鬼斬り ~艦これ改に捧ぐ~   作:日明月

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第六-6話

(軽巡棲鬼をめざして飛んでいった艦載機の心配はもう無用だよ。空母の艦娘を無力化させれば追跡続行はもう不可能だからな……これより第一艦隊の制圧を開始する!)

 

 

 

第六-6話

 

 

 

バシャアアン! ザブン! ザッバアアアアン!

 

「たああああッ!」ギュウウ

 

「っしゃああああ!」ザザッ!

 

ドボン! バシャア!

 

「げふっ……まだまだあああッ!」ガバア!

 

((うっわ~……もう艦娘というより柔道娘だにゃ))ザザザ!

 

((いいんじゃないかクマ? むしろ最初からこうすれば良かったんじゃないかクマー))ザアア……!

 

((………そうすれば勝てたかにゃ?))

 

((それは分かんないクマ……勝負だから。でも))

 

((なんにゃ?))

 

((少なくとも仲間割れはなかったクマ。それに、最初から全力を出すことができたに違いないクマー))

 

((同感にゃ……))

 

((過ぎたことはもう仕方ないクマ。せめて今からでもコッチの意地を見せるクマー!))ザザアッ!

 

((そうだにゃ!))ザア!

 

 

 

ズガガガ! ………バシャアアアン! ブシャアアアアア!!

 

(くうっ………艦載機が次から次へと! かなり軽巡棲鬼を追いかけたハズなのに……!)ズザザ

 

(ああ、まだこんなに飛んでくるとはな。この数は……間違いない、正規空母だろう)ザアアア

 

ズガガガッ! ドゴオオオオン!! ブシャアアアアアアッ!!

 

(うわっぷ!)ズザザ

 

(提督の言った通りだね……爆弾を機銃で爆発させて水柱を噴き上げさせてる)ザアッ

 

(これじゃ空母に近付けないよ~! 提督、どうすればいい!?)

 

ワ級に艤装や兵装を預けたみんなが続々と戻ってきている……身軽になって素早さ倍増って感じだな!

 

(そうだな陽炎……人海戦術で圧倒してやるとしよう。 みんな、ここまで本当によくやってくれたな……軽巡棲鬼たちも確保できたし言うことなしだ! そろそろ到着する援軍には少しビックリするかもだけど、慌てずしっかり連携してくれ!)

 

(もうたっぷりビックリしたよ! 任せて!)ザザア!

 

(提督はどうなさるのですか?)

 

(室長を捕まえるよ、筑摩。あのボートまで頼むぞ時雨!)

 

(まあ!)

 

(おっとぉ!? 指揮官みずから!)

 

(提督、まかせて……ボクがちゃんと一緒に居るから!)ザアアッ!

 

(いよいよだわ……とりあえずアイツらは全員、二等兵からスタートで第八艦隊に編入、一から叩き直して……ウフフ)フフフ

 

(ちょっと曙。目がマジなんだけど)|||

 

(曙には鬼教官の素質があるかもな……ズブ濡れにされた礼をしてやれ)

 

(その積りよ提督!)ザザァ!

 

 

 

(特務室長……)

 

お。

 

(金剛か。しばらく無言だったみたいだが……もしかして、さっき俺が言ったことを確かめに?)

 

(…………はい。ワタシ……ワタシ…………)

 

声に元気がないな……とうとう事実を知ったか? …いや、あの室長が金剛の質問に素直な返答をしたとは限らないな。だとすると……無言を貫いたとか、余計なことを聞くなと追い返したとか、そんな感じか。金剛は室長の言葉ではなく、態度で真実を察したというところだろうな。

 

(金剛はね……それでいいんだと思うよ)

 

(………え?)

 

(金剛には……いや。艦娘のみんなには、俺たちのヨゴレた組織の色になんか染まってほしくない。みんなは、みんならしくしていればいいんだよ。だから金剛も、今のままの金剛でいいんだ。事実を知らなかったのは、金剛が俺や室長みたいに汚れてない証拠だ)

 

(………………)

 

(司令は汚れてなんかいません!)クワッ

 

(ありがとう雪風)

 

でもな。組織ってのは知らず知らずのうちに人を蝕むものなんだよ。ましてや俺たちの組織は……まったく。

 

(ボウズが話してるんだ。静かにしてろ、雪風)

 

(………はい)

 

(この後どうするか。それは金剛がしっかり決めることだね。暁、響! 奴らの左からまわりこめ! 雷と電は右からだ、全速力で通過しろ!)

