないでいただきたい」

 

「そんな訳には参りません。御身に何かあれば我々の首が飛びます」

 

(腐敗極まれり、だな)

 

 この、御曹司に対するような態度だけは気に食わなかった。セブンスターズの跡取りは誰も彼も士官学校はおろか、ギャラルホルンで配属になってもこのような扱いを受けることは事前に聞いていた。

 

 それでもこうやって諛う様は、ラスタルにとって不快だった。自身ではなく家でしか判断されていないように見えて。

 

 どんな功績を立てても、セブンスターズだから当たり前。さすがはエリオン家の当主候補。そんな言葉ばかりだ。

 

 今回ラスタルを含む士官学生がギャラルホルンの本隊と一緒になって行なっている任務は宇宙から地球に落ちたスペースデブリと思われる物体がこの近辺の海に落ちたということで、その未確認物体の調査が任務内容だ。

 

 デブリが地球に落ちてくることは珍しい。だが、ないことはない。大概が地球の大気圏内で燃え尽きるのだが、今回のように質量があればこうして地球に落下してくることもあった。

 

 これもひとえに、地球外縁軌道統制統合艦隊のパトロール不足という、これまた腐敗の温床が表に出た形だ。

 

 ラスタルは心内で同じセブンスターズの一つ、イシュー家へ舌打ちを送る。

 

 ギャラルホルン本隊に所属する人間までもただの士官学生に謙る様が気に入らず、全員がそうなのかと団体行動をしている全員を見回そうと思い、後ろを振り返った。何故か士官学生のラスタルが先頭でこの集団を率いているのだ。

 

 そうして振り返った先で、ラスタルは驚愕の光景を目に映す。

 

 まだ年端のいかない、四歳くらいの子供が、ガラスの破片らしきものを右手に持ってこちらに駆け寄っていた。

 

 しかもその鋭い視線から、確実にこちらを目標に凶器を手にしているとわかった。

 

「危ない! 」

 

 ラスタルが叫ぶが、誰もがその声に反応できなかった。ギャラルホルンの制服とシンボルを掲げているのだから、市街地で、しかも地球で襲われるなんて想定もしていなかったのだろう。

 

 場所も場所で、ギャラルホルンのことを疎んでいる経済圏の中でも、ここはギャラルホルンの影響力が強く出た場所だったために油断をしていたのだろう。

 

 駆け寄ってきた金髪に金の瞳の少年はある一人の隊員が背負うバックパックを切り裂き、その中に入っている救護パックに収納されたある治療薬の入った注射だけを奪い、すぐさま反転。

 

 あまりの鮮やかな手際と、何がされたのか理解していない練度の低さ。更にはバックパックこそ引き裂かれたものの、人的被害が一切なかったことで誰も動け出せなかった。

 

 だから、一番遠かったラスタルが全ての状況を把握して動き出せる心身をしていたので走り出す。

 

「ラスタル様⁉︎ 」

 

 後ろの制止の声を無視して、少年を追いかける。少年は人混みを器用に小さな身体を駆使してスイスイと抜けて行き、路地裏へ入っていった。

 

 ラスタルはここへ実地研修に来ていたが、全く土地勘のない場所だ。裏路地に入って逃げ込まれたら見逃してしまう可能性が高かった。

 

 ラスタルが走ることで、ギャラルホルンの軍服が目に入った者はすぐに退いて道を開けていく。こんな時にギャラルホルンの権力のありがたさを実感したくないラスタルだった。

 

 同じ路地に入る。そして奥へ向かってすぐ。四歳児くらいの足ではそこまで遠くへ行っていないだろうと思っていたが、その予想は正しく路地に入ってすぐの所に少年はいた。

 

 問題はその少年の他にもう一人、子供がいたこと。

 

 その子供はもっと年齢が低く、二歳くらいだった。ダークイエローの髪をした子供はぐったりしているのか、目を開けていない。その子供を布の上で横にしたまま腕を捲って、今にも少年が注射を刺そうとしている所だった。

 

