鉄血のオルフェンズ 捧ぐは愛と忠義と憐憫と   作:フラペチーノ

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ガンダムUCEでケンプファーを設計図交換したので初投稿です。

※独自設定あります。



21 正義と正当性

 三日月は射出されたバルバトスに乗り込み、明弘達の援護に入り込む。ガンダム・キマリスに乗ったガエリオも止めようと思ったが、明弘の乗るガンダム・グシオンリベイクに邪魔をされて防ぐことができなかった。

 

 明弘とシノもクーデリア達を乗せたランチがイサリビに入るのでできるだけ二機のMSを引き離せと言われていたのでバルバトスという惹きつけ役もいたことで成功。クーデリア達を降ろしたランチは即座に戦闘域を離脱していた。

 

「明弘、シノ。お待たせ」

 

「待っちゃいねえよ。こいつの試運転がしっかりできたところだ」

 

「俺の流星号の初陣の時間、もっとくれても良かったんだぜ? 」

 

 三日月の言葉に軽く返す明弘とシノ。

 

 紫色のシュヴァルべの相手はシノに任せて、三日月と明弘がガンダム・キマリスに突っ込む。

 

 グシオンの射撃を避けつつ、バルバトスの太刀による袈裟斬りをキマリスが持っていたランスで受け止めた。どちらも強固に作られているため壊れることはなかったが、ガンダム・フレーム同士の膂力による鍔迫り合いはどちらのコックピットも揺らした。

 

「くっ! まさかお前達がガンダム・フレームを二機も運用しているとは……! 」

 

「その声、ガリガリ? そっちの紫のに乗ってるんじゃないんだ」

 

「俺はっ! ガエリオ・ボードウィンだ! 」

 

 接触回線で相手の正体がわかった三日月は、むしろシュヴァルべに乗っている人物がわからなかった。マクギリスには先程会い、紅くないからカインではないと察して。

 

 その二人じゃなければ誰でもいいかと無視した。かなりシノの乗るグレイズに執心しているようだが、三日月には関係ないことだ。

 

 ガエリオは二対一ながら、ギャラルホルンできちんと整備されたガンダム・フレームであることと、カイン同様の特別性のコックピットのおかげでギリギリ渡り合えていた。避けようと考えた時にはコックピットで受けた脳波と機体のアポジモーターが反応してバックアップに徹している明弘の射撃を避けていたのだ。

 

「やりづらいな……」

 

 三日月も攻め込もうと思っていたのだが、戦闘範囲がズレ込んでアリアンロッドの機体も援護射撃をしてきたのだ。

 

 アリアンロッドは精鋭というだけあって、射撃や回避行動の質が高かった。数の優的状況がひっくり返ったこともあって、三機全員が多対一を強いられていた。

 

 全員阿頼耶識のコックピットだったため致命的な一撃はもらっていなかったが、それだっていつまで続くか。

 

 三日月が一番機体に慣れ、MS戦闘にも秀でていたのでアリアンロッドのグレイズを潰しつつガエリオと渡り合っていたが、不意に一発のバズーカが胸部装甲に直撃した。

 

 テイワズの改造によって装甲が増していたので大きな被害はなかったが、コックピットは大きく揺れた。この戦闘で初めてのクリーンヒットだ。

 

 ラフタに負けて、それからシミュレーターでかなり訓練を積んできた。バルバトスの性能も上げてもらい、ブルワーズとの戦いでは全く損傷しなかった。

 

 だというのに、見事に一撃を喰らったのだ。三日月はバズーカを放った一機の、通常のカラーリングのグレイズを睨みつける。

 

「なろっ……! 」

 

「ボードウィン特務三佐。我々の作戦域に侵入しています。即座にその三機を追い出すよう、命令を受けました。我々が援護します」

 

「ジュリエッタ准尉か! こりゃあ後でエリオン公に大目玉だな……! 」

 

 ジュリエッタ含むラスタル選抜部隊、参戦。

 

────

 