 

(了解よ司令官!)ザアッ!

 

(了解。全員の装備、積み込み完了したからね)ズザザザ

 

(了解! ふぅ~間に合ったわね)ザザア!

 

(司令官さん、はいなのです!)ザザザザ!

 

(ミルディ、ワ級たちはちゃんと四人のあとについてきてるな!?)

 

(だいじょうぶだよ提督ちゃん! あのコたちはね、しっかり躾けてあるから!)ザザザザアアッ!

 

(え………)

 

(ねえ提督………いまの、誰?)

 

(頼りになる味方だ! まだまだ来るぞおッ!!)

 

 

 

 

 

……ズザザザザザザザザアアアア ア ア ア アアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

「きゃああああっ!!」グラリ

 

「わあッ!?」グラ……ザブン!

 

((な、何!? どうしたの………きゃあ!))グラアッ

 

((曳き波だ! みんな、重心を下げて身構えろ! 引っくり返されるぞ! わわッ!))グラリ

 

 

ふだん海に馴染みのない人が、釣りやクルージングに誘われて船に乗った際にまず驚くのは乗り心地だ。波はあらゆる方向から船を揺さぶる。とにかく揺れる! そして……気を付けなくちゃいけないのは、他の船が擦れ違いや追い越しの際に曳き波をまきおこすってことだ……大きい船体でスピードを上げて走ってるヤツは特にタチが悪い! こちらの船室内におさめてある備品なんて、バラバラに飛び散ってしまうほどに!

 

 

「わああッ!」ザブウン!

 

 

でも今回だけはそれを敢えて利用してやる……第一艦隊の艦娘みんなを傷付けずに勝利するためなんだからな!

 

 

((ああッ!?))ザブウン!

 

((ワ級が………ワ級がああああっ!))ザッバアアン!

 

((Yの字に分離して私たちを左右から波で揺さぶってる! 信じられない!))ザザザ…!

 

((これじゃ、あの二人に近付く前に……きゃああああっ!))ドボオン!

 

((あ……見て見て、千歳姉ぇっ!))ザザザザ

 

((なぁーに千代田!? 水柱をもっともっと立てなさい! せめて少しでも足止めを………))ズザザザ

 

((いいから見て! ほら、あそこ!))|||

 

((! ワ級の群れの中から……新手の深海棲艦ですって!?))|||

 

「……姉さんの言った通りの結末か。この私が圧倒されるなんて……私は、いつの間にか……驕(オゴ)っていたのだろうか?」ザザザ

 

((那智))

 

((金剛か。声が途絶えたから何事かと思ったぞ……もう大丈夫なのか?))

 

((ゴメンね那智。これだけは伝えておこうと思ったの……て………特務室長が、提督をねらっているよ))

 

((何っ!))

 

((ワタシは彼の念話ならすべて聞こえるからね。アナタもトキシラズに戻ってきて。ここに居れば彼は必ず来る))

 

((罠の可能性は?))

 

((ある。彼は本当に恐ろしい男……ワタシと那智が提督の船に行けば、それはつまり第一艦隊の主要メンバーが勢揃いするってこと。彼にとっては勝利をつかむ絶好の機会だよ……わざと念話で手の内を明かしてワタシたちを一ヵ所に集めることくらい、カンタンにやっちゃうだろうね))

 

((…………………))

 

((提督が負けたら鳳翔は戦えない。ワタシとアナタが負ければ艦隊の命令系統は消滅する。だから……トキシラズの三人が負けたら、この戦いは終了))

 

((その通りだな。まさかこんな事態に陥るなどとは思ってもみなかった。だから、非常時の予備系統を構築しなかった))

 

((それはアナタの所為じゃないよ……ワタシたちみんなの責任))

 

((金剛……))

 

((ねえ那智。たとえ罠でもさ、私たちには選択肢なんてないんじゃないかな?))

