(あはははは! ボウヤのジャマするなら沈めてあげるわ~!!)ザバアッ!
(あなたの所為で大勢の魂が……許しませんわ!)ズザザッ!
(鈴谷のカラダ……どんどんチカラが湧いてくるよ。とりあえず食らえええ!)ドゴオオン!!
第六-3話
バキイイイイン!!
!?
(ちょっ……鈴谷の15.5センチ砲はじいたのお!? ムカー!)
(結界を使ってやがるんだ! 補正アリの鈴谷の攻撃をはねかえすなんて、かなり霊力強いぞ。鈴谷は砲撃中止! 夕雲、フワフワを狙え! デカイのはヤバい!!)
(了解しましたわ!)ズガガガガ!
(提督、鈴谷が夕雲の援護する! 小さいほうのヤツには効くかもだよね?)ジャキッ!
(………………………)ザザッ……
(ダメだ! 見ろ鈴谷、デカイのがフワフワの盾になりやがったぞ!)
(あ………ダメだ………はじきかえされた砲弾が!)
(そうだ、夕雲に当たる可能性がある! 砲撃中止のまま待機!!)
(わ、分かったよ提督!)
(夕雲、自分の弾丸を食らってないよな!? 攻撃中止、直ちに離脱!)
(大丈夫です提督! 離脱します!)ザアッ!
ならば残る手段は人海戦術からの圧倒。先ずは……!
(龍田あッ!)
(もう許さないから……ボウヤの念話に……私たちの念話に土足でズカズカとッ!! 許さないからあああああッ!!)ドオンッ!!
驚いたぜ。念話が使えるなんて!
(龍田!? 砲撃はダメええっ!!)
(大丈夫だよ鬼怒、ほら見てごらん)
(え………?)
ザバアアアアッ!!
(………………!)
(あらあらビックリしたかしらああッ!?)
ズバアアアン!!
(龍田すごい! 水しぶきの目くらましだ!!)
ドガアアッ!!
爆発! 龍田の一閃、デカイ奴の砲塔にダメージ与えたな! よおおおぉし!!
(キサマ……キサマアアアア………!)
(龍田、ヤツは結界を解除したのか!?)
(はいボウヤ! 砲撃しようとしてたみたい!)
(そうか、砲撃する時は砲塔周辺に結界張ってるワケにはいかないもんな。解除したら予想以上に龍田が速くてハルバードの一撃を食らったってことか! これならいけるぞみんな!!)
(はい司令! 待っててください、直ぐ行きますから!)ズザザザザ……!
(はる………えっと、何?)ドガガガ…!
(ハルバード。西洋の矛(ホコ)だよ長波。司令官は竜とか妖精とかファンタースチカ(幻想)の物語が大好きだからね、用語を知っておけば話が盛り上がるよ)ザザッ
(ふーん。響は提督のコトよく知ってるねぇ)ガガガガ
(もっとイロイロ教えてあげようか? あとで私の部屋に来てちょうだい)
(わかった!)ドゴッ! ズザザザ
(長波ずるい、私も行くから! いいよね響!)ズゴオン!
(え~)
(仕方ないね。いいよ秋雲、ただしお菓子持参で)ドガガ
(りょーかーい!)ザバアッ!
(秋雲は強引なんだから。さすが我が姉上だよ)ザザッ
(おい不死鳥、なに俺の個人情報をシェアしようとしてんだよ………それとな、雪風も呼び出してたろ)
(あ)
(忘れてたのかよ……)
(うぅ……忘れないでください響、なんだか雪風には冷たくないですかぁ…?)グスッ
(あのな雪風、お前は秘書艦なんだからボウズと接する機会が多いんだ。響にしてみれば複雑な思いなのさ。それくらい笑って受け流せ……いいな)ズガガガ……!
(はい天龍……わかりましたあ)ショボーン
(元気だしてくれ雪風。いつもありがとな)
(し……司令!!)シャキーン!
(くッ……しくじったか)
(何か言ったか響)
(ううん、なんでもないよ! こっち片付いたら直ぐ行くから待ってて司令官、それとあの任務もちゃんとやるから!)ザアッ!
