「分かった。二人とも司令部の大切な客人だが、ここでは戦士であり艦娘だ…。タルト、そしてくー。鎮守府の指揮官として出撃を要請する。残敵の殲滅だ」
「御意」
「おまかせあれ」
第五-5話
ザッバアアアアアン!!
晴れわたった青空の下に広がる、穏やかな海原……そして突如、水面より立ちのぼる巨大な水柱。戦艦の三連装砲から放たれる砲撃の威力を目の当たりにしたのは初めてだ。岸壁の名取たちは、どんな思いで見ているんだろう?
(みっつ。のこりはふたつで、おにとざこ)
くーとタルトの気配を感知して接近したら、海岸線を形成する断崖絶壁の陰からいきなり攻撃を浴びた鬼たち。さっき奴らの存在を感じると言ったくーの索敵能力は非常に高く、敵の速度と進路を把握するほどだった。その結果、易々(ヤスヤス)と待ち伏せからの迎撃に成功……先ずは上々だ。
(生体反応まで確認できるのか。二体の様子は?)
(どっちも、うごきとまったよ)
驚いて警戒しているか、ダメージで行動力が低下したか、或いは……。
(くー、背後から接近。但し攻撃無用、回避優先で即座に離脱、タルトに合流)
(りょうかい)ザザッ
(タルト、火力抑制、砲撃続行。合流するまでは、くーの援護に専念だ)
(了解しました)
ズガガガガガガガ!
敵の速射砲撃……あれは軽巡ヘ級か。思った通り、ダメージを受けたフリして接近を誘ってからの不意打ちを狙ったな。
だが。
ザザザ……バシャアッ!
駆逐棲姫くーは見事なまでの俊敏さで回避していく。
あんな戦法は見たことがない……まるで水面の上を疾走するトビウオみたいに飛び上がったかと思えば、次の瞬間にはカーリングのようにピッタリと海の表面にくっついて自由自在に動き回っている。
起立の体勢で戦う他の艦娘とは異なり、正座みたいな状態で移動しているから、安定性が抜群に良さそうだ……攻撃機能と移動機能の両方を兼ね備えたくーの兵装といい、そして彼女を倒した天龍の強さといい、艦娘の凄さには驚くばかりだな。
(引っ掛かったぞ…艦載機まで出してるが砲撃の回避に気を取られ周りを全然見ていない。魚雷同士を炸裂させ下から爆発で空中に吹き飛ばせ…支援攻撃開始)
(了解!)
(Да(ダー)!)
(了解!)
(了解!)
「了解!! しっかりつかまってろ!!」ザザザアッ
潜んでいた岩場や断崖の陰から飛び出す木曾と俺、そして暁たち。木曾は背負っている俺の目方など全く気にせず、素晴らしい速度で鬼と軽巡にぐんぐん迫る。
そして
シュパアアアッ!
腕を華麗に一閃、軽快な音と共に着水した魚雷は、水を得た魚の如く急激に加速していく……その直後に放たれた暁たちの魚雷と合わせて計5発、全て狙いあやまたず目標に炸裂する…。
次々と響きわたる轟音。
「!!」
再び水面から勢いよく昇る水柱と共に、空中へと吹き飛ばされる深海棲鬼……。
(くー、タルト。落下点に向け集中砲撃開始)
(りょうかい)
(はい、提督)
バシイイッ
水面へと叩き付けられる水鬼……重巡主体で編成された大火力艦隊との交戦で手勢(テゼイ)が激減した状態だ、これだけの艦娘を相手にするのは不可能だな。
ズガッ! ドガアン!! ドガガガッ!!
とどめの砲撃。
くーの連装砲、そしてタルトの三連装砲だ……落水の瞬間は回避行動なんて不可能。まともに命中した。
「木曾」
「艤装が四散している……ヤツは浮いたままだ」
「……分かった」
(…明石、鬼を埋葬する……オイルフェンスの設置は、遺体を収容してからだ)
(分かりました提督、モジャコで接近して収容の準備に入ります)
(ああ)
(司令官さん……)
(そろそろ第二艦隊の艦娘たちが接近する頃だ…数は三人、木曾が確認した。電たちは、彼女らを鎮守府に連れていってくれ…入港を許可する。埋葬に立ち会ってもらうことにする)
(分かりました)ザアッ
(くー、タルト、お疲れ。初陣の勝利おめでとう……まだ、お前たちを他の艦隊に見られるわけにはいかない。直ちに帰投だ)
(りょうかい。しれい、ありがとう)ザアッ
(提督、了解しました。………あの、………いえ、帰投致します)ザザザ……
やがて、水鬼の浮かぶ水面へと接近する小さな船が見えてきた……操縦しているのは明石。2月の戦闘では暁たち4人が曳いていた。
「木曾、俺は明石を手伝う。あそこまで頼む」
「分かったよ。オレも手伝うぜ」ザアッ
ありがとうの代わりに、木曾の後ろ髪をゆっくりと撫でる俺。すると彼女は、自分の首の周りを包み込んでいる俺の腕に軽く、ポンポンと手を。
続く
普段は明るい表情を見せてくれる艦娘でもそうじゃない時がある艦これ改
ゲーム内でムチャな戦闘をすることへの警鐘を鳴らす演出が多い作品という印象です