マリオン・ウェルチになりまして   作:陸戦強襲型ガンダム

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私とアルマの新機体

「あれ、アルマおはよう。今日はちょっと早いね」

 

「ふぁ~おはようマリオン。私だって早く起きるときくらいあるよ」

 

「あ、そうそう。ヘレナのイフリート、改修完了したんだって。さっきミアがヘレナと一緒にそんなこと話しながらモビルスーツハンガーの方に向かってたのが見えたんだよね」

 

「そんなに時間は経ってないのにもう出来たんだ。やっぱりミアは凄いなぁ」

 

「ね。パイロット一筋の私たちじゃこうはいかないよっともうホールに着いちゃったか。おはようございます」

 

「おっはようございまーす!」

 

「あら、ちょうど良いタイミングね」

 

私たちが扉を開けてホール内に入ると、どこかとの通信を丁度終えたらしいキリーさんがこちらを見て微笑んでいた。何かいい情報があるのかな?

 

「タイミング?」

 

「ええ、お月様から貴女の新しい機体が届くそうよ。勿論、マリオンもね」

 

「「ええ!?」」

 

驚愕の声が重なり、ホールに響いた。

 

     *

 

「これ、かなりやばいんじゃないか?」

 

「私たちの新機体が……」

 

しかし、そううまく事は運ばなかった。月からの贈り物、それを輸送していた艦が連邦の襲撃に会い、私たちの機体を乗せたHLVは緊急投下されオーガスタ方面に落着したのだ。オーガスタは連邦の勢力下、何としても取り返さなければならない事態となってしまった。

 

「やばいなんてものじゃないわ。相手に我々の機密を差し出したようなものよ。だから取りに行く」

 

「取りにって、ミア達がですよね……?」

 

「さっと行って、ぱっと帰ってくる。それだけよ」

 

簡単に言ってくれますねキリーさん。こっちはもう機体が限界突破してるんですが。

 

「シュティルナー少尉は久々の実戦になる。ヘーゲル曹長も例の機体では初陣だが、いけるな?」

 

「は、はい!」

 

「やってみせます」

 

「では、任務の詳細の確認に入るわね」

 

何時ものようにテーブル上のモニター起動し、今回のメンバーが表示される。と言ってもいつもの面子なんだけどね。

 

「あの、まだ私がリーダーで良いんですか?」

 

「異論は?」

 

「かまいやしない」

 

「他に誰がいるんですか?」

 

「リーダーにころころ変わられるとこっちも合わせ辛いからね」

 

「しっかりしなさいアルマ。皆、貴女の事を支えてくれるはずよ」

 

「……わかりました。やってみます!」

 

「では、今度こそ作戦の詳細に入るぞ。今回の作戦は落着したHLVの確保と中身の回収。ただ、知っての通り落着したオーガスタは連邦の制圧圏内、当然近辺は敵モビルスーツが展開されている。従って、途中からは陸路で目的地を目指してもらう」

 

「間違いなく戦闘が起きるでしょう。HLVには私たちの主力となるモビルスーツが搭載されてるとは言え、回収が困難なら破壊も辞さないわ。残念だけど、機密を連邦に渡すわけにはいかないものね」

 

最悪、ザクのまま戦い続ける可能性もあるってわけね。出来れば、いや絶対それだけは阻止しないと。

 

     *

 

『ここまで近づいて反応がないとすると、ビーコンは壊れている様だ』

 

『無線傍受の可能性を考えて、以降こちらとの通信は禁止ね。予定時刻までに目標を発見して、一度だけ座標を通信して。すぐに回収に向かうわ。回収が困難だった場合は先ほど言った通りよ。』

 

「無理そうなら破壊……か。何としてでも手に入れないと」

 

「新機体かー何が入ってるのかなー?ミア、何か知ってる?」

 

「いえ、中身については何も」

 

「とんでもねえ機体だろうよ。お前たち用なんだからな」

 

「あ、でも最近統合整備計画で採択されたモビルスーツが少数ロールアウトしたらしいので、もしかしたら……」

 

「ミアよぅ、どこからそんな情報仕入れるわけ?」

 

「知りたいですか?」

 

「あーいや、遠慮しとく」

 

あの言い方は絶対長くなる奴だし、遠慮しといて正解だと思うよヘレナ。しかし、統合整備計画となるとザクⅡ改とかな?えー私もザク以外に乗りたかったんだけど。

 

「みなさん、この先に反応が!HLVだと思われます」

 

「よし、じゃあ回収しちゃおう」

 

