よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
炭治郎は目を覚ますと鬼滅隊本部、御館様の屋敷前の庭にいた。鬼となった妹を隠していた罪でここに連れてこられたのだ。
「ここは鬼殺隊の本部です。あなたは今から裁判を受けるのですよ。竈門炭次郎君」
蟲柱───胡蝶しのぶが話しかける。炭治郎が慌てて周りを見回すと他にも人の姿があった。
炎柱──煉獄杏寿郎。
音柱──宇髄天元。
恋柱──甘露寺蜜璃。
岩柱──悲鳴嶼行冥。
氷柱──童磨。
霞柱──時透無一郎。
蛇柱──伊黒小芭内。
水柱──富岡義勇。
風柱──不死川実弥。
そして……魔法柱───ヴォルデモート卿。
「おじぎをするのだ小僧、鬼殺隊は礼節を守らねばいけない」
ヴォルデモート卿の言葉に皆が一斉に頭を下げる。その様子に炭治郎は驚きを隠せないでいた。
「ではこれより、柱合会議を始めようか」
御館様──産屋敷耀哉がそう言うと、彼らは再び顔を上げた。炭治郎には一体何が何だかわからなかった。どうして自分はここにいるのか?目の前にいる人たちは誰なのか? すると突然、炭治郎は頭を掴まれ地面に叩きつけられた。
「っ!!」
痛みに顔を歪めながらも必死に抵抗するも、すぐに押さえつけられる。
「俺はお前を認めねぇ!鬼を連れているなんて認めねぇ!」
不死川が怒り狂ったように叫ぶ。
「そうだな、派手に気に食わねえぜ」
「うむ!!俺も同じ意見だ!」
宇髄や煉獄がそれに賛同する。
「私は別にどうでも……。それよりもお腹すいた……」
時透は無関心だった。ヴォルデモート卿は興味深げに炭治郎を見つめるだけだ。
「そんなことより冨岡さん、どうにか言ったらどうですか?」
「…………」
しのぶが問いかけるも、義勇は何も言わない。いつものことなので誰も気に留めないが。
「まあ良いじゃないですか、大人しくついてきてくれたんですし。処罰は後で考えましょうよ」
そう言ってその場を収めようとするのは童磨である。彼は他の柱たちとは違い感情が全く読めないため何を考えているのかわからないため、苦手とする者がほとんどであった。
ヴォルデモート卿が口を開く。
「まずは御館殿の話を聞こうではないか。この小僧について何か知っていることがあるかもしれぬぞ」
「それもそうだね」
耀哉は微笑みながら炭治郎を見た。
「君は今、自分がなぜこんなことになっているかわかるかな?」
「いえ……」
「だろうね。君の妹……禰豆子は今、どこだい?」
「すみません……わかりません」
「うん、それじゃあまずはそれを話そうか」
それから耀哉はこの兄妹についての話を聞いた。炭治郎にとっては寝耳に水の内容ばかりであったが、自分の家族を殺した鬼舞辻無惨が自分を狙おうとしていることも知った。
「なんということでしょう……私とした事が、全く知りませんでした」
「胡蝶も知らなかったようだな」
「えぇ、不覚です」
「とにかく、これは重大な隊律違反だ。鬼を連れて任務に当たっていたなど言語道断!」
不死川は声高々に叫んだ。
だがそれを遮るようにヴォルデモート卿が手を挙げた。
「少し待て。先程御館殿は竈門炭治郎と禰豆子の事を知っているようなことを言っていたが、それはどういうことだ?」
その言葉にその場にいた全員がざわついた。確かに彼の言う通りだと、皆思ったからだ。
「ああ、実はね……少し前に炭治郎のことを報告してくれた子がいたんだ。名前は教えてくれなかったけどね。その子からの手紙によると、鬼になった妹を人間に戻すために戦っているらしい。だから私は信じようと思ったんだよ」
耀哉の言葉にヴォルデモート卿は納得したが、まだ不死川や他の者は半信半疑だった。