 

((確かにな。我らとて意地を見せなくてはならん。ヤツ……いや。彼に、正々堂々と対峙すること。それがせめてもの意地))

 

((うん))

 

((ここまで我らを追い詰めるとはな……大したものだ))

 

((この十一年間……楽しかったね。最後を勝利で飾れたら良かったんだけれどもね))

 

((もうそんなになるのか。ああ……楽しかったな。まさか古鷹や加古とこんな形で再会するとは思わなかったが))

 

((そうだね。那智、ワタシね……ふたりの提督の戦いには手を出さない。ただ見届けたいの))

 

((ああ。どうやら我々も彼女たちも、ふたりの露払いを務めることになりそうだな))

 

((それとね、あの……))

 

((特務室長のことか。古鷹や加古、そして第八の面々が彼を慕っていることなら私も知っているよ。お前は明治生まれの最年長、言わば私たち全員にとっての姉だ……昭和海軍の長女といっても過言ではあるまい。そんなお前のことだ、大切な妹たちが信頼を寄せる彼のことが……気になって仕方ないのだろう?))

 

((那智はお見通し、だったのネ……))

 

((いままで共に頑張ってきた仲だ。当然だろう))

 

((最初はね、警戒ばかりしていた。だって彼ってばドンドン出世したんだもの。それまでは目立たない職員だったのに、なぜかイキナリ頭角を現した。それ知って直感したよ……いつかワタシたちの行く手を阻むかもって))

 

((第五から第七の室長が一斉に退任した件だな。覚えている。提督は彼らを利用していたからな))

 

((組織をまとめるため、裏でイロイロと活動させていたね。でも………マサカ、ワタシマデ……))

 

((ん? すまんよく聞き取れなかった))

 

((あ、なんでもないヨ! えっとね、それでね……提督のコト………あっ!? やだワタシ、なに言って……し、室長のコト、自分でも知らないうちにね、警戒心が薄らいでいって、それで……もっとよく知りたくて……))///

 

((……もう彼とは対立したくない、か))

 

((那智………ゴメン))

 

((なぜ謝る。私とてこの艦隊の因業(インゴウ)なら知っているぞ? 我らは所詮、艦隊の手足に過ぎぬ身。ここは提督と鳳翔の艦隊だし、いままでの所業に関しても、お二人にはお二人の考えがあるのだろう))

 

((………………))

 

((だがな、金剛は金剛なんだ。ここの色に染まらないからといって、今まで充分に尽くしてきたお前を責められる者など……ひとりもおらぬよ。お前はお前の信ずる道をゆけばいいさ))

 

((ユアソゥファンタスティック……ありがとね、那智。フフフ…念話なのに、ずいぶんカゲキなお話、しちゃったね))

 

((皆にも鳳翔にも聞かれたな。でも最後の思い出話なんだからな、愚痴のひとつやふたつ……構わんだろう))

 

((うん))///

 

((今からそちらへ向かうよ。区切りをつけるとしよう、金剛! ))ザザザアアッ……!

 

 

 

 

 

ザザザザザアア……!

 

 

 

(あ……ほら提督、始まってるよ!)

 

時雨の視線の先。彼女の言葉通り、そこでは第八艦隊のみんなが次の段階に入った作戦行動を実施している。よし、こちらは順調だな。

 

(あ、司令官! どんどんワ級に乗せてるわよ! ……あ、もう! じっとしてなさい! もっとペース上げようか!?)バシャバシャ

 

(急がなくていいぞ暁、第一艦隊のみんなを丁重にな!)

 

(ワ級に百人分のスポンジマットを巻いた司令官が言うと説得力あるのです。はいおしまい、お行きなさいな!」ポン

 

(マットを巻いたのは俺だけじゃないぞ。ギチや隊員みんなもだ)

 

「ギャオオン!」ザッバア!

 

「きゃああああああ!? は、速い! 速いってばあああ!」ギュウウウ…!

 

海外のドキュメンタリーチャンネルで、犬の背中に抱きついて移動させてもらってるコアラを観たことがある。ワ級にしがみついてる艦娘……ちょっと似てるかな?

