鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第五-29話

天龍は相変わらず無言のままだ。でも今のこの場に、言葉は必要なかった。

 

 

 

第五-29話

 

 

 

ギイイイ……ガシャアン

 

 

 

機械仕掛けの扉が左右から迫り来て、やがて重厚な音を響かせながら互いに合わさり、本来の堅固な境界線たる姿を現した。

 

「提督、イ級やワ級がみんな入っちゃいましたね。あんなに大きな洞窟がウチの地下にあったなんて、よくご存知でしたね?」

 

「先代から、以前にね。みんなは知らなかった?」

 

「ええ、恐らく。私が知らなかったくらいですから。あ……、でも天龍ならもしかして」

 

「確かに。あの人の秘書艦だったもんな。響は?」

 

「私も知らなかったよ。ここは冷たい雰囲気が漂っていたからね、あまり近付かないようにしてたの」

 

「くーに初めて会った日にそんな感じのことを言ってたっけか。でも、あれから色々と手を加えたからね。結構ましになったろ?」

 

真っ白なコンクリート壁を明るい色に塗り変えたり、観葉植物をたくさん並べたり。また暇があったら続きをやろう。

 

「うん……。司令官がギチ君と一緒に頑張って模様替えしてくれてたの知ってるよ。ありがとう…」ニッコリ

 

「喜んでもらえたなら何よりだよ」

 

「まあ。提督自ら……?」

 

「みんなは訓練や戦闘で疲れているんだ……今日だってみんなはしっかり働いてくれた。俺だって、あれくらいはやらなくちゃね。明石、暁、響、雷、電。今日はお疲れ様。あれだけの大規模な集団をしっかり誘導するのは大変だったろ?」

 

「羊の群れを導く牧羊犬の気持ちが少し分かったかも。けっこう楽しかった」

 

「響らしいよ。お疲れ様」

 

「ん…」///

 

「大変という程ではありませんでした…そうでしょ、雷?」

 

「そうね、電。私たちはお留守番だったんだから、お役に立たなくちゃ。司令官、本当にお疲れ様。今夜はゆっくり休んでね」

 

「ありがとう。新しい仲間がココに慣れたら、ゆくゆくは扉の鍵をずっと解錠しておく積りだ。そうすればこの地下は、大洞窟への近道になるから海にも裏山にも短時間で行けるようになる。大変な毎日だけど、せめてもの息抜きを……ね」

 

ギュッ。

 

「ん、どうしたんだ電?」

 

見ると電が、片脚にしがみついていた。

 

「司令官さん」

 

「うん」

 

「いつもありがとう」

 

「電もな。木曾と雷と明石と一緒にきちんとココを守ってくれたな。ありがとう」ポンポン

 

「うん……」ギュ

 

 

 

「エレベーターが来たわ。さ、行きましょ」

 

「分かった、暁。ほら、電も」

 

エレベーターに乗り込む俺たち。これで、今日の仕事は殆ど片付いたな……大変だったけれど、どこか心地よい疲労感だ。

 

 

 

「……………うん、それでいい。頼むよ。………………そうだなぁ……あまり気を遣うと、よっちゃんたちも居心地が悪いと思う。自然体でいこう。…………え? ああ、悪い。水母棲姫のことだよ……そう、額(ヒタイ)に大きな黒いリボンしてる艦娘だ。………………分かるぞ、可愛い女性ばかりだからな。……………本当に? ああ、食事に誘うぐらいなら全然構わないぞ。………うん、それじゃまた明日な。お疲れ」ガチャ

 

「ギチか?」

 

「ああ。男たちの間で、新しい仲間の話題が盛り上がってるらしいぞ。仲良くなれば嬉しいんだけどね」

 

「ミルディの部下たちか。気にならないのか?」

 

「? そりゃ最初はお互い緊張もするだろうね。でもやがて慣れるさ」

 

「いや、そうじゃなくてだな……その、新入りが鎮守府の男たちにとられるなんて、イヤなんじゃないかってな……」

 

「別に気にしないぞ? 彼女たちはやがてこの国で暮らすんだから、日本の男とたくさん接しておくのは大事なことだよ。それに」

 

「それに?」

 

「もう俺にはお前たちが居てくれてるじゃないか。他の男と仲良くしながらも、結局は俺のことも見てくれてる。今のままで大満足だよ、木曾」

 

