マリオン・ウェルチになりまして 作:陸戦強襲型ガンダム
「ああ、これは想像以上に酷いものね」
地球に向けて落下していくコロニーを見ながら、私は私に与えられた機体であるザクⅠの中でそう呟いた。
ブリティッシュ作戦
簡単に言えば地球にあるジャブローにコロニーを落とす作戦。普通思いついても実行しようとは思わないんだろうが、しかしジオンの総帥ことギレンはこれを実行した。
見学と言う名目の元、教官の駆るザクⅡに追尾し戦場を駆ける私及びチームメイト。この戦場に教官付きとは言えやってこれるのは一定以上の成績を残した生徒のみだろう。私も、元々勘は鋭い方だったのだが一年ほど前にニュータイプに覚醒したのを自覚した辺りからでメキメキと成長しこうしてここに居る。後にマルコシアス隊の隊長になるヴィンセントもこの戦場の何処かに居るのだろう。
教官が違うからか、私たちは彼らのように戦うことはしなかった。戦場の空気になれるのが目的とのことらしい。その証拠に私や他生徒、そして教官は後方に位置した場所におり、直接戦闘はしていない。機体も訓練用のザクⅠとザクⅡの混合となっている。駆けているとは言ったが、それは流れ弾の回避が主だ。
「……」
「おい。大丈夫か?マリオン」
「あ、ああはい。平気です」
ニュータイプ故、周囲のちょっとした後悔や連邦に対する怒り、コロニー落としを成功させた喜び等と言った思考を感じ取り、少し気分が悪くなる。そんな私に声をかけた教官に、我に返り言葉を返す。
「これが……戦争」
チームメイトの誰かの呟きが、通信を通して聞こえてきた。そう、これが戦争。ジオン軍に……いや戦争に参加した以上、この感覚に慣れて行かなければいけないのだ。落ちていくコロニーを見ながら、私はそんなことを考えていた。今思えば、これ何とかして連邦軍に参加した方が良かったんじゃない?
*
そして、舌の根の乾かぬ内に私は再び戦場に舞い戻った。少しばかり訓練で実力を示しすぎた私は、ルウム戦役にも出撃する羽目になってしまったのだ。まあ、ニュータイプ能力を遺憾なく発揮して訓練を受けたせいだろう。早い話がやりすぎだ。アムロがそのニュータイプ能力を恐れられて連邦軍に軟禁されたのを忘れたわけではないが、手に取るように相手の思考がわかるのが面白くってついやりすぎてしまったのだ。これではキシリア辺りに目を付けられちゃうかもしれない。そうなればフラナガン機関に送られてしまう可能性が出てくる。気をつけねば。まあ、そもそもこの戦闘に駆り出された時点で目を付けられてるかもしれないが。
「フゥー」
と言っても何もしないと怪しまれるし、やはりやれることはやらなければならない。死にたくもないしね。暴れてきなと教官から借り受けたザクⅡのコックピット内で、私は大きく息を吐く。ブリティッシュの時とは違い、これは見学でも訓練でもなく実践である。緊張に固まる身体をゆっくりと解し、私は操縦桿を握った。
「マリオン・ウェルチ。ザクⅡ、出ます!」
その言葉と共に、私は戦場に飛び出した。瞬間、私は殺気を感じ取り、横へと飛び退いた。数秒後に元居た場所をミサイルが通り過ぎる。少しばかりの死ぬかもしれないという恐怖が沸き上がるが、それを飲み込んでザク・バズーカを構え突撃を開始した。
ニュータイプ能力を駆使し、相手のサラミスがこちらに照準を合わせるよりも先に回避行動に移りつつある程度近づいたら艦首にバズーカを打ち込む。そうして、沈黙したサラミスを足蹴にそのままバーニアを吹かし次の標的へ。
「シャアが出来るなら私にも……あれ?」
しかし、現実そううまくはいかずシャアの様な加速は望めなかった。やっぱあの人天才だよ。見様見真似じゃ出来ないね。私も彗星になりたかったのに。ニュータイプなんだよ?私。
「それはそれとして次!」
ニュータイプ能力をフルに使っているとはいえ油断せず、確実に敵艦の砲撃を避けながら接近し邪魔なトリアーエズをバズーカやマシンガンで落としつつ、ヒートホークで別のサラミスの艦首を切り裂く。うお、すごい切れ味だ。
『おい!そこのザク!下がれ!巻き込まれるぞ!!」
「え、あはい」
突如入った通信に従ってその場から離脱すれば、まばゆい光が前方で起きた。あ、そうか。まだ、条約結ばれてないから核兵器使ってもいいのか。私がザクのモノアイを動かして確認すれば、核を撃ったであろうそのザクは次の獲物求めるように飛び去った。かっこいいやん。私の武装には核兵装はないけど、一辺に纏めてってのはさぞ気持ちが良いだろう。
「こっちの武装はバズーカ、マシンガン、ヒートホークしかないのに。まあ、借り物だからしかたないけどさ。好きな色にも染めれてないし。てかクラッカーもないのね」
クラッカーくらい持たせてくれてもいいんじゃない?なんて文句を言いながら、ザクマシンガンに持ち替えて飛び回るセイバーフィッシュ等を撃墜し、次の目標へと向かっていった。
*
その後、先に連邦が撤退を開始し、それに続くジオンの撤退を持って戦闘は終結した。結局あれからマゼランとサラミス一隻ずつしか落とせなかった。元々私が出た所に固まってた二隻は撃墜出来たものの、連邦の抵抗も激しく初陣で多少ビビってたのもあり近づけなかった私は、若干孤立気味だったその二隻を追加で撃墜した以外はあまり手柄を立てられなかった。つまり戦果は戦艦四隻と戦闘機複数となるのかな?サラミスは巡洋艦だっけ?あ、因みにシャアの五艘跳びはしっかりと見させてもらった。生で見ると分かるが、アレはやばい。シビアなタイミングを合わせなければあの動きは出来ないだろう。あんなん真似しようとしたのか私。
その後普通に士官学校に戻った私は、教官に借りたザクⅡを返した。勿論借りたお礼も添えて。教官は何度も満足そうに頷きながら口を開いた。
「よくぞ無事に帰ってきたな。それでこそ鍛えた甲斐があるというものだ。教官の私すら追いつめるほどの君の腕なら、必ず帰ってくると信じていたぞ」
バシバシ私の肩を叩く教官の顔の嬉しそうな顔を見ると、こっちまで帰って来れて良かったという気になる。それはそれとして叩かれてる肩は痛いが、まあそれはご愛嬌としておこう。
「しかし、聞いた話じゃあの黒い三連星が捕虜を捕えたらしい。これは、ジオンの勝利も近いかもな」
「はは、そうですね」
実際を知ってる身としてはそううまくは行かないと言いたいところだが、そう言う訳にもいかず私はそんな返答しか返せない。
「見学とはまた違う初の実戦だったんだ。疲れているだろうし、今日は休むと良い」
「はい、ありがとうございます」
既に訓練をしているチームメイトに申し訳ないが、疲れているのは事実だし、その言葉に甘えるとしよう。
「あー」
そんな声を上げながら、自室のベットに横になった私は、疲れからかすぐさま睡魔に襲われるのだった。