ウイニングファーム興亡記   作:おたま

6 / 36
1984 神医とダービー

1984年。

 

新年を迎え、ウイニングファームに越してきた。

 

そして、4頭を自牧場に慣れさせるために、1か月間の放牧を行う予定だ。

 

牧場に訪れ、近隣の牧場さん方にあいさつ回りを行った。

 

あいさつ回りに父のコネで、今年青山に新店がでるハーデンアイスをクーラーボックスに入れ手渡しを行った。

お土産にアイスはどうなのかと思ったが、とても喜ばれたので結果オーライであった。

 

そして弐式さん方との自己紹介。

弐式さんはその豊富な血統知識で種付けをお願いした。

弐式夫人。はるかさんには父が新しく購入してくるという1歳馬の馴致、育成をお願いした。

 

最後に朝比奈さんと竜胆さんに自己紹介。

そんなことをしていると、玄関のチャイムがなった。

開けてみると、父と知らない男性が一人。

 

とりあえず応接間に案内しようとしたのだが、知らない人が「ミスターシービーは何処にいますか?」と突然聞いてきた。

 

正直申し訳ないとは思っているのだが、父がいるとはいえ、責任者として知らない人に三冠馬にこちらですと案内するわけにはいかない。

シャーガーのようにシービーを盗みに来た人かもしれないと、思案しているところに父から軽く自己紹介をされた。

 

男の人は高松凱旋というらしい。

髪の毛をオールバックにし、ブラウンのコートが非常に似合っているナイスミドルなおじさまだ。

流浪の医者やっているらしく、その腕は神医と讃えられるほどととのこと。

 

ここに来た理由はひとえにシービーの治療の為であり、自分から来たということでお代も取らないという。

 

父と一緒にいる理由は、父は馬運車でウイニングファームまで来ていたのだが、ここまでの道程で迷子になっている高松医師を見つけお節介で話しかけたところ、目的地が一緒だったので連れてきたそう。

 

ここに来た理由も聞いており、高松医師の名声を父は知っていたらしく任せてみようと思ったのこと。

父を信じてシービーの元に案内すると、なんと30分くらいで治療が完了してしまった。

うちの医師さんに確認してもらうと、半分以上何故か治癒が進んでおり、遅くても3月には治癒が完了するとのこと。

 

すごいな神医。

 

そして三冠馬だからなのか筋肉も全く衰えていないので一ヶ月ほどリハビリ調教をすれば十全にレースに臨めるとのこと。

 

すごいな三冠馬。

 

治療が終わり、その日のうちに高松医師は帰るのだという。

一泊していかないかと聞いたがまだ仕事は終わってないとのこと。

凄まじいプロ根性だ。責任者として見習わなければいけない。

 

 

 

高松医師が一時間程度で帰った後、父に何故来たかを聞くと、去年の暮れに、82年、83年馬を購入し、親元を分かれた今のタイミングでウイニングファームに連れてきたのだという。

 

そして牧場を設立ということで急ピッチで繁殖牝馬も何頭か買ってきたのだという。

 

相変わらず父は仕事が早い。これが出世できる人の条件なのだろうか。

 

さて、買ってきた馬というのが2歳馬が1頭、1歳馬も1頭。

繁殖牝馬は4頭だ。

 

2歳馬はもう名前も決まっており、サクラユタカオーとのこと。

ユタカオーは牡馬。栗毛の馬体に雄大な馬体のイケメン。

 

本格的に競馬の世界に入っていくことが決まったので牧場に挨拶回りを年末に行ったそうで。

そのうちの一つのサクラ牧場の方に挨拶に行ったら、そこにちょうどいたサクラ軍団の馬主さんと馬があったらしく好きな馬を1頭上げると言われユタカオーをもらったとのこと。

 

コミュニケーションの達人かよ。

 

厩舎は新しく知り合った名伯楽竹田作三郎(たけださくさぶろう)厩舎、騎手はまだ決まってないらしいが父は岳邦洋(たけくにひろ)騎手がいいと言っている。でも自分としてはやっぱサクラ軍団は大島篤(おおじまあつし)騎手がいいな。

