鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第五話「新艦隊を編成せよ!」

(どうだ、電。賑やかになったぞ…これから楽しくやれそう?)

 

(はい……あの…ね、司令官さん)

 

(うん?)

 

(ありがとう…)

 

 

 

第五話「新艦隊を編成せよ!」

 

 

 

ゴロゴロ…カタッ

 

 

 

会議や講義には欠かせない教室セットの1つ、黒板。雪風が奥から引っ張ってきたコレは、明石が市販のホワイトボードを利用してあちこちに移動できるよう改造してくれたんだけど、本来の用途通りに壁掛けもできる逸品で重宝(チョウホウ)してる。

 

「ありがとう雪風。それじゃみんな、これを見てくれ。最近のウチの動きを書いておいたんだが、先ずは一通り読んでから色々と質問してほしい…雪風、十分たったら教えて」

 

「分かりました、司令」

 

俺は黒板の横に立ってみんなを見ているから、彼女たちの様子がよく分かる。

それじゃ、この機会を利用して………。

 

 

 

(もしも驚かしてしまったら、済まない……誰か、俺の声が聞こえるかな? 聞こえたら何か合図してくれ………あ、響。何やってんだよ、投げキスとかいいんだよ……ちょっ、明石。服を捲(マク)っちゃダメだって、ヘソが見えてるから! お前たちさあ、後ろの席だからって好き放題だな……ほら電、脱ぐな。張り合わなくていいぞ)

 

堅苦しいのはナシだ、とは言ったが…どんだけフリーダムなんだよ。

 

(司令官、名取たちと念話が通じるかどうか、試してるのね)

 

(そうだ暁、もしも可能なら大きなチカラになるからな…)

 

(しれい)ニコリ

 

!!?

 

おいマジかよ。

最前列のウッディに腰掛けてるくーと目が合う。

 

(くーちゃん!?)

 

(おい…驚いたな。くーが話せるなんて、オレは全然、気付かなかったぞ)

 

(俺もだよ。くー、もしかして以前から?)

 

(うん、みんなですぱいしたあたりから)

 

第六艦隊の鎮守府に忍び込んだ頃か…もう1ヵ月以上も前じゃないか。

 

(直ぐには言えなかったのかい?)

 

(うん。しれい、いそがしくしてたから)

 

みんなに心配させてた時期だな。だが、もうあんなことは繰り返さないぜ。

 

(これからはいつでもいいからな、くー)

 

(うん、わかった。しれい、みて。うみかぜ)

 

え?

くーの言葉で、海風の方に視線を向けると……。

 

ニッコリと笑みを浮かべている彼女が、こちらをじっと見ていた。

 

(海風、もしかしてコレ聞こえてるのか?)

 

(はい、提督……何だかビックリです。不思議ですね、みなさんこんなことができるなんて……)

 

(今はもう、海風もだよ。確認するが初めてだよな? それと、他のみんなは?)

 

(はい、こんなの初めてですぅ……素敵。あ、前の艦隊では誰もできませんでしたよ。あ、でももしかしたら……)

 

(もしかしたら?)

 

(……ご、ごめんなさい、何でもないですぅ! 恥ずかしい…)///

 

恥ずかしい? サッパリ分からないけど、話しにくいなら無理強(ムリジ)いしちゃいけないな。

 

(分かった、気が向いたらでいいよ。それじゃ、他には…)

 

(おーい)

 

(長波だね。これで三人目だ)

 

(あの…)

 

(早霜か、四人目だな。他に誰かいる?)

 

………………シーン

 

(十人の中で四人か。これから増える可能性だってあるし、幸先のいいスタートだよ。長波、どんな感じだった?)

 

(うーん、最初は無線の雑音みたいでさ、何かと思ったぞ。でもね、だんだん提督の声がハッキリ聞こえるようになって、それからくーと海風。んで、自分でもいけるかな、って。これさあ、大声で叫んだりしたらどうなるの? やっぱりヤバい?)

