マリオン・ウェルチになりまして   作:陸戦強襲型ガンダム

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フェアリーとピクシー

「いや~さっぱりした」

 

「水にも限りがあるのでシャワーは一日二回まで」

 

「分かってるけどさ、無理でしょ」

 

「……無理ですよね」

 

「シャワーがダメなら湖でいいんじゃないの」

 

「ならいっそサウナでも作る?」

 

「サウナですか?確か、熱した石に水をかけて行う蒸気浴の一種……でしたっけ?」

 

「そう。何かの本で読んだんだけど、その後水中に入るんだってさ。それなら湖でも良いかなって。作り方知らないけど」

 

「ダメじゃねえか。ってか、この紙の山はなんだ?」

 

「友軍の戦闘記録ですよ、貸し出してもらったんです。友軍が作戦行動後に放置した残存兵器がないか探す為に」

 

「いくつか投棄されたままの機体もあったはずだからね」

 

「筈ってお前、これ全部読んだのか!?」

 

「うん。暇なときにね」

 

「未だに見つかってないけどね」

 

まあ、あったとして私の知らない兵器か、外伝作品で出た兵器なのか気になりはするから探すけど。てか、さらっと今アルマすごいこと言ってなかった?

 

「あ、やべ」

 

「きゃあっ!」

 

「あーせっかく整理したのに酷いよヘレナ!」

 

「そうじゃないだろ。ミアの心配とか……」

 

「こ、こ、これ……これ!欲しいです!!」

 

どうやら目当てのものが見つかったようだ。良かったね、と言いたい所なんだけど、これ片付けるのかぁ。

 

「第603技術試験部隊の……オリヴァー・マイ中尉?」

 

一通り片付けた後、拡げた資料を読み込む私たち。オリヴァー・マイってあのイグルーに出てた彼か?

 

「大破を確認も回収困難だったため投棄。ほらあった!」

 

「YMT-05ヒルドルブ……主砲は宇宙戦艦向けに造られた30センチ砲。うん、ピッタリです!」

 

「ピッタリって?」

 

「えっと、こ、これです!」

 

そう言って向けられたのは、多分ミアの手書きだと思われるモビルスーツの設定図。うわ……エグ。

 

「かわいい顔してまあ、えげつないこと考えてんな」

 

「ミア!このヒルドルブってのはどこにあるって!?」

 

キリーさんに話を通してもいないのにもう既にアルマは行く気みたい。いやー絶対反対されると思うんだけど。

 

     *

 

「ミア、どうだ新しいモビルスーツの乗り心地は?」

 

私の予想とは裏腹に、ヒルドルブ捜索は反対されることもなくこうして実行に移された。大破したザクの代わりに、キリーさんがキャリフォルニアベースから持ってきた物資の一つドム・トロピカルテストタイプを駆るミアは相当ご機嫌の様だ。

 

「凄いです!ザクとは比べ物になりません!ザクの歩行とは違うホバー移動もまたオツなものですね!……ザクで類似ホバー移動をした人もいましたけど」

 

「え、いやーアレは機体が軽いから出来た芸当だから……」

 

『聞こえるかしら?急激な砂漠化の影響か、航空写真と実際の地形情報が一致しないの。現在の地形との差異を照合してアップデートを行ってるけど、少しの間地形情報の精度が落ちるわ。気を付けて』

 

『少尉、連邦機です!モビルスーツを含む複数の反応あり!』

 

『そう。しかたないか、ノイジ―・フェアリー隊戦闘を許可するわ』

 

「「「「了解」」」」

 

なんでこんな所に連邦がいるの?折角今日は捜索だけで終われると思ったのにさ。

 

「おい、二本槍の奴がいるぞ。あの時の奴……とは違うか?」

 

「うん、顔が違うから多分違うと思う。それに、あの感じもしないし」

 

「あの感じ?」

 

「ううん、なんでもない。ヘレナ、あの丘の上のモビルスーツお願い」

 

「任された。狙撃対決なら負けねえさ」

 

「ミア達が注意を引きます。裏をかいて背後から攻めてください」

 

「わかった。アルマ、聞こえた!?」

 

「もっちろん!」

 

