鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第五-10話

(ああ、いいぜ……なあタルト、初めての布団の感触さ、どうだ?)

 

(とっても……)

 

(とっても?)

 

(あったかい……です)///

 

 

 

第五-10話

 

 

 

パフ…ギュッ……

 

 

 

「お待たせ加古、はいどうぞ」つ

 

「ありがとう提督。…あむっ……ごくん……あ~美味いッ」パアアァ

 

「加古はほんと美味しそうに食べるんだな。見てて気持ちがいいよ」

 

「んふふ~。一日の始まりだからね~」

 

木曾みたいなセリフだな。もしかしたら2人は気が合うかも。

 

「加古ぉ~、少しは遠慮しなきゃダメでしょう。提督、すみま……あぁっ?」

 

「ほら古鷹、茶碗がカラッぽだぞ……ちょっと待ってて……はいどうぞ」つ

 

「あ…あの……」

 

「遠慮しなくていいんだよ、古鷹。加古みたいにリラックスしてほしいな」

 

「古鷹。提督は昨日からね、アタシたちを歓待してくれているの。こういう時に遠慮するのは逆に失礼だよ? ほらほら、有り難くいただくの!」

 

(艦隊で歓待………うふふ)

 

(楽しそうだな不死鳥。頼むからいきなり吹き出したりするなよ)

 

(ん)コクリ

 

俺と加古、そしてニッコリ微笑む雷と響を前にしては古鷹も分が悪い。そして……

 

「分かったよ加古……提督、ありがとうございます!」スッ

 

俺の手を何のためらいもなく、両手で包み込んで触れながら茶碗を受け取る古鷹。すべすべした心地よい感触に、少しドキッとする……自覚ナシに男を魅了するタイプかな?

 

「はむっ……」パクパク

 

「古鷹、ほうれん草のおひたしです。どうぞ」コトッ

 

「ふわぁ……美味しそう。ありがとう、雷」パク

 

「いかが?」

 

「……美味しい……」///

 

「良かったぁ…いっぱい召し上がってくださいね」ニコッ

 

「雷~、アタシもアタシも」

 

「は~い、加古。どうぞ」

 

「こら、加古ぉ~!」

 

「いいからいいから。雷も、どんどん食べてもらえるのが嬉しいんだからさ」

 

「そうです、古鷹。お箸の手が止まってますよ?」

 

「あ……いけない」パクパク

 

「雷は料理上手だねぇ。提督さぁ…もしかして毎日、雷の手料理なの?」

 

「雷の料理が多いのは確かだけど…毎日じゃないな。パーティーとか開いて、料理が余ったら容器に移して、翌朝に食べたりもするからね」

 

明石が作ってくれるのも理由の1つなんだが、まだそこまで言う必要はないだろう。

 

「パーティーかぁ、いいね。ウチはそういうの全然だから羨ましいよ。ね、古鷹」パク

 

「そうだね……でも、提督は忙しいから仕方ないよ」

 

「忙しいっつってもさ、たまに開催することぐらいできるよお。ま、若いからお役目のことで頭が一杯なんだろうけど~」

 

第二艦隊の指揮官はまだ若いのか……ふむ。

 

束の間の沈黙に包まれる食卓。とはいえ、美味しそうに食べてくれる2人の様子が、場の雰囲気を和ませてくれる……。

 

「加古。俺はまだ、第二艦隊の指揮官に会ったことがないんだ。どんな人なのか興味がある。聞いてもいいかな?」

 

「そうなの? いいよ、えっとねぇ……トシは若くてね、二十五歳だよ」

 

ウチの艦娘たちは皆、数え年で年齢を言い表しているのをずっと見てきた。きっと加古や古鷹も同じだろう。つまり今年で24、誕生日がまだなら23か……。恐らく室長の中で最年少だろうな。

 

「確かに若いね。俺は三十三だよ」

 

「ええぇっ!?」

 

「ちょ……本当に~!?」

 

驚きのあまり目を見張る2人。もうすっかり慣れたリアクションだ。

 

「見た目、ウチの提督とそんなに変わんないよ!? うわぁ~、驚いたなぁ」

 

「ビックリです……てっきり少しだけ上くらいかな、って……」///

 

「あのさ、付かぬ事を聞くけど…数え年、だよね?」

 

