ウイニングファーム興亡記   作:おたま

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1984 ライバルと夏

ダービーが終わり、繁殖牝馬たちの全頭受胎が確認できた。

 

ダービーデーの反響なのかなんとルドルフの谷平厩舎にファンレターが届いたのだ。

 

 

ハイセイコーブーム時に「東京都 ハイセイコー様」という宛名だけ書かれたはがきが調教師のもとに送られてきたというには有名な話だが、まさか、うちの馬に送られるとは思わなかった。

 

何通か送られてきたそうだが、息子がダービーの岡安騎手に憧れ、騎手になりたいという手紙が多いという。

 

競馬社会は村社会の傾向が強い。俺、結構避けられている感じがするし。

 

新しい風が吹いてくれるのは大歓迎だ。夢が続いてくれるように、少しでも社会に穴を開けられるように頑張ろう。

 

そして件の岡安騎手はなんとあの大人気番組。銀子の部屋に出演していたのだ。とても緊張していたように見えた。

意外にもいじられずに騎手になる条件とか、どうすればなれるのかとか。騎手やっててよかったこととかを聞かれていた。

泣き顔を少しいじられてはいた。ダービーはすべてのホースマンの夢なので、泣いちゃってもそこは仕方がないとは思うが。

 

そして、凱旋インタビュー時にいったセリフ。「ルドルフに競馬を教えてもらった。」とういう言葉について根掘り葉掘り聞かれていた。

 

そしてウイニングファームに引退馬支援共同会の代表の方が訪れた。要件は意外にも簡単でお金はこっちで出すから、引退馬を引き取ってほしいというものだ。

 

引退馬の処遇については私も改善の必要があると考えていた。ハードバージやハマノパレードのような悲しい事件を生まないために。そして、外国から種牡馬としてきた馬も行方が分からなくなることも多い。

 

少しでも幸せな余生を過ごしてくれたらこっちもありがたい。

 

 

 

さて、銀子の部屋でも聞かれていたが、やはりファンの方々が知りたいのは所有馬の次走であろう。

 

ダービーを勝利したシンボリルドルフは夏を休養し、セントライト記念、そして菊花賞。史上初の無敗三冠に挑む。

 

ミスターシービーは夏休養して、札幌記念。京都大賞典。そして秋古馬三冠に挑む。

 

カツラギエースはこのまま宝塚記念。夏を全休養して、毎日王冠。そして秋古馬三冠に挑む予定だ。

 

ニホンピロウイナーは来週の安田記念を出走した後に欧州遠征。ジャック・ル・マロワ賞にでる。

その後は国内のスプリンターズステークス、マイルチャンピオンシップ、そして年末の阪神カップに出走予定だ。

 

 

まずは安田記念だ。今回も12万もの観客が詰めかけている。

去年が7万人だったのでまた5万人の増加だ。

 

更に宝塚記念投票もすごかった。なんとうちのG1馬が全頭10位以内に入っている!

ミスターシービーがなんと126549票で一位だ。二位はカツラギエースで、119854票。シンボリルドルフが五位で109821票。ニホンピロウイナーが九位の98563票だった。

去年の投票一位だった、アンバーシャダイが約90000票だったので一気に3万人も増えている。

 

これは第二次競馬ブームと言ってもいいのではないか?

 

 

 

 

『霧に覆われたターフを各馬疾走していきます。第四コーナーを回ってスピードトライトと、キヨヒダカが逃げていきます。

内外に開いております。坂を駆けあがります。400を通過!三枠ハッピープログレスが突っ込んできました!そして最内からピロウイナー!大外からコジーンであります!さあ!ハッピープログレスが先頭に代わって200を通過して、内と外から2頭突っ込んできます!

ハッピープログレスが先頭だが、二頭が更に詰めていきます!100m!100m!先頭入れ替わりました!先頭はウイナーか!コジーンか!少しウイナー出ました!出ました!揃ってゴールイン!最後に二頭揃いました!