 

「にぎった両手を離しちゃダメよ~! 逃げようとしたらガブッと咥えて力ずくで連行するように命じてあるんだから!」

 

「そんなああああぁぁ!」ザアアア………

 

いくら艦娘とはいえ水中じゃ、ワ級には敵わない。潜水艦……鎮守府の地下で眠るあの子たちを除いては。ポジショニングってのは肉弾戦の力関係を左右する、本当に重要な要素なんだ。

 

(第一艦隊の規模は司令官の調査によると五十人以上だったわね。でも百人分はさすがに多すぎるんじゃないかしら?)

 

第一艦隊

バランス型

最低でも五十人以上の艦娘を擁する規模

練度が非常に高く資源資材も豊富な最強艦隊

 

(途中で破損する可能性があるからな。予備を含めたんだよ雷)

 

(もう……ほんと艦娘には甘いんだから)クスクス

 

(ワ級の背中はカタイからな。当然の対策だ)

 

(雷、電! 段取り、分かってるわね?)

 

(ええ暁。艦娘を十人乗せたワ級をひとつのグループ単位として、私たちが複数で鎮守府まで引率するのよね)

 

(そうよ、最初の十人は電でいいかしら。いっしょに引率する艦は、あなたが好きに選びなさい)

 

(はいなのです。響はもう段取りを?)

 

(ええ。なにしろあの子は……)

 

(私は司令官の指示なら、誰よりもすばやく正確に理解し実行するんだから。当然だよ電)

 

(わぁ……響は相変わらずなのです)

 

(ふふ、響らしいわね)

 

 

 

「なんつーか……イレギュラーな戦闘に慣れてるカンジ? 私たちとはぜんぜん違うな」

 

「指揮官が違うと艦隊って……ううん……艦娘ってこんなに変わるんだね……もうズブ濡れだし、好きにして。………ごめんなさい、那智」

 

 

「いいわよ……ほら、ワ級の体を包み込むようにつかまって……慌てないでゆっくりね。そう、それでいいわ」

 

(暁。軽巡棲鬼と会話してみてどんな印象だった? 率直に頼む)

 

(そうね……意外、かしら)

 

(意外か。予想とは異なる人物像だった?)

 

(うん。オへライベとの合流が早かったから、ほんの少ししか話していないけど……根っからの悪じゃなかった……そんな印象)

 

観察眼に優れた暁の言葉なら説得力あるな。それなのに……まったく。 なんで戦艦棲姫を、あんな手段で……! まだ総務課の調査室からは音沙汰ないし、手間のかかる艦娘だな!

 

(みんな、暁の言葉……聞こえたな? 俺も暁と同じ気持ちだ。新しく仲間になってくれたみんなの中には、まだ違和感を感じている子も居るかもな。何しろ相手はあの深海棲艦なんだからね)

 

(……………)

 

(だが俺には疑念や迷いなど一切ない……深海棲艦だって艦娘だ! 仲間が教えてくれたことを自分の目と耳で確かめたからね! ………室長の船にかなり接近した。しばらくみんなとは話せなくなるが、その前に伝えておく……さっきから天龍と古鷹の声が聞こえない。苦戦してるんだろう)

 

(あ………そう言えば)

 

(司令、どうすれば……)

 

(提督! アタシが行く! いいでしょ!?)

 

(勿論だ加古。ただし!)

 

(……な、なに?)

 

(あくまでも第一艦隊の艦娘たちを、ワ級で鎮守府に連れていくのが優先事項だからな! 水柱も曳き波も柔道技も、すべてはこのため……第一艦隊の無力化のためだったんだから、そこは間違えないこと!)

 

(うん……分かってる。それはちゃんとやるよ、どんどん投げ飛ばしてやるよ! だからさ、提督……!)

 

(ああ、それなら構わない! それからね、よく聞いてくれ加古もみんなも。鳳翔を集団で制圧するのは禁止だからな!)

 

(ええっ!? なんで!)

 

(提督……あの天龍と古鷹が苦戦しているのなら、手段を選んでいる余裕などないのではありませんか?)