「え………勿論だよ提督ぅ~。満年齢なんてさ、同じ一年の中なのに誕生日の前か後かで異なっちゃうんだよ? ややこしいって」

 

「そうだね。せっかく年齢を教えてくれても、誕生日を過ぎてるトシなのか過ぎてないトシなのか、分からないよね」

 

「そうそう。数え年なら、その一年ずっと変わらないからラクだよ」

 

「そういうものなのか。満年齢に慣れてる身としては、コッチの方がしっくりくるんだけどね………。二人とも、今日はゆっくりしていってくれるんだろう? 敵はもう、いなくなったんだし」

 

「あ…ええと…」チラッ

 

「……すみません提督…お言葉は嬉しいのですが…」

 

残念だな……そろそろお別れの流れか、これ。まあ仕方ないな。

 

「やっぱり、忙しい?」

 

「はい……さっき加古がちょこっと言いましたが、私たちの提督って結構……仕事熱心で、たまに、そのぉ……」

 

「自分だけの世界に入っちゃうの。その分、他のことが疎かになるから古鷹はいつも苦労しているんだよ……何しろ秘書艦だからね。もうちょっと何とかしてほしいんだけど……」

 

「加あ~古お~!」

 

古鷹のオーラが燃え上がる……んだけど加古に対してはまるで効き目がない。

 

「もっと経験ある誰かが、協力してくれたら…ね…。…………。古鷹、ちょっと黙っててよ。提督、聞きたいことがあるんだ…。いいかな?」

 

「え…加古ぉ?」キョトン

 

先程までとは打って変わった雰囲気を醸し出している加古。

彼女のもう1つの顔というわけか。

 

(司令官)

 

(何となくだけど、こんな展開になりそうな気がしてたぜ……大丈夫だ、雷)

 

(うん、分かったわ)

 

(頑張って、司令官。もしもの時には、響が守るから安心して)

 

(警戒しなくてもいいぞ、加古は話し合いがしたいだけなんだから。ありがとな響)

 

(ん)///

 

「何でも聞いてくれ。お前たちとは、何だか仲良くなれそうな気がするんだ……でもそのためには先ず、質問にキチンと答えなくちゃいけないみたいだからな」

 

「その通りだよ提督。アンタを試させてもらうよ……まどろっこしいのは性に合わなくてね。……この鎮守府は最近、急に賑やかになったよね? しかも、第五艦隊ないし第七艦隊の消滅というオマケまで付いてね………ウチの提督から聞いてはいたけど、半信半疑だったんだ……でも昨日、第六の鎮守府が無人だって聞いて分かったよ……ああ、本当だったんだなってね……。提督さあ、もしかしてここは他の鎮守府を食らい尽くして、自分たちが権力を握る積りかい?」キッ

 

当然の疑問だ。他の室長たちも、加古と全く同じ警戒心を抱(イダ)いている筈。

それにしても………凛々しい目だな。やはり何となく、木曾と気が合いそうな印象だ。

 

「加古……」

 

「心配しなくていいよ、古鷹。加古はね、第二艦隊を守ろうとしてるだけなんだ。つまり古鷹を、ね」

 

「え……え…と……ええっ?…」///

 

「加古。今の鎮守府をどう思う?」

 

「何かが起きようとしている……そんな感じかな。その中心にいるのは、どうやらアンタみたいだね」

 

思った通りだ。手ごわいぞこの艦娘……これ程までに俺を疑っていながら、ずっとポーカーフェイスで食事してたのか。

 

「……俺はここ数ヵ月、色んな体験をしてきた……艦娘や妖精さん、職員みんなの協力のお陰でね。そしてそれまでは知らなかった鎮守府の別の一面を見たのさ。加古、お前は鋭いよ…でも惜しいことに、まだまだ気付いていないことがあるように見えるぜ。俺が知っていることを今、全てお前に伝えたら、恐らく仰天すると思うよ。この組織には沢山の秘密が隠されているんだ……加古、第一艦隊の編成内容を知っているか?」

 

「何を言ってるんだよ、そんなの分かるワケないだろ? 鎮守府はお互いに切り離されているんだし。ましてや艦隊編成なんて、機密事項だ。しかも、あの第一艦た……」

 

