マリオン・ウェルチになりまして 作:陸戦強襲型ガンダム
ギャロップ護衛任務から二週間とちょっと。戦死したガルマ・ザビを弔うギレンの演説もモニターから流れなくなり、静かになったホールに私たちは居た。ただ、何時ものホールとは違ってかぼちゃやらで飾りつけされてる。あ、後アルマが居ない。
「それなら──」
「ねえねえねえ!次の作戦は狙撃作戦って聞いた!?」
「──いま、その作戦を考えてる所ですよ」
扉を開けて開口一番そういうアルマに、ミアがジト目で答える。ちょっと来るのが遅いんじゃない?
「へ?そうなの?ごめん、思いっきり寝坊しまして……」
「まあこれから計画を煮詰める所だからギリギリセーフだよ。ほら、座りな。……んで、話を戻すけどさ、敵部隊の規模がわからないんじゃ一概に狙撃ってわけにはいかないよな?」
「あたしの腕次第という事なら望むところさ。小細工はいらないさ……っとおいアルマ、飾りつけするのは良いけどちゃんと付けとけよ。かぼちゃ、落ちて来たぞ」
「夜更かしまでしたのに終わらなかったんだよ~」
「それで寝坊したの?」
「せっかくの秋なんだし、可愛くしたくってさ!」
「……ハロウィンか、懐かしいな。あたしが住んでた場所じゃこういう祭りは盛んだったんだ」
「へ~楽しそう!」
「どうだったかな。……トリックオアトリート、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、か」
「あ!私、良いこと思いついたかもしれない!もしかしたら天才かも?」
「なんだ、言ってみろ」
「数の多い敵を狙撃するなら陽動が必要だよね?」
「そりゃな」
「はい!やっぱり私天才でした!!ねえ、皆。私の話、聞いてくれる」
全員がアルマの案に耳を抜ける。へー結構いいアイデアかもね。
*
『トラップの使い方、しっかり復習しておくんだよ』
今回の作戦は、アルマの案で行くことになった。そのアルマの案というのが、デコイやら投光器でこちらが大軍であると連邦に誤認させる、その名もトリックオアトリート大作戦。狙撃はヘレナが、その観測手をミアが行い、私とアルマが陽動をかけると言った所か。しかしこんな作戦、練度の低い連邦パイロットが相手じゃなきゃ通じないだろうね。
「ソナーに反応あり!目標と思われる部隊が接近中。モビルスーツ複数と、大型トレーラー……陣形的に、トレーラーを護衛している模様」
「よし、じゃあ最優先攻撃目標をトレーラーに設定。護衛のモビルスーツを排除しつつトレーラーを叩く」
「敵機、作戦ライン超えたよ!皆、位置について!」
さあ、作戦開始。まずはアルマがラケーテン・バズで注意を引き、廃ビルの陰に逃げ込む。それを追った連邦機はそこに設置されたデコイに騙され、間違いなく隙を晒す。一瞬の隙でもあれば、アルマの腕なら数機程度倒せるだろう。
「私の番か」
当然の様にジムがいたが連邦なのだからそれは当然として、厄介なのはガンタンクだ。タンク故遅いからアルマを追って行かないし、遠方から狙撃されたら狙撃や観測に徹しているミアやヘレナが落とされかねない。だから私が、連邦機がアルマを追ったのを見送ってから、ガンタンクに奇襲をかける。廃ビルやらのお陰で接近も容易いし……はいいっちょ上がり。
「ヘレナ、タンクやったよ」
「OK。ミア、トレーラーの位置は?」
「味方機がやられたからか一目散にここを抜けようとしてますね。もう少しで、ヘレナさんの狙撃可能ポイントに到着します。……今です!」
「……よし!命中確認」
「タンクタイプが居た場合といなかった場合の両方を考えておいて正解でしたね。……!ソナーに再び反応、後続の部隊だと思われます」
「通信でデコイの方がもうバレてるかもしれないな。アルマ、次は投光器の方に誘い出せ」
「了解!ってタンクタイプ二機もいるよ、マリオン大丈夫?」
「アルマがしっかり注意引いてくれれば大丈夫。任せてよ」
やることはさっきと同じだが、二機いる以上一機に時間をかけるわけにはいかない。一撃離脱を心掛け、一機ずつ確実に倒していくことにしよう。
「こっちは全機倒したよ!」
「こっちも終わったよ」
「ああ、こっちも今トレーラーを打ち抜いたとこだ」
「やったぁ!これで作戦成功だね」
喜ぶアルマを他所に、私は近づいてくる悪意、いや殺意を警戒していた。実の所、作戦途中からずっと感じていたのだが、やはりと言うべきか敵機の様だ。この感じ、ミアを狙ってる?