 

(いや大丈夫。念話じゃ不思議なことに、聞こえる声量はどれも同じぐらいなんだよ…ほんの少し違うな、ってのは分かるけど。あ、念話ってのは俺たちなりの呼び方な)

 

(成る程ねえ。早霜、いいよねコレ?)

 

(そうね、長波姉様。戦場で活用できそう…)

 

あ、それは。

 

(ムリだよ。これは司令官がいる場合にだけ可能な方法なの。艦娘同士だけでは使えないんだ)

 

(そうなのですか…では、提督が中継してくだされば可能ですか?)

 

(うん…でも、司令官が戦場に立つのは怖い。距離があるほど聞こえにくくなるから、それを避けるには司令官が危険水域に近付かなくちゃいけなくなる。それだけはダメ)

 

(あ、すみません…軽率でした。提督、申し訳ありません)

 

(いいんだよ早霜、響は別に責めたわけじゃく、俺を気遣ってくれたのさ。俺は、必要な際には戦場に赴く積りだ……でも響、その気持ち嬉しいよ。早霜、これからも何かアイデアがあれば、どんどん聞かせてくれると嬉しい)

 

(はい、提督!)///

 

(響~、アンタってクールだね。妹を怖がらせちゃダメだぞ)

 

(そんな積りはないよ長波。早霜はもう、仲間だもの。勿論、長波もね)クールニッコリ

 

(…うん、分かった。また一緒に頑張ろうぜ、響。よろしくね)

 

(うん、長波。栄光の第一水雷戦隊は不滅さ)

 

ギュッ。

 

静かに握手を交わす2人。

 

数十年の時が過ぎても消えない絆で結ばれた姿には、不思議な感情を掻き立てられる思いがした。

この2人だけじゃない。

響と木曾。

響と第六駆逐隊のみんな。

駆逐艦と駆逐艦。

駆逐艦と軽巡。

挙げていけばキリがない。

俺は今、こんなに凄い艦娘たちと同じ場所にいるんだな。

 

「みなさん、十分経過しました! それでは提督、質問の時間に入りたいと思います。よろしくお願いします」

 

「分かった。これを読んで、みんなはもう我々第八艦隊の状況を概(オオム)ね理解できたと思う。分かりにくいとか、これ興味あるから詳しく聞きたいとか、何でもいい。どんどん質問してほしい」

 

「はい、提督!」サッ

 

「お、最初は鬼怒か。どうぞ」

 

「えっとね、第六艦隊および第五艦隊に潜入行動って書いてあって、それって凄くヤバいような気がするんです。やっぱり、司令部の命令ですよね? 特別な任務、とか」

 

「いや、違うんだよ鬼怒」

 

「…え?」

 

「俺が立案して、俺が木曾たちを引き連れて実行した。全ては、深海棲艦と密通してる陰謀を叩き潰すためだ」

 

「ええっ!? バレたらどうするんですか!? 提督、クビになっちゃう!」

 

「もう大丈夫だよ、でも鬼怒の言う通りになってただろうな、もしも第六艦隊の鎮守府で捕まっていれば。でも俺たちは今、この通り元気だし、新しい仲間も増えた。それは第六の鎮守府で陰謀の証拠を入手して、第五の鎮守府で言い逃れのできない現場を突き止めたからさ…艦娘と妖精さんのお陰だよ。みんながいなきゃ、俺は何もできなかった。雪風、第五から第七の妖精さんたちは、いつ頃に到着する?」

 

「明日の午前中か、遅くとも昼頃の予定です。ゴローさんの班が、バショウで早朝に出発して迎えに行きます」

 

バショウというのはウチの数少ない貴重な船舶の1つで、20噸を越えるプレジャーボートだ。木曾、雪風そして水偵搭乗の妖精さんたちと一緒に第五艦隊へ潜入した時に使ったのがコレ。

 

「ゴローさんは、ここの古参職員だ。明日、紹介するよ。他の質問は?」

 

「提督、よろしいでしょうか?」サッ

 

「夕雲か、どうぞ」

 

「初めてお会いした時の爆発についてです。みなさん、怪我は大丈夫でしたか?」

 

