「第六艦隊の鎮守府は直ぐ近くにある。行くぞみんな、フェスチバーリの開幕だ」ザッ
視界の片隅で、響がニヤリと笑った気がした。
第四ー3話
カチャリ…ギイイイィ…
(……よし、開いたぞ。そっちは大丈夫か)
(ああ問題ない。みんなの様子も連中の動きも全て分かってる)
(そうか、大したもんだな。オレのは一機だけだし、大半の軽巡もだ。重巡だって多くて六機だぞ)
(ココの提督も妖精さんを使って何かするかもな。一度も会ったことないけど)
(心配するな。妖精をそんな風に使役(シエキ)できる提督は、お前だけだよ)
(本当に? でも妖精さんは全部の鎮守府にいるはずだろ。彼女たちとのコミュニケーションは提督の役目だし、似たようなスキル持ちだっているんじゃないか?)
(いや、いない。オレたちは全員、余所の鎮守府のことならいろいろ知ってる。お前が調べた艦隊編成とか機密事項は除いてな…あれは驚いたぞ。…いろんな関係者がいるが、お前が今やってるみたいな芸当ができる奴なんて聞いたことないぜ。いたら必ず耳に入ってたさ)
(そうか、それなら好都合だな。俺たちは邪魔者を気にせず調査できる……ん、連絡だ。ちょっと待ってくれ)
(ああ)
俺は探索状況を報告してくれている妖精さんの言葉…いや思念の受信に集中する。彼女たちは喋る代わりに、精神の感応(カンノウ)で伝えてくれる。時間の掛かる言葉と異なり、いろんな情報が一瞬でこちらに飛び込んでくるから、慣れると便利だ。
(お前たちのエリアで先行して飛んでる妖精さんからだ。そこから真っ直ぐ行って、突き当たりを左に曲がると階段がある。そこから一番下まで降りてくれ。大きな扉があるから、鍵穴から零式水偵を侵入させるんだ)
8つの鎮守府は全て、それなりの年月を重ねた建物を根城としている。お陰でこういう手段が可能となるんだが、カード式セキュリティーの鍵穴なし扉とかだったら完全に詰みゲーだ。
(誰もいないか?)
(艦娘も職員もいないぞ、大丈夫だ。賑やかなフロアは上のほうだ…そうか、昼休みどきか……食堂があるんだったな。みんながココに来たことあって助かるよ、俺は初めてだから心強い。知り合いの艦娘がいれば、言うことなしだったんだけどなあ)
(全くだな。まあ八つもあれば疎遠になるのも仕方ない…っと、ココと第五と第七は別だったか。…お前は、全てのフロアが見えているのか?)
(バレるといけないから艦娘の集まってる辺りは避けてるが、やろうと思えばできる。全部で二十八機の水偵に乗って飛び回ってる妖精さんたちの協力を得てな。しかも、俺たちの鎮守府よりもかなり小さいし)
(航空戦艦の搭載数並みだな…まったく、今回のお前には驚くばかりだ)
(元はといえば、お前たち艦娘がいてくれるからこそのチカラだよ。コレも、念話もね。さあ、監視カメラの位置も全て確認済みだから安心して進んでいい…それじゃ木曾に響、頼むぞ)
(ああ)
(司令も気をつけてね)
(ありがとう響)
(雪風、司令を守るのよ)
(はい、響)
ファンタジーRPGのパーティーでとても重要なポジションのキャラって何だろう?
人によって違うだろうけど、俺なら迷わずシーフを選ぶ。冒険とは見通しの良い闘技場だけじゃない…危険極まりないダンジョンや荒野だってあるんだ。
パーティーみんなが自らの力をしっかり発揮できるよう、あるいはトラップで大ケガしたりしないよう周囲に気を配ったり偵察に行ったりするシーフ、それが艦娘の黒子を目指す俺の立ち位置だ。
そしてこれが俺の特技。
こんなにたくさんの妖精さんたちが何故、俺に協力してくれるのかサッパリ分からない…彼女たちは本来、鎮守府で艦娘建造(と言っても、造るのは艤装だけだ…そこに魂が宿り艦娘が誕生する)や見張りに従事するんだから。
でも。
艦娘の役に立てるのなら、ありがたくその協力を仰ごう。鎮守府のシーフとして戦うために。
「雪風、周囲の様子はどう? 誰か近付いたりしてないか」
「はい司令、私たち以外には誰もいません。ご安心を」
俺と雪風、そしてくーが今いるのは、車を降りた場所からあまり離れていない山の斜面。第六艦隊の鎮守府がよく見える絶好のポイントだ。正面ゲートでは明石と職員たちとの間で会話が未だに続いている…彼女の会話センスと大胆な姿は思った通り効果バツグンで、木曾と響は易々(ヤスヤス)と侵入できた。
「分かった。……雪風、いつもありがとうな。今度は少し…いや、かなりメチャクチャやってるが、途中下車する積りは一切ない。最後まで付き合ってもらうよ」
「お任せを。悪い人たちには負けません!」ニコリ
続く
素敵な音楽の数々…
6年たっても全く色褪せません