ウイニングファーム興亡記   作:おたま

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初期のウイポって逃げ馬がいいスタートをきると、大逃げみたいになるバグありましたよね。


日本一番槍

ニホンピロウイナーが有終の美を飾ってくれて早一週間。

ピロウイナーはゴール後、疲労困憊で歩くこともままならなかったが気力だけでウイニングランを行っていた。

 

引退式は阪神カップ後。年末に行われる予定だ。

 

引退後はウイニングファームで種牡馬入となる。

 

ウイニングファームは高松医師の娘さんの高松歌劇さんのお言葉で、馬のメンタルケアのための花壇。そして、滋養強壮のために牧草の張替えを行った。

きっとピロウイナーの疲労も回復してくれるだろう。

 

 

 

俺はMETUBEという動画投稿サイトで西テレ競馬のマイルチャンピオンシップ視聴20回目を終えたところである。勝った瞬間はいつも泣きそうになる。

 

最近METUBEがナウな若者にバカ受けらしい。俺がこの動画サイトを知ったきっかけは引退馬支援共同会の広報のはがきに乗っていた。手軽に面白い動画が見れていい暇つぶしになる。

 

なので我々もやることにした。

 

ウイニングファームが所有している馬の様子。ふれあいパークの様子、イベントなどだ。

 

一番人気なのはシービーとルドルフが共同放牧を行った際の競り合いの様子を写した動画だ。 

三冠馬の2頭が写っているのだから人気なのは当たり前だろうか。

 

二番目はグリーンシャトーの84。タマモクロスの6分にわたる変顔芸と暴れっぷりである。厩務員さんに当たり散らかしながら変顔して少し引いたと思ったら突っ込んでくる。柵を蹴って、鎖を噛んでやりたい放題であった。厩務員さんはケツ噛まれてた。

 

この厩務員さんは今年の夏に関西から単身でやってきて、雇ってくれと懇願されたのだ。

話がとても面白く、こってこての関西弁を喋る。正確には厩務員助手なのだ。

 

よくタマモクロスにいじめられており、噛まれたりするとこってこての関西弁で怒鳴っている。通常大声は駄目なのだが、タマモクロスはキャッキャ嬉しそうにイジメているのでまあ、いいだろう。

厩務員助手さんもニヤニヤ顔だし。

 

そして、なんとテレビニュースの動物ほのぼの枠でタマモクロスが紹介されたのだ。

 

ほのぼのってかどっちかというと狂犬より何だけども。

面白い馬だからね。アイドルホースですね。

 

次はピロウイナーの元気な姿でもアップロードしようかな。

 

   

 

 

 

さて11月4週である。ジャパンカップだ。

 

今回のジャパンカップは外国馬が10頭エントリーしている。

 

一番人気はミスターシービー。二番人気にベッドタイム。

カツラギエースは六番人気だ。

 

カツラギエースがこんなに低評価な理由は前回のジャパンカップを12着と大敗しているからであろう。

主な理由は疲労と説明されたが、別の理由がある予感がする。

 

 

そして黒井調教師からの進言でカツラギエースは今年で引退。更に香港カップをラストランにすることとなった。

理由はやはりこれも衰えで、ピロウイナークラスには衰えてはいないらしいが、筋肉が衰えているとのこと。

 

でも、出来ればサクラシンゲキの如くの果敢な逃げを見せてほしいものである。

 

 

 

 

 

 

私達はまた競馬場に来ている。

ルドルフのダービーの後の目黒記念を見て妻が、ミスターシービーとニホンピロウイナー。ホウヨウボーイのぬいぐるみを大事に抱えながら帰ってきたのはいい思い出だ。

 

セントライト記念後にはしっかりカツラギエースのぬいぐるみも買った。

 

 

競馬場を訪れるのはダービー、安田記念、セントライト記念、毎日王冠、天皇賞秋、マイルチャンピオンシップ、そしてジャパンカップ。八回目だ。

 

今回も家族連れが多い。なんか段々と肩身の狭くなるおっちゃんたちがかわいそうになってきた。

 

パドックの横断幕には「最強ライバル1-10一点日本の夢」と書いてあった。

やはりジャパンカップ日本馬が勝ってほしい。

 

 

今回は後方からの観戦だ。息子を肩車し、ゆっくり始まるのを待つ。

まあ、興奮からか声はでかいしソワソワはするのだが。

 

