(………でもね、その陰ではいつも誰かが虐げられてきたんだ。そのひとつの例が第三室長であり、それに加担した第一室長だよ………さあ金剛、いくよ。決着をつけよう)
第六-5話
ズガガガガガガ! ドガガガガガッ! バシャアアアアアン! ザバアアアン!
(きゃあっ!)ズザザザ
(冷たッ! も~かなわんなぁ! ウチらのカラダも兵装も小さなってるんや! こんなんビショビショにされるわ!)ザアッ!
(司令官の戦法を模倣ですか! 魚雷の代わりに艦載機の銃撃ですね!)ザザア……!
(気を付けてくれ青葉、みんなも。銃撃だけじゃない。恐らく爆弾投下も始まる筈だ)
(ええーッ!?)
(青葉、落ち着け。オレたちに当てるワケじゃねーんだ。あせらず冷静に回避すりゃいいんだ。そうだろボウズ)
(その通りだ……爆弾とて恐れることはない。艦載機の機銃で爆発させるだけだろう。水柱には注意してくれ)
(は、はい!)
(………へぇ。落ち着いてるんだね)
(みんなの指揮官だからね。羽黒のリアクションは間違いなく室長、そして第一艦隊を動揺させている。みんなにケガさせるようなマネはしないさ。万が一そんな事態になれば室長の船は彼女たちに包囲されるだろうからな。だから青葉は天龍の言う通り、落ち着いて行動してね。だいじょうぶだよ)
(了解です司令官っ)ザザザッ!
(………! ……、………!)
(分かった! ありがとう)
(妖精さんだね。なんて言ってるの?)
(格闘班のみんなは離脱だ、 味方のワ級が先行してこちらに接近している! 響、格闘班を先導して全員の兵装を預けてくるんだ! ミルディの島からの脱出、覚えてるよな!)
(Да! みんな、私についてきて!)ザアアアッ!!
(え!? わ……ワ級って)キョトン
(命令は聞こえただろう子ノ日。遅れるな、行くぞ)ザア!
(あっ、待って! 待ってよ若葉~!!)ザザッ
(陽炎! 不知火! ウチらも行くでー!)ザザザア!
(うん。何だか退屈しない艦隊だね!)ザザザザ!
(行ってまいります司令。しばしお待ちを)ザザア…!
……………念話を使える艦娘がどんどん増えている。こういう胸熱展開、ほんと嬉しい。でも感激のあまり判断の冷静さを欠くようじゃ指揮官失格、いまは目の前に集中だな!!
バシャアアアアン!! ザッパアアアアアッ!!
「うおおおおおおッ!」
「たああああああッ!」
ザバアン! バシャアン!
((………ダメ。強過ぎる))
((しょうがないわよ。私たちが常勝無敗なのは深海棲艦が相手のとき。こんなの、想定外だものッ!))ザブッ! ザザア!
((叢雲!? 兵装はずして何する積りなの!!))
「お相手願うわ! いくわよおおッ!!」ガシイッ!
「いいよお! たあッ!」
「肩車か……せいっ!!」ヒラリ……ギュウ!
「あぐっ!!」バシャ!
ギュギュウ………!
「好き放題やってくれたわねえっ! あなたたちが邪魔さえしなければ、今ごろは………!」ギリギリ
「古鷹!」ザバアン!
「だ…だいじょうぶだよ……お姉ちゃん……提督……が……わたし……に………」
「さっさと落ちなさい! そうすればラクに……」
「わたし……に……」グググ……
「!? う……うそ。こんなに絞めてるのに……なんで立ち上がれる……の……」ギリギリ
「激励のキスしてくれたんだからああああッ!!」
ガシイッ!
「あ……なんて力……腕が」グググ……
「やああああああっ!!」
「きゃあッ!?」
ザブウウウン!! ゴボオオッ………!
「……ぷはあっ! ゴホッ! ゴホン!」
「古鷹! お前の勝ちだ、よくやったな!」グイッ
「うん! 私、重巡洋艦だもん! パワーなら負けないんだから!」ニッコリ
((金剛。神秘的なオッドアイの艦娘は古鷹らしいよ。武装してないから判別が難しいけど、確か重巡なんだよね?))
