鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第五-2話

「お久し振り、夕雲。そしてみなさん。そうそう、そちらの方々は、はじめまして……」

 

相変わらずの穏やかな物腰。そして、

 

「もうタ級じゃありません……私はタルト。提督から頂いた名前よ」

 

 

 

第五-2話

 

 

 

スッ…

 

 

 

流れるような身のこなしで俺の傍らへと近付いてきた彼女。こういうトコは艦娘そっくりだ…身体能力の高さが表れている。

そして2人で黒板の隣へ。

 

「名取たちは勿論、よく知ってるね…そして、くーも。暁、響、雷、電、明石。彼女はタルト……鎮守府ではタ級として分類されているが、今後は名前で呼んでくれ。新しい仲間だ」

 

「て、提督! もしかして、一緒に戦うんですか!?」

 

「そうだよ、阿武隈。深海棲艦の軍勢は一枚岩じゃないんだ…ずっとタルトや他の四人を見てきたみんななら、何となく気付いてたんじゃないかな。彼女たちのグループは、俺たちの味方だ……不安かい阿武隈?」

 

「うーん…不安というか…ビックリしました。でも、木曾や暁を見てたら分かるよ、提督のこと凄く信頼してるね……私も、信じます! ごめんなさい、もう平気!」

 

「分かった。ありがとうな、阿武隈」

 

くーと、タルトとの出会いは、俺の中から深海棲艦に対する先入観を根こそぎ排除した。もう俺はただ、彼女たちのありのままの姿が、艦娘みんなへと伝わるように努めていけばいいんだ。

 

「タルト。みんなに挨拶を」

 

「はい、提督」

 

一歩前へと進み出る彼女。

 

「あらためまして、タルトです。みなさん少なからず驚いていらっしゃるとは思います………。ですが、どうか信じていただきたいのです。私、そして私がみなさんと信頼関係を構築することを心から願っている私の仲間………私たちは、真剣です。この国で暮らしたい、という悲願の成就に向かって戦います……私は今回、そのための尖兵としてみなさんに助太刀するよう、派遣されました。どうか、よろしくお願い致します…」

 

深々と頭を下げる彼女の綺麗な長髪から、幾つかの房がフワリと垂れ下がる。

そしてそんな彼女を、静かに見つめている艦娘たち。

 

「ありがとうタルト…さあ、次はくーの番だ。来てくれ」

 

言葉での説明も大切だが、先ずは2人の会話をみんなに聞いてもらうのがいいだろう。

 

くーがコクリと頷いて、近付いてくる。

 

「タルトには、もう何回か話したな……彼女が、くーだ。今は俺たちの仲間さ……久し振りだろう?」

 

「ええ、本当に……そう、あなたも新しい名前を貰ったのね」ニッコリ

 

「うん。ひさしぶり。しれいといっしょに、たたかうの?」

 

「そうよ。私たちの気持ちを信じてほしいから、私たちも戦わなくちゃ、ね」

 

「わかった。しれい、くーもたたかう。たるととおなじ」

 

「え……くーちゃんが? 司令官さん、どうするのです…?」

 

この時が来るだろうと、ずっと思ってた……答はもう決まっている。

 

「くーも歴とした一人の戦士だ。その彼女が自分の意志で戦うというのなら、その力を借りようと思う。よろしくな、くー」

 

「うん。がんばる」

 

スッ。

 

くーが俺に手を差し出す。彼女の手を握る俺。暁たちよりは少し大きいが、それでもやっぱり小さな手だ……でも、しっかりした手応えを感じる。

 

「提督、あの…」

 

タルトか。

 

ギュッ。

 

もう一方の手で、ゆっくりと差し出された彼女の手を握る……もしも今、くーとタルトが手を繋いだら3人の輪の出来上がりだな。マイペースで言葉巧みな女性に見える彼女だが、実はその仮面の下には本来の繊細な一面が隠されていることに、最近気付いた。

 

「よろしくな…そして、あの時の態度を謝る。お前のことを知らなかったとはいえ、冷静さを欠いていた。どうか…」

 

頭を下げようとした俺……だけど。

 

スッ。

 

!?

