鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第五-19話

(これ以上、姫グループの被害を拡大させるわけにはいかない。ミルディ、俺たちをグループの本拠地に案内するんだ。残っている軍勢を脱出させる。そして全員、第八艦隊の仲間としてここを新たな拠点にして戦っていくぞ)

 

 

 

第五-19話

 

 

 

ペコリ…

 

 

 

(分かりました……提督ちゃんの艦隊をご案内し、部下たちを脱出させます)

 

(しっかりやっていこう。そうだ、最後に一つだけ)

 

(はい)

 

(ミルディ、そしてみんな………もしかするとみんなの中には、こんな考えが出てきているかもしれないね。深海棲鬼の軍勢が艦娘を襲うというのなら、艦娘がしばらく身を隠しておけば全てうまく片付くんじゃないか、とね。そうすれば鬼グループは艦娘を気にすることなく魂と共にこの日本へと上陸し、それにより悲願が成就して戦いは終わる筈だと………)

 

そんな風にいけば、どれだけ楽なことか。

 

(でもね、残念ながらこの考えには賛成できない……みんなに宿っている魂のことがあるからね。鬼に宿る魂から見たら戦友、 共に戦った仲間同士なんだぞ? 確かに為政者への憎しみは想像を絶する深さだと思うけど、それでもみんなに対して仲間意識を抱く魂だって居る筈なんだ。居なきゃおかしい)

 

(でも実際、私たちは何度も襲われているね………)

 

(そう。本来ならおかしいんだよ……ミルディも艦娘なんだからな。てことは、その「本来」を歪めてしまうようなことをやってるんだろう)

 

(提督ちゃん…それは?)

 

(鬼の軍勢に対してひたすら戦闘を命じ、艦娘への友好的な態度など断じて許さない。恐らく軽巡棲鬼がそんな姿勢を貫いているんだと思う。だから戦友の魂が宿る艦娘すら攻撃するんだ。憎しみに支配されているが故の姿勢なんだろう。残念だけど、艦娘が身を隠して鬼を迎え入れたとしても、彼女はそんなことお構いなしに軍勢を率いて襲ってくるよ。鬼のグループを迎え入れれば全て終わり、めでたしめでたしになるわけじゃない。だから、ドンドン上陸させるってのはナシだ。あくまでも、こちらの説得に耳を傾けた鬼だけを迎え入れるんだ…これは鉄則だよ)

 

(分かりました、提督ちゃん)

 

(但し俺は、説得に固執する積りはない……俺が最優先するのは艦娘みんなの安全だ。こちらの説得にも拘わらずみんなを傷付けようなんてマネしたら、俺は躊躇なく攻撃命令を出す………絶対にだ。こんなところかな。俺からの話は以上だよ、みんなお疲れ。ゆっく………)

 

(くーだよ。しれい、ごめんなさい。みんなにおはなししたいの。いい?)

 

くー?

驚いたな……彼女がこういう場面で発言するなんてケースは初めてだ。

でも

 

(くー。俺たちの仲間として言いたいことがあるんだな…分かったよ。聞かせてくれ)

 

(しれい、ありがとう。……あのね、みんな。しれいのおはなしなんだけどね。くーは、しんじつだとおもうの。くーがひとりのときに、おおきなてっぽうかついだおにがきてね、こういったの……もうわるいことしない。わたしたち、たたかいをやめてあのくににいきたいって)

 

くーを連れ出した泊地棲鬼か。

 

(だから、くーのちからがいるんだって。いっしょにあのくににいきましょうって、そういったの。くー、そのときね、いっしょにいきたいっておもっちゃったの……てきなのに。じぶんでもわかんなかった。でもそうおもっちゃったの。しれいのおはなしはね、ほんとなの。わたしたちは、ここでくらしたいってたましいがいっしょなの……)

 

くーの言葉が途切れる。考えを纏めながら言葉を選んでるんだろう。

 

(…いまね、とってもうれしいの…ここでくらしてるから……てきのおにも、おなじ。くーは、おにがいいこになるのならつれていってあげたい。いなずまはてきでもたすけたいっていうの。くーもおんなじ。しれいがせっとくするの、てつだうよ)ニッコリ

 

俺に微笑みかけるくー。

……ありがとうな天龍。

彼女を仲間にできたのは、お前が連れてきてくれたからだ。

 

(嬉しいよ、くー。その力を頼りにさせてもらうからね……みんなもだよ)

 

(うん)///

 

(ミルディ…今日はお疲れ。ゆっくり休んでね)

 

(はい、提督ちゃん)///

 

 

 

ガバッ……ギュウウ!

