マリオン・ウェルチになりまして 作:陸戦強襲型ガンダム
「それじゃ、我らが妖精の女王ティターニアの生誕祭を始めるわよ!」
いつもよりも豪勢な食事が並ぶホールにキリーさんの声が響く。そう、アルマの新機体ことティターニアが遂に完成したのだ。これはそのお祝い。まあ、アルマ自体はもう試乗まで済ませてあるので少し遅い気もするが、それはそれ。何故招かれたのか不思議がってるクロエが挙動不審な事を除けば、概ね全員楽しんでいた。バルバラ中尉は納得いってないようだけど。
「私、ここにいて良いのかな?」
「良いのよクロエ。捕虜とは言え貴女は情報提供もしてくれるし、こんな時位はね」
「少佐、北米はもはや激戦地です。この様に弛緩した空気は作戦に悪影響だと思いますが」
「貴女も、偶には肩の力を抜いて」
「はぐらかさないでください!私たちは戦争をしてるんですよ!」
その一言で、シンと静まり返るホール内。イルメラさんが宥める中、真剣な表情でキリーさんがバルバラ中尉を見た。
「そう、戦争よ。必要であれば人を殺す……でも、私たちは感情のない殺人マシーンじゃない。偶にはこうして息抜きしないとね?」
「……すいませんでした」
キリーさんの言う言葉に思う所があったのか、バルバラ中尉は謝罪を述べて自身の席に腰を下ろしかけたが、キャリフォルニアベースからの連絡によりそれは中断された。無論パーティーもである。
「我が隊に、敵部隊襲撃の指示が出てます」
「まったく、羽を伸ばす暇もないわね。それじゃあみんな。楽しみは取っておいて、戦争に戻りましょう」
折角の豪勢な食事を片付け、気持ちを切り替えて席に着く。成り行きでクロエもいるけど、まあ大した問題じゃない。
「相手は相当浮足立ってるのか、我々の斥候にも気づかず情報は安易に得られた。孤立気味に移動中の目標部隊は、小規模ながらビックトレー級の陸上戦艦を擁している。にも拘らず、護衛は少数のモビルスーツのみ。配置変更のために移送中……と言った所か」
「連邦は北米に陸上戦艦多数運び込んできているわ。そこから考えるに、彼らは本気だということね。ビックトレー級は旗艦運用されることが多い。オデッサでは、あのレビル将軍も乗艦していたって話よ」
「今の私たちなら、叩ける……でしょうか?」
「そうだ。剛健な陸上戦艦ですら我々は小隊で撃破せしめる。そう、連邦に見せしめるんだ」
「砲撃は変わらず脅威ですが、先日のヘビーフォークと比べればビックトレーは総合火力に劣ります。それなら、改修の終わったギャンも加えれば撃沈も可能!……と思います」
「私のギャンの改修、終わってたの?」
「はい。イルメラさんがティターニア、私がギャンと分担して作業を行っていましたから。マリオンさんに頼まれた要素も含めて、完璧に仕上げましたよ。交戦距離が近距離だけというのはいざと言う時に対処できない可能性もあるから、せめて中距離まで伸ばしてくれってマリオンさんの意見も取り入れて、私やアルマさん、ヘレナさんのザクが使ってた武装を幾つか装備させました」
「そう、三人の使っていた武装を乗せているのね……なら、改修されたギャンはギャン・フェアリーと呼びましょう」
ギャン・フェアリーか。まあ、盾がなくなったギャンとか追加で何か装備させないと距離取られたらハチの巣にされかねないからね。だからこそ私はミアに、アレをギャンに付けて欲しいって頼んだんだけど。
「イフリート・イェーガーにドム・ノーミーデス、そしてギャン・フェアリーとティターニア。うん、完璧な布陣ね。前回に引き続き、リードパイロットはミア……」
「少佐!お願いがあります」
モニターが起動し、面子が表示された辺りでキリーさんの発言を遮ってまで声を上げたアルマはその目にある種の覚悟を持って立ち上がった。
「私に、リードパイロットをやらせてください」
「貴女に任せ、貴女が降りると言った。それを覆す意味、しっかりと理解してるかしら?」
「……はい!必ず結果で示します!」
「少佐、差し出がましいようですが、ここはシュティルナー少尉に任せてみてはいかがでしょう」
「わ、わたしもアルマさんが適任だと思います。最前線にいても戦場の変化を感じ取って、勝利への道筋を示してくれるのは何時もアルマさんですから。それに、その方が情報分析と砲撃に集中できますし!」
「アルマの声はさ、なんかこうガツンときて思わず体が動いちゃうんだよな。それで結構助けられてる。この間の戦闘もそうだったよ」
「このままミアがリードパイロットで行くならそれに合わせないといけないけど、アルマはもう結構リードパイロットやってたから合わせやすいんだよね。戻るなら、その方が動きやすいかな」
「……ふぅー、皆に感謝なさい。貴女の言う結果、見せて頂戴ね」