「待ってください。これは……敵部隊接近中」

 

「数もそれなりにいるぞ。アルマ、どうする?」

 

「ここまで来て、諦めたくないよ」

 

「お前がそういうなら付き合うさ」

 

「良いの?私のわがままだよ?」

 

「リーダーはわがままくらいがちょうど良いんじゃないですか?」

 

「もし、アルマが潔く諦めたとしても私がそれを許さないけどね。ホントもうこの機体じゃ無理」

 

「あはは、搭載されてるのは私のだけじゃないもんね!……ありがとう」

 

アルマが偶に自信なさそうに話すのは、やっぱり彼女ももう陸戦高機動型ザクではやっていけないと思ってるからか、それとも自分がヘレナやミアの足を引っ張ってるとでも思っているのか。前者なら、私のザク・ライトアーマーなんてただのザクの改修機なんだけど。

 

「チッ、少しずつだが連邦のパイロットの練度も上がってるな。だが、イフリートを舐めるなよ!」

 

「ヘレナ、やるぅ~。狙撃に格闘戦までこなすなんて、凄いよ!」

 

接近を許した連邦機にヒート・ナイフによる一撃を見舞い、見事倒したヘレナにアルマが称賛の声をかける。専用に調整された狙撃用ライフルに格闘兵装だけじゃなく、接近戦用にショットガンまでも装備しているヘレナのイフリート、名をイフリート・イェーガーと言うらしいが、まさしく遠近対応モビルスーツと言っても良いだろう。

 

「なんだろ?機体が重い……!」

 

「損傷はないみたいですけど、マリオンさんと同じく機体性能がアルマさんに追いついてないのかもしれません」

 

「無理、させちゃってるってこと?」

 

「今はどうしようもありませんから、何とか凌いでください」

 

やっぱり来たか。アルマだってニュータイプなんだから、いつかそうなるとは思ってたよ。ただ、正直ここまでもつとは思ってなかった。流石は陸戦高機動型と言った所かな。いや、フラナガンにいた頃はサイコミュ兵器動かせなかったって言ってたし、覚醒するのが遅かったのかも。

 

「猶更新機体を持って帰らないとな」

 

「私の陸戦高機動型ザクでこれなら、マリオンはこれより酷いんでしょ?」

 

「まあね。あ、先輩から一つアドバイス。無理させすぎると駆動部が逝くから気を付けてね。ヒルドルブ回収の時の教訓」

 

「分かった、気を付けてみる」

 

「無理そうなら下がれよ!」

 

「平気平気!」

 

まあ、パイロットにもよるがジム等の普通の量産機及びそのバリエーション機ならまだ平気だろう。逆に、高性能機で来られるとパイロットがどうであれかなり厳しいことになる。

 

「やりましたよ!」

 

「ふぅ、なんとかやりきったか」

 

「みんなありがとう。回収、急ごう」

 

「さて、中身は一体……」

 

「急速接近する機体あり!速い!皆さん身を隠して!」

 

「身を隠すってお前……」

 

とりあえず近場の岩の陰に機体を隠す私たち。速いって事は十中八九高性能機だろうし、厳しい戦いになりそうだ。身を隠してしばらく、HLVの近くに降りてきた白い機体は私の知らない機体であった。なんだあれ?いやまて、見えないが気配だけは感じる。これは……もう一機いる?

 

「一機だけだぞ?」

 

「そうみたいですね……どうします?」

 

「決まってる!それは私のだぁあ!」

 

「アルマ!」

 

突撃したアルマに、気配が意識を向けたのを感じ取ると同時に私は機体をその気配の方に走らせた。虚空に振るったヒート・ナイフが何かとぶつかり合い、そこに黒い機体が出現する。ステルス迷彩!?メタルギアじゃないんだぞ!

 

「ああああ!」

 

一気に押し切ろうとするも、その黒い機体はヒート・ナイフを受け止めた、形状的にヒート・ダガーと思われるそれをもう一本取り出したのを見て、私は機体を離すしかなかった。

 

「なにあれ!?」

 

「恐らくは光学迷彩です。理論的には可能ですが、まさか実用化されてるなんて……」

 

「そんなのによく気づいたなマリオン」

 

「私もちょっとばかり特別なんでね。ミア、援護お願い」

 

「はい!けど、無茶はしないでくださいね!」

 

「違う。そうじゃないのに……なんで言う通りに動いてくれないの!」

 

「アルマさん落ち着いて!」

 

