舞台
平行世界。昭和までは同じ元号、以後は平正そして零和へ。物語の時代は皇紀2681年(零和3年)
組織
鎮守府………突如あらわれた深海棲艦を敵対勢力と見做した政府の号令のもと、宮内省の外局として誕生した国史庁管轄の防衛組織。世間の目を忍ぶため歴史交流局という名称を与えられている。
鎮守府や司令部とは、艦娘や職員同士の会話でのみ使われる呼称
司令部………歴史交流局の組織運営を担う総務課や人事課その他などをまとめて指して使われる呼称。急いで組織としての体裁をととのえるため他の省庁からの引き抜きを続けた結果、さまざまなオモワクが交錯する伏魔殿に
派閥…………さまざまな省庁から送り込まれた人物が司令部で形成しているシュウダン。艦娘に好意的な派閥ばかりではない
艦隊…………深海棲艦との戦闘を担う実行部隊で、歴史交流局内での正式名称は広報課。東京近郊の司令部を中心として、第一から第八まで8つの艦隊が点在している
提督…………それぞれの艦隊に於ける戦闘部門の最高責任者で、艦娘や職員のみが使う呼称。歴史交流局内での正式名称は広報課第〇分室室長(〇にはそれぞれの艦隊の数字)
匿名制度……鎮守府で働く職員すべての遵守事項なので本名を名乗る者は皆無。艦娘という神秘の存在との共闘を開始するにあたり、当時の宮内省陰陽寮の意向により制定された。まだ幼い時期にマコトの名を知られることは災厄を招く、という古来の伝承に基づく対策
登場人物(艦娘および鎮守府職員)
天龍…………歴戦のツワモノ。初代提督と共に主人公を厳格に育てあげた艦娘だが、厳しいのは主人公に対してだけではない
龍田…………天龍の妹。主人公に厳しい天龍を見て自分は優しくしようと決めた
木曾…………天龍にひけをとらないツワモノ。かつて突入収容艦として一大撤収作戦に参戦した経歴によりチートスキル「隠密」を持つ
暁……………吹雪型改特型Ⅲ姉妹の長女。戦闘面だけでなくその洞察力で主人公を支える
響……………吹雪型改特型Ⅲ姉妹の次女。主人公を翻弄するのは真意なのか照れ隠しなのか。木曾と同じく突入収容艦として一大撤収作戦に参戦した経歴により隠密スキルを持つ
雷……………吹雪型改特型Ⅲ姉妹のSUN女。主人公を明るく支える艦娘で、四姉妹のなかでは最も落ち着きがある
電……………吹雪型改特型Ⅲ姉妹の末っ子。新参である主人公との接し方がわからず戸惑い気味
五月雨………木曾や響と同じく撤収作戦に参戦したが、周囲の警戒艦だったので隠密スキルは持たない。守るための戦いこそ信条
明石…………かつての戦いで数々の仲間を修繕した工作艦娘。現世では人と接するうえで距離を置かない、分け隔てのない女性
雪風…………主人公の秘書艦。仕事上の失敗はするけれど、いつもいっしょうけんめいな艦娘
職長…………第八艦隊の古株。工廠を取り仕切る妖精さん
ゲン…………第八艦隊の古株。国土省からの転向組
ゴロー………第八艦隊の古株。国防省からの転向組
ハヤ…………第八艦隊の炊事係
イダ…………第八艦隊の洗濯係
ギチ…………第八艦隊の正門守衛
先代…………第八艦隊の初代提督。ゲンとゴローの親友
主人公………第八艦隊の二代目提督。艦娘がそばに居れば幸せ。あたらしい仲間の言葉が契機となり、司令部の命令にただ従うのではなく戦いに隠された真相への仮説を構築しながら戦うように
局長…………???
サチ…………???