「撃たせない!」
「おい、マリオン!?」
言うが早いか私は機体を動かし、それに攻撃を仕掛けた。ヒート・ナイフを見た感じツイン・ビーム・スピアだと思われる武装で防いだのは、何と陸戦型ガンダムであった。こんな所にも配備されてるの!?それともブルーディスティニー系になるはずだったのが回ってきたのかな?そうだとしたら、とんだバタフライエフェクトじゃない。勘弁してくれ。
「戦争は遊びじゃない……叩きつけてやる!お前らジオンの悪魔にこの恨みを!」
オープン回線で聞こえてきたのは、怒りと憎しみに満ちた声。こいつ、さっきのを防いだ事と言い他の連邦パイロットとは違うね。私を追ってきたアルマ達もそれが聞こえたのか戦闘態勢に入っている。
「マリオン!平気!?」
「アルマ、こいつを倒すよ」
「よせ!お前らもし負けたらとか考えたことないのか!」
「え?」
「そうですよ、一旦引きましょう!」
「相手がそれを許してくれるならね!」
ツイン・ビーム・スピアを構えながら突っ込んでくる陸戦型ガンダムにザク・ハンドガンで射撃を行うも、まあ当たらない。やっぱりもう、この子は私の本気の操縦に完璧には付いて来れないか。これでもしMAXモードなんて使われたらどうしようもなくなるな。アルマはヘレナの言葉が気になってるみたいだし、私が少しでも相手の気を引かなきゃ。
「お前もだマリオン!日本で戦ってたのかもしれないが、もうモビルスーツって優位はないんだぞ!あいつは、奴らと同じ躊躇なくこちらを破壊してくるんだ」
そして始まるヘレナの独白。調子に乗ってマフィアの金に手を出した彼女が見た本当の殺意。
「そういう奴なんだこいつも。倒そうなんて考えずに、生きのびることだけ考えろ!あたしも援護する」
「う、うん」
「ッ!ソナーに反応、敵モビルスーツの増援です!」
「最悪……」
陸戦型ガンダムだけでも中々キツイのにまだくるの?流石連邦、物量はあっちの方が上か。いや、性能もか。不幸中の幸いなのは、パイロットの練度が甘々って事ぐらいかね。
「一匹たりとも逃さない……悪魔どもは地上から排除する……」
「ヘレナ、ミア!他の連邦機をお願い、私とアルマでこっちは何とかする!」
「死ぬなよ!」
そのつもりだけど、さてどうなるか。武器のリーチは向こうの方が上、何なら性能も向こう。ついでに、アルマは先のヘレナの話の所為か、それともニュータイプ能力の所為か若干顔が青ざめてる。止めに、本気の私の操縦に機体は付いて来れないと来た。数はこっちが勝ってるけどね。
「お前たちの所為だ!お前たちジオンがいるから!」
「訳の分からないことを!」
振られたツイン・ビーム・スピアをヒート・ナイフで受け止める。だが、所詮私の機体はザク。陸戦型ガンダムのパワーに勝てるはずもなく、徐々にビームが迫る。しかし、放たれたバズが陸戦型ガンダムとの距離を離す。
「ナイスアルマ」
「クッ……抵抗するな!お前たちは、裁かれるべきだ!」
「勝手なことを……!」
ヒート・ソード構え突撃するアルマを射撃で援護する。打撃ならまだ機体は動くだろうし、最悪あのツイン・ビーム・スピアさえ当たらないようにすればいい。大振りの隙を補う様に射撃を差し込み、出来るだけアルマが戦いやすいようにして、隙を見て私も近接を仕掛ける。
「お前が……お前たちが何をしたか忘れたのか!!」
「!?その言葉、そっくり返すよ!」
胸部バルカンを潜り抜けたアルマとそれを迎え撃った陸戦型ガンダムの獲物同士がかち合い、生まれる一瞬の硬直。そこに私が付け込む形で、胸部にヒート・ナイフを突き刺す。それにより生じたよろけにアルマがタックルで追撃、後方に飛ばされた陸戦型ガンダム目掛けてダメ押しにヒート・ナイフを投げつけた。しかし、投げたナイフは割り込んできた陸戦型ジムに防がれてしまった。別の方面から近づいて来てるのは分かっていたが、思ったよりも早い到着だね。
「ハァ……ハァ……ぞ、増援?」
「みたい」
