「提督ちゃん……ありがとうございます、私からのお願いを聞いてくれて。それじゃ次は、提督ちゃんのお話……かな?」
そうだ、そのためにミルディを待たせていたんだったな……この調子で、さっさと済ませるとしよう。
第五-18話
チラッ
くーとタルトは……よし、ちょうど1冊目を読み終えたところだな。いい頃合いだ。
(くー、タルト)
(はい、提督!)
(しれい?)
(今からミルディと始めるのは、とても大事な話なんだ。二人にも聞いてほしい)
(うん、わかった)
(分かりました、提督)
「(直ぐに始めるよ、そのままで待っててくれ……)そうだね、ミルディ。同盟は結んだけれど、他の事柄に関しても幾つか尋ねておきたいんだ。リリィ、残念だけどここまでだ。これからは仲間だよ……改めてだけど、よろしくな。ネビュラも、よろしくね」
「はい、提督殿!」ペコリ
「……残念ですー。……はい、よろしく…お願いします……あむっ」///
離れぎわの、軽いキス。大人しそうな印象だったけど、意外と積極的だな。
「それじゃ始めるぞ、ミルディ。座って話そう」
「提督ちゃん、はいどうぞ」つつ
「座布団か、ありがとう。ネビュラとリリィも座ってね」ストン
「はい、提督殿」ペタ
「ありがとうございますー」ペタン
「提督ちゃん、失礼します……。それでね、お話って?」スッ
正座か。ミルディも所作が洗練されてるな……タルトみたいだ。陸上での生活の賜物(タマモノ)か。
「とても重要な話だよ。だからミルディ、今から始めるこの会話は、みんなに聞いてもらいながら進めようと思う。いいね?」
「ええ、勿論よ提督ちゃん……? でも、タルトもくーもネビュラもリリィも、さっきからずっと聞いてるわよ?」キョトン
「そうだな。そして別室に居る仲間みんなにも、だよ」
「え……………あ! もしかして、心で会話できるっていうアレかな!?」
「この鎮守府に来たことがあるミルディなら、きっと知ってるだろうと思ってたよ。そう、ここの仲間はみんな念話が使えるんだ……それじゃ、いくぞ……(ミルディ、聞こえるか?)」
(あ……提督ちゃん!! 提督ちゃんだね……うん、よく聞こえるよ! へえ~、こんな感じなんだ)ニッコリ
(よし、次だ………ネビュラ、リリィ。二人とも聞こえるかい?)
(はい、聞こえます…!)
(聞こえますー。………何だか、フシギですー)///
3人とも話せるんだな……有り難い。さてと、みんな離れているからいつもより出力を上げなくちゃだな。
(順調そうだね、いい感じだ。他のみんなも聞こえるな? 俺は今からくーの部屋でミルディと、これからの方針について重要な打ち合わせを始める。みんなもしっかり聞いててくれ…それとね、これは念話の距離テストも兼ねているから、聞き取りにくい場合にだけ直ぐに知らせてほしい。何も連絡がなければ、きちんと聞こえているものと判断して、どんどん話し続けるからね)
……………………。シーン
よし。
(……先ずはミルディ、ありがとう。今回の同盟は元々、ミルディが打診してくれたからね……繰り返すよ、本当にありがとう)
彼女の目をしっかり見つめながら伝える。
(あ……て、提督…ちゃん。あの…その……)///
(俺さ、深海棲艦のことをずっと敵だと思い込んで戦ってた。でもな、ミルディを見てて気付いたんだよ……陸(オカ)に上がって人を好きになるなんて、誰が何と言おうと人間の友達に決まってるって。その女性に仲間がいたのなら、いくら暴走しているとはいえ、説得してみるべきだって)
右も左も分からない場所なのに、それでも好きな相手と暮らす……とても素敵なことだと思う。
(だから……これからの、俺の方針だよ。みんなのチカラを頼りにして取り組んでいく積りだ)
(……さっきタルトから聞いたけど……提督ちゃん、泊地水鬼を倒したんだってね。危険なヤツだったでしょ? だから他の鬼も、ね……説得するなんて無理じゃないかな……?)
