「…やっぱり、面白そうな人だ。活躍してあげるから期待してて! そうだ、夜になったら会議だっけ?」
「慌ただしいが、みんなを迎えられて嬉しいんだ。少しでも早く、お互いの自己紹介を済ませたい」
「素直だねえ、いいよ~」ニッコリ
第四-13話「任務達成」
カチャ…ゾロゾロ…パタン
新しい仲間を連れて、いつもの会議室…要するにさっきまでは歓迎会の会場だった執務室に入室する。
今日の彼女たちはお客様なので、後片付けを手伝わせるわけにはいかない……しばらく大広間でゆっくりしてもらい、準備ができてから俺が迎えに行ってきたんだ。
「みんな、お待たせ。早速だけど会議を始めよう…とは言っても、さっきのパーティーの雰囲気を忘れないでほしい。堅苦しいのはナシだ、今日はめでたい日だからね。それじゃ名取、よろしく頼むよ」
既に着席して待っていた木曾たち古参メンバーと同じくウッディな椅子に腰掛けて、俺の後から入ってきた艦娘たち…その一番右側に立つ女の子に声を掛ける。
「は、はい…。わ、私…名取です…私たちのために、パーティーを開いてくれて、嬉しかったです…よろしく」ペコリ
「名取の凄まじい戦歴は、ここにいる全員が聞いたことあると思う…戦闘部門の責任者として、身の引きしまる思いだ。よろしくお願いするよ」
「そ、そんな…! わ、私…そんなに凄くなんて…ううぅ……」///
「謙虚だね。それじゃ次、鬼怒」
名取の左隣に立つ少女。
「みなさん、はじめまして。名取の妹、鬼怒です。お料理、ご馳走様でした。末っ子の阿武隈ともども、よろしくお願いします!」ニッコリペコリ
「第四潜水戦隊の旗艦、そして第十六戦隊の旗艦を務めたことのある経験豊富な戦士だ。これからよろしくね」
「はい、こちらこそ!」ニコッ
「次は阿武隈、頼むよ」
「は、はいぃ、第一水雷戦隊旗艦でした、阿武隈ですぅ! えと、さっきはとても楽しかったです…みんなにまた会えたから…。名取と鬼怒の妹です…よろしく、お願いします!」ドキドキペコリ
阿武隈。
海軍史上の光輝たる作戦に参加した数々の艦船の中でも、特にその目的地に肉薄して任務を達成した11隻の実行部隊……夕雲・秋雲・長波と同じく、そのメンバーの1人である艦娘。
綺麗な髪だな。
第六艦隊から脱出する直前に、暁と電がプレジャーボートから降りてくる彼女を見かけている。
聞いた通りの特徴だ。
これでウチは、11人のうち7人が所属する艦隊となった。
ヤバい。
緊張と興奮で心臓がすっげぇドキドキする。落ち着いて冷静に振る舞わなくちゃダメだな。
「隠密作戦の得意な艦娘が増えるのは心強い。よろしくね」
艦娘は自らに乗艦した人々の気質や特技を受け継いでいることが多いが、従事した任務の特性に応じたスキルを獲得しているケースもある。
「は、はい!」チラッ
俺の隣に座ってる木曾へと視線を送る阿武隈。
絆、ってやつかな……。
「次は海風だね。お願いするよ」
「はい、提督! 白露型駆逐艦七番艦、改白露型一番艦の海風です。今日からお世話になります。提督、みなさん、どうぞよろしくお願い致します」ニコッペコリ
「よろしく、海風。五月雨は今、天龍や龍田と一緒に遠征中なんだ。長引いてるんだが、戻ったら直ぐに知らせるよ」
長引いてるというか、俺の一存で長引かせている。勿論、くーの件に関する理由で。
「わぁ…五月雨姉様が…こちらに? そうだったんですね! はい、その時はよろしくお願いします!」ギュウウウッ
瞬時に間合いを詰める鮮やかな身のこなしで俺に抱きついた海風。彼女の柔らかな胸がムギュッと押し付けられる。
「お、大胆だな。いいぜ、素直なヤツは好きだ」ニヤッ
木曾の楽しそうな声。
彼女はいつの頃からか、俺が誰かから高く評価されたり、誰かから好意的な態度を示されるのを喜ぶようになった。
「楽しみなんだな? これからはココで姉妹仲良くね」
「はい………はぃ…」グスッ
あ。
海風、感極まったか。直ぐに立たせることはないな。
「それじゃ次。谷風、頼むよ」
