鉄血のオルフェンズ 捧ぐは愛と忠義と憐憫と 作:フラペチーノ
ぶっちゃけ調査不足です。
最初からクジャン家に相応しいソロモンの悪魔を決めていて、マルコシアスは最初の方から決定していました。
ウルフズ・ハントがずっと音沙汰ないからガンプラとかも全く調べていませんでした…。申し訳ない。
『マクギリス革命』から一年が経った。
ギャラルホルンが体制を一新させたことで海賊なども数を減らした。ギャラルホルンに不満を持つ者が急激に減った。それだけ真っ当な組織に変革したのだ。
監査局の人員が増えたことでギャラルホルンの腐敗を完全に防止。戦乱の気配があればすぐに出兵することで過去の栄光あるギャラルホルンを取り戻していた。
一方火星では。
とある組織の本拠地で組織員全員が大慌てだった。いや、若干数の大人は冷静に対処しているのだが、主流メンバーは誰も彼も大慌てである。
「おぎゃあああああ! 」
「あ、暁⁉︎ なんだ、何が足りないんだ⁉︎ オムツは変えたばかりだろう! 」
「お、オルガ! ミルクなんじゃねえか⁉︎ ガキンチョはミルクが好物だろう! 」
「シノ、好物じゃなくてそれしか飲めないんだよ! でもミルクだってさっき飲んでたよね⁉︎ 」
「ヤマギまで困惑してんじゃねえよ。つーか、大の大人が揃いも揃ってうるせえな」
「カッコつけてんじゃねえぞユージーン! てめえも昨日は大騒ぎしてたじゃねえか! 」
「は、はぁ⁉︎ ダンデ、言っていいことと悪いことがあんだろ⁉︎ 」
誰も彼もが大慌て。それを困ったように眺めているのが三日月とアトラだ。
三日月とアトラの子である暁が産まれて、母子共々退院したのが先日。その日は鉄華団を挙げて宴会になったのだが、暁が泣き始めたら全員がしどろもどろになってしまった。
それから暁を泣かせないように無い知恵を絞ってタービンズから貰った育児本などを読み始めたのだが、学がない彼らは大苦戦。大人の女性であるメリビットに聞いた知識からそれを実践していたのだが、それでも泣き止まない暁に手を焼いていたのだ。
MSでの戦闘よりも鉄華団を追い詰めた
「何でこういう時に育児経験があるタービンズの姐さんらがいないんだよ! 」
「しょ、しょうがないだろ⁉︎ ラフタさんが今朝産気づいたっていうから昭弘と一緒に総出でクリュセの中央病院に行ってる! 」
「あの人達が帰って来たらこの騒動が二倍になるだと⁉︎ どんな世紀末だ! 」
「て、鉄華団はおしまいだ〜⁉︎ 」
『革命の乙女』たるクーデリアを守り切って地球まで送り届け、アーブラウ防衛に尽力し、宇宙のならず者を退治し。マクギリスから革命最大の功労者と言われている英雄の姿はそこになかった。
あるのは図体だけは大きくてどうしようもない情けない子供達の姿しかなかった。
オルガが暁を抱いて慌てふためいている様子を見て、三日月が椅子から立ち上がって二人の元に行く。
そのまま左手で暁の背中を抱えて、アトラの隣に戻る。
その頃には暁はすっかり泣き止んでいた。
「お、おお〜。さすが三日月さん。って、右腕大丈夫なんスか? 」
「ハッシュうっさい。暁が起きるだろ」
「す、すんません」
怒られたハッシュを尻目に、オルガは大人しく眠っている暁を見て三日月に問いかける。
「あー、何だ? つまり親じゃない人に抱かれて不安になったってところか? 」
「じゃない? そんなこと本に書いてあったし。物心着いたらまずはオルガの匂いを覚えさせよう。うん、決定」
「三日月は本当に団長が好きだね。そこが三日月の良いところでもあるけど」
アトラはのほほんとそんなことを言う。それでいいのか妻とツッコミが出そうなものだが、アトラの性格を知らない者は鉄華団にいない。
クーデリアにとんでもない提案をしていたのを聞いていた団員が多い。そこからアトラさんはヤベー奴と年少組に認識されていた。その辺りはアトラの幼少期の経験が要因なのだがそれを本人が語らないので知っている者は少ない。
三日月はMAとの戦闘でバルバトスのリミッターを外してしまったがために右腕と右目は完全に使い物にならなくなっていたが、それでも自分にできることをしようと今では鉄華団の敷地に畑を作っている。
海賊退治などはギャラルホルンに要請されて手伝うこともあるが、頻度はめっきり減った。海賊そのものが数を減らしたこともあるが、ギャラルホルンが圧倒的な戦力を見せつけたこと、テイワズが協力を申しつけたことから海賊業は肩身が狭くなり数を次第に減らしていった。
ギャラルホルンに見付かれば迅速に討伐され、圏外圏ではテイワズが睨みを利かせているために簡単には手出しをできない。ちょっかいをかけた者の末路は広く伝播されていた。
ギャラルホルンも真っ当な組織に変革したために、逆らう者もいなくなった。経済圏と協力して腐敗などがない組織になっていったために徐々に民衆からの信頼を取り戻している。
そんな中鉄華団の主な仕事はハーフメタルの採掘と運送業になった。
たとえ海賊がいなくても宇宙にはデブリがたくさんある。それの除去にMSを用いるのが一番早い。ハーフメタルの需要もあって鉄華団の仕事はなくなっていなかった。
そんな忙しい最中でも、団員同士の初めての子供ということでしばらく仕事を休みにして暁に構っていた。仕事も軌道に乗っていたので少し休んでも経営に響かないのだ。
「あーあ、俺も彼女欲しいなぁ」
「女性団員増えたじゃねえか。そっから探せよ」
「身内はよぉ! なんかあったらまずいじゃねえか! 」
「何かある前提かよ」
シノとユージーンがそんなことを言う。アトラ一人で家事をこなすなど不可能で、しかも妊婦になってしまった。そのため『マクギリス革命』の後に女性の炊事係を複数雇ったのだ。それまで一人しかいなかったのが問題なのだが。
一応手伝える人間で手伝ってきたのだが、メインのアトラがいなければ動けない団員ばかり。なのでアトラの指示がなくても動ける人を募集して女性団員が増えていた。
その女性団員と付き合えばとユージーンが勧めるものの、シノは渋る。
そしてそんな話をヤマギが恨めしそうに見ている。最近のヤマギはそういうことを隠していない。
三日月といい昭弘といい、おめでたが続いているのも事実だ。他の団員も仕事や鉄華団の知名度から彼女ができた者もいる。
シノはよく夜の街に繰り出しているために女性からも一歩距離を置かれている。そこにとある男子の鋭い眼光は関係ないはず。ナイヨ?