 

俺との間合いを詰めて、ピタッと密着したタルト。俺は彼女の肩に阻まれて、それ以上は頭を下げられなくなった。マントとセーラー服ごしに感じる鎖骨と、そして柔らかな肢体…。

 

「提督、どうぞ頭を上げてください。今より私は、あなたの部下……あなたの獰猛なる刃(ヤイバ)となりて、あなたの敵を喰らう者。私があなたから頂く言葉は、戦場の命令、ただそれだけ……」ジーッ

 

俺の顔を覗き込む彼女と、まともに目が合う。

そして普段から伝わってくる妖艶な魅力とは全く違う、全身に漲(ミナギ)るバトルオーラ。

やべぇ。

ビリビリ感じる迫力。

 

キレた時の天龍にも匹敵するかも知れない……。

 

 

 

1年と半年前の初陣を思い出す。

 

イ級に襲われて負傷した俺を見た瞬間、天龍は鬼神へと化身した。

 

敵は全滅。

 

あの時の天龍は一生忘れない。

 

大蛇退治伝説の速須佐之男命(ハヤスサノオノミコト)みたいだ…。

 

傷の痛みも忘れ、ただただ天龍に目を奪われながら、そんなことを思っていた。

 

 

 

「分かった、そうするよ。でも、ムチャだけはするなよ。約束してくれ」

 

彼女の目をじっと見つめながら伝える。

 

「約束します、提督」

 

「よし」

 

くーとタルトから離れて、みんなの方へと向き直る。

 

「というわけで、二人とも新たな戦力として迎える。何か質問は?」

 

「提督、いいかな?」

 

「長波か、どうぞ」

 

「タルトって、どんな由来なの? 提督の趣味?」

 

そこかよ。

 

「タ級じゃあまりにも素っ気ないなって。最初の文字だけ同じにして名付けたんだ。女の子って、お菓子とか格好いいファッションとか似合うだろ。んで思い付いたのがタルトさ」

 

「ふーん。フツーだな」

 

「ネーミングに刺激を求められても。ま、俺はタ級よりタルトの方が可愛いと思うぞ。他には?」

 

「提督、いい?」

 

「どうぞ、谷風」

 

「えっとね、黒板に書いてるけど、提督たちが潜入したのって、内通者、前の提督を捕まえるためだね。でも聞いたハナシじゃ結局、自分で辞めさせた。どうして捕まえなかったの?」

 

「ああ、それはね、谷風たちみんなを仲間にしたかったからだよ。秘密にするのと引き換えに、みんなをウチに迎えたいって言ったんだ。うまくいって良かったよ」

 

「でもさ、あの提督が約束を破って司令部に話したらヤバかったよ。てか、これから先、破るかも」

 

「大丈夫。もしもあの時、彼が司令部にバラしていたら、深海棲艦と内通するという前代未聞の不祥事を、こちらも司令部に伝えただけさ…夕雲と秋雲が、さっき確かめてくれたスキルを使ってね。そうなれば彼と彼の派閥は破滅、そして司令部……つまり歴史交流局で今、指揮を執っている局長たちも、責任を問われただろう。後は引責辞任からの人事刷新…お決まりのパターンさ。第五室長は局長のグループから恨みを買いたくないから、バラさなかったよ」

 

それに恐らくタルトは、彼が提案通りに退任するよう説得したんだろう。彼女は彼のことを、本当に案じていたから。

 

「だから、これから先も大丈夫。要するに俺は、彼の派閥と上層部の命運を左右するほどの秘密を握ったわけだからね」

 

「提督、いろいろ考えてるんだね。分かったよ、ありがと」ニコッ

 

「ああ、谷風。それじゃ次は……っと、暁か。何が聞きたい?」

 

「あのね、その深海棲艦だけど…くーもタルトも仲間になったワケだし、次は私たちが何か言われたりしない?」

 

ああ、成る程な。

深海棲艦と内通して金銭的利益を得ていた第五室長たち。

くーとタルトを仲間にした俺。

司令部にしてみれば、両方とも同じじゃないかということだな。

 