 

 

 

「提督………本、当…ですか……私、たち……グスッ…これから、ここ…………、で……?」///

 

リリィが再び抱き付いてきた。さっきよりも力強い抱擁……でも声が、震えている?

 

「ああ本当だよリリィ。嬉しいのかい?(みんな、脱出作戦には驚いたかな? でも仲間を助けるなんてのは当たり前のことだからね。分からないことがあれば、いつでも聞いてくれ。それじゃ今日はここまで…脱出作戦に関する詳しい打ち合わせは、明日以降に行う。みんな、おやすみ)」ギュッ

 

「ひゃうんっ……。はい、とっても嬉しい…で……す…………」///

 

(おやすみなさい提督)

 

(おやすみー)

 

(戦闘になりますね……頑張ります提督! おやすみなさい)

 

(疲れたらいつでもオレの部屋に来いよ。おやすみ)

 

(私のお部屋も! おやすみなさいですぅ)

 

(賑やかになりそうね……龍田と五月雨には、ちゃんと説明しなくちゃ。おやすみなさい)

 

(おやすみなさい)

 

(おやすみー)

 

みんなの声を聞いていると元気が出てくる。敵を倒すばかりじゃない。周りを元気にしてくれるのも艦娘のチカラだ。

 

「リリィもお疲れ。さ、この部屋でゆっくり休むんだ」ポンポン

 

「………………」

 

リリィ………?

 

「……すー」

 

「まったく……提督殿、申し訳ありません。どうやら緊張の糸が切れたようです」

 

いやリリィの体温が気持ち良くて役得だぞ。

 

「いいんだよ、それだけココで安らいだ気持ちになってくれたってことだ。くーとタルトが布団を敷いてくれてて良かったよ……タルト、掛け布団を頼む」

 

「はい、提督」スッ

 

「ありがとう。………よし」

 

リリィを横たえて掛け布団を戻してやる。穏やかな寝顔だ。

 

「ミルディ、雪風がみんなの浴衣を用意したと思うんだけど。リリィは風呂上がりだよな?」

 

「あ……うん、雪風ちゃんはキチンと用意してくれたよ。でも、見た目がとてもキレイでしょ? この子、ビックリして……」

 

遠慮したってわけだな。

仕方ないか。

 

「……ミルディ。本拠地で暮らす環境は、やっぱり過酷かい?」

 

「…うん、提督ちゃん。島で暮らしているとね、風とか湿気とか凄いよ……でもね………」

 

「でも?」

 

 

 

「でも……それ、も……もう……すぐ……うっ………終わるんだ、ね………」

 

 

 

俯きながら両手を口に当てて涙を堪えるミルディ。

 

風とか湿気とか、か……。

とても、そんな言葉じゃ言い尽くせないよな。お前たちが味わってきた苦しみは。

 

ミルディに寄り添い彼女の肩を抱く。

 

「この鎮守府はとても広いんだ…三百人なんて全く問題にならないから安心していいよ。とは言っても、大半はイ級かな?」

 

「うん……そう……だよ…。あと、ワ級……輸送艦の…。みんなにお名前…付けてあげなくちゃいけないのに……ね…。私ったら、……ほんとに…」

 

「ミルディだって大変だったんだ。気にしちゃダメだぞ……タルト、くー。ミルディを頼む」

 

ミルディを抱きしめたい衝動を辛うじて抑える俺。二人きりならともかく、今はいけない。もう指揮官ではないけれど、それでもミルディは姫グループを率いてきた戦士なんだ。涙を流しながら誰かに縋(スガ)る姿を部下に見せるわけにはいかない。

 

「わ…分かりました、提督」

 

「うん、わかった。みるでぃ、おちついて。あとでみんなでいっしょにおふろはいろ?」

 

「ええ……そう、ね……」グスッ

 

タルトは戸惑っているな…無理もない。彼女の中でミルディという指揮官は強く大きな存在なんだ。初めて見る姿に、どう接するべきなのか分からないんだろう。しかもさっきは自らの感情をぶつけたんだ、気まずさを感じているかも。

でも、それでいいと思う。

ミルディはタルトの意外な気持ちを知り、タルトはミルディの意外な一面を目の当たりにした。

こうやって少しずつお互いの距離を縮めていけば、きっといつか良い関係が生まれる。

 

「みんなおやすみ……また明日な」パタン

 

扉を後ろ手に閉めて廊下に出る………照明が落ちていて、とても暗い。そうか、もう二十一時を過ぎてるんだな。月明かりのお陰で周囲の様子は何とか把握できる。

 