さっきの動きを見る限り、この陸戦型ジムのパイロットも手練れだ。二対一の優位性がなくなり、万事休すかと思ったが、現れた陸戦型ジムは、武器を構えることもなく振り返り陸戦型ガンダムをみるとそのまま二機ともどこかへと去っていってしまった。
「本物の……殺意」
「て、撤退した?……はぁーたっすかったぁ」
陸戦型ガンダムとか聞いてないよ。ホント、死ぬかと思ったね。しかし、ジオンのしたこと……か。最初に思いつくのは、やっぱりブリティッシュ作戦だよねぇ。アレの被害者なら、あれだけの殺意をぶつけてきてもおかしくはない。日本にいた時も殺意や憎悪、怒りなんかを感じなかった訳じゃないが、アレは別格だ。
「おい、無事か?」
「なんとかね。アルマが居なかったらやばかったかも。そっちは?」
「こっちも無事だ」
「敵機が撤退しなかったら少しまずかったかもしれませんけどね。でも、任務自体は成功したんですから帰還しましょう」
「うん。そうしよっか」
終わってみれば、全機そこまで損傷はないがここまで性能差を見せつけられると辛いものがあるね。アルマも、何か考え込んでるみたいだし。新型、欲しいなぁ。
*
「御心配おかけしました」
「よく無事に帰ってきてくれたわね。それだけで十分よ」
「うわああ、これどうしたんですか?」
キリーさんが心配してくれてると言うのに、アルマはすでにテーブルの上の料理に気が行ってるようだ。たしかに、結構手の凝ったものだもんなぁ。
「ゴブリン娘たちにおすそわけだって聞いたんだけど」
「ゴブリン?うーん??……あ!あの時の!!ってミア、フライング!」
「早い者勝ちってな、お前も食え食え。マリオンもな」
「ヘレナそれ全部食べるつもり?」
「作戦自体は成功していたから、そのお祝いと言った所ね。肩の力を抜いて楽しみましょう。ほら、乾杯」
乾杯といってから渡された缶の中身を飲んでみる。ほー甘い。ちょっとなにかは良く分からないが、とにかくジュースの様だ。よーし、今日は目いっぱい食べるぞー。
*
「ねえマリオン」
「なに?」
パーティーも終わり、ホールで二人っきりになったタイミングでアルマが話しかけてきた。その顔は、何か不安そうな、そんな顔だった。
「マリオンってさ、戦闘中に誰かの声が聞こえてきたりすること、あるよね?」
「……どうしてそう思うの?」
「さっきの戦いで、誰かの声が聞こえて来たんだ。けど、同時にマリオンの声も聞こえて来たの。通信からじゃなくて頭の中に響いてくる感じの声が。でも、ヘレナとミアの声は聞こえなかった。だからもし、私の考えてる通りならマリオンも私と同じなんじゃないかと思って」
「……そうだね。私も気づいたらそんな力を持ってたよ。それが何なのかは分からないけど」
「そっか。そうだよね」
「でも、ここに異動するよう命令を受けた時にニュータイプかもしれないとは言われたよ。フラナガン機関に行くか、ここに異動するかってね」
「ニュータイプ?私が?でも私はサイコミュとか言う機械を上手く扱えなかったのに……それにフラナガンって私の居たとこだ」
「へえ、そうなんだ。でも、私もモビルスーツに乗って戦っていくうちにこの力も成長していった感じはあったから、アルマもそうなんじゃない?……私が言えそうなことはその位かな。ごめんね、役に立たなくて」
「ううん、ありがとう。マリオンが居なかったら、多分一人で抱え込んでたと思う。そっか、私もちゃんとニュータイプだったんだ……」
「そうだと思うよ?さて、私は先に上がるね。おやすみ、アルマ」
「うん、おやすみ。マリオン」
ちょっと嘘も混じってるし本当はもっと教えても良かったけど、喋りすぎてボロを出さないとも限らないからね。それに、ニュータイプについて完璧に知ってるわけでもないし、ちゃんと教えられる自身もない。これで良かったと思うことにしよう。
裏ではキリーさんとバルバラ中尉が陸戦型ガンダムの顔が連邦の白い悪魔と似ていることについて話し合ってたが、マリオンがその場にいなかった為割愛。
リリスが陸戦型ガンダムに乗ってるのはバタフライエフェクト。勿論、原作の陸戦型ジム同様カラーは変わっている。