まったく、古鷹といい加古といい響といい……。新加入のメンバーたちには今の会話で、俺たち第八艦隊の普段のノリがしっかり伝わっただろう。少しは緊張もほぐれたハズだ。ありがとな響。
(うふふ……仲がいいんだから。ねぇボウヤ。私、お役に立ててる?)
(言うことナシ、ってぐらいにね! 流石だよ……そのまま離脱してくれ、砲撃を開始する!)
(了解、ボウヤ!)ザアッ
(夕雲、鈴谷、砲撃を再開だ! 目標、大型艦!!)
(了解!)ドガア!
(了解だよおッ!)ズガガアン!!
さっきの会話も俺の指示も、その為に要した時間はほんの一瞬だ。慣れてさえしまえば、音声による通常会話よりもずっと速く話ができるから念話ってのは本当に便利だ。だが……
(……キサマが指揮官か。どうやら三人目の提督というわけか。あの男は退任したのだったな……)
これだ……こちらの伝達事項がすべてヤツらに筒抜けなんだよな。これは非常にマズいんだが念話を使わないわけにはいかない。艦娘のみんなが猛スピードで縦横無尽に駆け巡る戦場では水しぶきを立てる凄まじい音が発生するから、お互いの声なんてまったく聞こえないんだ。しかも一人や二人じゃなく大勢が行動するんだし、おまけに砲撃や銃撃の音も加わる。
(そうだ! お前の軍勢と長きに亘り戦って、甚大な損害を与えた第一艦隊提督。そして合同作戦の機会こそなかったが、それでも同時期にお前たちを相手に戦った第八艦隊提督……つまり二人目の提督だな。俺は彼の後任だ。お前が……軽巡棲鬼だな?)
(左様。キサマの指揮を聴かせてもらったぞ……若いのによくやる。よもや私をここまで追い詰めるとはな。もはや我らが命運は尽きたやも知れぬ……)
語る口調はやや古風だが声は若々しい……いや、どことなく幼さすら感じさせる響きだ。しかしデカイ奴とはまた違った種類の迫力がある! 距離があるから大型艦と同様、表情までは分からないがきっと憎悪で歪んでいるんだろうな。
ズガガガガガッ! ドオオン!!
(グギギ………キサマラ!)
夕雲と鈴谷、そして次々と合流した雪風や響やみんなが砲撃を浴びせている。結界は霊力が尽きれば消滅するんだから、こちらはひたすら撃ち続けていればいい。多勢に無勢、あの大型艦はもう為す術(スベ)なしだな……結界を張る鬼なんて初めて見たから驚いたけど、手の内がわかってしまえばこっちのもんだ。
(そう思うのなら降伏するんだ、お前の配下が深い傷を負う前にな)
(降伏……? 我らを壊滅させるために来たのであろうに。何を言うか)
(お前たちに多くの人々の魂が宿っているのは分かってる……お前たちを沈めるわけにはいかないんだ。仲間には既に伝えてあるんだぞ、お前たちを倒すのではなく捕虜にするようにな)
(なに……?)
(もしも龍田が……こっちの会話は筒抜けなんだから誰のことか分かるよな? 龍田が本気だったなら、さっきのダメージはあんな程度じゃ済まなかったことを忘れるな)
(手加減したと言うのか。その割には凄まじい程に殺気立っていたな)
(いいや。俺の邪魔をしないのであれば、龍田はお前たちを沈めたりはしない。邪魔ってのはつまり、俺の降伏勧告を聞き入れずに徹底抗戦して仲間を傷付けるって意味だ。お前は本気の龍田を知らない……もう一度言う。もしも仲間を傷付けたらあんな程度じゃ済まないぜ)
かつて前任の提督と共に戦った天龍や龍田たちからは、軽巡棲鬼のことを聞いたことがなかった。恐らくヤツは当時、みずからが戦場に赴くことはせずに信頼できる配下に任せていたんだろう……だから龍田と軽巡棲鬼はお互いのことを知らないんだ。
(………………)
さあ………どう出てくる。
(…降伏などできぬ! 彼らの怒り……キサマらには分からぬわ! どうやらここまで……ならばせめて一隻でも多く道連れにしてやろうぞ!!)クワッ!