課長…………歴史交流局人事課の課長。国防省からの転向組
登場人物(深海棲艦)
深海棲姫(数字が小さいほど高い序列で、うしろに号を付けると呼称)
ミルディ(中間棲姫)一
軍勢の最高指揮官。当初は主人公を警戒していたが、とあるキッカケで……
???(戦艦棲姫)三
ミルディの右腕。鬼軍勢との戦闘に於て……
よっちゃん(水母棲姫)四
ミルディの部下。常に冷静
はっちゃん(港湾棲姫)八
ミルディの部下。常にマイペース
クッキー(北方棲姫)九
ミルディの部下。普段は物静かだが実は気性が激しい
くー(駆逐棲姫)十
ミルディの部下。主人公の進む道に光明を灯す
ネビュラ(重巡リ級)十一
ミルディの護衛艦。リリィと共にあるじを守る。実直な性格
タルト(戦艦タ級)十四
ミルディの部下。とある目的で鎮守府の第五艦隊に接触していたが、主人公に出会ってからは……
リリィ(重巡ネ級)十五
ミルディの護衛艦。ネビュラと共にあるじを守る。歯に衣着せない性格
???(雷巡チ級)十六~二十三
戦闘に於てミルディの部下である分隊長たちを補佐する
???(駆逐イ級・輸送ワ級)
兵力の大半を占めている
深海棲鬼
リックル(軽巡棲鬼)
軍勢の最高指揮官。策謀に長けている
???(泊地水鬼)
リックルの右腕。軍勢をまとめていたが……
リッティ(離島棲鬼)
リックルの部下。戦局の見通しに暗雲が垂れ込めるにつれ、彼女を疑問視するように
???(戦艦水鬼)
リックルの部下。その火力は強烈だが……
???(港湾水鬼)
リックルの部下。彼女との付き合いは長い
???(南方棲鬼)
リックルの部下。強大な戦闘能力を誇るが……
???(駆逐イ級・輸送ワ級)
兵力の大半を占めている点は姫軍勢と同じ
深海棲姫と深海棲鬼は対立関係にあります
年表
2681年(零和3年)2021年
2月 泊地棲鬼を打倒(物語冒頭)
2680年(零和2年)2020年
11月 主人公、妖精さんたちと共に第一から第七の鎮守府を偵察
4月 主人公、第八艦隊の戦闘指揮官(広報課第八分室室長)として任命される
2679年(2019年)
零和元年12月 主人公、初陣で負傷
平正31年4月 主人公、第八艦隊の鎮守府に到着
2678年(平正30年)2018年
加古鷹、第一艦隊から第二艦隊へ異動
2677年(平正29年)2017年
加古鷹、改二に改装される
2676年(平正28年)2016年
あちこち転戦しながら暮らしていた姫軍勢が無人島を拠点に生活を開始
2675年(平正27年)2015年
姫軍勢が鬼軍勢と開戦、これにより鬼は事実上の二正面作戦を強いられ形勢が悪化
2673年(平正25年)2013年
加古鷹、現世に顕現し第一艦隊へ
2672年(平正24年)2012年
天龍姉妹、現世に顕現し第八艦隊へ
2667年(平正19年)2007年
陸上で暮らしていたミルディが恋人と別れ海に戻り、やがて数年かけて姫軍勢を結成
2665年(平正17年)2005年
金剛や他の海軍艦娘が大勢で現世に顕現、鬼軍勢と開戦
2658年(平正10年)1998年
国史庁歴史交流局(鎮守府)、発足
2655年(平正7年)1995年
深海棲艦の存在が初めて確認される
2649年(平正元年)1989年
主人公、誕生
2605年(昭和20年)1945年
日本、2600年あまりの歴史に於て初めての敗戦および被占領統治を迎える
第一話
ドド…ドオォン…
寄せては返す波の音に混じり沖合より微かに聞こえる轟音、すなわち鉄に火薬が炸裂する破壊の具現に耳を澄ませる。
「かなり爆発の回数が減ってきたな。どうやら今回の会戦も終わりが近いらしい」
「はい。みなさんご無事です、良かったです!」
傍らに立ち、双眼鏡を通して把握した海上戦況を伝える嬉しそうな声。
そうか、無事なんだな…。
この距離じゃ「念話」が届かないので歯痒い。作戦を計画し、戦いへと送り出した者としては、早く彼女たちの声を聞きたいと思う。
漆黒に包まれた天に向けて赤龍の如く吹き上がる炎と煙は、今なお勢いを失わず破壊の凄まじさを物語っている。
その峻烈な色彩は、まるで深海棲鬼たちの怨嗟そのものだ。
「一歩間違えていれば貴様らこそが、黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)を下っていた事であろう…!」
と叫んでいるような、そんな錯覚。
それはしかし一瞬の些事に過ぎない。
現実に於て勝利を収めたのは先ほど雪風の語った通り我が艦隊であり、艦娘なんだ。
彼女たちが振るう比類なき「力」を前にしては、如何に深海の鬼といえども太刀打ちできるものではない。
かくして我々は今日も皆が揃って、鎮守府へと帰還することができる…。
さあ、彼女たちと合流しないとな。
(明石、頼むよ)
(はい提督、お任せを。みんな、オイルフェンスの準備よろしいですね)
(ん)
(準備万端なのです)
(すぐ終わらせるから、もう少し待っててね司令官)
(行きましょう!)
