鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第五-30話

「見ぃつけたあああ! さがしたんだよ! ねえ、お兄! あそぼ! はやくあそぼ!!」ギュウウウ!

 

 

 

第五-30話 

 

 

 

ドドドドドドド………!

 

 

 

響だ。追い掛けてきたな。

 

「見付けた……確保する」タタタッ

 

「あー! 響しつこい!」ササッ

 

俺の腰にしがみついていた北方棲姫が、両手を離して執務室入口に現れた響と向き合う。

 

「ムダだよ! わたしにかなうワケない!」

 

「甘いね。ココには司令が居るんだから」

 

 

スパァン!

 

 

ドスン!

 

 

「え……あれ?」キョトン

 

「!? もう司令ってば!危ないよ……」

 

「まったく…響は負けず嫌いなんだからな。大丈夫かい? 俺の近くに居るときの響は強いから注意な」

 

閃光のような大内刈で倒された北方棲姫が、すべりこんで受け止めた俺の胸の上でポカンとしている。何が起きたのか分からなかったんだな。

 

「ほら、立てるかい? 今日はもう遅いから、明日遊ぼうな」ヒョイ

 

彼女の手を握って立たせてやる。小さな手から伝わってくる、柔らかな感触。

 

「ありがと、お兄。かばってくれたんだ……」ニコリ

 

「響はちゃんと手加減したんだけどね。ついカラダが動いた。木曾、もう怒っちゃダメだぞ。さっきも言ったけどこの子は……」

 

「新しい環境で興奮しているだけ、だろ? 分かってるさ……腰、平気か」

 

「ああ、大したことない。フワフワカーペットだからな」

 

「響。オレたちの指揮官はこういうヤツなんだ。ケガさせるなよ」

 

「木曾……はい」

 

「響、つよいな! またあそぼうね!」ニッ

 

「う………。調子くるう」

 

良い意味で鈍感なところがある北方棲姫は、響にとって初めて見るタイプの仲間だろう。この出会いが響をさらにたくましくしてくれるかも。

 

「さ、もう部屋に戻るんだ。早霜、この子の部屋わかる?」

 

「はい、木曾が案内した人たちとは別のグループを担当しましたから……彼女も案内しました。大丈夫ですよ」

 

「すまないが残業を頼む。部屋まで連れていってあげてほしい」

 

「分かりました、お任せください」

 

「えーっ! わたし、ちゃんと戻れるよ!」

 

「この建物の大きさは、入ってくる時に見ただろう……新入りが迷うのはここじゃ珍しくないんだ。あんなにスゴい勢いで走りまわった後なんだ、どこをどう進んできたのかなんて覚えてないハズだよ。ひとりじゃ間違いなく迷う」

 

「う~…………」

 

ご機嫌ななめだ……何でもひとりでできるんだ、子どもじゃないんだって意地があるのかな? でもこういう時に自然な振る舞いができるってのも、脱・子どものためには必要な条件なんだけどな……。

 

「私、あなたとお話してみたいな。あなたの部屋に着くまでのあいだだけでも…ダメかしら?」

 

「え……わたしと?」

 

「ええ、そうよ」ニッコリ

 

「うん、いいよ! 」///

 

早霜ナイス。成る程、こうすりゃいいのか。

 

「それじゃお兄、おやすみなさい。わたし、もどるね」

 

「ああ、おやすみ。それとね……」

 

「?」

 

「鎮守府にようこそ。敵の勢力はもう、殆ど残ってない……決着の日は遠くないと思う。その時に向けて、よろしくね」

 

「うん、わたしもたくさんやっつけたよ!! いっしょにがんばろうね!!」ニッコリ

 

「ああ頼りにしてる……それじゃ、また明日な」

 

「じゃあね」ノシ

 

「おやすみなさい、提督」

 

「おやすみ、早霜」

 

 

 

パタン……。

 

 

 

「お前の言った通りだ。元気なヤツだな」

 

「今朝は驚いたよ。島から出発する頃にあの子が飛んできてな、ギリギリ間に合ったわけなんだ。一緒に戻ってくる道中では質問攻めだったよ……島の外から来た人間がよっぽど珍しかったんだろう」

 

「だろうな。好奇心旺盛そうな目をしてる」

 

「しかも猪突猛進だよ。司令を探して走りまわってて騒がしかったから止めようとしたの。でもすばしっこいの……しかも足払いされたし」

 