そうくると思ってたぜ。仕方ない、リッティのように実力行使からの捕縛しかないな!
(出てこい! 共に歩みし戦いの日々、今日が最後となろう!)
ブワァッ!!
………何だ? ヤツの体から煙幕……いや、黒い……霧が?
(司令……あれは…?)ズガガガ
(何か出てきそうだな。雪風、大型艦の結界は?)
(まだ消えません。でも相手は全く身動きできないままです! それにさっき、龍田の攻撃に続いた夕雲と鈴谷が新しい結界の直前にダメージを与えました!! このままいけば私たちが圧倒して……)ドオンッ!
(その積りだったが俺が戦いで優先するのは常にひとつだけだ。雪風なら分かるね?)
(司令……勿論です、雪風は司令の秘書艦ですから! みなさん! 砲撃中止です! 新手が来ます、司令官のトコまで後退!!)
(了解!)ズザザ
(Да!)ザアッ
(了解ですわ!)ザザ!
(了解! 鈴谷の一撃、効いたっしょー!? そんじゃーね!!)ザザザア!
(なんと! ここまで追い詰めておきながら後退とな! 我らの新しい指揮官殿は随分と慎重なのだな!!)ザザザ……
(利根、お前たち艦娘は本当に強くて頼りになる存在だ……こちらは約五十人、しかし相手はその十分の一にも満たない。みんなにムチャをさせれば一気に勝てる)
(そうだ! ワガハイは重巡洋艦ぞ、奴らの攻撃などワガハイを沈めること能わずだ! 結界も使えるのだぞ?)
(ごめんなさい……利根姉さんは少し興奮しているのです。提督にカッコいい姿を見せたくて……ほら姉さん、提督を困らせてはいけません。戻りましょう)ザザザ
(ええぃ筑摩は余計なコトを言うでない!)///
2人は俺との会話を続けながらも、キチンと雪風の言葉通りに少しずつ後退している。こういうトコは流石に艦娘だ。
(筑摩はお姉さん思いだな。利根、戦いってのは目の前に見えてる相手がすべてじゃないんだぞ。お前の索敵能力なら分かる筈だ。ここに接近しつつある大艦隊の存在が)
くそッ……もっと時間が欲しかったな。奴らにしてみれば長年の宿敵だ、必ず何らかの行動を起こすだろうとは思っていたけど……早過ぎるッ。
(!?)
(まぁ……流石は提督。姉さんよりも早く気付いていらっしゃったのですね)
(俺の力じゃなくて妖精さんのお陰だよ……彼女たちとは一緒に色々な場所へ行った仲なんだ)
ほかの艦隊の編成を調べたり、第五・第六艦隊の鎮守府に忍び込んだり。いま思うと勢いだけでメチャクチャやってたな俺。
(……指揮官殿。ワガハイも今、把握した……なんだこの規模は……しかも)
(ああ、ひとりひとりの練度が半端ないよな……だから利根、いまはこちらに戻るんだ。目の前の相手にだけ夢中になるのはとても危険なことだぞ)
(確かに……いま戻る、指揮官殿。筑摩!)ザアッ!
(分かりました姉さん)ザザザ……!
(みんなも聞こえたな? 各々の心の準備はもう既にできていると信じてるよ。今は兎に角、態勢を整えるんだ。霧の中から出てきたアレは……艦載機だな。みんなは見ていてくれ、必要なら次の装弾もしておいてね)
(はい!)ガシャン!
(見ている……ですか? では次の攻撃は誰が……)ガシャッ
(大丈夫だよ潮、心強い仲間は他にも居るんだ)
(ボウズ、もしかしてアイツらにやらせるのか?)
(職長の性格は知ってるだろ? 決戦の日に後方で待機しててくれなんて言ったらどうなると思う?)
(うん……そうか、そうだな)
(………………!! ………!)
(噂をすればほら、な。あと、さいきん気付いたんだけどね、どうやら俺の補正は彼女たちにも効いてるらしい)
(何だって? ボウズ……お前どこまで規格外なんだよ?)
木曾にも言われたなそれ。
(いまの声は……誰なのですか?)
(第八艦隊の工廠(コウショウ)を切り盛りする妖精だよ。第一と第四艦隊以外の妖精がみんなウチに揃ったから大喜びなんだ)
(スゴい! あれ見て大編隊だよ! 仲間……なんだよね!)
