よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
「アイサツをするのだポッター=サン」
ニンジャスレイヤーの声が響く。
「いいかポッター=サン、イクサの前のアイサツは大事な作法だ。古事記にもそう書いてある」
「ド、ドーモ、二、ニンジャスレイヤー=サン、ハ、ハリー・ポッターです」
「もっと相手の目をしっかり見て言え!」
「ド、ドーモ、二、ニンジャスレイヤー=サン! ハ、ハリー・ポッターです……」
「声が小さい!」
「ドーモ! ハ、ハリー・ポッターです!!」
「そうだ。それでよい。アイサツの前からイクサは始まっているのだ」
「アッハイ、センセイ」
「ではもう一度だ、ポッター=サン。今度は気合いを込めろ」
「……アイサツで気合いとかどうなんですか?」
「ポッター=サン。これは遊びではないぞ。アイサツにこもる力は、そのままイクサの力になる。真剣勝負の場で、アイサツをしない者は、もはや戦士とは呼べぬ」
「……わ、わかりました」
「アイサツは大事だ。古事記にもそう書いてある」
「アイサツ大切、わかりましたセンセイ」
「では行くぞ、ポッター=サン」
「ハイ、センセイ」
「ドーモ、ポッター=サン、ニンジャスレイヤーです」
「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ハリー・ポッターです」
二人は同時にアイサツをした。そして二人とも動きを止める。ハリーが言う。
「……いやちょっと待ってくださいよセンセイ! 何ですかこれ!?」
「ニンジャの基本だポッター=サン。少なくともこれでアイサツだけは立派なニンジャだ。おめでとう」
「……ここ魔法学校ですよ? こんなことやってる場合じゃないと思うんですけど」
「その通りだポッター=サン。だがアイサツは大事だ。古事記にもそう書いてある」
「それさっき聞いたんでもういいです」
「ポッター=サン。イクサの前にはあらゆる礼儀作法がつきものだ。古事記にもそう書かれている」
「だからもういいですから!……てゆーかそもそも、僕は魔法使いになるはずですよね?」
「何を言っているポッター=サン。お前はすでに『選ばれし者』なのだ」
「そんなわけないでしょう!? 僕ただのホグワーツ生ですよ!?」
「ポッター=サン。己を知れ。自分が選ばれた存在だと理解できぬのなら、それはまだ未熟な証拠だ。修業が必要だ」
「……あの、ホントに話が通じませんねセンセイ……」
「ポッター=サン。修業を続けよう」
「ああもうわかりましたよ! 」
「では改めて……ドーモ、ポッター=サン、ニンジャスレイヤーです」
「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ハリー・ポッターです」
再び二人はアイサツした。
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その時だった。突然天井の一部が割れ、何かが落ちてきた。それは床に転げ落ちると、立ち上がって叫んだ。
「アバーッ!!」
それは巨大な骸骨だった。ローブのような物を着ている。しかしそれはぼろきれのようにずたずたに引き裂かれていた。頭はつるりと禿げ上がり、顔には大きな傷跡がある。目はぎょろりとしており、口元からは鋭い牙が見え隠れしている。
「あばばば……」
それは壊れかけたラジオのような声で言った。
「ポッター=サン、あれが我々の敵、デス・イーターだ」
ニンジャスレイヤーが言った。
「デス・イーター……?」
ニンジャスレイヤーはその怪物を見つめながら呟いた。
「ポッター=サン。アイサツをしろ」
「ド、ドーモ、初めまして、ハリー・ポッターです」
「ウヒョオオオ!!」
髑髏は奇声を上げた。
「ウヒャヒャヒャ!! 我こそは不死鳥の騎士団員、死喰い人にして、デス・イーター最強の男、マッド-アイ=ムーディである!!」
「……えっ? 誰ですかセンセイ?」
「ポッター=サン。アイサツは大切だ」
「センセイ、この人がデス・イーターで合ってますよね?」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「センセイ!」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「センセイ!」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「センセイ!!」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「センセイ!!」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「センセイ!」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「センセイ!……って何回やるんですかコレ!?」
「ポッター=サン。アイサツは大事だ」
「もういいからセンセイは黙っていてください!」
「ポッター=サン。今だ!」
なんと言うニンジャ戦術。ニンジャスレイヤーは見事にデス・イーターの油断を誘い、ハリーに合図を送った。
「ええい! イクサの始まりだポッター=サン!!」
「センセイ、お願いですから邪魔しないで下さい」
ハリーは再び杖を構えた。
「アバダ・ケタブラ!」
「アババババーッ!!!」
「当たったぞポッター=サン! 見事だポッター=サン! さすがだポッター=サン! おめでとうポッター=サン!」
「センセイ、うるさいです!」
「イヤーッ!!」
ニンジャスレイヤーが叫ぶと同時に、彼はデス・イーターに突進した。
「イヤーッ! 」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
ニンジャスレイヤーの攻撃により、デス・イーターは大きく吹き飛ばされた。
「ドーモ、マッド-アイ=ムーディ=サン。ニンジャスレイヤーです」
「ア、アイサツ!? ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ムーディーです……」
「フハハハ! ポッター=サン! 今の内にデス・イーターを倒すのだ! 拙者がアイサツをしている間にな! 古事記にもそう書いてある!」
「わかりましたセンセイ!喰らえ!なんかの魔法!」
ただし魔法は尻から出る。
「セツナの味を知りたいかーッ!?」
「グワーッ!?」
ハリーの呪文が当たり、デス・イーターが絶叫する。
「よしトドメのボン・ダンス!」
聡明な読者ならお気付きだろうが、ボン・ダンスには悪霊を祓う効果があり、実際悪霊に属するデス・イーターにとっては、まさに致命的な攻撃となった。
「アババーッ!?」
デス・イーターは断末魔の声を上げ、その場に倒れ伏せ、やがて消滅した。
「ポッター=サン! おめでとうポッター=サン!」
「センセイ、もういい加減にしてください」
ハリーはうんざりした様子でため息をついた。
ひたすらカオスになりましたが特にオチはありません。(満足)