「うん、提督。陽炎型十四番艦の谷風だよ。さっきのゴハン、凄く美味しかった! みんな、よろしくね!」ニッコリペコリ
「もう知ってるだろうけど、雪風は俺の秘書艦なんだ。これからは姉妹で仲良くしてくれると嬉しい」
「お任せあれだよ、提督。ねっ、雪風!」ニコッ
笑顔で雪風に向かって手を軽く振る谷風と、同じく笑顔で手を振って応じる雪風。
胸熱だぜ。
「次は夕雲だね、お願いするよ」
「はい、提督。みなさん、先程は歓迎の宴(ウタゲ)を開催してくださり、まことにありがとうございます。夕雲型駆逐艦一番艦の夕雲です。お役に立てるよう、微力を尽くす所存です。どうぞよろしく、お願い致します」ペコリ
「木曾は俺だけでなく、艦娘みんなを支えてくれてる素敵な艦娘だ。どうか、彼女の右腕になってほしい。これからよろしくね」
隣の木曾が、何故か急に下を向いた。俺、何かヘンなこと言ったかな。
「はい、お任せください。お姉様を支えていくことは、この身の喜びです」
「ありがとう。木曾のことは、みんなが信頼してるんだ。特にウチの大黒柱(ダイコクバシラ)である天龍は、木曾を絶対に遠征には連れていかない。何故なら、木曾が留守番に残らなければ、鎮守府のことが心配で仕方なくて、とても遠征どころじゃないからだよ。換言すれば、木曾がいれば何の心配もないのさ。本当に木曾は、強くて優し…ムグッ!?」
何だ? 何が起きたんだ俺の身に!?
「た、頼むから…」
うん? 木曾の声が?
「もうそれぐらいでいいだろ……恥ずかしくて、顔から火が出そうだ……。頼む、もうカンベンしてくれ…」//////
見ると隣の木曾が、着席してはいるものの、体を俺の方へ密着しそうなほどに傾けて顔を真っ赤にしている。彼女の両手は、俺の口を塞いでいる……でも乱暴じゃなく、優しく加減されて。さっき長波とはしゃいでいた時も、ちゃんと手加減していたのは見てて分かった。こういうトコが、木曾らしいんだよな。
「まぁ…お姉様が、あんな表情をなさって……何だか素敵ですわ、照れるお姉様も。提督、お話しくださって、ありがとうございます」///
夕雲は木曾推しか。
「ええ…私の時とはえらい違いじゃないの。次はこの手でいこうかな~。木曾、素敵だよ! もうね、ス・テ・キ! みたいな~?」ウフフ
全っ然懲りてねぇ。
長波、恐ろしい艦娘だな…第五室長も手を焼いたのかも。
(分かったよ、木曾。新しい仲間にココの決まりとか教えようとしただけだ。ほら、まだ三人の自己紹介が終わってないぞ。気を悪くさせて済まなかった)
(べ、別にそんな……恥ずかしかっただけだ。ほらよ、続けるんだろ)ススッ
「済まん木曾、悪気はなかった…じゃあ次、秋雲の番だね」
海風は俺に抱きついたままだが、みんなは何も言わない…彼女の状態が、ちゃんと分かってるからだ。ハンカチで拭(ヌグ)ってやろうかとも思ったけど、やっぱりそっとしておこう。
「うん、陽炎型駆逐艦十九番艦の秋雲だよー。つーか、陽炎型にイロイロ手直しを加えたのが夕雲型ね。私はちょうどビミョーな境目で、自分じゃ夕雲型だと思ってるの。歓迎会、ほんとにありがとう。これからよろしくね」ニッコリペコリ
「よろしく、秋雲。第六艦隊の時は、驚かせて悪かった。分からないことがあれば、何でも質問してほしい」
「分かった。ありがとね、提督」ニコリ
「さ、長波の番だ。始めてくれるかな」
「あいよ、夕雲型駆逐艦四番艦の長波だ。前の戦いではいろいろあったけど、私は命の大切さを実感できたと思ってる。今回の戦いでは何が起きるか、今からドキドキしてる……よろしくね、歓迎会ありがとう」ニッコリペコリ
「ウチの鎮守府が明るく賑やかになると嬉しい。これから、よろしくね」
「うーん、期待されちゃ仕方ないねえ。任せといてよ!」ニッコー
「早霜、いよいよラストだ。しっかり頼むよ」
「はい、分かりました。夕雲型駆逐艦十七番艦、早霜です。お料理もお菓子も、素敵でした…ありがとうございます。姉たちと共に、これからお世話になります。どうぞよろしくお願いします」ペコリ
「ここが早霜にとって、楽しい居場所になることを願っている。これからよろしく、早霜」
