よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
「炭治郎、毛殺隊がマルハーゲ帝国の尖兵としてハジケリストと戦うために、様々な呼吸法と型を用いていることは知っているな」
「はい、鱗滝さん、鬼と戦うため……え?マルハーゲ帝国??」
「お前には私が使っていたのバビロン神拳を教える。私の技を全て叩き込んでやるから覚悟しなさい」
「え?呼吸じゃなくてバビロン神拳???え?」
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バビロン神拳とは古代バビロニアから伝わった格闘技で、今で言うマーシャルアーツに近いものである。だが、この武術は人を相手にするものではなく、竜や巨人といった架空の敵を想定して作られたものである。
バビロン神拳を極めることで巨大な便器を召喚するなど様々な超常めいた技を使えるようになるが、その威力に肉体の方が耐えきれず、習得者は短命であるという欠点があった
。
そのため後継者不足に陥り、現在伝わる技術のほとんどは失伝していると言っていいだろう。鱗滝左近次もバビロン神拳の継承者であり、彼の使う型は鱗滝流と呼ばれるものであった。
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「……というわけだ炭治郎。ハジケリストを滅ぶため、私と共に修行しようではないか」
「何言ってるんですか!俺は人間です!!」
「…………」
鱗滝は悲しげな顔で炭治郎を見た。そしておもむろに腕を組むとウンコ座りになった。
「うわぁああああ!!そんな目で見ないで下さいー!」
鱗滝に弟子入りして一年が経過しようとしていた頃のことである。
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「そもそも毛殺隊ってなんですか?鬼殺隊じゃなくて?
それにマルハーゲ帝国の尖兵ってどういうことなんですか!?」
「落ち着け炭治郎。ちゃんと説明してやるから。まず、我々の組織は『毛殺隊』という名ではない。正式名称は『真・毛殺隊』だ。真の毛殺しという意味が込められているのだ。ちなみに隊員の数は千を超えるぞ」
「せ、千人……?」
鱗滝は炭治郎の反応を見て満足そうに微笑んだ。
「毛殺隊は日本中に存在するハジケリストたちを狩るための組織なのだ。鬼ではなくハジケリストを狙う理由は奴らは神拳でしか倒せないからだ。そして私は毛殺隊の最高幹部の一人、『十二柱将』の一人である『黒龍王(こくりゅうおう)』の称号を持つ者だ」
「えぇ……」
あまりの話の規模の大きさに炭治郎はドン引きした。
「まあ毛殺隊については追々教えていくとして、問題は我々にとって最も恐ろしい敵の存在だ」
「一番強い人たちじゃないんですか?」
「違うな。最強の存在がいるとしたらそれは一人だけだ。そいつの名は……酢昆布ネキだ」
「すこんぶねきぃ?」
鱗滝の言葉を聞いてもピンとこなかったのか、炭治郎は首を傾げた。
「お前はまだ会ったことがないはずだ。かつて我らの組織を壊滅させかけた女傑よ。あいつだけは本当にヤバい……。正直勝てる気がせん……」
鱗滝はかつての戦いを思い出したのかブルリと体を震わせた。
「?????」
炭治郎は鱗滝さんが何か変なクスリでもやってるんじゃないかと思ったが口には出さなかった。
「とにかく炭治郎、今はバビロン神拳を身につけることに集中しろ。お前は筋が良いからすぐに身につけられるだろう」
「えー?」
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二年後。炭治郎は鱗滝さんからよくわからないバビロン神拳を習いつつ冨岡さんからこっそり水の呼吸を教わる日々を送っていた。
あと鬼殺隊は毛殺隊とは別にちゃんと存在してました。やったぜ。
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「ところで炭治郎、一つ聞きたいことがあるのだが」
「はい?なんでしょう?」
ある日の修行終わりのこと。鱗滝がふと思い出したように尋ねた。
「お前の妹だが……あれは何をしているのだ?」
鱗滝の視線の先には木刀を振る禰豆子の姿があった。彼女は目を閉じながら無心で剣を振り続けていた。その姿はまるで剣術の達人のようである。
しかし彼女が振るっているのはただの木刀である。
「さあ……俺にもわかりません。ちょっと聞いてきます」
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炭治郎は禰豆子に近づいた。
「どうしたんだ、素振りなんかして」
「お兄ちゃんが人として道を間違えそうだから撲殺できるくらい強くなっておく必要があると思って」
「お前は一体何を言ってるんだ?」
炭治郎は訳がわからず混乱したが、とりあえず鱗滝さんのところに戻ってきた。
「鱗滝さん、妹がよくわからないことを言い始めたのですけど一体何事でしょうか?」
「ああ、そのことなら気にする必要はない。いつものことだからな」
「(ええー)そうなんですか……?」
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更に四年が経過していた。
炭治郎は十五歳となり身長は二百センチを超え、体つきも大人のそれとなっていた。顔立ちや髪型も少し大人びている。
なにか育ちすぎたような気がするが、きっと気のせいだ。