「はい!」
「では、作戦の詳細に入るわ」
進行予想から考えるに、接敵するのは港町っぽい所になるな。護衛を排除してから、ビックトレーを包囲し破壊。うん、簡単な作戦だね、言うだけなら。でもまあ、私たちならやれるはずさ。
*
「ミアさぁ、なにこれは?」
「ギャンです。中距離に対応するために、背部にラケーテン・バズを右腕部には速射砲を装備。左腕部にはグフ・カスタムのプランから拝借したガトリングシールドを取り付け、念のためシュツルムファウストとビックガンも持たせました。武装を増やした分機動力は若干落ちましたけど、そこは機体そのものをチューンアップさせたので問題ありません!なんなら、普通のギャンより機動性は上がってます!」
私のギャン・フェアリーは、見た目だけで言えばギャンキャノンと高機動型ギャンを足して、そこから砲を一門引いた代わりにガトリングシールドを張り付けたような、そんな姿だった。いやーこれは予想してなかったね。
「そもそも、私のノーミーデスを見てギャンにもキャノンが欲しいって言ったのはマリオンさんじゃないですか。キャノンだけだと中距離戦では心許ないと思って、武装を増やしたんですよ?」
「いやそうだけれども」
私はギャンキャノンみたいになれば十分だったんだよ。それがどうしてここまで……てかラケーテン・バズ以外は全部ミアの発案じゃないか。
『話している途中に悪いが、降下地点にそろそろ到達する。準備は良いか?』
「ミア・ブリンクマン、ドム・ノーミーデス準備OKです」
「ヘレナ・ヘーゲル、イフリート・イェーガー問題ない」
「マリオン・ウェルチ、ギャン・フェアリー何時でもどうぞー」
「アルマ・シュティルナー!ティターニア!!行けます!!」
『よし、新生ノイジ―・フェアリーの力。見せつけてこい!』
「「「「了解!」」」」
シルフから飛び降り、空中で落下中のこちらに砲身を向けたビル上のジム・キャノンに一発ラケーテン・バズを放ってから着地する。やっぱりバレてるよねぇ。シルフに乗ってる時に攻撃が飛んでこなくて良かったよ。
「お先に~」
「あー!ずるいよマリオン!!なら私も!」
「おいおい、援護する身にもなってくれよ。ガンガン突っ込みやがって」
「ヘレナさんも行きたかったら行っていいんですよ?援護は私が」
ジム・キャノンは居るけど、ガンタンクが居ないな。まあ、居ても居なくてもあんまり変わらないか。とりあえず、さっさとガトリング外したいし手近な奴からハチの巣にしていくか。おっと、近づけば安全とでも思ったのかな?残念、寧ろこの距離はギャンの得意な距離だよ。
「ガトリングで牽制しながら白兵戦やってやがる。後ろの敵にも反応してるし、背中に目でも付いてるのかね?」
「前に言っていた特別と言うのが関係してるんでしょうね。でも、アルマさんとマリオンさんまるでデュエットでも踊ってるようですよね」
「ああ、お互いがお互いを分かってる感じだ。もしかしたら、アルマもマリオンと同じなのかもな。ただ、ティターニアはともかくギャン・フェアリーは踊ってるとは言い難いけど」
「ちょっと、サボってないでよ!」
「お前らの倒すスピードが速いだけだ。こっちだってしっかりやってるっての」
「ビルの上なんかの敵機は私たちが倒してるんですからね」
少数と言うには些か数が多い敵機を倒しながら、ビックトレーに迫る私たち。
「いや、本当に数が多いな!?」
「少数でこれは流石連邦って感じですね」
弾を撃ち切ったガトリングを切り離し、ビックガンに切り替える。近づいてくる敵機はビームサーベルで捌き、遠くの敵機にはラケーテン・バズをお見舞いし、背後の敵機には腕だけ向けて牽制として速射砲を放つ。私がアムロ並みのNTだったら今ので仕留められたんだけどなぁ。そんなことを思う私の横で、アルマは機動力にものを言わせ弾幕を搔い潜り敵を一機、また一機と切り伏せている。よしよし、ビックトレーはもう目と鼻の先だ。
「目標捕捉、砲塔はミアが破壊します!」
「了解!アルマやマリオンばかりにいいカッコさせられるか!一発で終わらせる!!」
「うわ、流石うちの名スナイパー。ホントに一発で決めたよ」
宣言通り砲塔の一つをドム・ノーミーデスの砲撃が破壊し、イフリート・イェーガーから放たれた弾丸が艦橋を打ち抜く。残った砲塔はティターニアとギャン・フェアリーがビックトレーに飛び乗り、ビームサーベルを突き刺し破壊する。念のため、艦橋にもう2、3発撃ち込んでおこう……よし、これで残るは残存のモビルスーツだけだ。
「……!!」
