鉄血のオルフェンズ 捧ぐは愛と忠義と憐憫と   作:フラペチーノ

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完結です。


エピローグ2 ハッピーエンド

 マクギリスがまずやったことは、ラスタル含む残りのセブンスターズ及び有力貴族、そしてギャラルホルンで階級の高い者と一般兵の代表を呼び出して今後についての折衝。

 

 イオクの暴走を鑑みて、そして多すぎる腐敗の現状を真摯に受け止め。同じ過ちを繰り返さないためにどうするかという民主的な話し合いだった。

 

 セブンスターズだけで話し合えば今までの二の舞になると分かり切っており、ギャラルホルンの他の者も民意も納得しない決定になるとセブンスターズ全員が自覚していた。いや、イオクの悪行でそうなってしまうと理解させられたと言うべきか。

 

 そういった理由で幅広い人材が集まったこの会議を否定する者はいなかった。

 

 会議が始まってすぐ、セブンスターズの一席であるバクラザン家当主ネモ・バクラザンが挙手をする。

 

 事実を知っている者以外はどうしたのだろうかと首を傾げる中、ネモは堂々と宣言をした。

 

「我々セブンスターズはギャラルホルンに置ける特権全てを破却する。我々はこの会議の後、ギャラルホルンの階級に則した権限以上は所有しない。……だが、資産や今ある土地は見逃してほしい。あくまで我々は一軍人に立ち直ろうという話だ」

 

 今まで散々特権を使っていた人間から開口一番に言う発言とは思えず、いきなり会議はざわめき始めて進行が止まる。

 

 妥協案も本人達から示されてどうなのだと思考する者。虫の良い話だと一蹴する者。話の推移を見守る者。我関せずの者。様々だった。

 

 セブンスターズは全員この話を聞いていたので表情も変えない。

 

 むしろこれはラスタルがバクラザン家とファルク家に根回しした結果だ。ラスタルはセブンスターズの特権とも呼べるような物を使用したのは二度だけ。『髭のおじさま』のパーソナルデータの改竄と、そのデータをカインに流用したこと。そのくらいだ。

 

 それ以外でセブンスターズとしての権力を使ったことはなかったので、むしろセブンスターズであることを煩わしく思っていたほどだ。

 

「バクラザン公。それはつまり、ギャラルホルンの意思決定は全てセブンスターズではなくヴィーンゴールヴに移譲するということですか? 」

 

「そうなる。我々はイオク・クジャンを今も恐れている。特権階級であることだけを芯にした人間はああなるのだという末路をまざまざと見せつけられて、同じ立場の我々が何を思ったと考える? ああ、アレは我々の子孫の有り得る可能性の一つだなと思ったよ。この三百年でクジャン家とファリド家が地に堕ちた。次は我々の番だと思うのが当然だろう。我々は大丈夫でも、次の百年はわからん。なら腐る元の特権という毒を切除しようと考えるのは当然ではないのかね? 」

 

「……まあ、おかしくはないでしょう。七分の二がダメなら、他の五つも次第にと考えるのはおかしくない」

 

「そういうわけだ。まあ私やエレクは既に退役した身だ。軍にも戻らん」

 

 ネモの言葉にファルク家の当主エレク・ファルクも頷く。これで七面倒なものを全て息子達に押し付けられ、自分は改革を成した人物として語られる。有終の美としてはとても相応しい終わり方だった。

 

 最初の議題としてはかなり突拍子もなくて、思わず一般兵の代表がマクギリスへ問う。

 

「マクギリス殿はこの提案をどう思われる? 」

 

「養父のしでかしたことを考えれば至極真っ当な意見だと考える。私は今やセブンスターズの外側の人間だが、公平性を考慮すればセブンスターズの解体というのはおかしなことではないだろう。セブンスターズであったことを誇ることは先祖の誉れを尊ぶことだ。好きに続けると良いと思うがそれだけだな」

 

「え? 」

 

 マクギリスが淡々と言ったが、その内容を理解できていない人物がたくさんいた。

 

 なぜ疑問が浮かんでいるのかとマクギリスも首を傾げ、ラスタルがしょうがなく助け舟を出す。

 

「マクギリス・モンターク准将。彼らはまだ貴殿をマクギリス・ファリド准将だと思っているのだよ」

 

「ああ、なるほど。ご助言ありがとうございますエリオン中将。私は既にファリド家から離縁している。セブンスターズではなく暫定ヴィーンゴールヴ司令官としてここに出席している」

 

「お、お待ちください? あなたはアルミリア・ボードウィン嬢と婚約なさっている。セブンスターズの関係者であることには変わりあるまい」

 