(勿論だよ。先頭が職長機さ)
(えぇっ? それじゃ、あの艦載機に乗ってるのは妖精さんですかぁ! まさかいまから空中戦をする積りなの!?)アタフタ
(子ノ日、落ち着くんだ。新しい指揮官に醜態を見られては艦娘の名折れ……)
(ん~若葉はクールねぇ)
(始まります。みなさん、しばらく司令に話し掛けないでください……実戦で八十機以上を統率するのは司令も初めてです)
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオオン!!!!!!
(ガアアアアアッ!?)
(ぐわああぁぁ!!)
(ギャアアアア!)
(うぐぅ!!)
ドゴゴゴゴゴゴオンッ!!
ズゴゴオン!!
ゴゴゴ………ゴオオン!!!
滝のように降り注ぐ爆弾が敵の艦載機を次々と飲み込んでゆく。ある者は機体を真っぷたつにされ、またある者は爆炎に包まれながら堕ちてゆく………。
(……………………!!)
(ああ見えるよ、職長の視界が俺にも伝わっているからな。指揮官クラスはあと二体……軽巡棲鬼と港湾水鬼だけだと思ってたんだが四体も居たんだな……だが想定内だよ、ゲームじゃこんな展開は珍しくないからね)
(…………、………?)
(最初は二体だと思わせておいてから頃合いを見計らって召喚すれば、こちらを驚愕させられると思ったんだろう。艦載機をたくさん出せば数の劣勢をある程度は挽回できるからね。だが五十発の爆弾を上空から浴びせられたら、そんな小細工は何の役にも立たないからな!)
(……………、…………!)
(第五で屋上をブチ抜いてくれた妖精さんか! あの時はありがとな、スゴかったぞ!!)
(………………)///
(え? ああいいよ、俺でよければ必ず付けてあげるから。待っててくれ)
(………! ……………!!)
(!? ……………!!)
(ほらほらケンカしちゃダメだって。…………え、職長も名前が欲しいって? ひとりだけズルい? 分かったよ職長にも付けてあげるから待っててよ)
(…………)///
(…………、………?)
(まあそう言わないでよ。彼女は前任の提督の頃からの古参リーダーだからね、ひとりで抱え込むツラさをたくさん経験したんだと思う。これくらいは見守ってあげようよ)
(…………、…………)
(そういうこと。仲間が一気に増えたから、もうこれからはそんな心配なんて無用だ! 全機そのまま上空で待機、接近中の艦隊に気を付けてな!)
(……………!)ゴウッ
(……………!)ゴオオン
ゴオオオオオオオオオオ……………
(て、提督……容赦ないね)
(すごい…………ですぅ)
(ヤツらに同情はしないが……今のは驚いたな)
(ああ、空中戦なんてモンじゃねぇ。まさに問答無用の破壊力だぜ)
(司令官だって本当はこんなことしたくないのです。でも相手が無駄な抵抗をするからいけないの。大丈夫よ、相手は結界を張ったみたいだから司令官の予定通り……誰も沈んでないからね)
(そうだ暁、沈めるのではなく捕縛が目的だからな。ついでに言うとさっきのは霊力を奪う特製爆弾だ……殺傷目的ではない。もちろん重量があるから艦載機なら叩き落とすし、破片が飛び散れば肉体的なダメージも与えるけどね)
(作ったのは?)
(職長たち妖精さんだよ)
(暁は提督のことが分かるんだ……羨ましいな。時雨だよ、覚えてる?)
(もちろんよ。久し振りね時雨……雷と電は鎮守府を守ってるわ。会ってあげてね、とても喜ぶから)
(きょうは素晴らしい再会の日になったな……うん、必ずね。提督、次はボク…どうすればいいの?)
(いま職長の視覚を通して軽巡棲鬼たちの姿を確認している……もうボロボロだからそろそろ捕縛できる頃合いだ。できればいきなり捕らえたりせず、先ずは説得や会話を試みたいな……でも大艦隊が接近しつつあるこの状況では厳しいだろう。時雨、特に指示はないけれども、今はみんなに軽巡棲鬼たちの様子を伝えておくことにする)
(うん提督。分かったよ)
(分かりました提督!)
