マリオン・ウェルチになりまして 作:陸戦強襲型ガンダム
「わぁ~」
私たちパイロット全員に配られた何かの羽を模したようなアクセサリーと手に取りながら、アルマは喜びの声を漏らした。受け取ったそのアクセサリーをアルマは髪留めに、ヘレナはリストバンドに、ミアは腰のベルトにそれぞれ付けている様だ。なら、私は胸にでも付けとこうかな。
「似合ってるわよ。みんな、良い事?この館で暮らす者は家族だと思って接する事。我々が勝ち続けるには、お互いをよく知って、深い信頼関係を築くことが不可欠だと思うの。よく覚えておいてね」
「「「「はい!」」」」
「特に、リードパイロットのシュティルナー少尉。君の役割は重要だ」
ほーん、リードパイロットね。アルマも分かってないようだし、バルバラ中尉の説明でも聞くとしましょうか。
*
「おはようござ……ってアルマ、なにしてるの?」
「あ、マリオン。見てこれ!ミアが書いたやつ!」
「あの、それは……子供らしくない趣味ですよね。分かってますよそれ位」
「良いんじゃない?趣味なんて人それぞれだよ」
「そうだよ!それにこれ、すっごいし!モビルスーツ博士を名乗れるくらい!!」
アルマに見せられた本には、MSについての事が所狭しと書かれていた。私は全然MSについてなんて詳しくないのに、ミアはどうやってこんなことを知ったんだろう?私も曲りなりにも授業はしっかり受けてたのに、知らない言葉やらがビッシリだ。実は余程勉強熱心なのだろうか?私と知識量に差があり過ぎる。可笑しいな、一応同い年のはずなんだけど。
「ブリンクマン技術少尉はツィマット社お墨付きの技術者だからな。ギャレット少佐も、彼女の頭脳を高く評価している」
「そっかー、だから技術少尉なんだね。あれ?でもなんでパイロットもやってるの??」
「それは、やってみろって言われてそのまま……」
「少佐のお考えだ。頭脳はもとより、パイロット適性もとても高いものだったからな」
「ほえ~ハイブリットなんだね。すごいなぁミアは」
「パイロットと技術者の二足の草鞋なんて、やるねミア。私なんてパイロットで精一杯なのに」
「さて、少佐より命令だ。基本的には、前衛はシュティルナー少尉とウェルチ准尉だが、どちらかが不在の場合はブリンクマン技術少尉とのコンビを組んで前衛を構築しなければならない。今回はそのための訓練だ。早速始めるぞ」
「「「はい!」」」
*
訓練は程なくして終了した。任務もあるので早めに切り上げたらしい。そのお陰で私もアルマもミアとの連携は完璧!とまでは行けなかったが、及第点位には行けたんじゃなかろうか。ニュータイプ能力で無意識に分かりあってる分、やはりアルマと組んだ前衛の方がやりやすいね。
「今回の任務は、北部警戒部隊への補給物資を積んだ友軍のギャロップ級陸戦艇の警護。万が一それを失えばバンクーバー基地への牽制力が低下し、連邦が計画している反抗作戦の開始時期を加速させかねないわ」
「目標地点は死角が多く、野戦になる。それに、これは同地区で活動していた闇夜のフェンリル隊からもたらされた情報なんだが、周辺の連邦部隊はアジアで確認されているUGSを導入しているらしい」
UGSね。たしか、アンダーグラウンド・ソナーだったかな?ミノフスキー粒子の影響を受けにくい地位中に伝わる音を分析してどうこうって奴だったと思う。うん、知らなかったらしいアルマにミアが説明していたが、大体あってたようだ。
「幸い我々も少佐の計らいによって、闇夜のフェンリル隊が試作運用していたものを一台入手出来た。既にグルーバー整備班長によって調整され、ブリンクマン技術少尉機体に装備されている」
「ミアの機体に装備したんですか?」