「鋭い質問だな、暁。くー、そしてタルト……暁は今ここでハッキリさせておくべきことを、提起してくれただけなんだ。暁も俺も、ちゃんと仲間だと思ってるからね。暁、その点も考えてあるから大丈夫だ。先ず第一に、俺は二人を利用して私腹を肥やすなんて、絶対にしない…当たり前だけどな…。タルトから聞いたが、室長は深海棲姫…つまり姫たちの願いが、この国で暮らすことだということは、一切知らなかったんだ…俺たちが潜入した部屋でタルトが明かしてくれるまではな。彼の目的は自らの利益だ。タルト、あの部屋にいた連中は……」

 

「友人です。裕福な人ばかりで、私たち深海棲艦に性的な興味をお持ちです。そして、部外者……一般の人はいません。この戦いについては色々と心得ているご様子でした」

 

「分かった、ありがとう。市民を巻き込むようなマネはしなかったワケだな。暁、これが第五室長だ……俺は絶対に、あんなことしない。話を続けるぞ」

 

「も、勿論よ。司令官は違うわ、信じてるんだから」

 

ありがとう暁。

明日のおかず、分けてやるからな。

 

「第二に、くーもタルトも仲間だ……こうなったら、仲間が喜ぶような展開にしようぜ。雪風、各々(オノオノ)の分室には運営上の裁量権を行使する権限が認められている……そうだな?」

 

「はい、司令。何かある度に歴史交流局に報告して指示を仰いでいては支障をきたすので、任務遂行に必要であると分室室長が認めた場合に限り、報告をせずに独自の判断で行動することが認められています」

 

「暁、みんな。俺はくーとタルト、そしてこれから出会うであろう姫たちを、歴史交流局にとって大切な存在であると判断する。友好的な彼女たちの保護は、ウチの局の使命にも合致するからな。未知の危険と困難から守るため、彼女たちの情報は厳重に守り、安全が確認されるまでは司令部に明かさないことにする」

 

暁の方に視線を向け、

 

「これで大丈夫だよ暁。俺たちは内通者じゃなくて、彼女たちの仲間であり友人だ」

 

「うん、分かったわ…それなら安心です。でも司令官、それ書類にしなくちゃいけないから、また夜のお仕事が増えたわね」

 

グハァ!

 

「だ、大丈夫だ…筋トレの時間を減らすから」

 

「ダメよ、それくらい暁がやります。司令はハンコだけでいいの。ちゃんと運動してね」ニコッ

 

天使かよ。

おかず、もう一品つけるからな。

 

「暁、私の仕事を取らないで。雪風に追い付いて撃破するんだから」

 

「えぇッ!? 雪風、撃破されちゃうんですか!」ビクン

 

いつもの光景だ。

もしかすると、新しい仲間に見せることで、早く雰囲気に慣れさせてあげようとしてるのかもな。

 

「何言ってるの、響。三人で協力すれば書類なんてあっという間よ。時間つくって、司令官と過ごすの。分かった?」

 

「ん…それもいいかな。分かった」

 

「みんな、お疲れ。そろそろお開きにしよう……今日は疲れただろう。各自、部屋でゆっくりし……」

 

ガバッ

 

「提督………」

 

「タルト、どうした? いきなり抱きついて……」

 

「提督……」

 

「うん? どうした」

 

「……………」ギュッ

 

露出度の高い戦闘装束に身を包んだ彼女。とてもふくよかな胸が、密着している。

以前の俺なら卒倒してたな。

 

ジーッ。

 

あ。

みんな見てる。

やべぇ緊張してきた。

 

「…タルト、ひょっとして眠いのか…? ここには布団あるから、お前さえよければ………」

 

「提督……り……ぅ」

 

「………?」

 

「あり…が…とぅ……」グスッ

 

……海風の次はタルトかよ。

新しい仲間たち、すっげぇ感情豊かだわ。

 

 

 

          続く




支援艦隊の雷撃はアングルが格好いいです!
あとヒットする瞬間の疾走感
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