マリオン・ウェルチになりまして   作:陸戦強襲型ガンダム

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ビームライフルの脅威

「なにごとぉ?」

 

鉄に何かを打ち付けるような音で目を覚ました私は、欠伸をしながらそんなことを口にした。外を見ればまだ暗く、微かにも日の光が見えない。まだ完全に覚醒しきってない頭でとりあえずホールに行こうとぼんやりと考え、覚束ない足取りでホールを目指す。

 

「起床、起床~!」

 

「何やってるんですか、バルバラ中尉」

 

音の正体はバルバラ中尉が持ってるフライパンと木べらであった。続々といつもの面子が集まる中、私はバルバラ中尉に問いかける。ミアはとても眠そうだし、アルマに至っては枕持参だ。あのイルメラさんだって文句を言ってる。しゃんとしてるのはヘレナ位かな。

 

「まっったく、緊張感のかけらもない!知っての通り、今日からギャレット少佐は連邦が計画しているという大規模反抗作戦への対策会議の為、キャリフォルニアベースに戻られた。少佐がしばらく不在の間、留守を預かるからにはビシビシいくから覚悟しておけ」

 

日本にいた時もこう言うことが無かったわけじゃないが、やっぱり朝早くはキツイ。下手に寝た分余計に眠くなるから、それなら徹夜の方が何倍もマシだ。ほら、アルマなんて寝てるし。

 

「アルマ・シュティルナー少尉!お前は朝食抜きだ!目覚まし代わりに庭を100周して来ーい!!」

 

「ふぇ~100周は無理ですぅ~」

 

睡魔に勝てなかったアルマは、100周ではないもののそれなりの数庭を走らされた。それだけなら良かったのだが、何故か私たちまで正座させられて説教タイムに入っている。うぐぐ、足が。こんな事なら茶道でもやっておくべきだった。

 

「どうしてミア達まで……?」

 

「黙ってろ、これは嵐だ。待ってればいつか嵐は去る」

 

「足が……痺れて……はああ……」

 

「軍人たるもの、軍規に則り常に模範となるような態度で日々の任務に望むことが当然なのだ。ギャレット少佐はその点、少々緩い部分もあったかもしれんが私は違う」

 

「はい」

 

「ヘレナ・ヘーゲル曹長!君は、思ったことを口にせず控えようとする癖がある。それは隊の空気を察しての事だろうが、戦場では活発な意見交換有用だ」

 

「は、はい」

 

「ミア・ブリンクマン技術少尉!君は未だ最年少であるという遠慮と慢心がある。君の階級、立場を忘れるな。年齢など関係ない。戦場では、君の判断が仲間を救いも殺しもするんだぞ」

 

「は、はい……」

 

「マリオン・ウェルチ准尉!君は流石に経験があるからか安定しているが、だからと言って油断するなよ。あの機体に搭乗してる以上、他の機体よりも一撃が致命になりかねないからな」

 

「……はい」

 

あの装甲の薄いザク・ライトアーマーで格闘戦仕掛けてればこう言われるのも仕方ないか。でも、射撃で何とかする機体でもないしなぁ。

 

「イルメラ・グルーバー軍曹!」

 

「えっ私も!?」

 

「整備室にこっそり酒を持ち込んでいるのはバレているからな、全く。少しぐらいは我慢しろ。本国にいる娘さんが心配するぞ」

 

「うっ……それを言われると……」

 

「最後に、アルマ・シュティルナー少尉!」

 

「ひ、ひぃぃ」

 

「返事はハイだろう。君の戦場での働きは大したものだ。だからこそ、過信するな。ギャレット少佐が何を思って君を引き抜いたのか、私は知らされていないが、何かを君に見出したのだと信じている。それを決して見失わないでくれ」

 

「はい!」

 

「我々ノイジ―・フェアリーに与えられた任務は、キャリフォルニアベースを守り抜き、連邦に勝利してジオン公国独立の悲願を達成することにある。というわけで、何をするにもまずは体力!全員、外周100周!」

 

「だから、100周は無理ですって~」

 

アルマの絶望の声がホールに響いた。

 

     *

 

「海洋戦力への牽制、でありますか?」

 

やはり100周はしなかったものの、外周は何度も走ったしその後休む間もなくモビルスーツを使った訓練が行われた。訓練を終え、ホールで力尽きていた所にキャリフォルニアベースにいるキリーさんから通信が入り、新たな任務の説明がなされた。

 

『ええ、連邦のパナマ基地から海洋戦力が欧州への動きを見せてる。そのうちの一部がメキシコ湾に入り、物資の積み込みを行うと言う情報が諜報部から齎されたの。これ自体の阻止は難しいけれど、牽制のよって遅滞させることが重要』

 

