鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

34 / 69
第五-17話

「ああ、勿論。何かな?」

 

「………あの、私たちに…」

 

「二人に?」

 

「名前を………下さい……」

 

「お願いします!」

 

 

 

第五-17話

 

 

 

トコトコ……スタスタ…ポフッ

 

 

 

 

押入れから布団を出して床の上に敷いていくタルトと、その形を整えたり枕を出したりして彼女を手伝うくー。けっこう慣れてきた感じだ。

 

「たると、これでいい?」

 

「ええ、助かったわ。お布団が多くても二人で一緒にやればカンタンね」ニコッ

 

「うん。しれいのおはなしおわるまで、またなくちゃね」

 

「そうね。私たちはあちらで本でも読んでいましょ」

 

「うん」トコトコ

 

電から聞いたけど図書室から絵本を借りて読むらしいな。タルトが読んであげたりしているのかな?

 

「………………」///

 

二人を見て目を細めるミルディ。雰囲気が何だかお母さんみたいだな……見た目はお姉さんだが。

 

「それは構わないが……いいのかい? ミルディじゃなくて俺で」

 

「はい!」

 

「……ミルディ指揮官は……私たちに名前なんて、ムリですー。おい、分隊長とか。お前に任務を与える、とか……。そんなのばっかりですー」

 

役職名、そして直接的な二人称。確かに戦闘では使いやすいが……。

 

「つまり二人とも…いや、姫グループのみんなも今までずっと、名前が?」

 

「ぐるーぷ…ですか? ………あ、我々の軍勢のことですね。はい、名前を持つ者は誰もおりません」

 

「…………ミルディ?」

 

「うっ…………だって。だってえええええええ! 私たちって、ぜんぶ合わせたら三百ぐらい居るんだよ!? ムリ! ぜーったいムリなの!! ミルディはね、もう提督ちゃんにおんぶなの!!」クワッ

 

おい最強指揮官。

 

「………」

 

「……はぁ」

 

悲しげな目を上官へと向ける2人。あれ? 何だか見覚えあるな、この視線……そうだ、司令部でお偉方の面々を相手に、艦娘の素晴らしさを力説した時のリアクションだ。あの時の俺ってもしかして、今のミルディみたく見られてたのかな。

 

「ううううう! 提督ちゃん、この子たちの目が冷たいよおお!!」ブワッ

 

「落ち着けミルディ……ほら、お夜食だ。寝る前だから少しだけだぞ」つ

 

軽い頭痛を覚えながらも、いつも着ている濃紺色の制服、そのジッパー式プリーテッドポケットから袋詰めの明石クッキーを取り出して、1枚だけ彼女に手渡す。

 

「あらあら~! 提督ちゃんありがとうございます~。パクッ」///

 

……。

 

「…美味しい……」ニッコリ

 

「そうか……。…えっとね、二人とも。知ってるかもだけど、全ての鎮守府には国防省ファイルという資料があって、その中に於てお前たちはそれぞれリ級およびネ級と呼ばれている……俺たちはいつも、その資料を活用しながら作戦を立てているんだけど、今から考える名前もそれを参考にしようと思うんだ」

 

「はい、ミルディ指揮官からも聞いておりました……私はリ級と呼ばれていることを。どうか、お願い致します」ペコリ

 

「私もですー。……どうせなら白き重巡戦姫とかが良かったです。それなのに、ネ級って…。名前……お願いします……提督」ペコリ

 

落胆とそして期待の入り交じった色を浮かべるネ級。けっこう表情豊かだな。

 

「………お爺さ……、お地蔵さま…、売れな……た笠…」

 

タルトの声……あ、やっぱりくーに読んであげているのか。こうして見ていると、仲の良い姉妹みたいに思えてくる。

 

「気を落とすな。いよいよ新しい名前を頂くんだ」

 

「……うん」

 

……………へぇ。良いコンビかも。第二艦隊の2人を思い出す。

 