気遣ってくれてるのは嬉しいが、勿論それだけが質問の意図ではないだろう。

 

「ああ、負傷は全然してない。それと、当初は密かに忍び込んで密会場面の証拠を入手する予定だったんだ…それから第五室長と交渉ってね。でも状況に変化が生じたから別の策を選んだ」

 

「証拠…ですか。写真とか?」

 

「いや、妖精さんと一緒に色々と練習したんだ…木曾たち軽巡を見ても分かるように、艦娘は自らの水偵が見た光景を瞬時に把握することができる……それは、思念だけでなく、見た光景までも水偵が発信するからだよ。俺たちの念話は多分、前者と似た霊的現象だと思う。だから、もしかしたら後者もできるかなって試したんだ」

 

「な……提督、もしかしてみなさんは、水偵と同じように遠隔での意志疎通ができるのですか? も、もしかしてお姉様も……」

 

「ああ、そうだぜ夕雲。コイツはオレたち艦娘の力だって言うが、オレは違う考えだ…間違いなくコイツ自身のチカラさ。そして、水偵に乗り込んだ妖精たちを使役することもできるんだぜ……だからオレたちはお前たちに気付かれず潜入できた…大したヤツだよ」

 

「ありがとう、木曾…あの時に話した練習の成果を今から見せるぜ。ま、そんなわけで夕雲、後者の方を実演したいから、ちょっと額(ヒタイ)を、俺の額とくっつけてくれる? 俺は少し猫背になるからね」

 

「?…はい、これでよろしいですか提督?」ピタッ

 

「ありがとう、ちょっと照れるから目を閉じさせてもらう………ほら、どうかな?」

 

「…………え…そんな……まあ! これはタ級! それに、提督……! それと提督の仲間たちですわ! あの時の部屋!!」

 

提督とは勿論、第五室長のことだ。

 

「なになに、どうしたの夕雲? 独り占めしないで教えてよ!」ハラハラドキドキ

 

「秋雲、ここに来て。今、俺がやってたみたいに夕雲と額を合わせるんだ」

 

「うん、分かったよ………………え、ええええ! 何これぇ! 木曾と再会した時の場面じゃない! 凄い! 凄いよ提督!!」

 

室内がザワつき始めたな…彼女たちの驚きと興奮が、艦娘に伝わってるんだ。

 

(お前、どこまで規格外なんだよ……まったく、子どもだと思ってたら時々、いきなりオレを驚かしやがる)

 

(言ったろ、お前たち艦娘みんなのお陰だよ……これだけは絶対だ。俺は艦娘のことに関しては頑固なんだからな)

 

(ああ、知ってるよ…本当に、頑固なヤツだ……。お前はこれを証拠として突き付ける積りだったんだな?)ニッコリ

 

(そうだよ、結局は使わなかったけどね。それじゃ賑やかになってきたし、今日のメインだ)

 

(おっ、そうだったな。しっかりな)

 

(ああ)

 

執務室の扉へと近付く俺。

さっき、彼女の待つ部屋に設置されているブザーを鳴らすボタンを押しておいた。

今はもう、廊下で待ってるハズだ。

 

 

 

「タルト、入ってくれ」

 

 

 

「はい。お邪魔するわね」

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

室内に入ってきたのは……。

 

「まあ! タ級じゃない! ああ、何てことかしら……提督、私はもう、何が何だか………」オロオロ

 

「落ち着くんだ、夕雲。木曾、頼む」

 

「ああ。ほら夕雲、しっかりしろ。そんなことじゃオレたちの提督には、ついていけないぜ」ギュッ

 

「あ…お姉様……」///

 

「お久しぶり、夕雲。そしてみなさん。そうそう、そちらの方々は、はじめまして……」

 

相変わらずの穏やかな物腰。そして、

 

「もうタ級じゃありません……私はタルト。提督から頂いた名前よ」

 

 

 

          続く




図鑑に艦娘の指輪シーンが追加されていく仕様
しっかりした配慮だと思います
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