鉄血のオルフェンズ 捧ぐは愛と忠義と憐憫と   作:フラペチーノ

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ガンダムUCEでマツナガソロクエストクリアしたので初投稿です(満面の笑み)。

え、ハード?知らない子ですね……。ソロモンの悪夢の称号なんてなかったんや。


2 契機

 カインが六歳になって。予定通りカインは幼年学校に入学した。普通教育の学校ではなく、ギャラルホルンが運営する士官学校の下部学校だ。

 

 普通教育学校と同じように学年に応じた勉学もさせるが、大きな違いは運動量と、軍用知識を学ばせることだろう。

 

 この幼年学校に通う者は、ほとんどが親がギャラルホルンの関係者である子供だ。軍人から研究者に技術者、もしくは事務方の者も入れたりする。

 

 セブンスターズの子息も、将来を見越して入る者もいるがそれは七家ごとの教育方針にもよる。ファリド家はセブンスターズでも序列が高いが、特殊な事情で子供を幼年学校に通わせていなかった。

 

 セブンスターズ第一席であるイシュー家は子供が女児であることも関係し、ある程度普通教育をしてから編入させる手筈を整えていた。ボードウィン家は年齢に則して長男を幼年学校に入れていた。

 

 ギャラルホルンの上の者も通えば、もちろん下の者も通う。学校とは社会の縮図だ。ギャラルホルンでは地球出身者が優遇される。だがもちろん地球には宇宙出身者の子供もいる。その子供達もこの学校に通うことになる。

 

 そしてどこ出身なのかわからない──カインのような孤児院出身の者もいる。それも数多く。

 

 なぜ孤児院出身の者が多いのか。

 

 軍人は、死ぬ。ギャラルホルンが治安維持組織として睨みを利かせているとしても、戦闘行為はどこでも起きる上に死者は確実に出る。確実に矢面で死ぬのは軍人だ。

 

 そんな軍人達の上層部は、自分が死ぬことを恐れた。では自分が死なないためにはどうすればいいか。

 

 後方で踏ん反り返っていられるほど、矢面に立つ使い捨ての駒がいればいい。

 

 こう考えた結果、孤児院出身者や地球出身ではない者を広く受け入れていた。

 

 孤児院出身者や親が軍人である者には幼年学校及び士官学校にかかる費用を全てギャラルホルンが補う。するとバカな親や経営に苦しい孤児院の運営者が喜んで駒を送る。

 

 初期投資で安全な盾を用意し、軍人になったら地球出身じゃないとして昇進をさせずに経費を削減し、困窮を作り出す。そしてできた子供は親の生活が厳しいか戦死して行き場をなくす。

 

 となると、無償で通える場所へ送り出すしかなくなる。無償の教育機関など地球と宇宙を見渡してもギャラルホルンの軍学校しかない。

 

 選択肢がないように世界を整える。三百年もあれば造作もないことだった。

 

 こうして負のスパイラルを産み出して、長期的に壁を補充していた。

 

 これがギャラルホルンの腐敗の一部。こんなのは序の口だった。

 

 こんな経緯もあって、カインが名も知らぬ孤児院から送り込まれたことになっても誰も気にしなかったりする。

 

 まあ、問題は起こってしまうのだが。

 

「カインが飛び級? 」

 

「はい。いささか優秀過ぎまして……。教師陣は一回生にしておくことは勿体無いとして特例として三回生にすると」

 

「……入学前に詰め込み過ぎたか? 」

 

 幼年学校にいるエリオン家の手の者から報告を受けたラスタルはもらった幼年学校の成績表を端末で確認する。

 

 座学は文句なしの成績。とはいえ一・二回生の座学なんて簡単な文字の読み書きと四則計算の一部だ。MSのシミュレーターに乗せる関係で最低限のことを教えていたらそれで充分だったらしい。

 

 運動能力も、申し分なし。四歳の時点でギャラルホルンの軍人から意表を突いて盗みを成功させたのだ。幼年学校の低学年程度の基準は、容易に跳び抜けているようだ。

 

 三回生ともなると、銃の組み立てなど軍人としての実践的な講義も増えてくる。バリケードの作成、塹壕の作り方、応急手当ての方法などなど。それを一回生の年齢の子供にやらせるのはどうかという話もあるが、飛び級については前例があるので見過ごされるだろう。