彼は毎日のように修行を続けていた。その内容は過酷を極めるもので、普通の人であれば三日ともたずに音を上げるものである。
にもかかわらず、炭治郎は弱音を吐くこともなく淡々と修行をこなしていった。鱗滝はそのことに驚きつつも感心していた
。
(ここまでとは……やはりこいつは毛殺隊に入るべきだ)
鱗滝は最終選別を受けるための面談を行うことにした。
「炭治郎、毛滅隊の試験を受けないか?」
「毛滅隊の試験ですか?」
「ああ。お前ほどの実力があれば問題ないだろう」
毛殺隊には基本的に十二歳から入隊することができるが、試験に合格しない限り正式な隊員にはならない決まりとなっている。
鱗滝は毛殺隊の中でもかなりの実力者であり、その彼に認められたということは大きな意味を持つことであった。
「お断りします!鬼殺隊に入ります!」
「なぜだ!?」
鱗滝は思わず叫んだ。まさか断れるなんて思っていなかったからだ。
「俺は鬼殺隊に入って人の役に立ちたいんです!それに鬼殺隊に入った方が鬼舞辻を早く倒せるかもしれないじゃないですか!」
「鬼殺隊に入れば毛殺隊より危険な任務に就くことになるぞ!」
「大丈夫です!俺は長男ですから!」
「何が大丈夫なんだ!?」
鱗滝は頭を抱えた。
「いいか炭治郎、毛殺隊に入らないとハジケリストたちと戦えないんだぞ!」
「ハジケリストとか訳わかりませんよ!そんな人たちと戦う必要ないです!」
「お前は毛殺隊を馬鹿にしているのか!?」
「だって毛殺隊ってマルハーゲ帝国の尖兵なんでしょ!?そんな危ない人たちと戦う理由がないですよ!」
「毛殺隊の目的は人類の毛根の破壊だぞ!?」
「ますますダメじゃないですか!人類滅亡の危機じゃないですか!毛殺隊なんて放っておいて鬼殺隊に入隊しますよ俺は!!」
「待て炭治郎!!」
鱗滝の声も空しく、炭治郎は駆け出して行ってしまった。
「あのクソガキ……!」
鱗滝は怒りに震えていた。
「ならここで死ぬが良い。毛殺隊の名のもとに、貴様を殺す」
鱗滝は炭治郎を追いかけるべく走り出した。
「うわぁあ!!来ないで下さい鱗滝さん!!ハジケないで下さいー!!!」
炭治郎は全力疾走しながら絶叫した。
「毛殺隊に歯向かう者には死あるのみだ。覚悟しろ」
「嫌だーーーーーー!!!」
こうして鱗滝左近次対竈門炭治郎の戦いが始まった。
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「喰らえ、バビロン神拳奥義『便器の窓』!」
「やるしか無いのか……水の呼吸、拾ノ型『生々流転』!」
鱗滝は召喚した便器の窓から大量のうどんを吐き出した。
「甘いわ!毛殺隊に楯突いたことを後悔させてやるぞ、炭治郎!!ハァアアアッ!!!」
鱗滝は凄まじい速度で突進すると、高速回転を始めた。鱗滝の体は竜巻の如く回転することにより空気との摩擦熱を発生させて高温になっていた。
「ハジケリストは殺すべし。ハジケリストは殺すべし。ハジケリストは殺すべ……き……?」
鱗滝はそこで言葉を失った。なぜなら彼の目の前には……全裸になった炭治郎がいたからだ。
炭治郎はパンツを脱ぐと呼吸を整える。水の呼吸は肌面積が広いほど威力が上がるのだ。そして全身に力を込めると……
「必殺……『裸締め』ッ!!!」
「ぎゃああああああ」
鱗滝は白目を剥いて泡を吹いた。炭治郎は鱗滝の頸動脈をガッチリとロックして絞め上げている。鱗滝の足が地面から離れ、宙吊り状態になった。
「炭治郎……お前……いつの間にそんな技を……」
鱗滝は意識を失いながらも炭治郎に問いかけた。
「鱗滝さんのおかげなんですよ。鱗滝さんのおかげで俺は大切なことを学びました」
炭治郎は鱗滝に語りかけた。
「俺は今までずっと間違っていました。毛殺隊ってマルハーゲ帝国の尖兵じゃなくて俺たちの敵だったんですね……。だからもう戦う理由はありません。鱗滝さん、安らかに眠ってください」
「そ……そうか……あり……が…とう……」
鱗滝は白目を向いて気絶する。
「鱗滝さん……今楽にしてあげます」
そして炭治郎は鱗滝の頭を地面に叩きつけた。
「ごふぅっ……!!!」
そして鱗滝の口から魂が抜けた。
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禰豆子が全裸炭治郎の頭を思いっきり木刀でぶん殴った。
「お兄ちゃん、人の道から外れたら撲殺するって言ったよね?」
「痛いじゃないか禰豆子。鱗滝さんは死んでないよ?」
「違うよお兄ちゃん、鱗滝さんのことはどうでもいい。お兄ちゃんが街中で全裸になる変態野郎だってことが問題なんだよ」
「???」
水の呼吸にとって全裸は基本だ。炭治郎は禰豆子の言っていることがよく分からなかった。常識は置いてきた。あいつはこの戦いにはついてこられない。
「お兄ちゃん、今すぐ服を着るか腹を斬るか私に撲殺されるか選んで」
「????」
炭治郎は禰豆子の言っていることが理解できなかった。人は生まれてきた時はみな全裸だ。それを恥じる意味などない。
「わかった。お兄ちゃん撲殺したあと腹を斬らせて服を着せるね」
「どうしてそうなるんだ!?俺はお前の兄だろう!?もっと優しくしてくれても良くないか!?」
「問答無用!」
このあと炭治郎が気絶になるまで木刀で禰豆子に殴られ続けた。
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その後禰豆子はその胆力を認められ鬼殺隊の剣士として大活躍し鬼舞辻無惨討伐に寄与することになるが、それはまた別のお話。
実質禰豆子立志編になったでござる。