よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
「ウホウホ、ウホホ」
「はい、ゴリラ滝さん、鬼殺隊が様々な呼吸法で鬼と戦っていることは知っています」
「ウホホ、ウッホホ、ウホウホ」
「え!?本当にゴリラの呼吸を教えて貰えるんですか!!」
こうして、炭治郎はゴリラ滝からゴリラの呼吸を学ぶことになった。
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ゴリラの呼吸とは―――ゴリラが木に登り、枝の上でう〇こ座りをしてバナナを食べている時に考えた呼吸法である。 ゴリラの呼吸には四つの型があり、それぞれ壱ノ型『ドリアン』、弐ノ型『ドラミング』、参ノ型『ドラミング・スペシャル』、終ノ型『ドラミング・アルティメット』と呼ばれる。
この呼吸法を会得するにはまずバナナを用意し、食べ終わったら服を脱いで全裸になり、そのまま樹上へと登る。その後はバナナを片手に持ちながらドラミングを行い自然と一体となることで身につくと言う。
ちなみにドラミングとは本来太鼓の演奏技術のことだが、ゴリラにとっては自分の胸を強く叩く行為のことを指す。またゴリラのドラミングには意味があり、それはオスが自分の縄張りを主張する為やメスに対して求愛行動などで使われる。
その威力は凄まじく、岩山であろうとも砕け散る程。 さぁ、君もゴリラになろう!!! そして世界平和の為に戦うのだ!!!
(ちなみにゴリラ滝さんの師匠はこの呼吸法を習得できなかったらしい)
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二年後、炭治郎は無事ゴリラの呼吸を身に着けた。
しかし、彼はゴリラではなく人間なので当然習得できたのはゴリラの呼吸、参ノ形までだった。それでも常人ではありえない程の身体能力を得ることができたのだが……。
「やっぱり俺は人間だからなぁ」
残念なことに彼の肉体強度は人間のままだった。炭治郎はその事実に落ち込むものの、そんな彼を励ますようにゴリラ滝さんは彼の頭を優しく撫でてくれた。
「ウホホ」
炭治郎にとってゴリラ滝さんは初めて出来た友人であり、心優しいお爺ちゃんのような存在になっていた。そんな彼が困っているなら助けになりたいと思うのは当たり前のことだった。
その為にも強くならないとなと思ったその時……。
「ウホッ!」
「どうしたんですか?ゴリラ滝さん?」
突然何かを思い出したかのように声を上げたゴリラ滝さんに炭治郎は何事なのか尋ねると、ゴリラ滝さんは自分の胸を叩き始めた。
「えっと……何しているんですか?」
「ウホウホ、ウッホホ」
「……あ!俺が今度こそゴリラになると思って心配してくれたんですね!!」
「ウホホ……」
ゴリラ滝さんは照れくさそうに頬を掻いた後、もう一度胸を叩いて見せた。その様子はとても嬉しそうなものだった。
「大丈夫ですよ!俺はもうゴリラになれませんけど、ゴリラの気持ちはよく分かりましたから!それに、今はもっと強くなりたいって思いの方が強いです!!」
「ウホホ~♪」
ゴリラ滝さんは満面の笑みを浮かべると、炭治郎のことを抱きしめてきた。まるで我が子のように、大事な孫のように、力強く抱きしめた。
炭治郎は最初驚いた表情をしていたが、すぐに笑顔になると自分もゴリラ滝さんの背中に手を伸ばして抱き返した。二人はしばらくの間そうしていたが、やがて離れると同時にお互いの顔を見て笑い合った。
「じゃあ早速行きましょうか!善逸たちを助けに!!」
「ウホォーッ!!!」
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その頃、浅草の街中では……。
「いいですか伊之助くん、私たちは鬼殺隊の隊員として恥ずかしくない行動をしなければなりません。よって私たちの行動一つで多くの命を救うことができるのです。分かったら返事をしなさい」
「うるせぇぞババア!!お前は俺の母親か!?」
「何を言っているのですか君は?私はこれでも立派な大人ですよ?失礼ですねまったく」