ですが、アタマ差でピロウイナー!ピロウイナーが勝ちました!史上初の連覇です!』

 

 

『第3コーナを回りまして、ブルーギャラクシーが先頭であります、そのすぐ横にカツラギエースです。阪神の急坂をカツラギエースが登ります!

400を通過して直線に向いた!先頭変ってカツラギエース!カツラギエース先頭だ!ミスターシービーを破ったカツラギエースが先頭だ!二番手スズカコバン!ホリスキーが伸びない!

内でブルーギャラクシー粘って200を通過!先頭カツラギエース!カツラギエース!ぐんぐんグングン差が開く!差が開く!内からダイセキテイ!真ん中にはグローバルダイナ!これは強い!これが三冠馬を破った実力か!

カツラギエース!カツラギエース!堂々たる勝利!文句なし!…いや〜恐れ入りましたカツラギエース!リードを4から6馬身程離しての完勝です!』

 

 

勝利である。ピロウイナーはこれでG14勝。エースはG12勝だ。

元々わかっていたことだが、古馬でG1を勝てたことにより少数ではあるが、マスコミで言われていたフロック勝ちも完全に払拭され、ピロウイナーは現役マイル最強馬と言われるようになった。

 

さて無事にピロウイナーが安田記念を勝ったので大袖振ながらの海外遠征である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスの夏は日本よりも涼しい。

ジメジメな日本とは違い、カラカラで案外過ごしやすいのである。

夏の間だけ移住したくなるね。 

 

さて、本日はドーヴィル競馬場で行われるのはジャック・ル・マロワ賞。

1600m直線コースである。

 

 

さっき青葉さんという美人さんにドーヴィル競馬場について教えてもらったので前情報はカンペキである。

 

今回の有力馬は日本馬ニホンピロウイナー。そして安田記念で激走を繰り広げたコジーンの2強対決と言われている。

 

そしてなんと、父の会社が海外の競馬を見ようツアーを行っており、日本人観光客が50人くらい応援に来ているいうのだ。さらに日本のテレビ局も来て生中継もするのだと。

 

このことを、はじめての海外遠征ということで緊張している様子だった、ピロウイナーの主戦である和泉岳志(いずみたけし)騎手に談笑をと思って話したら、更に緊張してしまったようだ。震えだしてしまった。

 

ふむ。やらかした。

 

どうしたものがと考えていると以前。日本で短期免許を取り来日したこともある。コジーンに今回騎乗するマイケル・ヴェネチア騎手が挨拶に来てくれた。

俺は少しばかり英語ができるので、コミュニケーションをしたら和泉騎手に用があったらしく、簡単に訳すと「以前の安田記念は見事だった。今回は負けない。」とのこと。そのことを和泉騎手に話すと少し緊張が収まったようである。少なくても震えは止まった。

英会話教室に行ってて本当に良かった。

 

更にいうと、このツアーとは別に競馬学校生も海外競馬見学と見に来ているのは内緒だ。

 

 

『1000mを通過しました!

フランスの芝を優駿8頭が奔って行きます!観客のボルテージは最高に上がってきた!先頭はリアファン!リアファンが先頭だ!我らがマイルの皇帝!ニホンピロウイナーは中段で足をためています!

日本馬初のG1勝利となるのか!隣には安田記念で、覇を競い合ったコジーンがいます!さあ、ここから各馬スパートしていきます!

さあ!さあ!残りは400m!コジーンとピロウイナーが同時に!同時に上がってきた!上がってきたあ!!楽々リアファンを交わす!外にニホンピロウイナー!内にコジーンか!完全に2頭のマッチレースになるのか!

ピロウイナーかコジーンか!馬体を合わせて一直線!残り200!残り200!ピロウイナー!コジーン!ピロウイナー!コジーン!ピロウイナー伸びる!差せ!行け!だ、が、並んだままだ!並んだままだ!

コジーンが伸びたか、ゴールイン!並んでいる、が、わずかに、わずかに。白き流星コジーンか!マイケル騎手!大きく手を上げました!