「おい、ボウズ⁉︎ 」

 

 ラスタルが止める前に、少年は注射を刺した。よく見れば注射キットに入っていた脱脂綿とアルコールで刺す部分を消毒していたようだ。

 

 注射を刺されても子供は目を覚まさず、少年は薬を注入し終えると即座にラスタルの方を向いた。

 

 爬虫類を彷彿とさせる縦長の瞳孔。その強い意志を思わせる瞳に、ラスタルは思わずゴクリと喉を震わせた。

 

 ギャラルホルンのことを知ってか知らずか。それでも窃盗を成功させ、医療行為をやってのけた少年のことが、とても気になった。

 

 ラスタルは声をかける前に、注射器に残った薬の液体の残量を見て、子供に処置すべき適量を注入していたことを知る。しかも注射キットの型番からこの薬がこの地方で流行っている風土病に対するワクチンだと知った。

 

 ラスタルもこの地方に派遣される前に、風土病の兆候が見えたらこれを打つようにと研修で言われていた。そのことから彼が何をしたかったのか理解する。

 

 少年は子供を抱き抱えてラスタルを警戒していたが、逃げられないとわかってか、その場から動かない。

 

 子供の方を見れば、風土病の初期症状である赤い蕁麻疹が肌に現れていた。少年の方には出ていなかった。

 

「ボウズ。オレと話さないか? 」

 

「……金はない。だからうばった」

 

「見ればわかる。お前さんら、孤児だろう? んで、発症してたから注射したと。素人がやっていい医療行為じゃないんだがな……。やらなきゃ死ぬかどうかの博打だったんだろうが」

 

 ラスタルはおそらく、この街の診療所かどこかで見たことを真似したのだろうと思った。この治療薬は独特の紫色をしているために他の薬と比べて判別しやすい。

 

 しかし、ギャラルホルンの人間は医者ではない。治療薬を持っていることを隊員であるラスタル達なら知っているが、こんな子供が知っていたことは不自然だ。情報が漏れていたとしても、どこでこの少年が知ったのか。

 

 そしてあまりの手際の良さにも驚く。少年はバックパックを切り裂いて物色することなく、この注射キットだけを奪って即座に離脱した。わかりやすい紫色の液体とはいえ、これがどこにあるのかわかっていたかのような勘の良さ。

 

 あまりにも、ラスタルにとって興味深い少年だった。

 

「で、そっちの子は弟か? 」

 

「違う。同じ船にいただけ。それと女の子」

 

「ん。それは失敬。……船から逃げて来たのか? 」

 

「そう。……何も知らないんだな。アンタら大人がこの地球に捨てたくせに」

 

「捨てた? 地球に? 」

 

 ラスタルはそれだけの情報で、この少年が言っていた船が海上で使うものではなく宇宙船だとわかった。そして二人の格好がこの地域や地球の物ではないと、アリアンロッドを率いる家柄だからこそ看破した。彼らの服はコロニーで作られるような物だと。

 

 阿頼耶識などの違法手術はされていないようだが、彼らがヒューマンデブリだと知る。そうでもないと地球に捨てられることはない。

 

 そしてつい最近、地球に漂着したデブリがあったことを思い出した。宇宙産の服を着た子供。孤児にしてはあまり汚れていない服装。この地域独特の言語の訛りもなく、むしろ宇宙訛りを思わせる発音。

 

 彼らの居場所が地球にないことを知ったのと同時に、少年の能力からラスタルは手元に欲しいと思った。

 

「少年。二人を私が引き取ろう。地球で生きていくには、それしかない」

 

「……アンタは、不思議と変な感じがしない。他の人よりはマシだ」

 

「それは嬉しいな。その注射キットのことも私がどうにか揉み消そう。君の名前は?」

 

「カイン。ただのカイン」

 

「私はラスタル・エリオン。君達の養父といったところか」

 

 これが三人の馴れ初め。

 

 もう一つのオルフェンズの、物語。

 




150連して出たのがナラティブガンダムの被り二枚だけってどうよ?
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