「…は、はい、提督」///
早霜は竣工から僅か8ヵ月で命を落としている。
彼女の心に、楽しみとか喜びを届けることができたらいいんだけどな。
海風に小声で声を掛ける。
「そろそろ立たなくちゃいけない。もういいかい?」ヒソヒソ
「はい、ごめんなさい提督。もう大丈夫ですぅ」///
俺は立ち上がりながら、そっと海風を解放する。
「ありがとう、みんな。改めて、第八艦隊にようこそ。俺はここで第八分室室長として、戦闘部門の責任者を務めている。本名は明かせないが、これには個人情報の秘匿(ヒトク)という目的以外にも、呪術的な理由に基づくという側面がある…歴史交流局の方針だ。俺たちの艦隊は以前からずっと、軽巡と駆逐艦を主体とする水雷戦隊を志向していて、俺は二代目の指揮官なんだけど、その方針に従う積りだ」
そして俺は、くーを手招きして隣に来てもらう。
「さっきのパーティーで、みんながこの子に驚いたりしなかったを見て、本当に嬉しかったんだ。彼女の名前はくー。何か聞きたいことは?」
いきなりムチャな方法だったなんて、全く思わない。くーをパーティー会場から遠ざけて新しい仲間を迎えるなんて、そんなマネは絶対しない。
くーの両肩に手を乗せて、彼女と共に新しい面々の方へと向き直る。
(司令…)
(これは大切なことだからな、雪風。任せといてくれ)
(はい、頑張ってくださいね、司令)
(ああ)
「はいはいはい! 何でも質問いいんだよね? えっと、この子は深海棲艦だね?」
「そうだ、秋雲。国防省ファイルでは駆逐棲姫。でも俺たちは、くーと呼んでる」
「くーだよ。みんな、これからいっしょだね?」ニコ
……………。
静寂が室内を包み込む。
艦娘たちの戸惑いか?
さっきは適当に距離を保つことができたが、今はそうはいかない。
そして俺は、ここで口を出したりしない。
今、会話しているのはくーだ。
彼女はまだ幼いが、歴(レッキ)とした1人の女性。
次は艦娘たちが答えるターン。
俺は黙って見守るのみだ。
その静寂はしかし、ほんの一瞬だった。
「そうだよ、よろしくね、くーちゃん! さっき言った私の名前、覚えてくれた?」ニッコリ
あ………。
「えっとね、あぶくま?」
「そう! 太平洋に注ぐ宮城県の阿武隈川から命名されたの! 建造は浦賀だけど、気に入ってるの。これから一緒だよ」
「ちょっと阿武隈、私が先に話してたのに~」プンスカ
「直ぐに答えてあげなくちゃダメ! まったく、秋雲はのんびり屋さんなんだから」
「もぉー、違うって。あんまり可愛いから、ちょっと見とれてたの! よろしくね、くー」ニッコリ
「うん、あきぐも」ニコ
「海風です。よろしくお願いしますね」ニッコリ
「うみかぜ、よろしくね」ニコ
艦娘たちがどんどん、くーと言葉を交わしていく。その様子を、いつの間にか彼女たちから離れて見守っていた俺。
俺の杞憂だったな。
よく考えれば、彼女たちはタ級たちを知ってるんだ。俺は少し言葉を交わしただけだが、タ級の柔和な態度ですっかり毒気を抜かれた。
ましてや、長期間にわたって接していた彼女たちは………。しかも、俺がまだ会っていない他の4人にも会ってるんだ。
もしもその4人が、タ級に負けず劣らずの穏やかな性格だったとしたら?
別室に待たせている彼女は、もしかしてこういう展開をお見通しだったんだろうか?
勿論、くーの素直な性格はきっと伝わると思ってた。
でも万が一には備えるもんだ。場合によっては、次の手段を考える積りだったけど……そんな必要、なかったぜ。
あー、まだまだ洞察力が足りてないわ俺。
こんなことじゃ、鎮守府のシーフになれるのは当分先だな。
(司令)
(やったよ、雪風。今日は忘れられない日になったぜ)
(そうですね。くーちゃん、嬉しそう…)
(良かったですね、司令官さん)
(どうだ、電。賑やかになったぞ…これから楽しくやれそう?)
(はい……あの…ね、司令官さん)
(うん?)
(ありがとう…)
続く
100人以上の艦娘のモーション製作
凄まじい作品です