「そうだ。前衛でも後方支援でもない中距離に位置するブリンクマン技術少尉が最適だと考えた上での装備だ。……早速の実戦投入、効果のほどを期待しているぞ」
「……がんばります」
「あら、アルマ。何か不安かしら?」
「いやぁ、交戦予想地点って結構緯度が高いじゃないですか。寒そうだなって」
「……とにかく、作戦の説明に入るわ」
アルマのその言葉に、誰もが呆れたようだった。寒いのが嫌なのは分かるけど、今言う事じゃないよね。
作戦に関しては、簡単に言えばギャロップが撃破されれば作戦は失敗。市街地のしかも夜戦である以上、障害物が多く何時襲われるか分からないから、警戒は怠れないしフライ・マンタなどの戦闘爆撃機が厄介と言った所か。
「何か質問は?……ないみたいね。それじゃあ、作戦開始よ」
「「「「了解」」」」
*
「寒くない!お尻、あったかーい」
アルマが難色を示していた寒さは、イルメラさんが防寒装備を徹底してくれたらしく微塵も問題なかった。温度調整も出来るらしく、まさに至れり尽くせりだ。
「お、あれが護衛対象のギャロップかな?」
「そうみたいですね」
「でもアレ見て。やっぱり空から来たよ」
「単独で出れば的になるぞ!連邦の戦車もいるみたいだし、孤立すんなよ!!」
「わかってる!」
そう言って、アルマは機体を跳躍させ、ヒート・サーベルで一機のフライ・マンタを落とした。ひゅ~やるね。なら私も見せてやろう。
「そこだ!」
ニュータイプ能力をフルに使った予測打ち。ザク・ハンドガンから放たれた弾丸は吸い込まれるようにフライ・マンタに直撃、墜落させる。
「す、すごい……って見惚れてる場合じゃない。ヘレナさん行きますよ!」
「マリオンにお株を奪われるわけにはいかないからな。フライ・マンタも戦車も両方打ち抜く!!」
鹵獲機だったとはいえ、MSとの戦闘を経験済みの私たちに今更61式戦車やフライ・マンタ如きが相手になるわけがない。これは楽な任務だったね、と私が思った瞬間だった。
「ちょっと待ってください!ザクみたいな何かがこちらに向かって来てます!」
「ザクみたいな何か?ザクとは違うの?」
「はい。音紋識別ではザクなんですが、何か違うんです。言うなればノイズの様なものが……来ます!」
フラグだったみたい。ミアの声と共に、夜闇の中から現れたのは連邦のMS。確か名前はザニーだったかな?あいや、地上に居るのはダーレだっけ?それが四機もいるじゃないか。
「なにあれ?連邦のモビルスーツ?」
「いや、ありゃ中身はザクだよ。節々に特徴が残ってる。連邦の野郎、人様の物を勝手に弄りやがったな?」
「気を付けてください。中身はザクでも、装備している武装は対モビルスーツでも効果を発揮するものばかりです。特にマリオンさんのザクは装甲が極端に薄いんですから、絶対に直撃は避けてください!」
「了解!じゃあ、フライ・マンタと戦車の方は任せたよ。速攻でかたをつけるから!」
しかし、いくらMSだろうがやはりパイロットは連邦兵。デカいキャノン砲なんて持ってる所為で狙いをつける為に足を止めるし、私の回避先ではなく私に直撃させようと狙ってるから近づくのが容易い。
「当てられなければどんな武器持ってきても無意味だよ!」
反復横跳びよろしく左右に機体を揺らして狙いをつけられないよう動き、ヒート・ナイフで一閃。残心を決める。動きを止めた私の機体に別の連邦機が狙いを定めるが、弾丸がキャノン砲から発射されるよりも早くアルマの陸戦高機動型ザクに切り刻まれた。
「これで二つ!マリオン、援護お願い!」
「任せて!」
まっすぐ最後の一機に突っ込むアルマ機を射撃でバックアップする。それだけで、私かアルマのどちらを狙うか迷ったであろう連邦機は動きを止め、ヒート・サーベルで一刀された。