団員達が談笑をしている頃、本拠地に帰ってきた者達がいた。チャドとビスケットを中心とした元地球支部組だ。ある人物の護衛で地球までの往復をこなしてきたところだった。
そのある人物とは。
「ただいま帰りました。皆さん」
火星で一番有名な人物、クーデリアだった。地球、というより経済圏の一つアーブラウとの折衝で直接地球に出向かなければならず、久しぶりに火星に帰ってきていた。
映像を繋いでいたので色々と知ってはいるが、実際に暁を見るのは初めてだった。
「見て見てクーデリアさん! ウチの子、暁! 」
「ん。抱っこする? 」
「いいのですか? うわ、暖かい……」
近付いてきたアトラと三日月から暁を受け取るクーデリア。
他の男連中が散々泣かれたのに、クーデリアに抱かれた暁は安らかに眠っていた。
その様子にがっくりとくる男性陣。
「何でオレらはダメで、クーデリアはいいんだよ……」
「そりゃあおっぱいだろ」
「バカヤロウ。包容力って言いやがれ」
上からオルガ、シノ、ユージーンの台詞。
地球組は生で暁を見るのは初めてなので、興味深そうに暁を見たり触ったりしていた。
「あと俺らは硝煙の匂いとか、汗と油の匂いとかもあるかも。赤子ってそういう匂いに敏感だから」
「ビスケット……。むしろそれが一番ヤバいのってミカじゃねえか? 」
「それはほら。父親だから」
「納得いかねえ……」
「俺らだって昔はああだったんだから。それに赤子に常識を求めたってダメだよ」
「そりゃそうだけどよ」
ビスケットは妹達の世話をしていたためにそういう知識が人一倍あった。逆にオルガ達には子育ての知識なんてまるでなかったので、何がどうなっているのか理解できないのだ。
暁との団欒がひと段落ついたところで、アトラがクーデリアに迫る。
「ね、ね、クーデリアさん! 赤ちゃんっていいでしょう⁉︎ 」
「ええ。二人の面影があって……。愛らしいです」
「じゃあクーデリアさんも三日月と子供作りましょう! この仕事が終わったらしばらくは暇になるって言ってましたよね! 」
「え、えぇ⁉︎ 」
名瀬という兄貴分が複数の妻を抱えていることから来た発想だ。
問題はこの大勢の前でそれを言ってしまうアトラの精神性。
(((やっぱりアトラ(さん)ってどこかおかしい……! )))
またしても鉄華団でそれが共通認識になってしまった。
クーデリアは頬を染めて、暁とアトラ、そして三日月の顔を行ったり来たり。
そして三日月がなんてなしに言う。
「クーデリアも俺と子供作る? 」
「はいぃ⁉︎ 」
(ミカァアアアアアアア⁉︎ お前もか⁉︎ )
おそらく夫婦間でそういう話があったのだろうが、それを大勢の前で暴露する意味はあったのか。
いや、ない。
「オルガも子供作りなよ。団長が跡取りもいないのは問題だって桜ちゃんが言ってた」
「あぁ⁉︎ 何でオレに飛び火した⁉︎ 」
「そうだねえ。参謀役として将来を見据えたら、オルガに子供がいれば鉄華団は安泰かな」
「ビスケットまで! 」
「よっしゃあ! 俺とオルガ、どっちが嫁さんを先に見付けるか勝負だぜ! 」
「そういう問題じゃねえぞシノォ! 」
わーぎゃー騒がしくなる食堂。
そんな騒ぎになっていても暁はクーデリアの胸で眠り続けたまま。
アトラはクーデリアから言質が取れたのでニコニコと笑っているだけ。
顔を真っ赤にして慌てているクーデリアのことは御構い無しだ。
それから鉄華団はオルガの嫁をどこから連れてくるかを真剣に話し合い始めた。
その空気を壊したのは、電話を受けたメルビット。
ラフタの出産が無事に終わったことが病院から電話でかかってきたのだ。
目出度いことが続いたので、今度は地球組も合わせて宴会をすることが決まる。
この穏やかな光景こそ、オルガが全員を連れてきたかった場所。
「オルガ。俺達は辿り着けたかな? 」
「ああ。これが目指してきた、一つの終着点ってやつだろうよ」
三日月とオルガが拳を合わせる。
この騒ぎはもうしばらく続きそうだった。