「なるほど、それで我々にも陽動部隊のひとつとして展開しろと……しかし、確かに連邦の基地は東部に点在しておりますが、戦力的には物資の積み込み自体を阻止することも不可能ではないと考えますが?」

 

『そうじゃないの、殲滅すればその部隊はないものとして扱われる。だから、あえて牽制に留めて合流を遅らせることで、オデッサでの作戦開始自体を遅滞させるのが目標なの」

 

「……あのレビルが待つとは思えませんが」

 

『ふふ、そうね。では、キャリフォルニアベース司令部の本音を言うわ。オデッサは現時点で連邦の最重要目標になってる。その為の物資なら連邦は必死に守るでしょ?……私たちが見ているのはアフター・オデッサ。北米に温存された戦力を引きずり出し、現時点で可能な限り消耗させる』

 

「合点がいきました。仮にオデッサで我が軍が敗北した場合でも、北米とアメリカが無事ならまだ戦えます」

 

『あなたならわかってくれると思ってたわ』

 

「……だとしても、私は勝利を望んでいます」

 

「ふふ、貴方らしいわね。私としても、オデッサで勝ってくれるのが一番なんだけど。……作戦の詳細はそちらに送るから確認して」

 

そうして、いつものテーブル上のモニターに映し出される数々の情報。うへー戦車による砲撃部隊が遠方にいるのか。前衛部隊の壊滅だけで撤退していいのは嬉しい所だね。あの陸戦型ガンダムさえで出張って来なければ、なんとか行けるかな。

 

     *

 

偶々見つけた窪みにモビルスーツを潜ませた私たちは、連邦のアホみたいな量の戦車から放たれる砲撃に動くことが出来なくなっていた

 

「ちょっと砲撃激しすぎない!?」

 

「いつ止むのコレ!?」

 

「連邦は相当守備隊を出してるみたいです。友軍もほとんど近づけてません」

 

「モビルスーツの姿もあるな」

 

流石ガンダムが無くても物量でいずれ戦争に勝てたと言われた連邦だ。その1割でもこっちに分けてくれないかな?

 

『ここまでの抵抗があるとは想定外だが、温存勢力の引き出しは成功と言えるな。弾薬を消費させるだけでも良いんだ。深入りは厳禁!距離を保って、時間を稼げ!』

 

「おお、さっすがぁ」

 

無言で放たれた弾丸が連邦の戦車一両を破壊した。すげ、流石ヘレナだ。

 

「敵部隊の一部が前に出てきます!」

 

「よし、言ってくる。マリオン行くよ!」

 

「了解!」

 

ジムのバリエーション機も結構いるな。ってか当然の様にガンタンク居るのはなんなん?お前は後方で戦車と一緒に固定砲台やっててくれよ。

 

『無理はするなよ』

 

「はいっす」

 

「わかってます」

 

窪みから飛び出し、戦闘態勢に入る。砲撃予想地はミアが上手い事レーダーに映るようにしてくれている。100%とはいかないが、中々の精度らしい。

 

『敵のモビルスーツはただのカカシだ!我々の敵ではないぞ!』

 

友軍の奮い立たせるような通信を耳に、全くその通りだと思う。特に、ジム・ライトアーマーに乗ってるパイロット。最初はそれに乗ってる以上腕に自信のある奴かと思ったが、ふたを開ければ他の一般連邦兵と似たような練度で、他の機体より装甲が薄い分落としやすくて助かる。

 

「よし!このまま……」

 

「ちょっと待ってください!この音……ビックトレーです!」

 

「おい、ありゃやばいぞ!一旦引け!」

 

『連邦め、陸上戦艦まで出してくるか……!』

 

「砲撃が激化するってことだよね。かんべんしてよぉ」

 

「増援!?クソ、ワラワラと出てきやがって」

 

戦いは数だよって言ったのはこっちの陣営の人なんだけどなぁ。

 

「ああもう!数が多すぎる!!ミア、そっち行った!」

 

「任せてください!」

 

「ヘレナ、援護任せた!突っ込むから背中守ってね!」

 

「誰に言ってんだ!」

 

今は何とかなってるけど、これで連邦のパイロットの練度が全体的に上がったらと思うと末恐ろしいね。でも、少なくとも今練度が上なのは私たちだ。照準を合わされる前に回避行動をとり、接近し切り捨てる。装甲の薄いジム・ライトアーマーはザク・ハンドガン数発で十分だ。逃した機体はミアがガトリングやら何やらで倒してくれるだろう。

 

『ビックトレーが後退した!繰り返す、ビックトレーが後退した!』

 

「こっちは舐められてんのかな」

 

「多分、向こうも本気じゃないんだ。あしらおうとしてるだけ……」

 

「バルバラ中尉、もうミア達も持ちそうにないですよ!流石に数が多すぎます!!」

 

『流石に潮時か。ノイジ―・フェアリー撤退!』

 

『へ、これからは大人の時間だ!お子様は帰りな!」

 

「なにを……動いちゃダメ!」

 

『は?……うお!?」

 

瞬間、煽ってくるような言葉を投げかけたパイロットの乗ったザクは、遠方からのビームでその頭を吹っ飛ばされた。私が止めなければコックピット、少なくとも胸部を撃ち抜かれていただろう。通信からうめき声が聞こえることから生きてはいる様だ。はぁ、とうとうビームスプレーガンのお出ましか。いや違うな、あれは……ビームライフル!?噓でしょ!?

