よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
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⿴⿻⿸前回まであらすじ⿴⿻⿸
お金持ちのペンションに招かれたコナンドー一行。パーティの夜、主催者の男性が殺害される事件が発生した。そこに残されたダイイングメッセージ『あ』と意味とは?
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見た目は筋肉、頭脳はゴリラ。真実はいつも暴力。
その名は『名探偵コナンドー』!
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(そうか、わかったぞ!)
コナンドーの筋肉推理によってひとつの事実が判明した。
(ダイイング・メッセージにはもうひとつ謎があったんだ……!)
それは『A』という文字の意味だ。『あ』というのは『頭文字』を表している。つまりこれは「被害者の名前の頭文字」を意味しているのだ。
そして被害者の男性の名前は「浅野和馬(あさのかずま)」だった。つまりこの『A』の文字は、被害者である浅野氏のイニシャルなのだ。
(ということは……犯人はこの中にいる!?)
コナンドーに緊張が走った。
(いや待てよ……。でももしそうだとしたら一体誰なんだ?)
コナンドーも頭を悩ませた。
(俺には皆目見当もつかん)
だが、コナンドーには秘策があった。大抵の犯人は殴れば自供する。つまりいつも通り暴力で解決すればいいのだ。
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そんなことを考えているうちに夜になった。パーティ会場には既に人が大勢集まっていた。どうやら食事が始まるようだ。すると、司会進行らしき男がマイクを手に取り話し出した。
「皆さん、本日はよく来てくださいました。早速ですが、まずは乾杯をしたいと思います。グラスをお持ちください」
一同は持っていたグラスを掲げた。
「それでは、今日ここに集まったことを祝して……カンパーイ!」
「「「カンパーイ!!」」」
「うっひょー!!うまそー!!」
粛々とパーティが進む中、コナンドーは小五郎の背後に立つと静かにコキャッっとその首をへし折った。小五郎は白目を剥き、口からは泡を吹く。
有り得ない角度となった首のまま、小五郎はストンと、気絶しながら椅子に座った。首を真後ろに向けたままで。
突然の出来事にその場は騒然となる。
「な、何事ですか!?毛利さんが死にかけてる!?」
騒ぎを聞きつけてやってきた安室透は驚きの声を上げる。
だがコナンドーは慌てず安室透に答えた。
「死ぬほど推理している、寝かせてやってくれ」
眠りの小五郎。有り得ない首の角度のまま眠ったような態度で度々名推理を繰り出すことから、彼はそう呼ばれている。
『分かったんですよ、事件の犯人が』
コナンドーは喉の筋肉をたくみに操り、小五郎の声で推理を開始した。
『実はあの時、私はあることに気がつきましてね』
勿体ぶるように一呼吸置く。
『なんだと思います?』
「え……」
困惑する安室に構わず続ける。
『私が気がついたこと……それは……』
ゴクリ、とその場の全員が息を飲む。
『事件が起こる前に、既に事件は終わっていたということだったのです!!』
ドーン!という効果音とともに高らかに言い放つ。
「どういうことです?」
当然の反応だろう。
『つまりこういうことです』
コナンドーは語り始めた。
『まず犯人は浅野氏を殺害する計画を立てた。しかしその時ふと思ったんですよ。浅野氏は自分が殺される理由を知らないのではないか、と』
そこで一旦言葉を切る。
『そこで犯人はある計画を立てた。それは、「浅野氏が殺されても仕方がない状況を作る」というものです』
「ほう」
安室はその先を促すように相槌を打つ。
『そして犯人はそれを実行した。それがダイイング・メッセージの謎ですよ。被害者の名前の頭文字だけを書いた紙切れを残しておくことによって、被害者自身が自分の名前の頭文字からメッセージを残そうとしたかのように見せかけるというもの』