ピロウイナーは惜しくも2着か!それでも大きな進歩です!我々は世界に並び立ちました!』

 

 

…悔しいな。和泉騎手も帰ってきたあとに「…すみません。勝てた試合でした。」と橋本調教師と俺に謝りに来た。

正直これが初めての明確な敗北だ。まだ、4着や5着ならば、世界の壁は厚いな。っとある意味で納得ができたのだが、世界最高峰マイルでクビ差の二着。

 

世界を取れる馬なのだ。ニホンピロウイナーは。この事をここにいる俺ら3人は少なからず理解しているから、こんなに空気が重いのだ。

 

「…。そうだある意味で400mからの早仕掛けが敗北の原因だ。ピロウイナーは本来スプリンター。もっと足を温存するべきだったな。海外でいつも通りの競馬ができなかったのが敗北だ。それに洋芝にピロウイナーが慣れてなかったのも原因だろう。和泉。これを糧にしろよ。」

 

橋本調教師が和泉騎手の肩をポンっと叩く。

…。俺にできることはないだろうか。俺もホースマンなのに…。

 

 

 

この後は新人の騎手候補生の子たちに今回のレースの感想や日本と海外の芝や、騎乗スタイル等の違いを意見交換した。

馬の調子や、洋芝の違いなど、しっかり理解している素質のある生徒たちが多かった。

 

特に3年生には新幡義武(しんばたよしたけ)くん、菅井直助(すがいなおすけ)くん、岩崎守(いわさきしゅう)くん。そして、我らがウイニングファーム出身の弐式夏帆ちゃん。2年生は熊川重雄(くまがわしげお)くん。松崎幹雄(まつざきみきお)くん。そして横河典彦(よこがわのりひこ)くん。そして1年生は岳穣(たけみのる)くん。そして海老瀬公正(えびせ ひろまさ)くんの、8名が突出しているように感じた。

新人のうちに乗ってもらって、関係を結びたいな。

 

 

 

 

さて、あのレースから帰ってきてすぐに牧場の改築に乗り出した。

弐式さんや高松医師に相談すると、最初は何よりも馬の健康を。ということで温泉施設と牧草、そして獣医施設を増設した。

 

正直、増設した結果の最もありがたいところは高松医師のウイニングファームに訪れる頻度が格段に上がったことだ。

サクラスマイルの調子が突然悪くなったときは、高松医師が偶然おり難を逃れたが、やはり高松医師頼みというのも不安だ。

獣医さんたちもそのことをわかっているようで、滞在中はできる限りコミュニケーションを取とうと頑張っている様子だ。

 

因みにメジロヒリュウの83。グリーンシャトーの84。サクラスマイルの84。の名前はもう決まっている。というかピン!っと来たのでその場で付けたのだ。

 

前からメジロラモーヌ。タマモクロス。サクラスターオー。である。

 

自分があの子たちの前に行くと頭突きをしてきて顔をぺろぺろ舐めてくるのである。もうね。チョーかわいい。自分が押されて倒れると、大丈夫?って感じでその場をぐるぐる回るのだ。そして、起き上がると、手に顔をうずめてスリスリしてくる。

猫なで声になっちゃう。

 

 

 

 

 

 

そんなことをしていると、もう秋になった。ウイニングファームをさらに増設し、坂路コースと、サイロを造った。

 

そして秋のG1の初戦、電撃6ハロン、スプリンターズステークスにウイナーと熾烈なレースを繰り広げたコジーンが参戦するというニュースが流れてきた。

これにはマスコミも大盛り上がりだ。マイルの皇帝VS白い流星の対決。

 

これは我々も受けて立つべきだ。和泉さんも橋口さんも燃えている。

日本の意地見せてやろう。




私のデータだと本当にコジーンが日本によく遠征に来ました。

自分が覚えた海外馬の順は、モンジュー、フランケル、コジーン。だったりします。

読んでいただきありがとうございました。
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