((…………………))シーン
((……あれ? 金剛?))
((古鷹ですって!? そう……こんな再会になるなんて……でも仕方ありませんね))
((妙高お姉ちゃん…?))
((落ち着きましたか羽黒? あなたは暫く離れているのですよ……。那智))
((どうした妙高))
((どうやら私たちの連勝記録は今日、初めて途絶えることになりそうです))
((…………え))
((……妙高。今ここで言うことではなかろう))
((いいえ、みんなはもう気付いていますよ。今は現実を受け入れなくてはならない。あなたにも見えているのでしょう? あの二人はとても強いわ……間違いなく指揮官補正を受けている))
((………そうか。おかしいと思ったんだ。我らとて補正を受けているんだからな……それでもまったく歯が立たん。叢雲は健闘したがな))
((ええ。どうやら彼らの絆はとても強く結ばれているようです。そして特務室長の方針かしら……稽古も充分こなしているわね。戦闘訓練ばかり重視の私たちと違って))
((……お姉ちゃん))
((妙高。提督のお耳に入ったらどうする積りだ? 金剛、いまのは黙っているんだ。皆(ミナ)も))
((…………………))シーン
((金剛? …………またか))
((さきほど金剛は特務分室室長との会話中に、なにやら衝撃を受けていた様子。今は、そっとしておきなさい))
((…そうか))
((もしも私たちがあの二人を無視して一丸(イチガン)となって軽巡棲鬼を追跡しようものなら、特務室長は二人に命じて提督を捕縛してしまうでしょう))
((打つ手なし、というわけか))
((だからあなたは、この状況に於て自らが最善と思う選択をしなくてはなりませんよ? あとは任せます!))ザザア!
((妙高お姉ちゃん!?))
「最善、か………」
ザバアアン! ゴボゴボ……
「三日月まで!?」
「あ~あ……今日はとんでもない日になったな」
「砲塔も機銃もここまで水浸しにされては使い物にならん。迂闊……もっと稽古に励むべきだったか」
「長月~、魚雷は?」
「発射管の内部がズブ濡れだ……さっきからチャプチャプうるさくて敵(カナ)わん。撃てんことはないが滑ってドコに向かうか分からんぞ」
「………うげ」|||
「こちらは三分の一が戦闘不能。砲も機銃も魚雷もやられたよ。どうする?」
「指揮官は那智だ。我々だけではどうにもならん」
「だよね~」
((全軍に告ぐ))
((那智!))
((第八……いや、特務艦隊の新手が確認された。いま索敵した如月から口頭で報告を受けた))
((ええっ!?))
((そんな………))
((…………))
((第一陣は深海棲艦ワ級の大群。第二陣は高速プレジャーボートおよび艦娘四人。そして……))
((ワ級? ワ級って言った? しかも大群って!))
((ミーティングの報告通りだな。第八艦隊はやっぱり深海棲艦と……))
((長月、望月、ちょっと待って! ねえ那智、まだ他にも!?))
((………第三陣は、艦娘一人。そして深海棲艦が八体だ。人型のな))
「………勝てないよ。こんなの、勝てっこない」
「…………」
「何者なの? 特務室長って……」
((そして……我々が接近した時に軽巡棲鬼らを攻撃していた、艦載機編隊のことも失念するでないぞ。例の二人は妙高と鳳翔に任せよ……他の者は加賀らの護衛とする。いいか、護衛だぞ。軽巡棲鬼どもには艦載機だけでよい))
((ええぇっ!?))
「あらら。とうとう奥さまの出番なのかクマー」
「おそろしいヤツにゃ。できれば仲間として会いたかったにゃー」
((………鳳翔の手を煩わせるなんて、何年ぶりかしら。ごめんね那智……情けない))ギリィ
((言うな足柄。それより皆に伝えたいことがある。聞いてくれ))
((那智?))
((…………?))
((先手を打たれて私ともあろうものが狼狽した。すぐさま態勢を立て直すべきであったのにな……だがこのままで終わらせはしない! トキシラズに艤装・兵装すべて置いてこい! たまには紺碧の海を舞台に野外稽古というのも一興だろうさ!!))ザザザザザッ……!