(了解だよ。提督ぅ、相手はどんな感じ?)
(空中に浮いてる小型艦が親玉の軽巡棲鬼……フワフワというより最早フラフラだな。凄まじい形相でこちらを睨んでいたが虚勢に過ぎないな……艤装に取り付けられている砲塔を使う気配は全くない)
(提督、それならもう私たち……)///
(戦闘能力は格段に落ちている。でも油断しちゃいけないよ、アイツは策略で敵を倒してきたんだからな)
(あ……)
(他の三体はデカイな……最初に現れた大型艦は国防省ファイルでも見たことがない。ツインテールに赤いリボン、そして黒のビキニだ……両腕は機械で覆われていて、脚から下の艤装は砲塔だらけだな。口をパカッと開いているが、なんだか必死で呼吸しているようにも見える……とにかくデカイぞ)
(お口かあ……食べられるのはイヤだよぅ………)
(大型艦その二が港湾水鬼だな、これは以前からファイルに掲載されている。黒い霧の中から登場しようとした瞬間に爆弾を浴びたから驚いただろうな……もうボロボロだよ、もしかしたら霧の所為で爆弾をしっかり視認できなかったのかもな。額にはユニコーンみたいな角(ツノ)が生えているよ。艤装はまるで巨大な要塞みたいだが、そこから発進するべき艦載機はひとつも出てこない……取り壊されたビルって感じだ)
港湾棲姫のはっちゃんにそっくりだな。ふたりはどういう関係なんだろう?
(ということは……ほぼ同時に現れた三体目も相当に損傷しているのでは?)
(当たりだよ筑摩、黒のドレスに身を包んだ黒髪の深海棲鬼だ。その背中には双頭の恐竜みたいなヤツがピッタリくっついている。肉体のあちこちに砲塔が付いているが、どの砲身も火を吹く気配はないよ。大きな口を二つ、あんぐりと開けているぞ)
(……苦しそうに?)
(苦しそうに。二、三ヵ所から赤い血が流れている。俺たちと同じだ。ただ単に姿が違うだけ……俺たちと同じように生きているんだ)
(………………司令)
(提督………)
(提督。ご命令を)
(そうだな……矢張りじっくり説得するのはムリみたいだ……もう少し時間があれば良かったのに! 五月雨、命令は少し待ってくれ)
(え………それでは遂に)
(司令……!)
(…………! ……………!!)
(これ………さっきの、えっと……職長さんの声だ!)
(ああ……何言ってるか分からねぇが……でも間違いなく、妖精たちが艦隊を視認した一報に決まってるぜ!)
(妖精さんと会話できるのは司令と明石、それにほんの一握りの艦娘だけですからね。司令、とうとう来ましたね)
(ああ。天龍、龍田、古鷹、加古。 九時の方角だよ。まだ身構える必要はない……その辺りで適当に散らばるだけでいいぞ。取り敢えずは自然な雰囲気で迎えるとしよう)
(分かったぜボウズ。龍田、古鷹、加古。行くぞ)ザザッ!!
(了解よ~。最強の艦隊、どの程度なのかしら)ズザザザ……!
(了解。もう私たちは第一艦隊を離れた身……行くよ加古)ザバアッ!
(了解。アタシから離れるんじゃないよ古鷹)ザバアン!!
(五月雨)
(はい提督! ご命令を)
(軽巡棲鬼と三体の大型艦を、第一艦隊の攻撃および捕獲から護衛する任務を命じる。今よりこの任務に関しては俺に次ぐ指揮権を一時的に与える。絶対に奴らの手に渡すな!)
(了解しました! 長波、来て!)ザザアッ!
(あいよー! 島風が居ないのが残念だね!)ザアッ!
(なん……だとッ!?)
(聞いていたのか。意識はあるんだな、安心した。負傷してるんだから、あまり喋るなよ)
(そんなことはどうでもいいッ! どういうことだキサマ、私たちを護衛とは! 答え………あぐぅッ!!)ズキン!
(だから言ったんだ、喋るなって! 念話だって気力を使うんだぞ! 時雨、接近してくれ!)