「……そっか。お前らしいな」ギュッ

 

執務机に向かい書類を整理してる俺の背後から抱擁してくれる木曾……癒されるわぁ。

 

「天龍は何か言ってた?」

 

「特に何も。いつも通りのアネキだよ。でも今度は長かったからな、オレも嬉しかったし、アネキも喜んでくれてた……かな」

 

天龍は木曾よりも2年と9ヵ月、年上だ。

 

「俺の所為だ、すまない」

 

「何言ってる、アネキとくーのためにやったんだろ? 分かってるよ」

 

「ありがとう。……天龍がな、龍田と五月雨を叱ったんだよ。くーに対して、ちょっと戸惑った態度を見せてしまって」

 

「そうか。アネキはそういうのに厳しいからな」

 

「あいつは見た目、普段通り泰然としてるが、何も感じてないハズなんてない。木曾、頼みがあるんだけど……」

 

「分かってる、任せとけ。アネキとアネゴ、五月雨の間がギクシャクしないように見ておくさ」

 

「木曾はいつも俺を助けてくれる。ありがとうな」ギュ

 

腕をレの字に曲げて、俺の胸の前にある彼女の手を、包み込むようにしっかり握る。

 

「お前は頑張ってるからな。頑張ってるヤツを放っておけるかよ」

 

「木曾……」

 

「それとな……あの子をいつも、ちゃんと一緒に連れてるんだろうな?」

 

「お前に言われた通りに、ね。今も小さくなって胸ポケットに入ってくれてるよ……でもあの子は本来、お前たち艦娘の形代(カタシロ)だぞ」

 

「だったら、オレたち艦娘の指揮官だって守ってくれるさ。これからもずっと一緒に居るんだぜ?」

 

「分かった。この子のためにも、ムチャはしないよ」

 

「ああ、それでいい」ギュ

 

 

 

コンコン。

 

 

 

おや。

 

「提督、早霜です……。あの、いらっしゃいますでしょうか?」

 

「ああ。入っていいよ、早霜」

 

(木曾……残念だけど)

 

(やれやれ……)

 

木曾のぬくもりが離れていく。まるで元気の補給を中断された気分だ。

 

「失礼します、提督」ガチャ

 

「どうしたの、早霜?」

 

「はい、実は……あ、木曾…こんばんは。新しい仲間の一人が……提督はドコなんだー! と、興奮して……」

 

ちょ。まさかアイツか。

 

「何だそりゃ? 変わった奴だな」

 

「北方棲姫だよ。今朝、初めて会ったばかりだけど…かなり元気な女の子だぞ」

 

「お前に興味あるみたいだな」

 

「というか…ココ全体に、じゃないかな。早霜、あの子は?」

 

「はい……さっき見た時は響が抑えていましたが、ちょっと苦戦していたかも……」

 

ちょ。あの響が。

 

 

 

ドドドドドドド………!

 

 

 

来たか。

 

「お…おい。何の音だ?」

 

「木曾は副隊長たちに部屋の案内してくれてたから、まだ会ってなかったな。下がってるんだ……俺が相手するよ。ほら、早霜も。そこに立ってると危ないから、木曾の隣に」

 

「! は、はい……!」ササッ

 

「木曾…早霜を頼むぞ」

 

「待てよ! 危ないって、いったいどういう……!」

 

もう遅い。

 

 

 

ドゴオオオオオオオ!

 

 

 

「ぐはあああああア!?」

 

 

「きゃああああああ!」

 

 

「テメエええええ! 何しやがる!!」

 

 

「だ……大丈夫だ木曾! この子にはな、まったく悪気がないんだよ……」

 

 

「はあ!?」

 

 

「環境が変わったからな…多分、驚きとか興奮とか、自分の気持ちが抑えられないんだ……」ゲフッ

 

 

「だからってイキナリ弾丸みてえなタックルお見舞いされちゃたまんねーよ!」

 

確かにな……効いたぜ。ポケットは……うん、無事だな。小柄だから腹のあたりで済んだ。

 

 

 

「見ぃつけたあああ! さがしたんだよ! ねえ、お兄! あそぼ! はやくあそぼ!!」ギュウウウ!

 

 

 

          続く

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