コナンドーの説明を聞きながら安室の顔は徐々に青ざめていく。
『そうすることで、被害者の浅野氏は自分が殺される動機を知らずに死んでいったわけです。つまり、この事件には最初から矛盾が生じていたってことになる!』
コナンドーは勝ち誇った笑みを浮かべた。
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「しかし、じゃあ誰が犯人なんです?」
パーティの客のひとりが小五郎に問いかけた。
『それはこれからお話します。ただ、この中に犯人はいるということだけは先にお伝えしましょう』
小五郎の声でそう告げられると、ざわめきが一層大きくなった。
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「ふざけんなよ!そんな理屈が通るかよ!」
怒り狂っているのは小太りの男だ。名前は確か「鈴木次郎吉(すずきじろうきち)」と言っただろうか。
「俺らの中に犯人がいるだと?そんな馬鹿げた話があるもんか!!」
「まあまあ落ち着いてください、鈴木さん」
宥める声の主は眼鏡をかけたインテリ風の男だった。
「俺の名前は田中一郎(たなかいちろう)です。皆さんは覚えていないかもしれませんが、私達は以前この屋敷に来たことがあるんですよ」
「え、そうなのか?」
初耳の情報に一同はどよめく。
「ええ、まだ若い頃の話ですがね。それでですね、そのときのことを思い出したんですよ」
そう言って田中は続けた。
「あの時は今みたいに食事が出るなんてことはなくて、各自持ってきた弁当を食べていましたよね。でも、食事が出てないのにみんな帰らないし、それに料理も全然減っていないしで不思議に思っていたんですよ。しかも、パーティが始まってからはさらに謎が深まりました」
「どういうことだよ」
「だって皆さん、さっきから全く食事に手をつけようとしないじゃないですか」
「えっ」
「そりゃそうだろ」
「いや、おかしいでしょう」
「何が?」
「こんなに美味しそうな食事を目の前にして食べないという選択肢はないはずなのに、誰も手を付けようとしてくれないんですよ」
「そう言われれば確かに……」
「あれは不思議な光景でした」
「一体何が言いたいんだよ」
「いえ、別に。ただ、あの時のことが妙に頭に残っていたものですから」
「おい」
「ああ、すみません。話を戻します」
「で結局何がいいたかったんだお前は!」
怒鳴る鈴木に構わず田中は続ける。
「そんなことがあったものだから、今回の事件の話を聞いたとき、私は真っ先に思ったんです。『あの時と同じことが起きたんじゃないか』と」
「あの時?」
「ええ、そうです。パーティが始まったばかりの頃です」
「まさか」
「そのまさかです。あの時と同じように、今もまた、誰かがこっそりとパーティ会場から抜け出そうとしていますね」
「…………」
一同は黙り込む。
「誰なんだ一体!?」
「出てこい!!」
「出てきなさい!!」
「いい加減出てきたらどうなの!!」
「早くしないと逃げちゃうわよ!!」
一同は口々に叫ぶ。
すると、ひとりの男が立ち上がった。
「俺がやりました!!」
男は大声で叫んだ。
「俺は浅野さんを殺した!!」
男は涙ながらに訴えかけた。
「だから許してくれ!!頼む!!」
「嘘つけ!!」
すかさず鈴木は反論する。
「お前はさっきまでずっとそこにいたじゃないか!」
「そうよ!あなたはパーティが始まる前からここに居たじゃない!!」
「違うんだ……本当に殺したのは俺なんだよ!!」
男の告白に場は騒然となる。
『いいえ、その人は犯人ではありませんよ』
コナンドーは小五郎の声で答える。
『なぜなら、私はもう既に事件を解決しています』
「え……」
『ダイイング・メッセージの謎を解くことでね』
コナンドーは推理を語り始める。
『まず、被害者の名前の頭文字を並べ替えるとこうなります』
コナンドーは小五郎の代わりにホワイトボードに文字を書き並べた。