辺り一面砂漠だが、競り上がった丘や自然にできたアーチ等をうまく使えば裏取りも出来るだろう。

 

「アルマ、私が先に仕掛けるから挟み撃ちにしよう」

 

「わかった」

 

宣言通り飛び出し、とりあえず手近な一機をヒート・ナイフで一閃。慌ててこちらに向く連邦機を後ろからアルマが襲い、混乱した所に白兵戦を仕掛ける。慌てながらもビームサーベルと抜こうとしているが、抜き終わるまで待ってやることもないのでさっさと倒す。

 

「よし、制圧完了!ヘレナ、ミア、今のうちに早く」

 

「行くぞミア」

 

「待ってください!ソナーに反応、付近にまだモビルスーツがいるみたいで、合流を急いだ方が良さそうです!」

 

『フェアリー各機に通達。敵はおそらく試験部隊だ。こちらとの遭遇を周辺部隊に報告された可能性がある』

 

「って事はまだ来るって事ね……!」

 

「んじゃ、気を引き締めるとしますか。狙撃手に上を取られるって事がどういうことなのかおしえてやるよ!」

 

そこからはホントにヘレナの独壇場だった。最初にこの場所から狙撃してたジム・スナイパー以外遠距離狙撃できる機体が居なかったのも手伝って、こちらにたどり着く前にほとんどの連邦機がヘレナによって打ち抜かれていった。

 

「折角の新機体なのに~」

 

「残念だが、今回は私が主役だったみたいだな」

 

「ヘレナやっる~流石うちの名狙撃手!」

 

『みんな、お疲れ様。ヒルドルブの位置座標が判明したからデータを送るわ。夜になる前に片付けましょう。そう何度も機会は巡ってこないだろうから』

 

ヒルドルブの埋まっている場所は戦闘地点からそんなに離れてはいなかった。砂漠化が進んだと言うのにその砲身を空へ高々と向け、ヒルドルブはそこにあった。それはまるで墓標の様だ。誰もが黙祷を捧げる中、敵機の接近を知らせるアラートが鳴り響く。

 

『高熱源体接近!着弾します!』

 

「砲撃……って事とはまたタンクタイプ!?」

 

『分からんが、敵モビルスーツ部隊の接近を確認した!想定よりも早いぞ!?』

 

『ミア、貴方はヒルドルブの解体を。マリオンはそれの運搬を優先して、出来るだけ早くね。ヘレナは二人の直掩を』

 

「キリーさん、私は!?」

 

『敵の部隊を捕捉した、映像回すぞ。しかし先頭のこれは……噂の白い奴か?……いや、先日オデッサで黒い三連星がやられたと聞いたばかりだ。わざわざここまで来るはずがない』

 

いや、コレガンダムピクシーじゃん。こっちがフェアリーだからって妖精(ピクシー)で合わせてくる必要はないんだよ?陸戦型ガンダムも僚機にいるしさぁ。しかも、感覚的にピクシーに乗ってるのがこの前陸戦型ガンダムに乗ってたパイロットで、陸戦型ガンダムに乗ってるのが陸戦型ジムのパイロット……これは、機体に無茶させてでも早急に積み込んだ方が良さそうだ。いくらなんでも私たちの機体じゃ相手が悪い。せめて、キリーさんがアルマ用にキャリフォルニアベースから持ってきたイフリートにアルマが乗ってたら話は変わったかもしれないが、ドム・トロピカルテストタイプ一機にザク系三機ではキツイどころの話じゃない。

 

「似た別の機体って事ですか?」

 

『その可能性もあるが、同型の別固体と言う可能性もある。今やあの機体はジオンの恐怖の対象だからな。側を似せるだけでも効果はあるだろう』

 

『アルマ、出来る?マリオンか貴女以外にアレの相手を出来るパイロットは居ないわ。貴方が無理そうなら、マリオンと役割を入れ替えるけど』

 

「やってみせます!」

 

「ヘレナ、こっちは良いからアルマの援護を!自衛とミアの護衛位私がやるから!」

 

「ああ、任せた!アルマ、風穴開けられたくなけりゃ出来るだけ夕日を背にしてくれよ!」

 

「了解!」

 

「ミア!解体、早く!」

 

「わかってますよ!今全力でやってます!」

 

ミアが解体する側から出来る限り早くシルフに詰め込んでいるが、何分ヒルドルブがデカいためどうしても時間がかかってしまう。

 

「ちょっといい機体に乗ってるからって調子に乗るな!」

 

アルマはまあよくやってるよ。陸戦高機動とは言え、ザクでピクシーと互角に渡り合ってる。一対一の勝負なら無類の強さを誇るタイプなのかね?