「それを見て早霜が知らせに来てくれたわけか。仲良くできそう?」

 

「うん、悪い子じゃないみたいだし……できると思…う。………あうぅ……司令……あぁ」///

 

響の頭を帽子ごと撫でる。目を細めているのが可愛い。

 

「オレは寝る前にアネゴの様子を見にいく。響はコイツの部屋で寝るんだろ?」

 

「うん。木曾も一緒に……ね?」

 

「そうだな…アネゴ次第ってトコだ。話が長引かなけりゃあな」ガチャ…パタン

 

「響、もうみんな部屋で待ってるぞ。お前のパジャマも持ってきてるって言ってたよ」

 

「あ……そうなの? じゃ私、着替える」

 

「分かった。俺はちょっと用事がある。直ぐ戻るよ」

 

「ん、待ってる」

 

 

 

コンコン。

 

 

 

「みんなまだ起きてる? ちょっといいかな?」

 

「提督!? いま開けますから!」

 

ガチャリ

 

出迎えてくれたのはタルトだった。ほんのりと上気している端正な顔立ちにドキッとする……。そして潤(ウルオ)いのある綺麗な髪。風呂あがりか。

 

「あの……て、提督?」///

 

っと……いけね。見とれてた。

 

「悪い……。なんだかタルトさ、日に日に魅力アップしてるな。第六に行ったら気を付けるんだぞ。入ってもいいかな?」

 

「え……あ、あの、はい勿論です! さ、どうぞどうぞ!」///

 

「ありがとう、みんなの気持ちを確認しておきたくてね。うん、みんな揃ってるな」

 

「あら、提督ちゃん!」

 

「しれい、おつかれさま」

 

「これは提督殿!」

 

「提督、こんばんはー」

 

リッティとの戦闘で疲れているのは間違いないのに、そんなそぶりを一切見せることなく声を掛けてくれるミルディたち。いつも思うことだけど……艦娘って、本当に気立てのいい女性ばかりだな。ミルディたちの魂を育(ハグク)んだ艦船の名前は不明だが、その程度のことじゃ、彼女たちも歴とした艦娘だという俺の考えは微塵も揺らいだりしない。あの戦争で沈められたのは軍艦や潜水艦だけじゃないんだ……兵士や物資のための輸送船として、数多くの民間商船が使役された。そして本来の建造目的から乖離した任務の途中で、大海原へと姿を消した。

 

艦船に宿る魂。

 

軍艦に魂が宿るのなら。

 

商船や客船にだって魂が宿ったって、ちっとも不思議なんかじゃない。

 

日本の昔話には、人々が長く大切に使い続けた道具に魂が宿るストーリーが沢山あるんだ。スゴいのになると、絵に魂が宿って紙から飛び出して描き手を守った話なんてのもある。

 

深海棲姫。

 

彼女たちの艦名は不明だけれど、天龍たちとは異なり、その名が大勢の人々に記憶されることがないまま戦場に散って、今も海の底に眠る数千隻の船舶。その中のどれかに、ミルディやタルトたちの魂のふるさとである船があるんじゃないのか。

そうだ……ミルディといえば、ファイルでの呼び名は中間棲姫。彼女の船は、あの激戦海域で最期を迎えたんじゃないのか……だから国防省の職員は、あの呼び名を採用したんじゃないかな……。

 

彼女たちは歴とした艦娘。

これは俺の確信。

これからも天龍たちと同じように、大切な仲間として接していこう。

 

 

 

「くつろぎの時間を邪魔してすまない……第六の話だよ。慌ただしい中で聞かせてしまったからね、もしかしたら気持ちが変わったかも知れない。そう思ったから最後の確認に来たんだ。みんな、今ならまだ構わないよ………どうする?」

 

深海棲姫たちの願い……この日本で暮らすこと。そのための資金調達を台無しにした俺。だからずっと考えていた、その埋め合わせの方法。それを今日、ここに帰ってきた直後にみんなに打診した。みんな、合意してくれたんだけど………。

 

「提督ちゃん、私たちの気持ちは変わらないよ。せっかく提督ちゃんが、提案してくれたんだもの。私たち、行きます。第六艦隊の鎮守府だったあの施設で、地域の人々をおもてなしする、新しいお役目を果たすために」

 

 

 

          続く

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