 そういえばそんな宣言が元となって始まった『マクギリス宣言』だったと思い出す各位。それでも関係性としてはセブンスターズで括って良いはずだととある准将が確認する。

 

 セブンスターズの決定などはマクギリスも聞いていたが、今の身分としては本当に一般人のマクギリス。首を軽く横に振る。

 

「妻は確かにセブンスターズ本家の人間であり、セブンスターズとしての教育も受けてきました。ですが、既に彼女は我が妻。元セブンスターズであっても、今は一般人です。セブンスターズのお歴々が決定されたことを、私は今になるまで知りませんでした」

 

(白々しい。俺から全部聞いていたくせに。っていうか、アルミリアを妻って。まだ関係性は婚約者だろうに)

 

(((うわぁ。ロリコンだぁ……)))

 

 マクギリスの発言にガエリオが嘆息し、他の者は全員思考を一致させていた。

 

 どうやらカインやジュリエッタ、アルミリアのような特別な力がなくても人々は分かり合えるらしい。

 

 とにかくセブンスターズの特権が排除されることは全会一致で可決され、それ以降も今後の人事や方向性などを全員で話し合った。

 

 マクギリスやラスタルが受け持っている業務は徐々に他の人間に受け持ってもらい、本人達も代表を辞するつもりだった。セブンスターズの人間がいつまでもその組織の代表に居座ったままでは結局何も変化がないと民衆に思われるからだ。

 

 そして監査局の権限を強化するのと同時に、第三者委員会的な役割を持たせるために経済圏からの人員を監査局に組み込むことを決定した。ギャラルホルン内部だけの組織では限界があると一般兵からも意見が出たのだ。

 

 それはラスタル達も懸念していた事項だったので鷹揚に頷く。

 

 こうして『マクギリス宣言』と共にギャラルホルンは大革命を実行した。

 

 腐敗は確かになくなったのだが、ラスタル達の忙しさは海賊達がのさばっていた頃と何一つ変わらなかった。大組織を根本から変える変化には確認業務や書類作業などが重なることで多忙になるのだ。

 

 それはもちろん、とある二人にも降り掛かる火の粉だった。

 

────

 

 『マクギリス宣言』から一年半。

 

 ようやく変わった組織に慣れ始めたのか、忙しさが減ってきた頃。

 

 監査局の局長に就任したカインはMSに乗ることは少なくなっていた。毎日毎日書類との格闘だ。様々な部署との折衝に人員の派遣予定の行程表作成、予算の確認。そしてたまに現れる阿呆を鎮圧するためにMSでの出撃。

 

 ラスタルとマクギリスの二人の間で板挟みになっていた頃と変わらない多忙さに疲れ切っていた。

 

 そんな仕事も部下達がようやく経済圏から派遣されてきた人材と上手く分担できるようになってきたのかカインの仕事も減ってきた。監査局が新生した時も最初はカインの監査局時代の行動を基にしたために、一般兵は覚えることがたくさんあったのだ。

 

 主導したり最終的な判を押すのもカインの仕事であり、一年目は指導ばかりの日々だった。その後は業務に釘付け。カインのプライベートなんてあってないようなものだった。

 

 だがこれはカインだけが忙しかったわけではなく、元セブンスターズの面々は後継者づくりに業務の引き継ぎに新しく始める仕事を覚えるなど、誰も彼もが忙しかった。カインはマクギリス達と会ってお茶をしたり、ラスタルと堂々と焼肉を食べに行くということもできていなかった。

 

 カインの息抜きといえば、時々鉄華団から送られてくる近況報告だけ。産まれてきた子供の健やかな成長、新たなカップルの誕生、事業成績などなど。様々な報告が送られてきてそれを微笑ましく眺めることだけが癒し。

 

 その中にはかの『革命の乙女』であるクーデリアの結婚報告があり、相手は誰だと確認すると三日月だと知ってカインは思わず意識が宇宙へ行ってしまいハイライトが消えた。

 

 何故かカインは三日月の妻であるアトラに好意的に思われており、息子の暁の様子を嬉しそうに報告してくれた。彼女を選んだのかくらいに思っていたのだが、この報告には混乱した。しかもその報告と一緒にクーデリアの妊娠報告まであるではないか。

 

 カインが報告を受けてまずやったことは圏外圏及び火星の法律を調べること。そしてまさかの重婚可能ということを知り、自分の頭がおかしくなったのではないと判明。

 

 結果的に火星と人類の英雄なのだから三日月には二人のお嫁さんがいるくらい当たり前の報酬かと納得していた。

 

