「ああ、勿論。何かな?」
「………あの、私たちに…」
「二人に?」
「名前を………下さい……」
「お願いします!」
第五-17話
トコトコ……スタスタ…ポフッ
押入れから布団を出して床の上に敷いていくタルトと、その形を整えたり枕を出したりして彼女を手伝うくー。けっこう慣れてきた感じだ。
「たると、これでいい?」
「ええ、助かったわ。お布団が多くても二人で一緒にやればカンタンね」ニコッ
「うん。しれいのおはなしおわるまで、またなくちゃね」
「そうね。私たちはあちらで本でも読んでいましょ」
「うん」トコトコ
電から聞いたけど図書室から絵本を借りて読むらしいな。タルトが読んであげたりしているのかな?
「………………」///
二人を見て目を細めるミルディ。雰囲気が何だかお母さんみたいだな……見た目はお姉さんだが。
「それは構わないが……いいのかい? ミルディじゃなくて俺で」
「はい!」
「……ミルディ指揮官は……私たちに名前なんて、ムリですー。おい、分隊長とか。お前に任務を与える、とか……。そんなのばっかりですー」
役職名、そして直接的な二人称。確かに戦闘では使いやすいが……。
「つまり二人とも…いや、姫グループのみんなも今までずっと、名前が?」
「ぐるーぷ…ですか? ………あ、我々の軍勢のことですね。はい、名前を持つ者は誰もおりません」
「…………ミルディ?」
「うっ…………だって。だってえええええええ! 私たちって、ぜんぶ合わせたら三百ぐらい居るんだよ!? ムリ! ぜーったいムリなの!! ミルディはね、もう提督ちゃんにおんぶなの!!」クワッ
おい最強指揮官。
「………」
「……はぁ」
悲しげな目を上官へと向ける2人。あれ? 何だか見覚えあるな、この視線……そうだ、司令部でお偉方の面々を相手に、艦娘の素晴らしさを力説した時のリアクションだ。あの時の俺ってもしかして、今のミルディみたく見られてたのかな。
「ううううう! 提督ちゃん、この子たちの目が冷たいよおお!!」ブワッ
「落ち着けミルディ……ほら、お夜食だ。寝る前だから少しだけだぞ」つ
軽い頭痛を覚えながらも、いつも着ている濃紺色の制服、そのジッパー式プリーテッドポケットから袋詰めの明石クッキーを取り出して、1枚だけ彼女に手渡す。
「あらあら~! 提督ちゃんありがとうございます~。パクッ」///
……。
「…美味しい……」ニッコリ
「そうか……。…えっとね、二人とも。知ってるかもだけど、全ての鎮守府には国防省ファイルという資料があって、その中に於てお前たちはそれぞれリ級およびネ級と呼ばれている……俺たちはいつも、その資料を活用しながら作戦を立てているんだけど、今から考える名前もそれを参考にしようと思うんだ」
「はい、ミルディ指揮官からも聞いておりました……私はリ級と呼ばれていることを。どうか、お願い致します」ペコリ
「私もですー。……どうせなら白き重巡戦姫とかが良かったです。それなのに、ネ級って…。名前……お願いします……提督」ペコリ
落胆とそして期待の入り交じった色を浮かべるネ級。けっこう表情豊かだな。
「………お爺さ……、お地蔵さま…、売れな……た笠…」
タルトの声……あ、やっぱりくーに読んであげているのか。こうして見ていると、仲の良い姉妹みたいに思えてくる。
「気を落とすな。いよいよ新しい名前を頂くんだ」
「……うん」
……………へぇ。良いコンビかも。第二艦隊の2人を思い出す。
「白き、か…………よし」
「あ、提督ちゃん。決まったんだね」
「ああ、二人は黒と白の対比が格好いい………それと、俺の見た感じだけど息の合った二人一組だ。だからお互いを思い遣(ヤ)る気持ちを名前に込めてみようと思う」
「まぁ……提督ちゃん」///
先ずはリ級。
「二人はさ、戦闘で一緒に戦うことが多いのかな?」
「はい……提督殿の仰る通り、呼吸が合うと言いますか…」
「分かったよ、お前のパート……相棒の呼称であるネ級のネを、心に結び付けるという意味を込めて……ネビュラ。漆黒の宇宙に輝く星雲のことだ。どうかな、ネビュラ?」
「星雲……星の、集まり…」
「そう。その艶(ツヤ)のある黒髪を宇宙に、そして星雲という白い輝きを……」
ネ級に一瞬、視線を向けてから、
「彼女に見立てたんだ。リ級のリではなく、敢えてネ級のネに肖(アヤカ)ることで二人の絆を強調せしめるようにしてみた。気に入ってくれたかな?」
そしてネビュラは
「ありがとう……ございます。…はい、嬉しい…」///
「良かった。さあ、次だ」
ネ級の方に向き直る俺。
「……あの…、お願いしますー」///
「うん、ネビュラと同じようにしてみたよ。ネ級のネじゃなくて、リ級のリを土台にする。…あのさ、その白い髪…ほんと綺麗だな」
響の髪も、本当に綺麗だけど。負けてないな。
「………そんなぁー。恥ずかしい、ですー」///
「……あらあら、赤くなっちゃって~。私だって、富士に降りたる白雪みたいな髪なのにな~」ジトー
やや苛立ちの表情でネ級を見つめるミルディ。
「………黙って。つーか、黙らせられたい?」ギロリ
「うわあああああん!! 提督ちゃあああああああん!! ミルディ、みんなの指揮官なのにいいいいいい!!」ブワッ
…頭痛薬、まだ救急箱にあったか?
「………それは今までのハナシ。これからは、提督が私たちの指揮官………。貴女は、提督の……部下」
「はっ! 私、もしかしてドジ踏んじゃった!?…ううん、そんなことない!! ないんだからああああああ!!」
「……ミルディ」つ
「まあ!! ありがとう提督ちゃん~。パクッ」///
よし、今のうちに……何だか三枚のお札を使って山姥(ヤマンバ)から逃げ切った小僧みたいな気分だな。
「…その髪を見て、思い浮かべたんだよ。リ級のリから………リリィ。百合(ユリ)の花って意味だよ……どうだ、リリィ?」
「リリィ……私の…お名前……」
「そうだリリィ。ネビュラとの絆って意味を込めた、お前の名前だよ」
ガバッ
飛び付いてきたリリィ。彼女の戦闘装束は体にピッタリとフィットしていて、ふくよかな胸の形がハッキリと浮かび上がっている。
むにゅうう
「ありがとう提督。私……嬉しい…リリィかー。えへへ…」///
彼女の抱擁。風呂あがりだろう、暖かな体温と良い匂い……そしてふっくらとした胸の感触。豪華すぎるお返しを、遠慮なく堪能する。
「気に入ってくれたみたいだな。良かったよ」ギュウウ
「あはぁ………。提督…提督う……」///
「提督ちゃん……ありがとうございます、私からのお願いを聞いてくれて。それじゃ次は、提督ちゃんのお話……かな?」
そうだ、そのためにミルディを待たせていたんだったな。この調子でさっさと済ませるとしよう。
続く
図鑑の空欄がまだまだあります
もう凄いボリュームとしか