 

 

ガチャ…パタン

 

「あの……提督殿」

 

あれ? この声は…

 

「ネビュラ。どうかした?」

 

振り向くと、こちらをジッと見つめる彼女と目が合った。ビキニしか身に着けていない大胆な姿は、室内とは異なるこんな暗闇の中では刺激的すぎてドキッとするなあ……彼女やリリィ、そしてタルトの扇情的な写真について木曾から聞いた時の驚きを思い出す。今ではみんなの積極的なスキンシップのお陰で、ちょっとしたことでは狼狽(ロウバイ)しなくなったけど。

 

「その…、提督殿。今日は色々と……本当に、ありがとうございました」ペコリ

 

「いいんだよネビュラ、俺だって姫グループと同盟を結べたことが嬉しくて仕方ないんだ。タルトから俺たちのことを聞いたんだね?」

 

「はい。第五艦隊での出来事を聞いた時はミルディ指揮官……あ、申し訳ありません……ミルディも我々も驚きました。でもタルトは、計画が失敗したというのに何だか妙に楽しそうで…今ならその理由が分かります。あいつはきっと、予感していたのでしょう」

 

「予感?」

 

「はい提督殿。あなたがきっと、我々に何か素敵なものを齎(モタ)らしてくださる……そんな予感、です」

 

「嬉しいな。でも俺だって同じだよ…お前たちが来てくれたことは、とても心強いんだ。お互い様だよ」

 

「提督殿……ありがとうございます。それと、ミルディのことを…」

 

「ミルディの?」

 

「はい。彼女はタルトから詳しい話を聞いた途端に、とても喜んだのです。最初はとても驚いて……いえ、怒りすら見せていたのに」

 

当然だな。彼女たちにとって、生活資金を蓄えることはとても重要なんだ。俺はそれを潰したんだから。

 

「ミルディが喜ぶ姿なんて、我々は見たことがありません……ですが第五艦隊から第七艦隊の提督が、提督殿の計らいにより失職せずに済んだとの経緯をタルトから聞くや否や、彼女は我がことのように喜んだのです。やがて、貴方と同盟を結びたいと言い始めて……」

 

それが俺を好きだと言ってくれた理由…?

艦娘たちを仲間にしたかったから、室長たちに交換条件として保身への協力を提案しただけなんだけどな。

 

「かつて愛した人の友人らしいからね、第六艦隊の提督だった男は」

 

「はい。そして今日のミルディ………私は今でも驚きを禁じ得ません。戦場では凄まじい迫力で敵を屠る彼女が、提督殿の前ではまるで駄々をこねる少女のように……いえ、まるで、というのは違いますね」

 

 

「あれこそがミルディの本当の姿なのでしょう。提督殿…ミルディは貴方を、心から信頼しています……自らの素顔を見せてしまうのですから。今日の彼女の振る舞いが何よりの証拠…お願いです、どうかこれからもずっと支えてあげてください……」

 

ミルディ…お前って素敵な部下に囲まれてるよな。

 

「分かったよネビュラ…お前のその気持ち、何て言うかグッときたぞ。それとね……ミルディだけじゃないからな?」

 

「え………提督殿?」キョトン

 

「お前たち艦娘みんな、だよ。ミルディもネビュラもリリィもみんなだ。俺の仲間なんだからな……みんなを支えることこそ、俺の役目なんだ。俺はそのために、ここに居る」

 

「で、でも……私たちは、部下……」

 

「確かにそうだ。命令系統に於ては、ね。でも単なる部下じゃなくて仲間だ。小柄な女の子が四人いただろ……かつて第六駆逐隊と呼ばれていた面々だ。あいつらな、非番の時は朝から俺の部屋に来て布団に潜り込んでくるんだぞ。どこかに連れていってとか、ゲームしようとか」

 

「て、提督殿の寝床に、ですか!?」///

 

「そうだ……自分たちの部屋からパジャマ姿のままで来るんだ…近いからいいんだけどね。気が向いた時は前の晩から俺の部屋で寝てる。部下だけどそんなのお構いなしだ……でもな、ネビュラ」

 

「はい…」

 

「俺はそんな風に過ごすのが好きなんだ。部下だけど、まるで家族みたいに接してくる彼女たちが居てくれるから、鎮守府の中が本当に柔らかな雰囲気に包まれる。だからネビュラ、部下という立場であっても俺はそんなの気にしないよ。俺は艦娘みんなが好きなんだ……部下ではなく、仲間として。だからみんなを支える。お前たちみんなをね」