「白き、か…………よし」

 

「あ、提督ちゃん。決まったんだね」

 

「ああ、二人は黒と白の対比が格好いい………それと、俺の見た感じだけど息の合った二人一組だ。だからお互いを思い遣(ヤ)る気持ちを名前に込めてみようと思う」

 

「まぁ……提督ちゃん」///

 

先ずはリ級。

 

「二人はさ、戦闘で一緒に戦うことが多いのかな?」

 

「はい……提督殿の仰る通り、呼吸が合うと言いますか…」

 

「分かったよ、お前のパート……相棒の呼称であるネ級のネを、心に結び付けるという意味を込めて……ネビュラ。漆黒の宇宙に輝く星雲のことだ。どうかな、ネビュラ?」

 

「星雲……星の、集まり…」

 

「そう。その艶(ツヤ)のある黒髪を宇宙に、そして星雲という白い輝きを……」

 

ネ級に一瞬、視線を向けてから、

 

「彼女に見立てたんだ。リ級のリではなく、敢えてネ級のネに肖(アヤカ)ることで二人の絆を強調せしめるようにしてみた。気に入ってくれたかな?」

 

 

そしてネビュラは

 

 

「ありがとう……ございます。…はい、嬉しい…」///

 

 

「良かった。さあ、次だ」

 

ネ級の方に向き直る俺。

 

「……あの…、お願いしますー」///

 

「うん、ネビュラと同じようにしてみたよ。ネ級のネじゃなくて、リ級のリを土台にする。…あのさ、その白い髪…ほんと綺麗だな」

 

響の髪も、本当に綺麗だけど。負けてないな。

 

「………そんなぁー。恥ずかしい、ですー」///

 

「……あらあら、赤くなっちゃって~。私だって、富士に降りたる白雪みたいな髪なのにな~」ジトー

 

やや苛立ちの表情でネ級を見つめるミルディ。

 

「………黙って。つーか、黙らせられたい?」ギロリ

 

「うわあああああん!! 提督ちゃあああああああん!! ミルディ、みんなの指揮官なのにいいいいいい!!」ブワッ

 

…頭痛薬、まだ救急箱にあったか?

 

「………それは今までのハナシ。これからは、提督が私たちの指揮官………。貴女は、提督の……部下」

 

「はっ! 私、もしかしてドジ踏んじゃった!?…ううん、そんなことない!! ないんだからああああああ!!」

 

「……ミルディ」つ

 

「まあ!! ありがとう提督ちゃん~。パクッ」///

 

よし、今のうちに……何だか三枚のお札を使って山姥(ヤマンバ)から逃げ切った小僧みたいな気分だな。

 

「…その髪を見て、思い浮かべたんだよ。リ級のリから………リリィ。百合(ユリ)の花って意味だよ……どうだ、リリィ?」

 

「リリィ……私の…お名前……」

 

「そうだリリィ。ネビュラとの絆って意味を込めた、お前の名前だよ」

 

 

ガバッ

 

 

飛び付いてきたリリィ。彼女の戦闘装束は体にピッタリとフィットしていて、ふくよかな胸の形がハッキリと浮かび上がっている。

 

 

むにゅうう

 

 

「ありがとう提督。私……嬉しい…リリィかー。えへへ…」///

 

彼女の抱擁。風呂あがりだろう、暖かな体温と良い匂い……そしてふっくらとした胸の感触。豪華すぎるお返しを、遠慮なく堪能する。

 

「気に入ってくれたみたいだな。良かったよ」ギュウウ

 

「あはぁ………。提督…提督う……」///

 

「提督ちゃん……ありがとうございます、私からのお願いを聞いてくれて。それじゃ次は、提督ちゃんのお話……かな?」

 

そうだ、そのためにミルディを待たせていたんだったな。この調子でさっさと済ませるとしよう。

 

 

 

          続く




図鑑の空欄がまだまだあります
もう凄いボリュームとしか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。