「写真は、重巡リ級ネ級と戦艦ル級タ級、そして空母ヲ級だ」
さらに続けて
「艤装や衣服は全部外して、胸だけを手や腕で隠した上半身が写ってた。カメラ目線でニッコリとな」
第四-6話
…ドクン…ドクン!
理性が吹き飛ぶかと思った…上半身裸でカメラ目線だとおおお!?
何とか耐えたけど心臓の鼓動が激しい。くーのときと同じだ…!
「…五人全員か?」
平静を装いながら。
「五人全員だ。水偵は上機嫌だったがオレも興奮したぜ、遂に証拠を掴んだんだからな。軽巡のグループが怪しいってお前の考えは当たったんだ」
「やりましたね司令。やっぱり不審な点とかありましたか?」
あれ…何だか気持ちが落ち着いてきた。2人の言葉で。
「俺が妖精さんの力を初めて借りて、パワハラ鎮守府は何処だろうかといろいろ探っていた頃に、軽巡グループだけは情報収集に苦労したんだ。それを不審に思ってた」
「情報のガードが不自然に固かったんですね?」
「そうだ。一つ例を挙げると、職員同士の会話が殆どなかったから手こずったよ。いくら鎮守府でも、日常会話ぐらいするもんだ…おかしいことなんだよ本来は。但し、何らかの秘密を隠すため普段から厳格に情報管理してるなら話は別だ」
「……司令独りぼっちで、あちこち行ってたんですね」
あ、やべぇ。雪風が思い詰めたときのオーラだ。こういうときは、ゴチャゴチャ言い訳しないことだ。
「これからはやらないよ、約束する。みんなを巻き込みたくないなんて、俺の独りよがりだった。仲間に対して失礼だった」
もっとオレたちと一緒にいろ
もっと頼りにして
木曾と暁に注意されたときの言葉が脳内再生される。そういや響にも心配させたな。
首に回されている彼女の腕に触れて、他のみんなを見ながらゆっくり立ち上がって伝える。
「許してほしい。改めてだけど、これからもみんなを支えたい。お願いだ」
「オレはもう聞いてるぜ、くーが目覚めた朝にな。今も同じ考えだよ」
「暁は別に気にしてないわ。これからしっかり頼ってね」
「さっき言った通りですよ、提督」ニッコリ
「あ…あの…」
「ん、どうした雪風。何でも言ってくれよ」
「雪風は、司令を責めてないです。ただ、初めて聞いたときは本当に驚いて、それで…」ギュウッ
悪いことをした。彼女は俺の秘書艦なんだから、立場的にもショックだったろう。
「これからは必ず、みんなに相談する。許し…」
おっと。責めてないんだから、許してくれるかな、はおかしいだろ。ここは…
「…もう家族に心配させたりしない。それでいいかな?」
「…はい、司令官!」/// ギュウゥ
ふぅ。
2年前に来た頃は、こんな会話するなんて夢にも思わなかったな。気を引き締めてきた積りだけど、艦娘から教えられることに比べるとまだまだかも。
「よし、それじゃ続きだ続き! 雪風、目にゴミでも入ったのか? 顔洗ってきな」
「は、はい…! 司令、ちょっと失礼します」
「分かったよ、待ってる」
雪風が出ていくのを見送りながら、俺にまだしがみついているコアラに声を掛ける。
「暁、腕が疲れただろ。さ、雪風が戻ったら続きだぞ。そろそろ椅子に…」
「平気よ、でも仕方ないわね。分かったわ」スタッ
手足の力を抜いて床に立つ暁。何だか暁のスキンシップが増えたな…帰りの車内でも膝の上で上機嫌だったし。
「みなさん、お待たせしました」カチャリ
「提督、それでは」
「ああ再開だ」
みんなの着席を確認してから、
「木曾が見付けた写真のカギは、さっきのメモにあると思う…そうそう、④と⑤の日付はまだだから、空欄なのは当然だな。暁、これ見て何か気付いたか?」
ーーーーーーーーーーーー
① 1/5 火 OK 9 土 ⑤ OK
② 2/8 月 OK 13 土 ⑦ OK
③ 3/13 土 OK 19 金 ⑤ OK
④ 4/20 火
⑤ 5/12 水
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「そうね……。右の⑤⑦⑤は、どう考えても第五艦隊と第七艦隊よ。軽巡は三つ全部グルで、ル級たちは自由に出入りしてるんだわ。これって行き先のメモね」
「三つ全てが…だと…?」
そんな、まさか……。
いや、しかし暁の言葉を否定する材料なんてあるか?