 

(ボウヤの命令よ。納得できないと言うのなら……)

 

(あ……そういう積りでは……)

 

(いいんだよ龍田、俺の考えを伝えておく良い機会だ。それに俺は、みんなが意見を言ってくれるのが嬉しいからね。いいかみんな、これは戦いだが争いではないんだ! 艦娘同士で争いなんてするワケないんだからな!)

 

(うん。その通りだよ提督、ボクもそう思います)

 

時雨が背負ってる砲塔をつかんでいる右手を一瞬だけ離して、返事のかわりに彼女の美しい黒髪をなでる。

 

(あ……あんッ)///

 

(今は立場の違いから、こういうカタチになってしまってるだけなんだ! ほら見なよ、彼女たちもコチラと同じように水柱で対抗し始めてる……みんなに砲弾が当たらないように、しっかり距離を確保しながらね!)

 

(はい司令、第一艦隊のみなさんも私たちの仲間ですから!)

 

(雪風の言う通りだ! だからみんなも、鳳翔を多人数で圧倒して捕縛するなんて、ゼッタイしちゃいけない。彼女とは、乱取り稽古をする気持ちで胸を貸してもらってこい!)

 

(えっと…それはつまり、まず一対一で戦って、負けたら次の艦娘が立ち向かうってコト?)

 

(そうだ加古。彼女は強いんだからな、きっと実りある稽古になるぞ……争いじゃなくて稽古だ! 柔道の親睦だ! 負けたら息をととのえて再チャレンジすればいいんだよ、存分に楽しんでくるんだぞ!)

 

(まさに稽古そのものだね。うん! 分かった!)

 

(……司令)///

 

(おっしゃあ!)

 

「……ふうん。なるほどね。第八艦隊、か」

 

(……………)///

 

(提督! 着いたよ!)ズザァッ!

 

よし、いよいよだな……やってやる! この組織の象徴そのものであった第一艦隊の指揮官! この船に居るんだ!!

 

(みんながここまでやってくれたんだ、俺だってやってやるさ! 行ってくる)

 

 

 

 

 

ズガガアン! ドゴォッ! ザバアアアン! ザバアアッ!!

 

((日向、もっと気合い入れて撃ちな! どんどん来るよ!!))ドオン!

 

((分かっている……だがな伊勢、我々には……この水芸…骨が折れるな………))ズドォ!

 

((まあね……当てないように撃つのって疲れるね。でもね、とにかく怯ませればいいんだ。そのスキに乗じて仲間が投げ飛ばす!))

 

((数々の強敵を沈めてきた私たちの36センチ砲……まさかこんな使い方を………ねっ!))ズドン!

 

((軽巡棲鬼ども。あの距離なら、余裕で炸裂させられる筈だった。一瞬で終わらせて、驚愕する特務艦隊のみんなを優しくいたわって、勝者として暖かく迎えてあげる筈だった。それが……火器の無力化だけでなく……視界を遮られて逃げられてズブ濡れとはねッ!))ズドオン!

 

「あ~、昨晩のミーティングか。もう遠い過去みたいなカンジだね~」ザザザザ……

 

「北上さん……」ザザザ

 

「見てよ大井っち。まるで夏祭りの水風船だ………こんなにジュプジュプいってる軽巡なんて、サマにならないね~」

 

((伊勢! 聞こえる!?))

 

((千歳か……? どうした、金切り声などあげて。らしくもないね))

 

((ワ級の群れの中から新手が現れたわ! 艤装が明らかに違う……深海棲艦よ! そっちへ向かってるの! 加賀たちを守ってあげて!))

 

((……! さっき那智が話してた内容と違うぞ……如月の索敵からどうやって逃れ……そうか! ワ級の巨大な群れの中に潜んでたから感知できなかったんだね。数は!?))

 

((分からないの! 次から次へとキリがないわ! ……ああっ!))

 

((こんどはどうした!))

 

((艦載機だわ! どんどん発進してる!))

 

((なッ…………))

 

((………勘弁してよ))|||

 

 

 

ズガガガガガガ!! ドガガッ! ザザアン! ブシャアアアッ!! ズガガガ!