「あの白黒の所為だ。アルマは多分、彼奴らの動きをしっかり捉えてるんだ。イメージと現実の差。避けたはずなのに避けられない、当てたはずなのに当たらない」

 

「絶対的な機体性能の差ですね。でもそれならマリオンさんだって」

 

「ああ、彼奴も相当イラついてると思うぞ。でも、マリオンは言い方は悪いが手を抜いて機体が付いて来れるギリギリで操縦してる」

 

「踏んだ場数の差……ですかね」

 

「ああ、こっちに来た時点であんなのに乗ってるくらいだからな。あの時点で既に普通のザクじゃ追いつけなかったんだろう。だから、本気で操縦するとこの前みたいに運搬するだけでも機体に異常が出る」

 

ご名答。でも、アルマや私の援護をしながらそこまで話せるならまだ余裕あるな?まあ、援護の手を抜いてるわけじゃなさそうだから良いけどね。

 

「ああもう!」

 

苛立ちを多分に含んだアルマの声が聞こえる。まあ、気持ちは十分良く分かるよ。私も機体がこれじゃなきゃもっと迅速に倒せただろうに。動き自体は決して大したことはないからね。

 

「え、なに!?」

 

しかし、ある程度追いつめた辺りで黒い機体の動きが変わった。ちらりと見た白い方はそうでもないのが救いか。メインカメラの赤い発光、まさかこれ……HADES?いや、EXAMがないんだからHADESが出来上がるわけがないし。

 

「出力上昇に伴う、異常放熱……あんなの無茶苦茶ですよ!」

 

「おい!大丈夫なのか!?」

 

「多分ね!」

 

とは言うものの、実は若干私も焦っていた。と言うのも、黒い機体からなにも感じ取れなくなったからだ。まるでコンピューターが動かしているかの如く正確な射撃と、常軌を逸した動き。しかし、人があんな動きをさせることが出来るだろうか。それに、偶に処理落ちした機械の様に動きを止めるのも気になる。まあ、そのお陰で攻撃を当てられるのだが。

 

「思ったよりも動きが読みやすい……?まるで教え込まれた戦術をそのまま使ってるような」

 

「ですね。機体性能自体は脅威ですけど、これじゃあシミュレーションとあまり変わりませんよ」

 

「よし、じゃあさっさと片付けて……ん?」

 

単調な動きを繰り返す黒い機体を徐々に追い詰めていったものの、アルマとヘレナが相手していた白い機体が逃げるように飛び立つと、黒い機体もそれを追って飛んで行ってしまった。

 

「急に退いた?まあ、こっちは助かったがな」

 

「恐らく、活動限界じゃないかと。あの特殊な装備から見て、実験機だったんでしょう。そうじゃなきゃ、今頃連邦のモビルスーツは光学迷彩装備ばかりになってるはずですし」

 

「荷物は大丈夫だよね?」

 

「シルフには座標を知らせました。中はこれから確認します」

 

箱の中身はなんじゃろなって感じね。さてさて、新機体は──ん?

 

     *

 

帰還しホールに集まりはしたが、空気はあまり良いものではなかった。というのも、アルマ用とされた機体はケンプファーもしくはそのプロトタイプだった訳だが、まあこいつのコンセプトが満場一致で受け入れられない。唯一、焦ってるアルマを除いて。

 

「カミカゼじゃないんだから、死ぬつもりの特攻なんて許せるわけないでしょ!」

 

それでも良いから、何て言ったアルマにキリーさんの怒号が飛ぶ。そりゃそうだ。家族同然に仲良くなんて言ってたキリーさんが、それを許可するわけがない。

 

「いや、でも高性能なのは確かなんだし……うん、大丈夫!アルマ、お前のモビルスーツはあたしに任せとけッ!あんたに相応しい機体に仕上げてやるさ!」

 

「そうですよ。あくまでモビルスーツを使うのは私たちなんですから」

 

「みんなの言うとおりだわ。そうだ!この機体、名前はティターニアにしましょう。妖精の女王の名に恥じない機体にしてね」

 

あんまり思い悩んでないと良いけど、まあ無理だろうね。キリーさんに呼ばれたみたいだし、考えが変わってくれると良いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




黒い機体が使ったシステム

HADESではない。機体のコントロール全てを搭載した学習型コンピューターの制御下に置き、人では出来ないような動きをも可能とさせる。が、学習型コンピューターとは言えデータに無い動きをされると、対抗策を算出するために動きを止める欠点があり、また咄嗟のフェイント等の駆け引きも行うことが出来ない。機械制御の為、ニュータイプに思考を読まれないという利点がある。
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