 クーデリアがイサリビに着いてすぐ、フミタンにアリアドネを繋いで木星のマクマードに連絡を取るようにお願いをした。その後はこの一帯にクーデリアの言葉を伝えられるようにこの辺りの通信状況のジャック。

 

 クーデリアは変装していたので、マクマードと話すために着替えた後、マクマードと映像付きで通話をしていた。

 

「クーデリアの嬢ちゃんじゃねえか。何か用か? 」

 

「マクマードさん。テイワズのトップであるあなたにお願いがあります。アフリカンユニオンへ、労働者の声を聞くように圧力をかけていただけませんか? 」

 

「圧力とは穏便じゃねえ。それにオレは木星圏では名が知れていても、地球の四大経済圏の一つに顔が効くとも? 」

 

「ヘリウムガス。それが木星圏が独立できていて、あなたが恐れられている理由です」

 

「ほう……」

 

 クーデリアが断言したことで、マクマードは髭を摩りながらニヤリと笑う。

 

 ヘリウムガス。様々な推進剤に使われている、木星で採掘できる天然ガスだ。

 

 MSの推進剤はもちろん、戦艦や輸送艦、更にはコロニーを回転させているのもこのヘリウムガスによるものだ。

 

 木星以外でも生成することができるようになったが、天然物には効率が到底及ばない。輸送費を考えても、生成する時間とお金を考えれば木星から取り寄せる方が遥か早く、安く済む代物だ。

 

 これの輸送もあって、タービンズは発展した。安全な独自航路を切り開いたとなれば、マクマードも名瀬に一目置いているわけだ。

 

 テイワズには他にも以前から輸送部門はあったが、タービンズほどの確実性はなかった。タービンズの武力と、宇宙航行技術、それに彼らの経験に任せた勘も合わさってタービンズは一躍テイワズの輸送部門トップに躍り出た。

 

 アフリカンユニオンを含む経済圏は、コロニーの運営のために木星から数多のヘリウムガスを仕入れている。限られた領土以外の土地を求めるなら、火星のようなテラフォーミングをした惑星か、コロニーしかないのだ。

 

 そして今や、各経済圏はコロニーを手放せない。それだけコロニーの生み出す利益は莫大になっていた。

 

 だからコロニーを動かすために必要なヘリウムガスを取り仕切っている木星のドンの言葉に、経済圏──特にコロニー事業に出資しているような者は逆らえない。

 

 それをクーデリアはお願いしているのだ。

 

「まあ、そうだな。オレの言葉があればアフリカンユニオンは止まるかもしれない。だが、嬢ちゃんにそこまでする価値があると? 」

 

「火星のハーフメタル事業。これの正式な参入権では不足していますか? ノブリス・ゴルドンが脱落した今、圏外圏であなたを邪魔できる者はいません」

 

 ハーフメタルはエイハブ・ウェーブによる電波障害を防ぐという特性があり、エイハブ・ウェーブの影響下における電子機器の保護には必須の金属だ。

 

 通常の電子機器はもちろん、MSにも使われるためにかなり優良な資源である。

 

 これの発掘場への参入権は、木星の人間であるマクマードでは本来得られないものだ。

 

 今回の見返りに、となればクーデリアが最善を尽くすつもりだった。

 

「まだ正式に決まっていない事柄で、オレを動かそうと? 」

 

「それだけの見返りがある取引だと考えています」

 

 クーデリアが目を逸らさずに断言する。

 

 齢十六の少女が、圏外圏で最も恐れる男に堂々と弁舌を交わしているのだ。

 

 木星に来た時よりも成長したと、マクマードは感慨深くなる。

 

「ドルトへ武器を送る依頼を取り付けたのはオレだぞ? 」

 

「ノブリスへ脅しをかけてハーフメタル事業に割り込むため、そして私を見極めるためでしょう? 」

 

「そこまでわかってるのか。ノブリスが倒れたのはどこかから情報を知ったとしても……。及第点だ。アフリカンユニオンに話を通してやろう。生き残って、地球でコトを成し遂げろ」

 

「はい、必ず」

 

 マクマードは最後に笑顔を見せて、通信を切る。

 