 

 

1歳馬はメジロヒリュウの83。牝馬。

綺麗な青鹿毛で、鼻の筋にある流星がド派手や美人さん。

 

この馬はあいさつ回りに訪れたメグロ牧場で父がピン!ときて購入したそう。

 

 

そして繁殖牝馬はパワフルレディ、スカーレットインク、サクラスマイル。そして、オールドヒストリーの四頭。

 

パワフルレディは父マルゼンスキーで母父がテスコボーイ。

牝系はスターロッチ。

血統を見るとなかなかの快速馬が生まれそうな血統である。

ここにパワー系の種牡馬を配合すればなかなか名馬が生まれそうな予感だ。

 

スカーレットインクは父クリムゾンサタン。母父ボーマックス。

正直マイナーな血統なのでよくわからないが、父のクリムゾンタンクは母父で活躍している。

だが最近は4年連続で不受胎が続いていたこともあり、心配な点はある。

そしてスカーレットインクは凄くガタイがいい。

スタッフさんが引っ張てくる時にスカーレットインクのパワーで振り回されていたので、力も相当なものだろう。

産駒にもこの馬体が引き継げれたのならば、期待ができると思う。

 

サクラスマイルは父インターメゾ。母父ネヴァービート。

牝系にスターロッチ。

母サクラスマイルの半兄にサクラシンゲキがおり、グレイソヴリン系と相性がいいことがわかっている。

スレイヤーのインターメゾに、ブルードメアサイアーとして名高いネヴァービート血統。中々良い牝馬ではないだろうか。

 

ステラーアイランド。

一番父が興奮したように話していた馬で、父はセントオー。母父にツキトモ。

竜胆さんとの面接の時に話していた血統の馬で、戦前、戦後間もなくの頃の血統が勢ぞろいしている。

正に日本競馬の歴史のような馬である。

 

もうね。ロマン一辺倒の馬ですね。この馬にシンザンをつける気満々らしい。

名前も決めているらしく、牡馬ならセントシンザン。牝馬ならクモヤマとのこと。

 

まだ種付すらしてないのにもう決めてるの。

自分の赤ちゃんかというくらいにワクワクしてるねあなた。

 

 

 

 

 

 

 

5か月後

 

 

なんとか全ての馬が無事な状態で産まれ、次の種付も予約も取れ受胎待ちだ。

 

 

そして、ダービーデーである。

 

東京競馬場にはなんと15万もの大観衆が押し寄せているとのとこと。

去年のダービー入場者数は10万人だったので1.5倍増えているのある。

これには私がわかっている理由は二つあり、一つ目はうちの父の会社が大規模に競馬ブームを促したことだ。

父の会社は日本で最初期の何でもやる系の会社で、コングロマリット系と呼ばれているらしい。その中の一つの民間放送局でNRAとの協力でダービーCMを大々的に流したこと。番組をゴールデンで流したり、シンザン等のスターホースのぬいぐるみを販売したり、色々暗躍していたと聞いた。

 

 

CMの名前はThe gloryシリーズ。

gloryは栄光らしい。

 

5月の一週から、ダービーが行われる5週まで毎週内容を変えながらポエム風にかっこよく、歴代のダービー馬を5頭紹介するというものだ。

 

なんと、このCMを考えたのが橘さんと、吹里谷さんだという。

会議中にこの二人が提案したのだと。

橘さんが「競馬というのはたしかにギャンブルではあるけれども、他の側面で見たら馬の歴史であり、ダービーのCMならば、ヒーロー列伝みたいな感じがいいのでないか。」と言ったら、吹里谷さんが「なら、イケイケのチョーカッコイイロックとか使ってアピールすればいいんじゃね?」

いったそう。

そうしたら、若い世代の社員がなんと、装甲騎兵ボトムズの次回予告風にポエミーな口上で、渋い声優さんを起用したらどうか?