 

 

『1枠1番先輩三冠馬の世界への挑戦はここから始まります!人馬一体。天衣無縫の末脚で日本に夢を見せてくれ!CA CB対決実に7戦4勝。ミスターシービー吉岡真人(よしおかまさと)。』

 

シービーは正面スタンドを駆けていく。一番前で見たかったなぁ。

 

 

 

『6枠10番ゆっくりとした行進だ。ジャパンカップ2400m三冠馬も置き去りにして逃げ切ってみせるのか!日本の鏑矢となれ!CA CB対決7戦3勝!カツラギエース東浦一勝(とううらかずまさ)

 

カツラギエースだ。白メンコにはKAと刺繍されている。

やっぱりカツラギ陣営としてはシービーにあやかってCAと言われるのは癪なのであろう。

 

カツラギエースを見た瞬間妻の顔が真っ赤になった。

馬に惚れてない?ダイジョブ?

 

 

 

 

 

『先週は赤い彗星と白い流星が相、対いしました。そして今回は日本のライバル馬と、世界の名馬が叩きあいます。18万の大歓声をお聞きください!

第4回ジャパンカップ枠入り完了!…スタートしました!カツラギエースやはりいいスタート。カツラギエースが先頭です。最後方にやはりミスターシービー!日本のライバル馬、カツラギエースとミスターシービーはやはり最前線と最後方!2番手にバンティングホーク。3番手ウィン。4番手にベッドタイム、5番手ウイン、その後ろストロベリーロード。カイザーシュルテン7番目。ウェルノール。

その隣には日本馬ダイアナソロンがいます。バウンディングアウェイ、マジェスティズプリンス、後方にはエスプリデュノール、隣キーウイ。そして最後方に我らがミスターシービーであります。』

 

 

いつも通りのこの二頭。やはり優駿。世界競合渦巻く舞台でも何も変わらない。

 

いや、うん?

 

『カツラギエースが逃げて行きます!ぐんぐんぐんぐん差を開いていきます!

差が3馬身、4馬身!この場内のどよめきはカツラギエースのとにかく逃げ!大逃げだ!大逃げだ!東浦騎手!この大舞台で大逃げを図ります!

3コーナーに入ります。大ケヤキを回ります!カツラギエースだけが大ケヤキに入ります!2番手早めにベッドタイム、3番手バウンディングホーク。その後ろにウィン。ミスターシービーば最後方。足をためています。届くのか!』

 

 

なんとカツラギエースが大逃げを図った!

カツラギエースの逃げはオーソドックスな死んだふり作戦。

 

直線残り300m位でスピードを落とし、後続を早仕掛けさせてバテさせたらもう一度加速、他馬を振り切る戦法だ。

 

今回は大逃げだ。何時もの知略溢れる逃げではない。

ある意味のハイペースな消耗戦。

殴り合いだ。

 

『後続が、第4コーナーを回ります!だがカツラギエースは直線だ!直線だ!

世界よ見てるか!これが日本一番槍!カツラギエースの大逃げだ!ベッドタイム2番手追走!ミスターシービーは大外に回ったァ!!カツラギエース先頭!カツラギエース先頭だ!リードは何馬身かもわかりません!400を通過!さあ!カツラギエース坂だ東京の坂だ!登る登る!後続各馬直線に入ります!

懸命にスパートをかけます!さあ!カツラギの逃げが鈍った!カツラギ鈍った! 後続馬が追い込んでくる!世界の強豪馬が追い込んで来ます!外にストロベリーロード!真ん中ベッドタイム!大外一気!ミスターシービー!』

 

直線だ。大歓声だ!だが見てくれこの逃げをカツラギエースのこの逃げを。古くはトキノミノル。最近ではプリティキャスト。

 

昔は出走頭数が多かったので、テレビに写ってほしいからという理由で大逃げを打つ馬がいたが、今はもう少なくなった。

 

なぜなら勝てないからである。2400同じスパートでぶっちぎれば最強だ。

だが、そんなことをできる馬なんぞ存在しない。トキノミノルは速すぎて天まで駈けていっていってしまった。

 

 

 

だけれども、だけれども!勝ってほしい!これを見てくれ!これを見てくれ!