 

「なに……あれ。モビルスーツがビームの射撃武器を使った??」

 

『ビームの剣に続きビームの銃だと……!今あんなものを放置したら撤退中の友軍が背中から撃たれてしまう』

 

「バルバラ中尉、私たちが抑えます!」

 

『シュティルナー少尉…………絶対に無理はするな?任せた!』

 

「アルマさんマリオンさん、ビーム兵器相手に直線的な動きはダメです!出来るだけ蛇行してください!……きゃあ!?」

 

「ミア!?」

 

私たちに注意しながらしかし、ミアはビームの餌食になってしまった。当たったのは脚部だったから生きてはいるだろうが、機体は多分動かない可能性が高い。

 

「良くもやってくれたじゃねえか!調子に乗りやがって、震え上がらせてやる……!」

 

「ビームには気を付けてね。軽く触れただけでもヤバいから」

 

「妙に詳しいな」

 

「勉強家ってやつ」

 

「嘘つけ」

 

「ミアのノートでも盗み見たの?」

 

「ちょっと酷いよ二人とも~」

 

「フッ……ああなんか、頭に昇った血が落ちてきた気がする。まあいいや、さっさと片付けてミアを探すぞ」

 

「当たったのは脚部だったから生きてるはずだよ。マリオン、行くよ!」

 

「はいはい!」

 

いつかの様に反復横跳びみたいな動きをしながら隙を伺う。おかしい、いつもより弾幕の密度が濃い。連邦兵にしては統率が取れすぎてる。どこかに指揮官がいる?

 

『聞こえるか!その部隊に棒を二本背中に装備したモビルスーツはいるか?情報通りならそいつが指揮官機だ!そいつさえ倒せば統率は乱れる!!』

 

「分かりました!」

 

「……あの奥の奴か。はっ!がら空きだ!!」

 

やはりと言うべきか、前線の私たちを抑えるような動きを見せた連邦機であったが、それが悪手であった。侮っていたわけではないだろうが、ヘレナのザク専用に調整した狙撃用ライフルは文字通りの狙撃用だ。多少距離が開いていようが、射線さえ開けば対象を難なく狙撃できる。それにヘレナの腕が加われば、私たちに構ったことによってできた僅かな射線を抜いて、指揮官機を狙撃することなど容易いのだ。

 

「一気に畳みかける!」

 

指揮官機が倒されたことによる動揺から起きる一瞬の硬直。その隙を逃す私たちではない。

 

「やあああ!」

 

アルマ機が振るったヒート・ソードが最後のビームライフル持ちを倒したのを確認し、ミアの捜索を始める。

 

「ミア!どこにいるの!?返事して!」

 

「こ、ここです……モビルスーツはもうダメですけど、何とか無事です」

 

「よかった、生きてるならオールオッケーだよ!バルバラ中尉、ミアを発見しました!」

 

『ああ、急いで帰還してくれ!これ以上は流石に危険すぎる!!近くにいる友軍のファット・アンクルに回収を頼んでおいた!それと、ブリンクマン技術少尉の機体は何としても持ち帰ってきてくれ。ここでUGSを失うわけにはいかない』

 

「了解です。ミア、機体は私とマリオンで連れていくからヘレナのザクに乗って」

 

「大丈夫です。片足はまだ動きますから、なんとか行けます」

 

撃たれた方の足を引きずりながら動くミアのザクに肩を貸し、指定された場所まで撤退する。そこで既に待っていたファット・アンクルに乗り込み、そのまま戦場を後にした。今言うことじゃないけど、やっぱりファット・アンクルって三機しか乗せられないって割には広いよね。現に今四機乗せてるし。余裕を持っての設定なのかな?それとも、ゾックとかデカいモビルスーツ換算だったりしてね。

 

『本当にご苦労だった』

 

バルバラ中尉の労いの言葉が心に染みる。が、空気はどことなく重い。そりゃそうだ。特にミアのザク・ハーフキャノンが顕著だがこっちの被害も結構出たし、何よりビームライフルの登場。重くならない訳がない。この重い空気の中、誰も沈黙を破ることもなく私たちを乗せたファット・アンクルはティルナノーグへと帰って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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