 そんなこんながあった後、カインの執務室へノックの音が三回。カインが入室を許可すると入ってきたのは髪を肩口まで伸ばしたジュリエッタだった。

 

「失礼します。カイン一佐」

 

「ああ、久し振りだなジュリエッタ。ヴィーンゴールヴに降りてきていたのか」

 

「ええ。報告がいくつか有りまして。ついでに顔を見せておこうかと」

 

 ジュリエッタもアリアンロッドの引き継ぎをしているために忙しかった。組織そのものの運営については他の人物が引き継ぐことになっているが、ジュリエッタはこれからアリアンロッドの顔になる。

 

 前線にいればいいだけの存在ではなく、経済圏のお偉いさん方やコロニーの代表などと話し合う場面が増えてくる。そういった場で粗相をしないような教育を受けてきた。そのため忙しくて地球に降りてくる余裕がなかった。

 

「ジュリエッタ。今日の仕事は終わりか? 」

 

「はい。この後は特に用事もありません」

 

「そうか」

 

 カインは目の前の書類群を見る。別に明日に回しても問題のない書類ばかりだったと思い出し、最優先事項を優先することとした。

 

 あいにく有給はバカみたいに余っている上に、とある火星からの便りもあっていい加減自分の幸せを追求したくなっていた。

 

「ジュリエッタ。オレ、まだお前からの告白の返事をもらっていないが? 」

 

「……? ハッ⁉︎ まさかあの勘違いの時の話をしています⁉︎ 」

 

「そうだ。オレは血塗れで告白したというのに、その後の始末をしていたらお前からの返事がなかったと思ってな」

 

 心当たりがあったジュリエッタは顔を赤くする。

 

 『マクギリス宣言』から内紛となり、その後はギャラルホルン再編に奔走。会う暇もなければ、仲睦まじく過ごすことも不可能だった。

 

 告白だって有耶無耶のまま流されていき、カインは結局何も言われていない。

 

「今更言わなくてもわかってるでしょう⁉︎ 」

 

「わかっていても直接言葉にしてほしいんだ」

 

「カインはクロウリー准将だったんだから、その時に聞いてますよね⁉︎ 」

 

「ラスタル様とどちらを選ぶかという選択で頷いていたのを見ただけで、言葉では聞いていない」

 

「屁理屈を……! この天邪鬼! 」

 

「なんとでも言え。オレはお前の口から直接、その言葉を聞きたいんだ」

 

 カインは席から立ち上がってジュリエッタを見下ろす。ある意味追い込まれたジュリエッタはグヌヌと顔を歪めつつも、諦めたかのように息を吐いて口にする。

 

「……わかりましたっ! 言います、言えばいいんでしょう? カイン、私は小さい頃からあなたのことが──むぐぅ⁉︎ 」

 

 ジュリエッタが言い切る前に、カインはその尖った唇を奪っていた。二人のファーストキスはカインがジュリエッタの唇をなかなか離さず、しばらく二人は繋がったままだった。

 

 どれだけ合わせていたことか。カインから唇を離すとジュリエッタの瞳がトロンとしていた、そしてカインが──。

 

「オレのことが? ちゃんと言ってくれ」

 

「は、ハァ⁉︎ あなたが途中で遮ったのでしょう⁉︎ 」

 

「そんな小憎らしいことを言うのはこの唇か? 」

 

「ちょ、待って──んんっ! 」

 

 もう一度、カインは唇を塞ぐ。今度は逃げられないように腰も抱いてジュリエッタが逃げられないようにしていた。

 

 キスをしている間はジュリエッタは痺れたようにされるがままだったが、いつまでも離してくれずにどう呼吸すればいいのかわからなくなって少し冷静になってジュリエッタがカインからなんとか離れていた。

 

「プハッ! 窒息死させるつもりですか⁉︎ 」

 

「そうなったら人工呼吸で生き返らせる」

 

「カインって病的に私のことが好きですね⁉︎ 」

 

「何を今更。ラスタル様のためだけにスパイを幼少期からできると思ってるのか? 」

 

「そこに私も理由として含まれているのですか⁉︎ 」

 

「0ではない」

 

「ああ、もう! 言わせてくれないなら行動で示します! というか、かなり嬉しがってるくせに更に求めるとか強欲ですね⁉︎ 」

 

 今度はジュリエッタがカインの両頬を抑え、そして──。

 

 これは孤児達の物語。

 

 厄災を乗り越えた先にある、めでたしめでたしのフィナーレで綴る、愛と希望と家族の物語。

 




これにて完結とさせていただきます。
感想や評価、とても励みになりました。ありがとうございます。

こんなハッピーエンドな鉄血があってもいいじゃない。
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