「信じられねぇ……人を襲わずに生きられるわけがねぇ!!」
「まぁそう思うよね〜」
童磨がヘラヘラしながら言う。
「とりあえずさ〜ここで殺しちゃう?もう十分罰は受けてると思うんだけど」
「そうだなァ……鬼を庇い続けるなら死んだ方がマシだよなァ」
宇髄と不死川が賛成する。
「では、裁判の必要もないでしょう。鬼を匿っていただけで死罪というのは少し重すぎる気がしますが、皆がそれでいいと言うならば仕方ありません」
「だがこの小僧は覚悟ある目をしている」
ヴォルデモート卿が静かに言う。
「鬼殺隊は鬼を滅するのが仕事……しかし、鬼にも情けをかける御館様のお心意気、私は好きですよ」
しのぶが耀哉に寄り添いながら言う。
「それに、炭治郎君のことは私がちゃんと見ますから大丈夫ですよ。安心して下さい」
「……わかったよ。炭治郎、君はどうしたい?死ぬかい?生きるかい?好きな方を選びなさい」
耀哉の言葉に、炭治郎は答えた。
「俺は、死にたくはないです。でも、妹を殺すのも嫌だ!だから、俺は……」
「そうか、ありがとう」
耀哉はそう言うと、パンッと手を叩いた。
「ヴォルデモート卿、彼に魔法を。炭治郎、覚悟を示すなら耐えて見せなさい」
ヴォルデモート卿はニヤリと笑うと杖を取り出した。そしてゆっくりと炭治郎に近づくと、一言唱えた。
「クルーシオ」
次の瞬間、炭治郎は悲鳴を上げながら地面にのたうち回った。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
あまりの痛さに炭治郎は涙と鼻水を流しながら必死に暴れ回る。
「小僧、妹の命が惜しいなら俺様の魔法に耐えて見せろ」
「うわっ……エグいな……」
「容赦ないですね……」
「……」
「うぅ……ぐっ……うっ……」
炭治郎は必死に歯を食いしばり、必死に耐える。その様子を見てヴォルデモート卿は感嘆の声を上げた。
「ほう……大したものだ。まさかここまでとは……」
やがて痛みが引くと、炭治郎は起き上がった。
「よく頑張ったね」
耀哉は優しく語りかけた。
「これからも君には、鬼殺隊の一員として戦って欲しいと思っている。そのためにさらなる訓練も積んでもらう。大変だと思うが、どうかやってくれるかな?」
炭治郎は黙ったまま俯いていた。
「炭治郎、返事をしなさい」
耀哉がもう一度促すと、炭治郎は顔を上げてはっきりと答えた。
「はい!俺で良ければ精一杯頑張ります!」
その様子に、柱たちは安堵した。これでようやく話が前に進められる。
「では、炭治郎については私に任せてくれるかな?」
「御意」
「よろしくお願いします」
ヴォルデモート卿は一礼するとその場を離れていった。それを見て耀哉は、今度は不死川に向き直る。
「実弥、小芭内、行冥、天元、蜜璃。君たちも炭治郎を認めるように」
「御意」
「炭治郎君、もしも君の妹が人に襲いかかるようなことがあれば、ヴォルデモート卿の呪いが君と君の妹を殺す、覚悟はいいね?」
「はい!」
「ではこれにて、緊急の柱合会議は終わりだ。みんな、下がってもいいよ」
そう言うと、彼らは一斉に屋敷の中に入っていった。残ったのは炭治郎と耀哉だけになる。
「炭治郎、ヴォルデモート卿に君を鍛えてもらう。私もできる限り協力しよう。だけどね、これだけは忘れてはいけない。君は一人ではないということを」
「……はい」
「それじゃあ、また会おう」
そう言い残すと、耀哉も中に入っていった。炭治郎はしばらくそこに立ち尽くしていたが、ふらつきながらも立ち上がり、蝶屋敷に戻って行った。
「やれやれ、随分と骨が折れましたね」
しのぶはため息混じりに呟くと、屋敷の中へと消えていった。