(ああ、みんな気をつけて)
戦場から離れた海上に予め待機していた支援艦隊との念話を終え、彼女たちの姿を…見つけた。
深海棲鬼らの艤装から流出した機関油を囲い込むためのオイルフェンス、それを積載した5噸(トン)に満たない小さな船を4人の駆逐艦娘が曳いてゆく。
汚染から海を守るという使命を帯びる「海上保安省」に、余計な負担を掛けるわけにはいかないんだ。
もしも俺たちが戦闘ばかりに明け暮れたりしたら、いつか司令部は保安省からキツい肘鉄を喰らってしまうだろうな。
つまりこの支援作業は戦闘と同じく重要な任務、そしてこの役目には、資材の扱いに長ける工作艦と俊敏な駆逐艦の彼女たちが適任。
高速の航行ができない明石は船内に在り、だから一行の速度は減じられる事なく、勢い凄まじく遠ざかってゆく。
「みんな張り切ってますね、元気いっぱいです」
艦娘との念話は極力、大勢で共有するようにしているので、雪風の精神にもしっかり伝わっている。
「そうだな、帰ったら全員でお茶会を開く予定らしいぞ」
「それで気合いバッチリなんですね。任務に全力集中、頼もしいです」
微笑む雪風。
そんな彼女を見て、思わず
「本来なら雪風だって楽しまなくちゃいけないんだ…ブラック企業ならぬブラック上司だよ俺は。かならず埋め合わせするから」
本音を漏らす。
「気にしないでください!私だってきちんと休暇は頂いてますから」
違う。
実際は俺を補佐する秘書艦として多忙な日々。
今日だって、明石たちのお茶会に参加したいだろうに、それもできないのだ。
「それは三ヵ月も前だろう。部屋に戻ったら眠るだけの毎日って知ってるぞ」
「司令」ニッコリ
「…。いつもありがとな、雪風。なにか手伝えることがあれば…おおッ!?」
「じゃあしばらく、このままで」
かろやかな動物の如く、華麗に素早く身体を寄せてきた雪風を抱きとめる。
「いいのかよ、こんな…」
「はい。これで癒やしてもらえます」
久しぶりに感じる雪風の体温。
暖かい。
こうしていると、癒やされているのは彼女ではなく自分のほうだと思うんだが。
いや間違いなくそれが雪風の狙いだろうな。
…やべぇ気持ちいい。
ここ数日間にわたる作戦準備で、すっかり疲労困憊のカラダに活力が注がれてくる感覚。
まったく、いつも雪風には…。
「かなわないよ」
「司令?」
「雪風は凄いなって」
「ありがとうございます。みんな凄いですよ、鎮守府で一緒に頑張るみんな」
「そうだな…」
抱擁のおかげでカラダの疲労が和らいだんだろう、だんだん元気が出てきた。
我ながら本当に単純な奴だ。でも愛くるしい艦娘に元気づけられりゃ当然だよな。
…そういえば先月、司令部で偉いさん連中を相手に彼女たちの素晴らしさを力説したら、まるで哀れな物体でも眺めるような眼差しを向けられたが、あれは何故だろう?
分からん。
まあいい、それより今は…
「じゃあそろそろ、みんなを迎えに行こう」
「はい、行きましょう!」
抱擁を解き、二人で連れ立って海岸に向かう。
戦闘状況を把握する上での利便性を考慮して、松林に覆われる高台に潜んでいたので、坂道をくだれば砂浜だ。
歩みを続けながら噛み締める作戦成功の喜び。
艦娘の力は凄まじく、敵が如何に強大であっても結局は凌駕してしまうのだから、
作戦に於ける俺自身の貢献度などは本当にちっぽけなものだろうな、と思う。
だがそれでいいぜ。
何よりも重要なのは、彼女達が自らの実力を余すところなく発揮して、俺たちの大八島國(オオヤシマグニ)をおびやかす鬼どもを叩き潰すという役目を、きちんと全うできるように支える事。
司令部で訓練を受けてきたとはいえ、俺が奴らと対峙する羽目に陥ったとしたら(考えたくもないが)、さしずめ泥んこのバリケードが象に踏み潰されるような呆気ない末路を辿るだろうな。
分相応。
適材適所。
俺は彼女たちを支える黒子。
黒子は黒子なりの意地を胸に、作戦成功を目指すのみだ。
「司令、もうすぐですね」
「ああ、下り坂は楽だな」
目指す海岸へと近付くにつれて段々と大きくなる波の音。
そして…
「司令官さん!」
「ただいま戻りました、提督」
「お疲れさん、提督!」
ああ…たまらねぇ、この瞬間は、いつも…。
夜明けが近いのかな、ひとりひとりの姿がオーラか何かに包まれているみたいに見える。
思わず見とれそうになる自分を制しつつ、彼女たちへの感謝を込めて俺は…
「みんな、お疲れ!」
続く
大好きな作品なのでずっと書きたいと思っていました
読んでくださった誰かの印象に残れば望外の幸せです