 通信が切れたことでクーデリアはひと息ついたが、まだここは山の中腹についただけ。頂上へ登りきって降りきるまでまだ関門は残っている。

 

 その関門を突破するために、水分を口に含んだ後ブリッジへ向かった。

 

 ブリッジに着いた頃、三日月達が限界に近いと知り、即座にこの圏内に放送を流す。

 

「私の名前はクーデリア・藍那・バーンスタイン。私の話を聞いてください──」

 

────

 

 三日月達は奮戦した。イサリビも駆けつけたことでどうにか数的不利をどうにかできていたが、損傷は激しい。キマリスの加速力はこの場にいるどの機体よりも速く、スピードを活かした連撃でグシオンリベイクの隠し腕の一本を破損させていた。

 

 シノも初陣ということもあって健闘した方だが、弾丸は使い切り、一番損傷が激しく甲板の上で身動きが取れなくなっていた。

 

 バルバトスはせっかく追加装甲を施したのに、その装甲はガエリオとジュリエッタによって徹底的に剥がされていた。そのせいで元の細身のフレームが剥き出しになっていた。見た目だけなら一番酷いかもしれない。

 

 自慢の太刀も、途中からポッキリと折れていた。

 

 相手のグレイズを六機ほど落として、アインのシュヴァルべも半壊に追い込み、それでもまだ死人が出ていないのだから大金星と言っていい戦果ではある。

 

 だが、ここまでだ。

 

 デモの鎮圧をほぼ終えたのか、やってくるグレイズの数が増えてイサリビは包囲されていた。銃口は向けられているが、一応相手がデモの関係者ではないためにトリガーを引いていないだけの状況。

 

 一斉射をされれば、すぐに沈没するほどの戦力差ができていた。

 

 その状況になって、キマリスが近付いてくる。動ける三日月と明弘がキマリスへ注意を向けた。

 

「大人しく停船しろ! 抵抗をするな! こちらの要求としては貴様らが接収したグレイズの返却のみだ! その後接収した経緯を聴取するが、内容次第では監査局としてはこれ以上の追求をしない! 」

 

「ハァ⁉︎ 俺の流星号が目的なのかよ! 」

 

「貴様の物ではない! クランク二尉の機体だ‼︎ 」

 

 ガエリオの通達にシノが思わず返したら、アインに逆ギレをされた。

 

 だが、鉄華団としてはこのグレイズはクランクが仕掛けて来た決闘とやらの正当な戦利品なのだ。改造などはしてしまっているが、返す謂れはない。

 

 クランクもクーデリアの身柄を要求してきた。その決闘の勝者は三日月だ。返還要求が正しくない行為なのだが、それはここで言っても仕方がないだろう。

 

 あと。彼は名誉の戦死をしたために、二階級特進して三佐になっている。

 

 捕まるわけにはいかないと三日月と明弘がフットペダルを踏もうとした瞬間に、その声が戦場に響く。

 

「私の名前はクーデリア・藍那・バーンスタイン。私の話を聞いてください──」

 

「クーデリア? 」

 

 戦域ほぼ全ての通信がジャックされたことに、アリアンロッドといえども困惑した。しかもアリアンロッドが警戒している「革命の乙女」を名乗る人物だ。

 

 生きている通信網を使って、ラスタルは全軍に動くなと告げる。スキップジャック級のブリッジでラスタルは楽しそうに笑みを浮かべた。

 

 最低限の力はあるようだと。指導者としてのライバルの誕生に話を聞く姿勢を作る。

 

「この宇宙の片隅、ドルトコロニーで、戦火が広がっています。私は生まれ育った火星のために行動をしていますが、ここにも、火星のように苦しむ人々がいました。彼らは環境を変えようと、デモという手段を選びました。武器を手に取り、訴えかけたのです。

 

 それしか手段がなかったのでしょう。ストライキや、弁論による抗議ではなく武器を取るという行為が正しいか、私はこのドルトについてあまりにも無知なために判断がつきません。ですが、鎮圧の名目上、今ドルトではギャラルホルンによる虐殺が行われています。