という若い風三連単でCMが決まったのこと。

 

声優さんはロイ・フォッカー少佐の人だった。

 

紹介した馬は、キーストン、トキノミノル、クリフジ、クライムカイザー、そしてミスターシービーである。

 

なかなか好評らしく、新しい企画の有馬記念バージョンであるThe Championシリーズも計画中とのこと。

間違いなくシンザンは入ってるだろうね。

 

 

二つめはダービーの後の目黒記念でミスターシービーが復帰するのだ。そして黒井さんが進言されたこともあり、カツラギエースも目黒記念に出走予定だ。

 

ただいま世間的にはカツラギエースとミスターシービーはバッチバチのライバルで、距離適性が合うのか同馬主なのに5戦している。

 

東スポ杯。ホープフル。皐月賞。東京優駿。神戸新聞杯。である。

 

こう見るとやりあいすぎてません?

シービーが勝ったのはホープフル、皐月賞、東京優駿。

エースが勝ったのが、東スポ杯。神戸新聞杯だ。

前哨戦はカツラギエースで大舞台はミスターシービー。

カツラギエース陣営は一番勝ちたいところが勝てず、中々に悔しい思いをしている。

複雑な心境だがどっちも応援したい思う。

 

皐月賞、菊花賞以外のレースでワンツーフィニッシュをしており、今回もシービーが1番人気、二番人気がカツラギエース。同世代には皐月賞で2着となったメジロモンスニーも出走する。

 

他の有力馬は今年の天皇賞春の勝ち馬のモンテファスト、菊花賞馬で、今年の天皇賞春3着のホリスキー。オークス馬ダイナカール、ヤマノシラギクか。

スーパーG2と呼ばれて新聞やテレビでもよく取り上げられていた。

 

ミスターシービーとカツラギエースが出走かという情報が流れた途端にG1馬が参入してきた。

三冠馬を一戦交えられるというのはやはりホースマンにとっては誉なのであろう。

 

G1馬が5頭。重賞も入れると8頭。これは新手のG1なのよ。

そりゃあ盛り上がるわ。

 

ダービーは、うちの馬では無敗で皐月賞を制したシンボリルドルフが出走する。

 

危なげなく最小限の走りで勝利する姿は未だ底が全く見えなく、夢がとても広がる。

世間では名前のルドルフに因んだ皇帝なんて、呼ばれているらしい。

よく似合っている。

牧場ではよく顔を近づけてなでてアピールをしてくる可愛こちゃんだが。

 

 

 

「さあ、さあ!日本ダービーの第三コーナーであります!大ケヤキを回ります!聞いてくださいこの大歓声!15万の大観衆!

ビゼンニシキが上がっていきます!スズマッハが以前先頭!スズマッハが逃げております!外にフジノフウウン!外にフジノフウウン!内からスズパレード上がってきた!直線に向いた長き直線!向かう先は栄光のみ!

残り400!スズマッハ先頭!スズマッハ先頭!ビゼンニシキ上がってこれない!ラッシュアンドゴーは馬群の中です!シンボリ、ルドルフ!シンボリ、ルドルフはようやく外目に持ち出した!残り200です!

なんと未だにスズマッハ先頭であります!真ん中フジノフウウン!外にスズパレード!

きたきた!シンボリが来た!シンボリが来た!抜けた!抜けました!シンボリ、ルドルフそのままゴールイン!初めて苦しい競馬を致しました!

しかし勝ちました!しかし勝ちました!日本のサラブレッドから世界のサラブレッドへ飛躍するために、 その第一関門を突破致しました!

名手!岡安幸夫は 初めての、ダービー制覇であります!」

 

15万の大観衆の中で行う、ウイニングランなんて最高気持ち良さそうだ。

彼らに向けられる祝福の言葉!岡安騎手の顔がクシャクシャになっている。

シンボリルドルフの主戦を岡安騎手にして本当に良かった。

 

だが、まだ終わらない。もうひとりの主役を決めるもうひとつのレースがある。

 

 

 




母父セントオーの馬でレイクアグレットやステラーアイランドいう馬がTTGシナリオにて繁殖牝馬として登場します。
ロマン派の方々は是非。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。