 

 

 

(さぁ………いくわよお! 提督ちゃんに勝利を捧げるのっ! みんな、しっかり頼むわねぇッ!)ザアッ!

 

(ミルディ……なんだか雰囲気が変わったな。鬼指揮官の面影がどこにも見当たらん)ズザザ……!

 

(よっちゃん、それは当たり前~。ミルディは司令官に首ったけなんだもの~。あの人の言うことなら何でも聞くし。空を飛べって言われたらほんとに飛ぶよ~。そのうちお揃いの服を着たいなんて言い出すかもね)ザザザアッ!

 

(はっちゃんはミルディのことをよく見ているんだな。そこまでとは気付かなんだわ)

 

(ねびゅら。りりぃ。あなたたちはどう? みるでぃのぼでぃーがーどでしょ)シュパアアアッ!

 

(はぁ……お恥ずかしいことながら……気付きませんでした。不覚であります)ザザザザ

 

(私も~。てか私たちだって提督のコトは好きだし? べつにミルディのことは気にしなかったな~。くー様は?)ザバアッ!

 

(わたしはきづいてたよ。たるとも)

 

(あのコもスゴイですよね~。前はさー、提督って呼んでたのに。今じゃ………)

 

(ミルディ! 抜け駆けは許さないんだからぁっ! ご主人様に勝利を捧げるのはこの私ぃッ!!)ザザザザアアッ!

 

ガバァッ!

 

 

「あうっ!?」

 

(せいやああああッ!)

 

ザブウウウウン!

 

(……うっわ~。恋愛モードのピンク戦艦ってヤバいね、クッキー)

 

(ほんとだねリリィ。でも本人はなんだかすごく幸せそう)バシャアアア……!

 

(見たかはっちゃん。今の動き)

 

(ううん、見えなかった。スゴイね~)

 

(うふふ……勇ましいわね。ま、提督ちゃんのお役に立っている限り、少しくらいのナマイキは許してあげる)

 

(なッ………)

 

(言ったわよね? これからは女と女だって。もうあなたを子どもあつかいしないわ……でもね、もしも提督ちゃんの足を引っ張るようなマネしたら……その時は容赦しないからね)ニッコリ

 

(……そんなコト、しないもん。私はずっとご主人様のそばに居たいの! それだけなんだからッ!)

 

(そこは同感よ。……ミルディ隊より暁隊へ。ウチの戦艦が張り切ってます……恐らく十人以上は確実、鎮守府への連行をよろしく! 我々はこのまま空母へと向かいます!)ズザザザアアッ………!

 

 

((わわっ……きたあ!))バシャアアッ!

 

((いやああああッ!))ズザザア……!

 

((きゃあああああ!))ザブウン!

 

((磯波っ!?))

 

ズガガガガガ! ガガガガガガ! バシャアアン!

 

((伊勢! もう砲撃は無意味……! こちらの懐(フトコロ)に飛び込まれたッ!))

 

((…………))

 

((伊勢!?))

 

ガガガガ……! ズガガガ!

 

「あぐぅっ!」ザバアン!

 

((……何という精緻(セイチ)な銃撃だ。ねぇ日向、なんだいコレ? こんな大編隊でさ、何百発も撃ってるのに……私たちにはカスリ傷ひとつ負わせていないよ))

 

((伊勢……))

 

((なのに私たちは……敵を沈めることしか考えてなかった私たちときたらさあ……水柱で相手を攪乱することすら満足にできない有り様だよ! ハハッ……ざまぁないね!))

 

((…………))

 

ザバアアン! ザブン!

 

((どんどん投げられてるね。まるで間欠泉みたいに海のシャワーをどんどん浴びせられるんだもん、相手に集中して身構えるなんてムリだね))

 

((そうだな……凄まじい練度だ………))

 

((あの編隊を飛ばしてるのって誰なんだろうね? さあ日向、扶桑、山城! トキシラズに向かうよ、もう援護の砲撃は必要ないからね!))