 

 徹底的な武力による鎮圧。過剰とも思える戦力の稼働。そして、今ドルトを囲うアリアンロッドの大戦力。この不自然な周到さについては触れません。

 

 ですが、これだけは確認したいのです。あなた方ギャラルホルンは正義を守る存在ではないのですか? この虐殺が、人々を捕らえるのではなく、徹底的に潰すことが正義なのですか? ならば、私はそんな正義は認められない。

 

 あなた方が正義の番人だというのなら。もっと穏便な手段が取れたはずです。ここまで血が流れる結末になるはずがなかった。

 

 そして、私の乗る船もあなた方に包囲される理由はないはず。私達はギャラルホルンに襲われる正当性など()()()()()()()()()()()

 

 もし私の発言が間違っているとするならば、構いません。今すぐ私の船を落としなさい! 」

 

 クーデリアの発言に敵味方関係なく慌て出す。

 

 一部の敵はクーデリアを襲う理由がないはずがないと憤るが、火星の出来事は火星支部が逸って問題行動を起こしただけ。今回襲われているのはガエリオの独断によるもの。

 

 グレイズだって決闘の戦利品で返却義務などあるはずもなく。

 

 ギャラルホルンが鉄華団の行動で死者が出ていたとしても、それは正当防衛で罷り通ってしまうことばかり。

 

 味方は本当に撃ってきたらどうするという慌て方を各所でしていた。

 

 決定権を持つ、この作戦の総司令ラスタルは指示を全軍に出す。

 

「これ以上の制圧行動は、手厚い保護をするように。証言者も残す必要がある。そこの強襲装甲艦は見逃せ。我々の作戦に関係のない艦だ。ガエリオ特務三佐の部隊も下がらせるように。これ以上の追撃はなしだ」

 

「よろしいのですか? 」

 

「アフリカンユニオンからもこれ以上は醜態になるから止めるようにと通達が来ているからな。これ以上労働者が死んではドルトの運営にも差し障る。今回の行動が虐殺と捉われないように、抵抗されたから撃ち返しただけで、きちんと捕縛した者も多いと彼女に見せなければ世界が納得せんよ」

 

 ラスタルは副官にそう伝える。

 

 イサリビは艦隊の間を抜けていく。それを誰もがただ見送るだけ。

 

「……及第点でしかなかったな。自分の正当性の断言でプラス。労働者の武力行使が最初だと知らなかったのか、隠したのか。とにかくこれを先程の放送で流さなかったのはマイナス。真実だけで切り抜けず、ブラフで切り抜ける覚悟にプラス。私という相手を知っていたようだが、ああ言えば撃ち落とさないと信用()()()()()()ことがマイナス。やはり及第点が精々。地球に降りたら更なる羽ばたきを見せるかな? 『革命の乙女』よ」

 

 ラスタルはシビアに今回のクーデリアの発言を評価していた。まだ少女の年齢である彼女がやったという事実は賞賛したが、それ以上褒めたりはしない。

 

 作戦の後始末をさせている間に、とある情報が入ってきてそれを見て大爆笑をするラスタル。一緒にいたジュリエッタが首を傾げた。

 

「ラスタル様。どうかなされたのですか? 」

 

「いや、何。これを見るといい、ジュリエッタ」

 

 ジュリエッタは渡されたタブレットを見ると、そこにはマクギリス・ファリドとイオク・クジャンのMSによる決闘の日時を知らせる通達が書いてあった。

 

 ジュリエッタはどちらが仕掛けたのかわかって、眉を顰めた。

 

「……またですか、イオク様の暴走は。マクギリス特務三佐に勝てると思っているのでしょうか? 」

 

「勝てるわけがないな。イオクの実力は並以下だ。マクギリスの実力はカインに匹敵する」

 

 ラスタルは断言をする。

 

 しかも今はカインがマクギリスの影武者をしているとラスタルは知っていたので、余計勝てるわけがないと確信していた。

 

 ラスタルの秘蔵っ子に、御曹司が勝てるわけがないのだ。

 

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