 

「………提督殿…」

 

「うん?」

 

「失礼…しますッ! はむ」///

 

ネビュラのキス。艦娘ならではの身のこなしで、あっと言う間に距離を詰めて。

 

「はふぅ………じゅるっ……あむぅ」

 

むにゅ……ぐにゅう

 

俺の首に両腕を巻き付けるネビュラ。密着する体勢なので、ビキニしか着けていない胸のしっかりした張りの感触がこれでもかと伝わってくる。

 

「提督……殿…れろぉ……んちゅう………私も…貴方を……支えます…」ジュル

 

(ありがとうな、ネビュラ。嬉しいよ)

 

(あ……こんな使い方…ふふ、便利ですね……)ペロ…ジュムッ…

 

(念話は本当に役立つ…戦闘でも、こんな時でもね。但し、艦娘同士の念話は俺の近くでないと不可能なんだ。忘れないでくれ)

 

(あ……そうなのですね。分かりました…んむぅ………あふぅ)クチュ…ペロ

 

(ネビュラ。そろそろお前の様子を見に誰かが部屋から出てくる頃だ。残念だが………)

 

(あ………はい…提督殿)ショボン

 

(またいつでもできるよ)

 

(はい。では、最後に…)ギュッ

 

俺の腕を両手で掴んだネビュラ。もしかして。

 

(うふふ……リリィの奴には先を越されましたから…)ニッコリ

 

むにゅん

 

ビキニをずらしながら俺の手を胸に導くネビュラ。しっとりとした手触りで気持ちいい。

 

(積極的なんだな…素敵なおっぱいだよ)

 

彼女の胸を揉んでいく。しっかりした手応えだ。

 

(あ……あぁ……ん……これで…私のおっぱいが先…です……ね…あふぅ……)///

 

(そうだな。満足したかい?)

 

(まあまあ…です……ほんとは……あぅ……あ…接吻も先にしたかった………です)

 

(リリィも大胆だからな……ネビュラ、そろそろ明日に備えて寝るとしよう。……っと、大丈夫か?)

 

よろめくネビュラ。どうやらキスと愛撫で気持ちよくなってくれたみたいだ。

 

(はい……提督………殿。では、これで……)///

 

「ああ。おやすみ、ネビュラ」

 

「おやすみなさい、提督殿」ニッコリ

 

胸元を整えて室内へと戻るネビュラを見届けてから、俺も執務室へ。本当に色々なことが一気に進展した一日だった。明日からも忙しくなりそうだな……。

 

 

 

…………、…………

 

 

 

……………?

 

何だ、今の。

森の方から……誰かの声が聞こえたような………?

 

廊下の窓に近付き外を見下ろす…が、別に異状は見受けられない。

風の音が人の声みたいに聞こえたのかな?

…異状がないのなら構わない。

そろそろ寝よう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザアアアアアア…………!

 

 

 

 

 

澄みわたる青空の下、姫グループの本拠地たる島を目指す第八艦隊。入念な準備のために費やされたここ数日間の貴重な時間は今日、確かな実を結ぼうとしている。

 

 

 

(提督ちゃん…もう少しで島が見えてくる頃だよ……)

 

(分かった。くーの感知能力によればそろそろ鬼たちが接近してくる頃だぞ……気を付けて)ギュ

 

(あぁッ………は、はい。分かりました………あ)

 

来たか。

 

(みんな…お出迎えだぞ。くー、さっきよりも詳しく頼む)

 

(かんさいきがたくさん。そのあとから、おにがひとりと、たくさんのぶか。ぜんぶかたまってこっちにくる…あんまりはやくないよ)

 

大部隊だな……密集隊形からの火力で圧倒する積りか。でもそれは同時に、縦横無尽の動きを自ら封じてしまったということだ。

 

(先ずは空の部隊だ…ネビュラ、リリィ。こちらも発進させるぞ、しっかり支えてくれ)

 

(了解!)

 

(了解ですー!)

 

お互いが常に並走しながら海上を移動している2人により運ばれている艤装は、ミルディの相棒。本来の居場所は彼女の背中だが、今は俺がおんぶなので譲ってもらった格好だ。

 

(ミルディ、離れてるけど大丈夫だな?)

 

(はい提督ちゃん。あの子たちと私はしっかり繋がっています。任せて)

 

(よし、艦載機発進だ。攻撃目標、爆撃機部隊)

 

(了解!)

 

 

 

          続く




80年ですか
平和が一番だと思います
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