 

 もっと大きな問題は。

 

「ボードウィン家の長子と同じ学年になってしまうのか」

 

「イシュー家の長女も、四回生から編入予定です」

 

「……ファリド家の養子も、同い年だったな」

 

 セブンスターズの子息が同じ学年に揃っているというのは頭を抱えたくなる事案だ。子宝は恵まれるものなので学年についてはとやかく言いたくなかったが、ファリド家の養子はどうともなったはずだ。

 

 そしてカインも、良い感じに年齢がズレているので秘密兵器たり得ると考えていたのに、まさか優秀過ぎて思惑からズレてしまうとは思っていなかった。

 

 優秀だということは嬉しいことなのだが、この飛び級は誤算だ。これからのことでどう転ぶかわからなくなった。

 

「幼年学校のことで私は口を出せん。飛び級はこのまま見送るしかないだろう。……他家へ、探りを入れておくか」

 

「私も引き続き、カインのことを見守りつつ情報を仕入れてみようと思います。特にファリド家が最近は強引に権力を集めているという話もあります」

 

「ああ、頼む。……カインには手抜きもさせるか。これ以上目立って私との関わりが露見しても困る。その辺り、学校では大丈夫か? 」

 

「はい。ラスタル様のことはもちろん、エリオン家のことも話題に上げることはほぼないです。セブンスターズ絡みの雑談で時たま、くらいです」

 

「なら良い。引き続き彼の教育を頼むぞ」

 

 ファリド家の権力拡大に向けた噂はセブンスターズだけではなく、表社会でも噂され始めているほどに動き出している。政界に対する根回しや、セブンスターズの子息の情報を集めるなど、イズナリオ・ファリドは随分と野心家な一面があるようだ。

 

 カインは何も、海賊やら何やらへ対する兵士として育てているわけではない。どちらかというと引いてはギャラルホルンのため、その敵対する全ての者に対する抑止力(カウンター)として育てているのだ。

 

 その相手となる者はギャラルホルンそのものや、セブンスターズすらも想定している。むしろセブンスターズは一番の干渉対象だ。

 

 そうなると特にセブンスターズについてはラスタルとカインの関係を知られるわけにはいかない。

 

 ラスタルは必要ともあれば、セブンスターズすら切り捨てる覚悟がある。

 

 ギャラルホルンが腐り落ちていく前に、全てを浄化するための希望()なのだ。カインという存在は。

 

──

 

 ラスタルはセブンスターズの会合に父と参加するために、ヴィーンゴールヴを訪れていた。あと数年もすればラスタルは父からエリオン家の当主の座を受け継ぐことになった。

 

 それも士官学校を卒業してアリアンロッドに入隊し、この二年で犯罪者の検挙などで成果を挙げたからだ。

 

 だが、正式に当主になったわけではないラスタルでは会合に参加することはできない。だからあたりの散策をしつつ情報収集を行うことにした。

 

 中庭を一人で歩いていると、ベンチに一人で座って本を読んでいるマクギリス・ファリドを見付けた。彼の境遇を知っているからこそ、カインやジュリエッタという引き取った子逹がマクギリスの立場になっていたらと考えると、同情心が浮かんできた。

 

 そのため、ラスタルはマクギリスに目線を合わせるために片膝を地面につけてマクギリスに質問をしてみた。

 

「マクギリス・ファリド君。初めまして。こんな所に一人だと暇だろう? 何か欲しいものがあるなら言ってみると良い。可能なら用意しよう」

 

 この質問がいけなかった。子供だからと、おそらく菓子の一つでも用意すれば良いだろうとたかを括ってしまった。

 

 ラスタルが声を掛けたことで、マクギリスの顔がようやく本から離れる。本からズレたその瞳は冷たく光がなく、だが野心を覗かせる強い目だった。

 

 そんな瞳を、この齢の子がするのかと、ラスタルは背筋が凍る思いをした。

 

「バエル」

 

 マクギリスの返答はそれだけ。だが、それが全てだった。

 

 それ以上に欲しい物などないと断言し、欲している理由も察してしまった。

 

 ガンダム・バエル。ギャラルホルンの英雄アグニカ・カイエルと共に世界を救済した悪魔の機体。

 