「誰が見ても子供にしか見えねぇよ!!」
猫の被り物をした少年こと嘴平伊之助はいつも通りのやり取りをしていた。この二人のやりとりは既に日常茶飯事で誰も気にすることは無かった。
何故なら彼らは鬼殺隊の中で一番の新入りだからだ。新入りの彼らがなぜここにいるのかと言うと、今回の任務内容が関係していた。
なんでも最近になっ爆破騒ぎが続出しているらしく、その原因を調査する為に鬼殺隊が派遣されることになったのだ。その調査員に選ばれたのは彼ら二人を含めた数名だった。
「それにしても、最近行方不明になっている人たちも多いみたいだけど、どこに行ったんだろうな?」
「おそらくですが、夜遊びして朝帰りになったんじゃありませんかね?まぁ、私には関係のないことですが」
「なんでだよ!?俺たちだってまだ未成年なんだから関係あるだろうが!!」
「何を馬鹿なことを言ってるのですか?こんな昼間っから遊ぶわけがないでしょう?もし仮に遊んでいたとしても、それは親御さんの責任であって我々には関係ないことです」
「いや、それは確かにそうだけれどもさ……なんかこう……言い方があるんじゃないか?」
「はぁ~、本当に面倒臭いガキですね」
「あんだとぉおおおっ!?」
「はい、静かにしてください。周りの迷惑を考えろクソネコ」
「俺はネコじゃない!!人間様だ!!」
「はい、知っています。ただの人間のくそ野郎ですよね?」
「全然違うわボケェエエッ!!大体なぁあああっ!!お前のその猫の皮を剥ぎ取ってやろうか!?」
「はぁあ?一体全体何を言い出すのでしょうかこの阿保面は。そんなことが出来ると思っているのですか?出来もしないことを言うのは止めてもらえますか?」
「ああぁん!!言ったなこの糞餓鬼ぃいっ!!よし、決めたぜ!!おい、ちょっとこっち来い!!」
「はぁ……全く、仕方のない奴ですね。良い年こいて喧嘩を売るなんて……そんなだからいつまで経っても山しか行く場所が無いんですよ」
「お前たちいい加減にしないか!」
調査隊を引率する無惨様は怒りの声を上げると、二人はビクッと肩を震わせて動きを止めた。そして同時に正座すると背筋を伸ばしたまま動かなくなった。
その姿はまるでロボットのようだった。
「あの……無惨さま、どうかお許しください」
「お願いします。俺は悪くないんです」
「…………」
必死に謝る彼らを冷めた目で見つめる無惨様。彼は大きくため息を吐いた後、口を開いた。
「貴様らは鬼殺隊の恥さらしだ……二度とこのようなことがないようにしろ。次は容赦せんぞ」
「「は、はい!」」
「それと……今回は特別に見逃すが、次はないからな」
「「は、はい!!」」
「ではさっさと仕事に戻れ」
「「は、はい!失礼しましたぁああーっ!!!」」
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「ゴリラ滝さん、善逸たちは何処に居ると思いますか?」
「ウホォ~……」
炭治郎の言葉にゴリラ滝さんは首を傾げた。実は先程から炭治郎は匂いを頼りに探しているのだが、一向に見つからないでいた。
それどころか、人が多すぎて匂いを嗅ぐことが出来ない状況でもあった。
「どうしましょうか?このままでは日が暮れてしまいます」
「ウホウホ」
「え?なんですって?『大丈夫』?どうしてですか?」
「ウホォオオオッ」
「えっと……『俺に任せろ!』って言いたいんですか?」
「ウホウホウホウホウホ」
「『俺は鼻が良いんだ。任せておけ』って……分かりました!じゃあ、よろしくお願いします」
「ウホォオオオーッ!!」
ゴリラ滝さんは雄叫びを上げながら走り出した。その速度は凄まじく、瞬く間に人々を次々と撥ね飛ばしながら人混みの中に消えていった。
「……流石はゴリラ滝さんだ」
炭治郎は感心したように呟いた後、自分もまたゴリラ滝さんの後を追って走り出した。
「待っていろよ、善逸……伊之助……必ず見つけ出してやるからな」
浅草の街を全力疾走する炭治郎。その速さは常人のそれを遥かに凌駕しており、彼はまるで風のようになっていた。