 

((私たちも……兵装をあずけて格闘戦ってわけだね))

 

((分かりました……ああ………深海棲艦をたくさんたくさん沈めてきた私たち………なのに、こんな結末……))

 

((扶桑姉さま……))

 

((これが敗北か……この時代でも味わうなんてね))

 

((違いますよ川内。敗北なんかじゃありません))

 

((金剛!? さっきの話さぁ、ヤバイって!))

 

((いいえ、ワタシはもう決めたの。これからどうするのかをね。よく聞いてね川内、これは確かに戦いだけれど………でもね、争いなんかじゃないんだヨ?))

 

((何言ってんのさ金剛! あと少しだったんだよ!? 今日が最後の戦いの日になるハズだったんだ! 私は途中参加組だけど、軽巡棲鬼は第一艦隊の長年の宿敵じゃないか! 特務艦隊にジャマされたんだよ! 台無しにされたんだよ!? 争いじゃないなら一体、なんなのさ!!))

 

 

((ワタシたちは家族だよ! そんなコト言っちゃダメなんだから! 家族は争いなんてしないッ!! ケンカはしても争いなんて絶対にしないッ!!))

 

((………金剛))

 

((川内。私も特務室長と彼の艦隊には複雑な思いがしています……でもね、金剛の言う通りですよ……私たちは一つの家族なんです))

 

((白雪じゃないか……今ドコに?))

 

((トキシラズに。もうすぐ特務室長がここに来られます))

 

((ああ、さっき金剛と那智が話してたっけ))

 

((はい。私は彼を見てみたい……私たちの提督とどのような会話を交わされるのか……確かめたい))

 

((……会話というより怒鳴り合いじゃないの? この時代の男の子って、年長者に遠慮しないでしょ))

 

((うふふ、そうかも知れませんね……。繰り返しますよ川内、私たちは家族です……そして家族とは、決して争ったりしないものなんです。だからね、金剛が言わんとするのは………家族の間に、敗北なんて言葉はないってことです。ありません、そんなの。勝ち負けなんて考えてちゃメッ! ですよ?))

 

((そっか……ちょっと興奮してたよ。ゴメンね))

 

((ありがとう白雪、ワタシの気持ちが伝わったみたいです。あのね、みんな…もうコチラの艦娘はかなり第八鎮守府へと連行されました……そろそろ終わりが近付いてきたようです。だからね、一緒に見届けませんか? 私たちの第一艦隊の終焉を………))

 

((終焉………))

 

((そう、終焉です。これ以上の抵抗は最早、無意味。であれば私たちはおとなしく、心を鎮めて、私たちの歩んだ道の終わりを受け容れましょう))

 

((…ううっ…………))

 

((うわあああぁぁあん!))バシャアン!

 

((ああああっ……! うわああああッ!))バシャ!

 

((……みんな))

 

((悔しいよ金剛! 那智! 今までずっと一緒に頑張ってきたのに! あと少しだったのに! こんなのって………ないよおおぉ!))

 

((………皐月。そうだね……ずっと一緒だったよね))

 

((……私からも頼む。皆で最後の戦いを見届けよう))

 

((ぐすっ……那智、そこに居るの? 金剛と一緒なの……?))

 

((提督もな。いま柔道衣に着替えていらっしゃる最中だ。三人で特務室長を待っているよ))

 

((……鳳翔は?))

 

((提督の奥方だ、ご自分の意志を貫くだろう。彼女のことは気にするな))

 

((……那智。残念です…))

 

((すべて私の責任だ。このようなこと、もはや言えた義理ではないが……お願いだ、残った者はもう抵抗するな。トキシラズに集まってくれ……))

 

((そんな……那智が私たちに、お願いだなんて……))

 

((もっと早くこういう振る舞いを身に付けるべきだったのかも知れん。思えば私は、いつも突っ走っていたな……たまにはお前たちの意見に耳を傾けるべきであったよ。謙虚さを欠いていたのだな))

 

((やめて那智! あなたの口からそんな言葉、聞きたくない!))

 

((叢雲か。さっきはすまなかった……私は妹のことになると心を乱す))

 

((いいわよ気にしてないんだから! でもね、あなたには常に堂々とした指揮官であってほしいのッ! 責めるなら不甲斐ない私たちを責めて! だって、あなたのお陰でこの艦隊は勝ち続けてきたんだからあっ!!))