(はい!)ザアアッ!
(ぐ………ううぅッ……)
ズザザザッ!
目の前で軽巡棲鬼が艤装に腰掛けたままの姿勢で水面に浮かんでいる……波に揺られつつ前後左右に微動を繰り返しながら。もう浮遊する霊力も残っていないみたいだ。さっき職長の視覚で見たときは凄まじい形相だったが、いまは傷の痛みに耐える弱々しい表情を浮かべている。いや……耐えている痛みは肉体的なものなのか? もはや戦いの日々から解き放たれようとしている今この瞬間……長きに亘る心の傷の痛みが急に噴き出したとしても、決して不思議ではないんじゃないのか?
(まったく……おとなしくしてろ。奴らには渡さないから安心しな)
(だが私は……死ぬのだろう?)
(何を言ってる、人々の魂を宿しているお前もお前の仲間も死なせてたまるかよ……さっきの爆弾は妖精さん特製でな、破壊力はそこそこ凄まじいが主眼はあくまでも殺傷じゃなくて霊力を奪うことなんだ……但し、艦載機は諦めるんだな。爆弾の特殊な仕様はもちろん捕獲のためだよ。今お前が感じている疲労や脱力感はそれが原因なんだ。ほんとはじっくり話をしたかったんだがムリだ。でも念話なら短時間で済む。要点だけ伝えるから、黙って聞いててくれ……。返事もナシだ)
(……………………)
(そうだ、それでいい。さてと……お前が十年以上に亘って戦い続けた第一室長はな、パワハラで艦娘を自分たちの言いなりに管理しようとしてた野郎の親玉なんだぞ……よくそんな野郎を相手に戦ってきたもんだよな)
(………………)
(パワハラの目的は艦娘同士の団結を阻止すること。スパルタで艦娘を従順にしておけば、団結なんて考えないだろうという馬鹿げた発想だ。艦娘が団結したら自分たちの発言力が低下するって恐怖に駆り立てられたのさ)
(………………)コクリ
うなずく軽巡棲鬼……肯定か。
降伏などできぬ! 彼らの怒り……キサマらには分からぬわ!
(お前は「彼らの怒り」と言ったな……お前たちが艦娘を襲うのは彼女たちが海軍の艦船だからだな? 大勢の人々を問答無用で死地へと送り込んだ戦時内閣、その内閣に操られた海軍に所属する艦船だから襲った……。お前は人々の魂の怒りと無念を彼らに代わって晴らそうとした)
(!…………………)コクリ…
(奴らは何故かお前たちが魂を送り届けるのをずっと邪魔してきた。お前たちを倒す任務を果たしたんだと室長は胸を張るだろうな。でもそんなのは絶対におかしい。艦娘の任務はこの国を守ることだ……人々の魂を宿す相手を倒せなんてのはまともな命令じゃない! 艦娘の役目なんかじゃないよ……俺も過ちを犯したけど。なあ軽巡棲鬼、今まで成功したことあるのか? 魂を無事に送り届けたことがあるのか?)
(………………)ブンブン
(否定か。まあ最強艦隊に片っ端から倒されたんだから当然か……)
(……………)
(お前は俺の仲間の姉貴分を謀殺した。お前の身柄は俺の上司に委ねる積りだ。でも局長に引き渡したりはしない……局長は第一室長の親玉だからな。そのままゆっくり休んでるんだぞ)
(………………)コクリ
(五月雨、長波。大型艦たちの様子は?)
(だいじょうぶ、戦闘不能ですが意識はハッキリしています)
(背中の恐竜もね!)
(分かった、ありがとう。軽巡棲鬼と大型艦たちを頼む。そろそろ連中が到着する頃だから出迎えてやるとしよう)
(提督……お気を付けて)
(ありがとう五月雨)
(提督、頑張ってね。んでさ……みんなで帰ろ)
(そうだな、長波。行ってくるよ二人とも!)ザザアッ!
………ザザザザザザザ
ザザザザザザザザ
ザザザザザアアッ……!
次々と姿を現す艦娘たちが目の前の波間で勢揃いしてゆく……まるで観艦式みたいな華やかさだな! だがその艦隊が明らかに友好的ではないと分かりきっている意思を向けてくるとあっては、そんな感激も瞬時に雲散霧消してしまう!!