しかし、それでも目的の人物を見つけることはできなかった。
「おかしいな?一体どこにいるんだ?」
「ウホウホウホウホ」
「え、なんで俺を置いて行ったのかですって?それは俺には分からないですよ」
「ウホホ」
「え、俺だけじゃ不安?酷いなゴリラ滝さんは。俺はそこまで頼りなく見えるんですか?」
「ウホホォオオォッ!!」
「あ、はい、ごめんなさい。余計な事を言ってしまいました」
ゴリラ滝さんに叱られた炭治郎は再び捜索を開始した。
だが、やはり彼らを見つけ出すことは出来ず、次第に焦りを感じ始めた。
一方その頃、善逸たちは無惨さんの奢りでうどんに舌鼓を打っていた。
「う~ん、美味しい!やっぱりうどんは最高よね!!」
「本当だね。僕も初めて食べたけど、これは病みつきになりそうだ」
「俺は天ぷらそばが一番好きだな!」
「はぁ?あんなの邪道でしょ?うどんこそが至高の一品でしかないわ」
「何言ってんだよ!蕎麦こそ正義だろう!」
「「むぅーっ!」」
二人は睨み合い、そのまましばらく沈黙が続いた。
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「ウホウホ」
「どこにも善逸たちはいませんね……」
「ウホホ」
「え、この先に鬼がいるかもしれない?だから早く行こう?そうですね、急ぎましょう!!」
「ウホウホウホウホ!!」
「え、なんですかその反応はって?いえ、別に何でもありませんよ?」
「ウホウホウホウホ!!」
「ええええええ、ええ、そうですよ。俺は嘘が下手ですから隠し事は出来ないんですよ……」
「ウホホゥ!!」
「……はい。俺がゴリラの呼吸を習得しきれていないって話です……」
「ウホホゥ」
「はい、そうなんです。ゴリラの気持ちが分かるようになったけど、俺はゴリラにはなれませんでした」
「ウホホ」
「え、でも俺の身体能力は飛躍的に上がったって?ありがとうございます!それは嬉しいです!!」
「ウホホ」
「あ、はい。分かっています……もう時間が無いことは……きっと、今日が最後のチャンスになるでしょう」
「ウホォー」
「はい、分かりました!行きましょう、善逸たちの所へ!!」
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その頃、浅草の街中にある建物の屋根の上に一人の男が立っていた。男は手にしていた日輪刀を抜くと、ゆっくりと構えると気合一閃。見事藁人形を真っ二つに斬り裂いた。
観衆もやんややんやの大喝采。見事な腕前に拍手が巻き起こった。
男の名は炎柱・煉獄杏寿郎。鬼殺隊の中でも屈指の実力者である。そんな彼の隣には相方の猗窩座の姿が。2人は手拍子の後ショートコントを始める。
「はい、どーも。こんにちは。私の名前は炎柱の煉獄でーす」
「猗窩座でーす」
「2人合わせて、"炎の鬼狩りコンビ"です」
「どうもー」
「ところで、最近浅草の名物と言えばなんでしょうか?」
「ん?なんだろう?食べ物かな?」
「はい、正解です。というわけで、今日のネタはこちら」
「ドドンッ!!」
「ズバリ、『浅草グルメ巡り』~!!」
「イェーイ!!」
2人がノリ良く決めポーズを取った瞬間、どこからか爆発音が聞こえてきた。
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「!? ゴリラ滝さん!!」
「ウホホホッ!」
突然の爆音を聞き取った二人は慌てて音の鳴る方へと向かっていった。するとそこには―――
「ウホウホーッ!!」
「なんだあれは!?」
炭治郎の目の前に広がっていた光景。それは地獄絵図のような物だった。建物が崩壊し、地面はひび割れ、逃げ惑う人々があちこちにいた。
そして彼らの悲痛な叫び声と断末魔の声が響き渡っていた。
「やめろぉおおおっ!!」
炭治郎は咄嵯に叫ぶと、ゴリラ滝さんは動きを止めて振り返った。音を聞いて駆けつけてきたのか、遠くから無惨さんと善逸達、そして煉獄さんと猗窩座さんのコンビの姿があった。
「炭治郎!無事だったか!!」
「はい、なんとか……」
「ウホォオオッ!!」