「俺は知っている。調べたからね」

 

「提督ッ!?」

 

「そん…な……」

 

「加古。俺の目的は権力を握るなんてことじゃないんだ……そんなのは国史庁の派閥がやってることだよ。俺は鎮守府という組織の在り方そのものに、大きな疑念を抱き始めている……鎮守府に入った二年前の頃には知らなかったことを、色々と知ったからね。俺が欲しいのは権力なんかじゃなくて、艦娘のための鎮守府だ」

 

「…………」

 

俺が通常とは明らかに異なる手段を行使して、編成情報を入手したと悟った様子だ……当然の帰結だな。本来であれば加古の言った通り、機密なんだから。それを入手したということはつまり、俺が既に一線を越えてしまっているということに他ならない。

でもこれで、俺が中途半端な気持ちで行動しているんじゃないってことは、間違いなく伝わっただろう。

 

(雪風)

 

(ご指示通り、くーちゃんの部屋で待機中ですよ司令)

 

(いよいよ例の説得を開始する。目的は協力関係の構築だが、雪風の気持ちは今も変わらない? 異存は?)

 

(ありません。前にもお伝えしましたが私たち、司令に反対なんてしませんよ。それに)

 

(?)

 

(古鷹は長崎のご出身。きっと同じ長崎の木曾も喜ぶと思います)

 

(分かったよ雪風。それと、食事に同席させてやれなくて、すまなかった。指揮官と秘書艦が並んでいたら、加古が必要以上に警戒して口を閉ざすかも知れないと思ったんだ)

 

(お気になさらないで司令。雪風はちゃんと分かってます)

 

(しれい、がんばって)

 

(ありがとう雪風、くー)

 

ほんの一瞬で念話を終了。慣れると言葉での会話よりも手短に済むから便利だ。

 

「お互いに切り離されている、か……言い得て妙だな、その通りだと思うよ。俺たち第八艦隊の艦娘はな、ずっと寂しい思いをしてきたんだ。他の艦隊の艦娘と交流することすら許されず……たまに呼び出されたかと思えば、ガランとした鎮守府の留守番さ。でも加古の話からすると、どうやらウチの艦娘だけじゃなかったみたいだな………そんなのって、おかしいと思わないかよ、加古!? みんなは仲間だろう、古鷹!? 何で艦娘同士で、仲良くしちゃいけないんだよ!!」

 

「提督ぅ………」

 

「艦隊がバラバラに散らばっているのは、アタシだって不思議に思ってたさ………でもね、深海棲艦を撃退するためには複数の拠点を持った方がいいのかなって、ムリに思い込んで納得しようとしてた。提督さあ、アタシたちにどうしろ……と…?」

 

ちょっとビックリさせ過ぎたかな………せっかく、雷の美味しい朝食を堪能してくれていたのに……でもこれは避けて通れない道……是が非でも、二人を説得しなくちゃいけないんだ。

 

「深海棲艦の侵略は、その大半が東京から静岡のエリアに集中していることぐらい知ってるだろ……不思議な現象だし理由も不明だが、事実は事実だ……艦隊を分散させる必要なんて皆無だよ。一つで充分だ。しかも万が一に備えて、それぞれの艦隊からの遠征部隊が日本沿海区域でパトロールしているんだからな。ウチもこの前、三人を派遣していたよ………もう十年以上も遠征部隊の交戦記録はないけどね」

 

「………」

 

「古鷹、加古。お互いに切り離されていた俺たちがこうして出会えたのって、凄く幸運なことだと思うんだよ」

 

「幸運…ですか……?」

 

「そうだよ古鷹、幸運だ。付近の住民にも艦娘にもケガはなかったし、俺たちはこうして一緒に食事を楽しめる関係になった。そして加古、お前がこの話を始めてくれたからこそこうして議論が煮詰まって、俺たちは次の段階へと進むことができるんだからね……第二艦隊旗艦、古鷹」

 

「はっ、はい!」ピャッ

 

急に改まった呼び方をされて、思わず姿勢を正す古鷹。

 

「俺たちと手を組まないか? 俺は鎮守府を、艦娘みんなが笑顔で過ごせる場所にしたいんだ」

 

 

 

          続く




大型連休も終わりですね
休みを多く取る風潮が広まればいいなと思います
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