 

 

カツラギエースの命の輝きを見てくれ!

 

 

 

「行け!走れ!そのまま!!お前が一番強いんだ!!!」

 

 

 

 

『カツラギエースが頑張った! カツラギエースが粘る! カツラギエースを追ってミスターシービー!残り200!

ミスターシービー!すごい脚!すごい脚!届きそうだ!ミスターシービー!だ、が…!?もう一度カツラギエース!もう一度カツラギエース!なんと伸びたぞ!?2番手以下は届かない!絶対に届かない!なんと2400逃げきったぞ〜!!

見ろよ世界!これこそが三冠馬のライバル馬!日本一番槍!カツラギエースだ!!!東浦騎手!大きくガッツポーズ!!このガッツポーズ!このガッツポーズ!CA CB対決8戦4勝!』

 

 

 

感情が溢れ出す。隣の妻は頬を手で覆いながら綺麗な涙を流している。

 

『さあ!ウイニングランです!初めて!初めて!カツラギエース!G1で三冠馬ミスターシービーを降しました!!陣営の悲願が叶いました!

そしてジャパンカップ!はじめての日本馬の勝利です!

聞いてください!

この大歓声!大拍手!大喝采!カツラギエース乾坤一擲!見事な大逃げ!ゆっくりカツラギエース歩いてきます!』

 

 

気づいたら叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

……ラ!!

 

 

 

……ウラ!!

 

 

 

……ウラ!!!

 

 

 

トーウラ!!!

 

 

 

トーウラ!!!!

 

 

 

トーウラ!!!!!

 

 

 

 

『なんと!トウウラコールです!こんなことは起きたことはありません!18万の大歓声!…いや〜凄いですね。これが競馬とは思えません!お見事でした!東浦騎手と!カツラギエース!!見事な一戦でした!!』

 

 

 

 

 

The Exploits

 

 

84年香港カップ

 

 

天衣無縫。禁忌を犯した馬がいた。

 

 

勇往邁進。絶対を興した馬がいた。

 

 

彼らでも勝ち取れない、たった一つの偉業。

 

 

『日本一番槍』

 

 

その馬の名前は『カツラギエース』

 

 

『カツラギエースが逃げる逃げる!のこれ!残れ!そのまま!ロイヤルヒロイン!内にラトレヤント!真ん中からバウンディホーク!カツラギエース!カツラギエース!やった!やったぞ!日本!!海外G1初制覇!!討ち取ったのは!日本一番槍!ジャパンカップ勝者のカツラギエース!東浦騎手右手でガッツポーズ!!さあ行け!二頭の三冠馬!道は作ってやったぞ!』

 

 

先頭を走る馬はただ一頭のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カツラギエース

 

現役期間1982年〜1984年

 

欧米字: Katuragi Ace

 

香港表記:葛城王牌

 

 

性別:牡

 

 

毛色:黒鹿毛

 

 

生誕:1980年4月24日

 

 

父:ボイズィーボーイ

 

 

母:タニノベンチャ

 

 

母父:ヴェンチア

 

 

生国:日本北海道三石郡三石町

 

 

馬主:ウイニングファーム

 

 

調教師:黒井敏明(くろいとしあき)

 

 

 

 

 

勝ち鞍

 

 

 

 

GI 香港カップ 1984年

 

 

GI ジャパンカップ 1984年 

 

 

GI 宝塚記念 1984年

 

 

GI 天皇賞秋 1983年

 

 

GII 毎日王冠 1984年

 

 

GII 目黒記念 1984年

 

 

GII 神戸新聞杯 1983年

 

 

GII 東京スポーツ杯2歳ステークス 1982年

 

 

 

名馬の肖像2018年大阪杯

 

 

これで生き抜く

 

 

あいつらが来る。唸りをあげて迫る。

もちろんこちらも無抵抗じゃない。精根を尽くして生きのびるとしよう。

 

さあ見るがいい。これが俺のやりかただ。

ほら捕まえてみろ。

 

これが俺の底力だ。

 




カツラギエースはメジロモンスニーと並んだミスターシービーのライバルですね。

個人的にはカツラギエースの墓碑に書いてある一文が涙腺を刺激してきます。


史実でもシービーとは8戦4勝だったんですね。偶然の一致。

面白かったら高評価。コメントの方もよろしくお願いします。
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