その時、閃光の閃きと共に私は機体を動かした。ビルの陰から放たれる敵意に接近し、ビームサーベルで一突きにする。やっぱり、ガンタンクもいたのか。それにこの感じ……殺意や憎悪が混ざった感情を撒き散らしながらこちらに接近してくる敵はあの時のピクシーのパイロットしかいない。
「アルマ!」
「分かってる!……クッ!」
流石と言わざるを得ない速度で接近し、両手に構えたビームサーベルで斬りかかってきた赤いピクシーに、同じく両手に持っているビームサーベルで応戦するティターニア。誘い込む様にビルの向こうへと消えたティターニアを赤いピクシーが追う。大方、ミアやヘレナに被害がいかない様に離れた場所で戦うつもりなんだろう。
「なら、私はこっちをどうにかするかな」
ビームサーベルを構えこちらに向かってくる陸戦型ガンダムに向き直り、こちらもビームサーベルを構える。
「ヘレナとミアは他の連邦機をお願い。こいつは私がやるよ」
「わかった。ミア、行くぞ!」
「はい!」
「さて、やりますか」
乾いた唇を舌で湿らせ、操縦桿を握り直す。ミサイル・ランチャーにビームライフルまで持ってるとは驚きだが、その分機動力は落ちてるはず。
「なら!」
ギャン・フェアリーの動きには付いて来れないと考え、ビームサーベル片手に斬りかかる。一撃目は相手のビームサーベルで防がれてしまうも、二撃、三撃と続けているうちに少しずつこちらの動きに陸戦型ガンダムは追い付かなくなっていく。そして──
「貰った!」
──確信を持って振り抜いた一撃は、しかし陸戦型ガンダムのビームサーベルに受け止められてしまった。
「え?……クッ!」
鍔迫り合いとなった途端に放たれる胸部バルカンをステップで避け距離を取る。確実に当たるはずだったのになんで……そんな疑問が頭を掠めるも、陸戦型ガンダムにはMAXモードがある事を思いだした私は内心舌打ちをした。
「でも、MAXモードはそんなに長い時間持たないし、なによりあくまで動きが良くなるだけの筈。長引かせればこっちが有利……かな?」
ミサイル・ランチャーの弾幕をいなしながら、こちらもラケーテン・バズをお返しする。しかし、万全でやってきたあちらと違い、こっちは弾が既に尽きかけている。いっそ回避に専念して、あっちの弾切れを待つか?
「そっちは残弾平気?」
「いや、ちょいきついな」
「こっちもです!マリオンさんは?」
「今撃ったのがラスト。目標は達成したんだし、隙を見て帰還した方が良いかもね」
「ですね。アルマさん!聞こえてましたか!?」
「聞こえてるよ。やぁ!」
その声と共に、恐らく鍔迫り合いで押し切られたであろう赤いピクシーが、ビル同士の隙間から姿を現した。明らかに隙だらけだったが、こちらは弾切れだしなによりミサイル・ランチャーとビームライフルを避けることに専念している為、何か仕掛けることは出来ない。
「結局集結したね」
「ほぼ全員弾切れですけどね」
「で、どうするんだ?敵さんがそう易々と見逃してくれるとは思えないが」
「マリオンさん、装備にスモークグレネードがあるのでそれで目くらましをお願いします。いつかの作戦の時の余りですけど、勿体なかったので廃棄させずにおいたのは正解でした。こんなに早く役に立つなんて」
そう言われて、私はスモークグレネードを足元に落す。スモークグレネードから放たれた煙で視界が効かなくなるも、もう一つのスモークグレネードを的確に相手方向に投げ、辺りは濃煙に包まれた。後はこの煙に乗じて逃げるだけだ。一つ心配なのは、やたらデカいドム・ノーミーデスかな。
*
「貴女達の大活躍に、キャリフォルニアベースも沸いているわ」
心配をよそにドム・ノーミーデスもしっかり回収されて、無事帰還したその日の夜。キリーさんからそう褒められた。いやぁ、照れくさいね。
「……」
「どうしたんですか?キリーさん」
バルバラ中尉ですら誉め言葉っぽい台詞を言ってくれて舞い上がる私たちだったが、何やら神妙な顔をしたキリーさんに気づき声をかける。
「戦力も実力も十分とはいえたった4機のMS相手に、連邦は部隊まで作って私たちを狙ってきた」
「それほど脅威に思われてるんですかね?」
「もしそうだったとしても、みんなで協力すれば勝てます!」
「ええ、そう……ね」
何となく歯切れの悪いキリーさんの言葉であったが、イルメラさんが中断したパーティの豪勢な食事を持ってホールに入ってきたことによって本心でどう思ってるのか聞くことは出来なかった。
「マリオン、クロエを呼んで来てもらえるかしら?」
「はーい」
中断したとはいえ、朝はクロエもいたんだからそりゃ呼びに行かなきゃいけないよね。色々と聞きたいこともあるけど、今はクロエ迎えに行って目一杯パーティを楽しもうかな。
前話までのシルフと書くべき場所を結構ファット・アンクルって書いてたので修正しました。