 

「マリオンさん!これで最後です!!」

 

「良し分かった!アルマ、これ積んだら援護に行くからね!」

 

そう言って、最後のパーツをシルフに乗せた時だった。脚部の辺りから嫌な音が響き、私の機体は体勢を崩しながらシルフ内に吸い込まれるように倒れた。ああもう、機体に無理させすぎた!思えばライトアーマーに改造する前から私の操縦に振り回されていたのだから、いつガタが来てもおかしくはなかったのだ。それが最悪のタイミングで来ただけで。

 

『フェアリー4、マリオン!どうしたの!?』

 

「大変です!マリオンさんの機体の駆動部が完全に破損しています!それに、オーバーヒート寸前です!!無茶させすぎですよ、これじゃあロクに動く事も……」

 

『そんな……ミア、ヘレナ乗って!マリオンとアルマの二人がかりならと思っていたけど、作戦変更。撤退よ』

 

「「了解」」

 

動けない私の機体を奥に押しやり、ミア機とヘレナ機がシルフに乗り込む。後は、アルマを回収するだけだ。情けない、これじゃあ私足手まといじゃないか。

 

「アルマ、ここだ!」

 

ヘレナ機が手を伸ばし、おそらく跳躍したのであろうアルマ機を引っ張り上げる。引き上げられたアルマ機の状態は酷いものだった。片腕は無くなってるし、なにより胸部にある傷からコックピット内のアルマが丸見えだ。映像にあったピクシーが持ってた獲物はビームダガーだった筈だが、もしもっと長い獲物だったらと思うとゾッとする。アルマは既に、気を失っている様だった。

 

     *

 

それから数日、アルマは未だに眠り続けている。オデッサが没落し、戦争が大きな局面を迎える中、未だ目覚めないアルマと何やら思い悩んでいるヘレナとミア。私はと言うと、毎日アルマの容体が急変しないかを見るついでに思念を飛ばしてアルマに声をかけていた。特に、何かに魘されている様な時はこれをすると少しばかり安らかな顔になる。普通に声をかけるのとどちらが良いのかは分からないが、アルマが目覚めるまでどちらも定期的にやっていこうと思う。

 

「あら、マリオン。貴女もお見舞いかしら?なんて、毎日来ている貴女には失礼かしらね」

 

部屋に入ってきたキリーさんの顔を私は見ることが出来なかった。機体さえしっかり動いていれば、アルマがこうはならなかったんじゃないかと言う負い目があるからだ。ここ数日、キリーさんを避けていたのもその為だ。

 

「すみませんでした、キリーさん。私の所為でアルマが……」

 

「あまり自分を責めるものではないわ。出来るだけ早く……そう頼んだのは私よ。貴方はそれに応えようとしただけ、急かした私にも非はあるわ。それに、当日も言ったけれど死者無しで帰ってきてくれただけで十分なのよ」

 

「でも、これからも同じことが起きないとは限りません」

 

「そうね。もう普通のザクにいくら手を加えた所で、貴女の本気の操縦には付いて来られないでしょうね。キャリフォルニアベースから何かもう一機、持ってくるべきだったわ」

 

私は見えていなかったが、あのピクシーとの戦闘時アルマのザクも脚部が破損したらしい。恐らくではあるがアルマの操縦に付いていけなくなったが故の破損だと考えると、アルマ用に持ってきたイフリートを譲ってくれとも言えない。

 

「新機体はない。でも、ザクじゃあもう……」

 

キリーさんと別れた私は、どうしようもない現実を口にした。だからと言って現状は何も変わらない。やるせない気持ちを胸に歩く、私の足取りは重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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