 バエルを動かした者にはアグニカを継ぐ者としてギャラルホルンの全権が委譲されるという眉唾話もセブンスターズには残っている。

 

 たったそれだけの一言なのに、ラスタルはマクギリスを気に入ってしまった。ある意味同族で、一番に警戒しなければならない相手だと。

 

 子供の要求に、ラスタルは大人の対応をする。

 

「すまない。それはどこにあるのか、知らないんだ」

 

 表向き、この返しは正しい。バエルの所在地を知っているのはセブンスターズの当主と、整備に関係する技術者だけ。それ以外にはどれだけギャラルホルンで階級が高かろうが知ることはできない。

 

 ラスタルは既に当主への引き継ぎが始まっているので知っていたが、まだ引き継ぎした内容は話す訳にはいかなかったので誤魔化した。

 

 マクギリスはラスタルのことを知らないのか、本当にバエルにしか興味がないのか、ラスタルが情報源にならないと知ると目線は本に戻っていった。本のタイトルは「アグニカ・カイエル伝説」というギャラルホルン創設に関わる伝記だ。

 

 この達観している様。そして立場からラスタルはマクギリスを警戒するようになる。ギャラルホルンにとって希望の灯火にもなれば、全てを喰らう破滅の(あぎと)にもなりかねない。

 

 現状どちらに転ぶかもわからなかったので、注意深く観察することにする。

 

 マクギリスは本当にラスタルから興味を失ったようなので、彼は足早にこの場を去った。そしてすぐに父に報告をして宇宙に戻る前に地球でやることがあると伝える。

 

 向かった場所は、とある懇意にしている孤児院。そこの一室を借りて、切り札と密会を行う。

 

「カイン。私の部下として命じる。マクギリス・ファリドを幼年学校からこの先、監視しろ。私との関係を漏らさず、彼の部下に入り込めるように信頼関係を築け」

 

「今まで通りのことに加えて、マクギリス・ファリドの監視が追加、ということでしょうか? 」

 

「そうだ。感じたことを全て報告しろ。彼はすぐにでも幼年学校に編入してくる手筈になっている。……ジュリエッタにも伝えることはできず、辛い孤独を強いることになる。……すまない」

 

 ラスタルとて、命令を出すのはもっと後のことだと思っていた。せめて士官学校に通ってから、どこかの家へ探りを入れることを想定していたが、イズナリオ・ファリドが手にした寵児は獅子の類だ。

 

 決して愛を語り合うような、生易しい関係ではないとヴィーンゴールヴを任されている男は気付いているかどうか。

 

 計画がかなり変更されたために、ラスタルは誠意を持ってカインに頭を下げる。いくらニュータイプとはいえ、聡い子であるとはいえ、まだ子供。

 

 そんな子供に、スパイをやらせるのだ。

 

 だがカインは、そんなラスタルの目線より低くなるように片膝をついて胸に手を当てた。騎士が忠誠を誓う絵画のように。

 

「ラスタル様。オレは、あなたに拾われて、嬉しかった。あなたのためにできることで恩返しができるのなら、これ以上の喜びはありません」

 

「……この孤児院はエリオン家と繋がっていると知られている。もう戻ってこられないぞ? 」

 

「はい」

 

「誰にも口を開いてはダメだ。ジュリエッタに、例の力で伝えるのも禁止する」

 

「はい。使いません」

 

「時には私と敵対する。ジュリエッタとも、銃を向け合わなければならなくなるかもしれない」

 

 その最後の確認だけは、即答できなかったカイン。

 

 その場面を、想像したのだろう。それでも、彼の忠義は変わらなかった。

 

「その時は、オレが撃たれます。ラスタル様はともかく、ジュリエッタには伝えなければわからないです」

 

「ジュリエッタはそうだろうな……。──カイン。お前の覚悟は受け取った。その忠義、嬉しく思う」

 

 それは誰も知らない、孤児院での忠誠の儀。見ているのは窓の外に浮かぶ宇宙(ソラ)の綺羅星だけ。

 

 誰もが寝静まった夜。薄く輝く三日月と満天の星空が、カインの契機の日。

 

 この日以降、彼がこの孤児院を訪れることは、なかった。

 




ちなみにナラティブガンダムとマツナガを78レベルまで上げて、ナラティブはカスタム6の熟練度10にした。
これでも勝てないハードェ……。
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