『A→AZM 浅野和馬 浅野カズマ Azuma Kazuma 浅野和真 浅野かずまさ』
「浅野さんがふたり!?」
「どういうことだ!?」
『つまり、浅野さんは二人いたということになります』
「なにぃ!?」
「つまりどういうこと?」
『被害者である浅野氏は偽名を使ってパーティに参加していたということです』
「なぜそんなことを……?」
『理由はふたつ考えられます』
コナンドーは小五郎の指へし折りながらを二本立てる。
『ひとつ目は、被害者の浅野氏が偽名を使っていたことを隠すため』
「隠す必要がどこにあるんだ?」
『これは後で説明しますが、浅野氏の本名には「あ」から始まるものはなかったんですよ』
「なに!?」
『浅野氏は自分の名前を偽ることで、ダイイング・メッセージの謎を解こうとする者を混乱させようとしたのでしょう』
「なんと!?」
『そして、もうひとつの理由』
コナンドーは小五郎の残りの指をへし折りながら三本目の指を立てる。
『浅野氏を殺害した犯人は、浅野氏になりすましていたのだ』
「なりすましてた!?」
「どういうことだ!?」
『浅野氏は事前に犯人によって変装させられていたのです』
「そんなバカな!?」
『そして、浅野氏を殺害した犯人は、浅野氏に成り代わってパーティに出席し、浅野氏が残したダイイング・メッセージの謎を解かせようとした』
「じゃあ、犯人は最初から分かってたんですか?」
『犯人の正体は、被害者の浅野氏と入れ替わった人物』
「じゃあつまり…」
『ええ、そうです。朝乃さん、犯人はあなたなんですよ!』
「うそ!?」
「何ィッ!?」
一同は驚愕の表情を浮かべる。
「うそ!?どうしてバレたの!?」
「やはりそうだったのか」
「うそーっ!!」
「なるほど、そういうことだったのですか」
安室透、田中一郎は納得の表情を浮かべた。
「ちょ、ちょっと待ってよおじさん!」
コナンドーは小五郎に話しかける。
『どうした?』
「僕には皆目見当もつかないんだけど、一体どうやって犯人を見破ったの?」
『簡単だコナン。朝乃さんは浅野氏の死体を見て彼の名前を呟いていた。誰も彼の名前を知らないはずなのに』
「え、そうだったの?」
『ああ、間違いない』
決定的な証拠に犯人の朝乃──新山朝乃は泣き崩れた。
「だって…だってあの人が……あの人が悪いのよ!私は悪くないのよ!悪いのは全部あの人のせいなのよ!」
「落ち着け!何を言っているか分からんぞ!」
「あの人が!あの人が私との婚約を破棄して、他の女と結婚するっていうから!!」
「だからといって殺してしまうとは……」
「仕方なかったのよ!仕方がなかったのよ!!」
錯乱している様子の新山に鈴木は詰め寄る。
「おい、本性を現しおったな。この殺人犯め!!」
「ち、違う!私じゃあない!私じゃないのよおおぉ!!」
「そうだな」
コナンドーはロケットランチャーを構える。
「一体何が始まるんです?」
「第三次大戦だ」
目黒警部がそう答えるや否や、コナンドーは引き金を引いた。
ズドオオォン!!
轟音とともに発射されたロケット弾は真っ直ぐに飛んでいき、窓ガラスを突き破って外へと飛び出していった。
「あ、あれ?」
安室は窓の外を見た。
そこには、爆発炎上するペンション地帯があった。
「な、なんじゃこりゃあぁっ!!!」
『事件解決』
コナンは小五郎の声でそう呟いた。
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こうして殺人事件は幕を閉じた。
犯人は捕まった。しかし、世間はこの事件の本当の恐ろしさに気づいていなかった。この事件の真の恐怖は、事件の真相ではなく、この事件を起こした人間の狂気にあったということを。
それは、誰にも知られることのない物語。
知られてはならない秘密の物語。
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なお首が真後ろに向いたまま気絶していた小五郎は、その後病院で目を覚まし、後遺症もなく無事に退院できたという。
事件解決にあまり筋肉と暴力が生かされなかったので、そのうちリベンジしたいと思います。