思い出せ、俺。
単独行動で調査したとき、情報収集に苦労したのはドコだ?
3つの軽巡主体艦隊じゃないか。だからこそ怪しいと思ったんだ。
でもそれは、深海棲艦と内通してる艦隊が1つ、パワハラ艦隊が1つ、何か別の大したことない隠し事してる艦隊が1つ、じゃないかと見ていた。
できない。
暁の言った可能性をゼンゼン考えてなかった俺は、今さら彼女の推測と異なる予想なんてできない。
「…それでいこう。有力な筋道だと思う。⑥がないのは、第六艦隊が第五と第七への中継地点だからだな」
「そう思うわ。六番目が深海棲艦の指令階級と連絡し合ってるのよ。目的地はあくまでも五番目と七番目。何か悪いことやる場所なんじゃない?」
「OKってのは何だ? 」
「ル級とかが、ちゃんと着いたしるしだと思います、木曾。左の日付は第六艦隊に、右の日付はそれぞれの目的地に着いた日。このメモを書いたのはきっと……」
「深海棲艦の受け入れと送り出しを手配するほどの立場にいる奴。第六艦隊の提督あたりだな、とんでもねぇヤロウだ」ギリィ
「ああ、同感だ。鎮守府の裏切り者だぜ」ギリリリィ
「提督、木曾も。落ち着いてください、まだ会議の途中ですよ…」
ああ、分かっているが、艦娘の敵と内通だなんて……
せめない! おうちだよ?
待て待て待て待て、深海棲艦が敵なら、くーの言葉は嘘になるじゃんか!
……やべぇ、あの裏切り野郎の所為でアタマに血がのぼってきた…! これじゃいつまでたっても煮詰まらねぇぞ…ええい!
「みんな、今日は本当にお疲れ! とりあえずここまでだ、続きは明日ア! 」
「し、司令!?」
もうダメだ。クエストが大成功だっただけに収穫もデカ過ぎる。一気に片付けるのはムリだああああああああああ!!
「明石、ご馳走さま美味しかったぞ! 暁と一緒にカップの片付けを頼む!」
「わ、分かりました」
「任せて、さあ行きましょう明石」
「俺はウッディな執務机セットを片付けるから、雪風と木曾は布団な! 俺も直ぐに手伝うから」
「お、おう」
「はい司令。木曾は久し振りでしたね、お布団はこちらです」ガサゴソ
「ああ」ガサガサ
「……提督、今日は楽しかったです」
「疲れてない?」
「ええ、ちっとも。ここでみんなと眠るのも久し振りで、ワクワクします」
妹たちの様子が気になる暁は隣部屋で寝ると言ったので、執務室から寝室へとチェンジしたこの大部屋には今、俺と雪風と木曾と明石の4人が横になっている。執務室での集(ツド)いが夜遅くまで続いたら、ココか隣部屋での就寝が暗黙の了解だ。何せ廊下の照明は全て、二十一時で落とされるし。
「司令、どこかへ行くときは雪風も起こしてください。お願いです」
くーが目覚めた朝のことだな。
「分かってる、もう単独行動はナシだからな」
「はい」ニッコリ
「あのな雪風。お前は秘書なんだから、先に起きて待ってるもんだぞ」
木曾のツッコミ。
「っ! そ、そうでした~! 司令、雪風が起こしますからね!」
「それじゃお互いにやっていこう……あ、すげぇ眠く……そろそろ寝るか…みんなおやすみ……」
「おやすみなさい司令」
「おやすみ、よく休めよ」
俺と枕を突き合わせて寝ている2人の声は頭上から。そして隣の明石からは…
「おやすみなさい、提督」ナデナデ
布団の中で俺の腕に触れる、明石のひんやりした掌だった。
続く
図鑑が読みやすくて素晴らしいです
ふりがなとかレイアウトとか様々な配慮がある希ガス