「よし!これで一掃出来たかな?」
『こちらギャロップ。救援感謝する』
「それほどでも……ッ!衝撃に備えて!!」
閃光の閃きと共に、私はそう叫んでいた。次の瞬間、どこかから飛来した一撃がギャロップを捉える。爆音と共に、ギャロップのジェットエンジンが吹っ飛ぶ。
『くそ!エンジンを一基やられた!』
「砲撃……さっきのモビルスーツ?」
「ミア!どこから撃って来てるの!?」
「ちょ、ちょっと待ってください。ノイズが凄くて……ダメです!分かりません!!」
「……北東だよ。そっちから嫌な気配がする」
「気配ってお前……っておい、アルマ!?」
「間違ってても、ここにいるより行ってみた方が良いよ!いなかったらまた探せば良いんだし!」
「あーもう、これじゃあ幾ら命があっても足りねえぞ!」
突っ込むアルマ機、それを追うヘレナ機。言った以上私も追うし、ミアだってそうするだろう。ミアが分からないって言うから、つい口に出しちゃったけど気味悪がられるかもね。
「さっきのモビルスーツと……なにアレ?」
「きっと、シャア少佐が見たっていう連邦のモビルスーツもどきですよ。見た感じ、長距離射撃に適してるんだと思います」
「モビルスーツ?こんな出来損ないがかよ」
「出来損ないかもしれませんが、ザクタンクのバリエーションの一つと役割は同じです。いえ、その為に作られたのなら損傷した機体の組み合わせで急増されたザクタンクよりも適しているかもしれません」
ガンタンクか、ちょっと早くない?まあいいけどね。機動力が良くないから、一気に近づいて切り刻めばお終いだ。砲身を向けるのが遅いんだよ!
「やっぱり、遠距離に適してる分近接戦は分が悪いみたいだね!」
「それでもあの砲撃は危険なんですから、当たらないようにしてくださいねってこれは……ソナーに反応です!音紋照合に該当なし!」
「ザク擬きとも違うまた別のモビルスーツって事か」
「はい!性能が分からない以上、十分に気を付けてください」
ほー今度は陸戦型ジムですか。でも、練度の低い連邦のパイロットじゃあ高が知れてるってね。しかも、弾がばらけるマシンガンならまだしも装備しているのはロケット・ランチャー。それじゃあ万に一つも可能性はない。私は勿論アルマにだって当たらないだろうし、だからと言ってミアやヘレナを狙えばその分フリーになった私かアルマが撃たせやしないし、まさに蹂躙だね。
「新型だらけだったが、何とか生き延びれたな」
「新型……ザクを改造したのとは違う連邦製のモビルスーツってことだよね」
「独特の駆動音や装甲強度、見たことのないビームの剣などからして多分そうじゃないかと」
『よくやってくれた!正直先ほどの通信で搭乗者が子供だと知った時は落胆もしたが、もう古い考えなのかもしれんな』
「エンジンが一基やられたのに大丈夫なんですか?」
『ああ、速度は落ちるが、自走するだけなら問題ない。なにせジオンの兵器のウリは何と言ってもタフなところだからな!はははっと良ければ名前を聞かせてくれないか?』
「あ、はい。ノイジ―・フェアリー隊のアルマ・シュティルナー少尉です!」
「同じくヘレナ・ヘーゲル曹長」
「ミア・ブリンクマン技術少尉です」
「マリオン・ウェルチ准尉」
『フェアリー?あの戦いっぷりでフェアリーだって?同じ妖精のゴブリンやいっそオークの方が似合ってるんじゃないか?』
「えーひどいですよー」
『はっはっは、冗談だって!さて、最後までお付き合い頼みますよ?妖精のお嬢さんたち』
「はい!」
この後、特に襲われることはなく任務は終了した。徹夜になってしまったが、それは仕方ない事。戦争……と言うか軍人とはそういうものだし、今ではもう慣れたものだ。帰還したらお風呂に入ってさっぱりしたいね。