(それでも、だよ。俺の考えが間違っていなければ、彼女たちだって人々の魂を受け継いでいる筈だ……この日本に帰りたいと願う魂を、ね。ミルディの姫グループが日本で暮らしたいと願うのも、人々の魂がそうさせているんだと思う)
(考えたこともなかったな……。それじゃ、どうして奴らは攻めてくるの? 本当に帰りたいだけなら、提督ちゃんたちを傷付けるなんて、おかしいよ)
(それはね、ミルディ。怒りなんだ)
(………怒り…なの? どういう怒り?)
(自らを死地に追いやった内閣と軍部に対する怒り、だよ。そして、それらの組織によって建造され……これは年若い艦船に限ったケースだ……古参の中には、明治時代から戦っていた艦船だってあったんだからな……建造され、整備・改修されていた艦船の魂が、乗組員として共に戦った当時の人々の魂と結び付いて今の時代に顕現した存在……それが、艦娘だ。つまり艦娘は、深海棲鬼に宿る魂たちから見れば、怒りの矛先を向ける為政者たちに仕えた、忠実な戦士に他ならないのさ……だから鬼たちは、艦娘を攻撃する。その艦娘たちを支えたい俺を亡き者にせんとするのは、鬼たちにとって当然の行為なんだ。これが、質問の答えだよ)
(提督ちゃん…………いや。そんな…怖いこと、言わないでよ……)
(少しも怖くないよ、ミルディ)
(え…………?)
(ここには、みんなが居るんだからな……しかもミルディたちが加わって、艦隊は更に強力になったんだ。怖いことなんて何もないよ。そうだろ?)
(…うん、提督ちゃん。そうだったね)///
(ああ。そしてお前が言った通り、俺はみんなの力を使って泊地水鬼を倒した。鬼たちの指揮官は今頃、配下を四方に派遣して誰に倒されたのかを探っている筈だ……少なくとも俺ならそうするね、脅威の正体を特定するために。やがて俺たちの第八艦隊が怪しいという結論に辿り着くのは、時間の問題だと思う……何しろ、泊地水鬼が消息を絶ったのはこの海域なんだからな。だからこちらも、色々と準備をしなくちゃ)
(……どうやって、準備するの?)ジーッ
(そうだな、先ずは情報の共有といくか。ミルディ、俺たちはまだ、鬼グループの指揮官……つまり俺たちにとって最大の敵が誰なのか、知らないんだよ。だからそこから始めよう。教えてくれ……一体、誰なんだい?)
(あ、それはね……軽巡棲鬼、なの……)
………意外だ。
残る3体の中で、最も火力の低そうな軽巡棲鬼か。
(とても狡猾で、残忍なヤツなのよ……提督ちゃん、アナタのね、説得するって方針に従いたいよ……でも、あいつだけは私、無理だと思うな……)
(? 理由を聞かせてくれ)
(あいつはね、嵌(ハ)めたの……私たちの、とっても強かった仲間を、ね……)
(罠か……一体、誰を?)
(………戦艦棲姫よ、提督ちゃん。タルトに最期の言葉を託した、とっても優しかった女の子……)
彼女ね、私に何て言ったと思う!? 後を、頼んだわよって!!
戦艦棲姫。
国防省ファイルで見たことがある。凄まじい強さである、と記述されているんだが……そうか、もう……。
同じ戦艦のあなたが、みんなを、守ってねって!! そう言ったのよ!!!
戦艦棲姫……同じ、戦艦から……タルトは突然、重大な役目を託されたんだな。
たるとはね………いつもいっしょうけんめいなの。だから…………つい、おもいつめちゃうの………ほかのこたちと、よくけんかしてたし…
タルトが喧嘩してた原因は恐らく、戦艦棲姫を失った苦しみに耐えていたということに加えて、分隊長だったであろう彼女の役目をも引き継いだことによる精神的疲労だな。ミルディも言っていたな……疲労は人を蝕むものだって。タルト……お前、ほんと苦労してたんだな。そして、そんなタルトに様々な役割を与えなければならなかったミルディはどうだったんだろう? 会ったばかりだけれど、彼女はそういうのって苦手そうな気がする。
もしかすると、ミルディもタルトと同様に、精神的な苦しみを味わっていた可能性が………?