((了解、那智!))ザザザ!
((…………うん。やっぱりそれがいいよね))ザアッ
((那智お姉ちゃん……。お姉……ちゃん))///
((よーし!))ザザアアッ…!
ザバッ!
「……ゲホン! ゴホッゴホッ!」
「…叢雲、あなたの闘志……素敵でした。どうやら那智は、迷いを振り切ることができたみたいね」ニッコリ
「二度も水浴びさせられてステキもなにも………」
「……………」ニッコリ
「…………う。ま、まあ気持ちはもらっとくわ」///
「はい。さ、どうぞ叢雲」つ
「あ……私の兵装。持っててくれたの? ……ありがと」つ
「どういたしまして。私たちも早くトキシラズに……ね? こんな結末も案外、悪くはないかもしれませんよ」
「私は勝ちたかったな。まあいいわ、行きましょ吹雪!」ザッ!
「ええ、叢雲」ザザアッ
「たあああああ!」ガシッ
「…………ッ!」バッ!
ザザザア!
「てええええい!」ブンッ
「くうううっ! ………まだまだあっ!」ガシイイッ
「…………! ならばッ!」ガッ
「うっ!?」
グルリ
ザバアアアアン!!
「ふうっ! まだまだいけるよお! 次は誰かなああっ!?」ニッコリ
「大外刈を必死に跳んでかわした妙高にすかさず同じ脚で小内刈か……」
「うわぁ……素敵」///
「………やれやれ」
ザバア!
「……ゴホッ! ゲホッ! こ……ここは私に任せて! 早く行きなさい! 鳳翔が来るまでもちこたえてみせます!」
「分かった!」ザアッ!
「うん、仲間同士で傷付けるよりよっぽどイイもんねっ! なんだか元気でてきた! 頑張って!」ザザザ!
「行くわ! あなたもしっかりねっ!」ザザザザザアッ……!
「あ……あれれ? お姉ちゃん……これって……」キョトン
「……オレたちを放っておく積りか。ボウズ、聞こえるな……奴らの動きに変化アリだぞ。一人だけ残して全員が移動開始だ……それとな、どうやら別の艦娘がこちらへ向かっているらしい。名は鳳翔。どうすればいい?)
(例の後方グループと合流するのか、或いは室長の船をガードするのか……まだ分からないが今は気にしなくていい。それと、鳳翔か……空母だったな。それなら軽巡棲鬼を追跡する筈なんだけど……おかしいな……)
何か仕掛ける積りか? だが想定内だな。こちらにはみんなが居るんだ。何の不安もない。
(…天龍と古鷹はそのまま鳳翔ともう一人の対処を。それと、ついさっき目視でワ級との接触を確認したぞ……響が手際よく仕切る姿が目に浮かぶようだな!!)
(そうか! てコトは!)
(うん、やったねお姉ちゃん! 提督、もうすぐ私たち……!!)///
(ああ。第八艦隊の真の姿を見せてやろう……みんなは誰にも負けないよ)
(司令……!)///
(当然ね~。だってボウヤの艦隊なんだから)
「そっか……提督の艦隊、か。これからはボクだって……!」
「なんかスゴイこと言うてるで……引越しホヤホヤでイキナリ出撃や思うたらあの第一艦隊を倒してしまうんかいな。えらいトコ来てしもたなあ……ほい、ウチの艤装しっかり頼むでワ級ちゃん!」ゴトッ……ガチャン!
「ギャギャ!」バシャバシャ
「おおッ!? 返事しよったで、この子。かしこいなあ~!」
「施錠はしっかりね、黒潮」///
「大丈夫や、問題ないで! それよりなあ響、なんかカオ赤いで? どないしたんや~?」ジーッ
「な、何でもない」///
「黒潮に同意する。そしてこれは縁(エニシ)だろう……ならば艦隊のために、司令のために全力を尽くすのみ」ゴト……ガチャリ
「せやな不知火」ニヤリ
(軽巡棲鬼をめざして飛んでいった艦載機の心配はもう無用だよ。空母の艦娘を無力化させれば追跡続行はもう不可能だからな……これより第一艦隊の制圧を開始する!)
続く