ゴリラ滝は野生の眼光を宿らせ、周囲を威嚇し始めた。
「……ゴリラ滝さん、もしかして鬼が近くにいるんですか?」
「ウホォオォッ!!」
「え、『間違いない!!』?……あの、本当に鬼が居るみたいです」
炭治郎の言葉に全員が警戒態勢に入った。すると、何処からか笑い声が響いてくると、建物の陰から一人の少女が現れた。
「フフッ、アハハッ、アーッハッハッハッ!!まさかこんな簡単に引っかかるなんて、馬鹿な連中ねぇ!」
現れたのは黒い髪を肩まで伸ばした少女だった。彼女は愉快げに笑うと、無惨さんの方を見た。
「あら、あなたは無惨さんかしら?初めまして、私は上弦ノ陸。堕姫っていうの。以後お見知りおきを」
「貴様……鬼だな。しかも十二鬼月だな」
「ご名答!よく分かったわね」
「ふざけるな!!お前は俺たちの仲間に何をした!!」
「仲間?ああ、あいつらのことね。別に何もしてないわよ。ちょっと眠ってもらっただけ。最新のアロマテラピーで身も心もスッキリです」
「アロマテラピーだと?お幾らからですか?」
「ええ……それが謎の爆発でうちの店舗が吹き飛んでしまって……申し訳ないのですが……」
どうやら堕姫の名乗った鬼は大仰な登場の割に爆発とは無関係らしい。炭治郎は呆れたようにため息を吐いた。
「堕姫さん、何か爆発について知っていることは無いですか?」
「ええ、ありますよ。教えて欲しいですか?」
「ええ、是非とも」
「実はあの爆発の前に、うちの店の前にで怪しげな男が立っているのを見かけたんです」
「怪しい男?」
「ええ、全身黒ずくめの格好で……顔は見えなかったけど背が高くて、なんかこう……不気味で不気味な雰囲気の男でした」
「なにそれ怖い」
「それで、その男は一体何者なんだい?」
「さぁ、分かりません。ただ、その男からはとんでもない臭いが漂ってきていました」
「臭かったのかよ」
「はい、凄く」
臭い男。どうやらそれが一連の騒ぎの犯人で間違いなさそうだ。
炭治郎は静かに怒りを燃やすと、善逸たちを見て言った。
「善逸、伊之助、禰豆子。ここは俺に任せてくれないか?」
「え?」
「ウホウホ?」
「ゴリラ滝さん、一緒に戦ってくれますか?」
「ウホホォオオッ!!」
ゴリラ滝さんは任せろと言う様に胸を叩き、鼻の穴を広げた。
炭治郎は頼もしいとばかりに笑みを浮かべると、無惨さんに向かって叫んだ。
「無惨さん、皆さんを連れて安全な場所に避難していてください!!」
「だが……」
「大丈夫です。すぐに終わらせてきます!!」
「……分かった。だが、決して死ぬな」
「はい!」
無惨さんは善逸達に目を向けると、全員を引き連れてその場から離れていった。炭治郎はゴリラ滝さんの背中に跨ると、日輪刀を構え、戦闘体勢に入る。
「臭い男はよくあちらの通りの方に逃げて行きました」
堕姫はそう言って指を指した。炭治郎はゴリラ滝さんと共にそちらの方向へと向かった。
向かう道中、炭治郎はふと疑問に思ったことをゴリラ滝さんに聞いてみた。
「そういえば、どうして浅草に来たんですか?」
「ウホホゥ」
「え、『浅草のうどんを食べたかった』?そっちですか……」
「ウホホゥウホホゥッ!」
「『浅草のうどんは美味い』って?本当ですか?俺も食べてみたいな」
「ウホホゥウホホゥ」
「え、今度は"俺が奢る"って……いや、いいですよ。流石にそこまでしてもらうわけには……。とにかくこの事件を解決してうどんを食べに行きましょう」
「ウホホ」
「え、俺の事は心配するなって?でも……」
「ウホホゥウホホゥ」
「え、"俺は強いから安心しろ"って?……そうですね、ゴリラの滝さんが言うなら信じましょう」
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そう言いながら二人は目的地へとたどり着いた。そこは寂れた神社があるだけで、特に変わった様子は無かった。
「ウホホゥ」
「え、『この中に臭い男が居る』?確かに言われてみれば、そんな気がします」
炭治郎は目を閉じて集中すると、嗅覚を研ぎ澄ませた。
すると微かに人の気配を感じ取った。
(見つけた!)