(ミルディ)
(はい、提督ちゃん)
(鬼グループの総勢は?)
(分からないの。全く、分からない…ごめん……)
!?
待て。
それじゃ相手との戦力差はずっと不明のままじゃないか。危険過ぎるだろ……そんな戦い方を続けてきたのか? 無論、ミルディにも事情があったんだろうけど。
それにしても、危険過ぎる………ある日の会戦で突然、普段の十倍の戦力で襲ってきた、なんてことになったら一巻(イッカン)の終わりだぞ。
この話題はマズい。ここまでにしよう……ミルディの指揮能力にみんなが疑問を抱くなんて事態は避けなくちゃ。
(分かった……苦しい戦いを重ねてきたんだな。お前の言う通り、かなり狡猾な相手だと思う。それじゃ次の質問だよ……姫グループは三百ぐらいだってさっき言ってたけど、分隊長クラス……さっきタルトは分隊指揮という言葉を使っていたから、この呼び方で合っていると思うんだが……ミルディから直々(ジキジキ)に指令を与えられ、ミルディの手足となって戦う分隊長クラスは今、何人いる?)
ミルディとの会話を重ねてきて分かったことだけど、タルトは姫グループの序列に於てかなり高い位置を占めている。ミルディとタルトの双方から話を聞きながら進める方が、情報共有は捗るんだけどな……でも、それはやめておこう。今のタルトは間違いなく、戦艦棲姫のことを思い出しながら俺たちの会話を聞いている。そっとしておくべきだ………。
(以前からの分隊長は四人だよ、提督ちゃん……。もっと大勢いたんだけど、今はもう、ね………)
か細い声のミルディ。4人か……戦艦棲姫が果たしていた役割をタルトが受け継いだから5人の時期もあった筈だが、第六艦隊に派遣される際にその任務は解除となったから今は4人、ということだろう。
(全員の呼び名を)
(水母棲姫、港湾棲姫、北方棲姫…そして駆逐棲姫、くー)
(強くて冷静な子だと思っていたよ。成る程な、分隊長を務めているとはね)
(でも今は提督ちゃんの側がいいみたい。他の分隊長についてはね、水母棲姫と港湾棲姫がお留守番して指揮を執ってるの。私がいないからね)
(北方棲姫は?)
(あの子はとても気性が激しくて、あちこちで奴らと戦っているの。時おり、弾薬を補充するために戻ってくるけれど。もう……困った子なんだから)
(一人で?)
(うん、一人だよ。でもね、さっきの泊地棲鬼みたいなマネはしないよ。正面から一対一の戦いに持ち込むの)
………。
ここまで話をして分かったことがある。
ミルディにとって、指揮官という任務は荷が勝ち過ぎている。
彼女が懸命に戦っていることは間違いないが血気(ケッキ)盛んな部下の行動を制御できていないし、何より敵の規模を把握していないのは致命的だ……それでも戦い続けているのは驚嘆に値するけど。ミルディの性格から推測すると……索敵部隊を派遣してはみたものの生還すること能わずの憂き目を見るに至り、悲しみのあまり二度と偵察を命じないようにしている……ってところかな。
今、確信した。ミルディもタルトと同じだ。休息させなくちゃ。これ以上は、ヤバい。
よし決めた。
(………俺の部下になってくれたミルディ。最初の、命令を下す)
(………!!)ササッ
立ち上がるミルディ。マイペースな性格してるけど、こういうトコは律儀だ。俺も立ち上がる。慌てて、ネビュラとリリィも。
(提督ちゃん、お願いします!)
真剣な表情。どこか幼さの残る顔立ちをしているから木曾や天龍の凛々しさとは少し雰囲気が違うけれども、これがミルディの素顔なんだ……マイペースで、だけどいざという時には部下思いな、彼女の。
(これ以上、姫グループの被害を拡大させるわけにはいかない。ミルディ、俺たちをグループの本拠地に案内するんだ。残っている軍勢を脱出させる。そして全員、第八艦隊の仲間としてここを新たな拠点にして戦っていくぞ)
続く
西洋ファンタジー素晴らしいです
そして日本ファンタジーも本当に