 

「!」

 

((ワタシも叢雲の言葉に賛成ですよ、那智。反省と卑屈はまったく違います……アナタは私たちを支えてくれた指揮官なんですからね?))

 

((そうですね。私たちにとって、大切な指揮官ですよ……))

 

((……………))

 

「那智……?」

 

((………お前たち。私を……指揮官を、泣かせるな……まったくッ))

 

((那智……うん、ゴメンナサイ))ギュ……

 

((…………ありがとう。みんな))

 

((お姉ちゃん………))グスッ

 

 

 

 

 

「たあああああッ!!」ガシイ!

 

「くううううっ!」ザザ!

 

「古鷹………動きが鈍ってきたのではなくて!? 鳳翔にあれだけ投げられては、流石のあなたでも………!」ザザザアッ!

 

「ま…まだまだああっ!」ガシッ!

 

「……くっ!」ザアッ!

 

「…………」ニッコリ

 

「なぜ……笑っているのです古鷹?」

 

「だって嬉しいんだもん! 共に戦った仲間が、こんなに強く己を鍛え上げてるんだから! それでこそ重巡洋艦だよっ!」ガバア!

 

「なあッ!?」

 

ザバアアアン!! ゴボゴボオ…………

 

「ぷはあっ!」ザバッ!

 

「落下する瞬間に息をとめたんだね。やっぱり強いなあ……第一艦隊の頃も、あの頃も……妙高はまさに重巡洋艦の鑑(カガミ)だよっ!」ニコッ

 

「………なんて笑顔……これが………ワタシタチノ……ハイインカ」

 

「? 妙高?」キョトン

 

「何でもありません……さあ、いきますわよ!」

 

「うんっ!」ザザア!

 

 

 

「おりゃああああッ!」ザッ!

 

「…………!」ヒラリ……ザアッ!

 

「なにっ!?」

 

「遅い………たあっ!」ガバアッ

 

「! …………ぐううッ!」ザバアンッ!

 

「なッ………水中に!?」

 

ザバア!

 

「こっちだ………」ガシイ!

 

「!」

 

「うおおおおおおお!」

 

グルン!

 

「な……しまっ………!」

 

「おりゃあああああ!」

 

ザバアアアアッ……ゴボオッ!

 

「恐ろしいほどの闘志じゃな。自ら海水にもぐって、下から抱えあげおったぞ……相手は一瞬、出遅れたな」

 

「天龍は強いよ……私は一瞬で叩き付けられたわ」

 

「ほう……認めるのか、あの艦娘の強さを」

 

「事実だし。でも……このままじゃマズい……」

 

「同感じゃな。相手は化け物か?」

 

「私たちと同じ艦娘よ。ただ、特別な絆を結んでいるわね……人間と」

 

「それが奴の強さの源(ミナモト)か……それにしても……」

 

「何?」

 

「まさかお前が自分のことを艦娘、とはな……。いや驚いたわ。あの男に感化されたか」

 

「なッ……!」///

 

「照れることはあるまい。あいつはお前を仲間だと思っているようじゃぞ?」

 

「そんな………こと……」///

 

「この服を見てくれ……あいつの秘書艦が縫ってくれたんじゃ。まったく、変わっておるわ。どちらも」

 

「………」

 

「もうすぐこの戦いは終わる……たぶん、お前が勝ってほしいと望む男がな」

 

「……っ! だから、その話は……もうッ!」プンスカ

 

「我らの頭領たちは鎮守府へと送られたぞ……お前はどうする積りなんじゃ? 意地を張るのもほどほどにせい……あいつの艦隊で、これからも過ごしたいと望むのであれば、な……」

 

「……わかってるわよ。それくらい。それより! あなたはどうなのよ!」

 

「お前と同じじゃ。あの男に興味があるよ……ただのう、こんな美少女がすぐ近くに居るというのに、仕事ばかりしておるのはどうかと思うが………さてとリッティ、あいつが船から出てきたら我らの役目を果たすとしよう。局長との戦いには、きっと我らの霊力が役立つであろうからな」

 

 

 

          続く

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