(司令…すごい数ですね)
(これが…第一艦隊か……)
うわぁ………マジかよ……何なんだこのビリビリ伝わってくるプレッシャーの凄まじさ……。みんながそばに居てくれなかったら……これだけでとっくに気絶してるな俺!
(て、提督………私たち、大艦隊なんですよね…?)|||
(勿論だ名取、五十人以上の艦娘が集う第八艦隊は正真正銘の大艦隊だぞ)
でも今は……何人か鎮守府の守備隊として残ってるんだよな。名取は勿論そのことを知っているが、あえて言及はしないみたいだ。
(………な、なら私たちは堂々としていればイイんですよね!)
(その通りだよ。もう段取りは済んでいる。みんなが信じてくれるなら俺には何の不安もない!)
(はい!)///
木曾、みんな……うまくやってくれよ、頼むぜ。
(見てあの兵装………戦艦なんだよね………すごい迫力)
(せ、戦艦………)|||
(なに緊張してんだよ、別に戦闘するワケじゃないんだからさ。さっき提督が言ったろ……自然な雰囲気でいいんだよ)
(うん……)
第一艦隊の艦娘たちは、ざっと見たところ三十人以上ってところだが……人数が多過ぎて後ろのほうがよく見えないな。つまりもっともっと多い可能性だってある。職長たちを接近させて、その視界を使うことができれば具体的に把握できるんだが、そんな危険なマネは絶対にさせない。なにしろ相手がどう出てくるかがまだ分からないからな。
ザザザザ…………。
うん? 大型のプレジャーボートが一隻、艦娘たちの中からこちらへと……?
(提督。あれが第一室長の船です)
(古鷹、戦闘にはいつも室長が?)
(はい。必ず、私たちと共に行動する指揮官でしたから)
……90歳を過ぎてるって聞いたけど。元気なんだな。
ガチャリ……
(船は止まったが船室から誰か出てきたぞ。巫女さんみたいな格好の女性だ。尤(モット)も……袴じゃなくて黒のスカートだけど)
(へ?)
(あれれ………第一室長は確か……)
(ああ、男だよ……古鷹、あの女性は誰なのか知ってる?)
(………はい、提督。彼女は室長の部下であり、艦娘です)
艦娘!? でも……
(武装してないんだな。てコトは船内に保管してるのか……名前は?)
(金剛、です)
(……戦艦の?)
(はい)コクリ
(古鷹………なんか金剛さあ、提督の方をジーッと見てない?)
(あ……本当だ)
(少し距離があるからハッキリとは分からないけど、でも……そうだな。確かに俺を見ている)
でもずっとこうしてるワケにもいかないだろ……いったい彼女はどうする積りなんだろう?
(…………特務分室室長殿)
(ええぇッ!?)
(……まじ? きょう二度目だよ?)
(……………………)
あ、ヤバい。龍田が般若みたいな表情してる……彼女は仲間意識が誰よりも強いんだ。まだ仲間と認めていない者が入ってくることを非常に警戒する。
(龍田。抑えて)
(……はい。ボウヤの為なら我慢するわ)
(ボウズ、龍田なら大丈夫だ。お前は金剛を頼む)
(分かったよ。それとな天龍、龍田、それにみんなも……。彼女までもが念話を使った以上、俺たちの会話は彼女に筒抜けだ。なぜ念話を使えるのか? 今はどうでもいい……ひとつだけ確かなのは、俺たちにはこれを使うしかないってことだよ……筒抜けで不利になるかも知れないが、以後も引き続き念話を使用する。いいね?)
(了解しました司令)
(はい、提督)
(了解だボウズ……)
(特務分室室長殿。こちらの要求を伝える……)
…………!
(国防省ファイル記載の軽巡棲鬼ならびに港湾水鬼、および二体の深海棲鬼をこちらに引き渡すよう求めます……)
やっぱりそう来るよな。でも……こちらの方針には変更ナシなんだよ!
(その者たちは、我ら第一艦隊にとって積年の宿敵。あなた方にこれ以上の負担を掛けることは本意にあらず……後は我らに託されたく存じる次第です)
続く