炭治郎は日輪刀を構えると、大きく息を吸い込んだ後、呼吸法を使った。
――ゴリラの呼吸・壱ノ型・ドリアン――
ドゴォオオオンッ!!! 次の瞬間、炭治郎の一撃が神社の本殿を打ち砕いた。
「ひぃいっ!?」
その衝撃で屋根の上に居た臭い男の姿が露わになった。
炭治郎はすかさず臭い男の元に駆け寄ると、地面に組み伏せ、動きを押さえつけた。
「ウホォッ!……ウホッ!?」
ゴリラ滝さんが加勢しようと走り出すと、何処からかもう一体の鬼が現れた。どうやら鬼は二人組だったようだ。
「ウホッ!?」
「ゴリラ滝さん!?」
ゴリラ滝さんはもう一体現れた鬼の攻撃を受けて吹っ飛ばされてしまった。一方、もう一人の鬼はというと、ゴリラ滝さんには興味が無いようで、そのまま炭治郎の元へ向かってきた。
「ウホォオオオッ!!」
「えっ!?ゴリラ滝さん!?」
ゴリラ滝さんは再び立ち上がると、雄叫びを上げ、炭治郎のピンチを救った。ゴリラ滝さんはそのまま炭治郎を守るように立ち塞がり、敵である2人を睨み付けた。
「ウホホォッ!!」
───ゴリラの呼吸、参ノ型、ドラミング・スペシャル――
ドコォオオオオンッ!! ドガァアアアアンッ!! ゴリラ滝は自分の胸を力強く打ち付けると、衝撃波を発生ささせた。その威力はすさまじく、2人の鬼を怯ませることに成功した。
「ウホッ!!」
「ぐわっ!!」
「今だ!!」
炭治郎は隙を突くと、鬼の体を斬り裂いた。鬼は血を噴き出しながら倒れ込むと、塵となって消え去った。
ゴリラ滝もまたもう一方の鬼を倒そうと構えたが、相手はもう戦意を喪失していたらしく、怯えた表情で炭治郎達を見つめているだけだった。
炭治郎はゆっくりと近づくと、鬼に対して問いかけた。
「お前がこの事件の犯人なのか?」
「……俺は俺の爆発の芸術を世に知らしめるためにやっただけだ!!」
「……爆発?」
「そうだ!!」
鬼はそう叫ぶと、懐から一つの壺を取り出し、自慢げに見せつけてきた。
「これは俺が今まで作ってきた爆薬を溜め込んでおいた壺なんだ!!これを爆発させて建物を倒壊させ、逃げ惑う人々を見て楽しんでいたんだ!!なのに、なんでこんな目に遭わなければならないんだよ!!ちくしょう!!」
「……」
ゴリラ滝は鬼の言葉に耳を傾けるつもりはないのか、黙ったまま腕を組み、仁王立ちしていた。そして鬼の頭を掴むとゆっくりと握りつぶし始めた。
「痛い、いたい、イタイッ!!!」
「ウホホ」
「いだだだだだだだだだだだだ」
「ウホホォオオオッ!!」
ゴリィイインッ!! 鬼の頭蓋が粉砕される音が周囲に響き渡った。
「ぎゃあああああっ!!」
鬼は断末魔を上げると、やがて跡形もなく消滅した。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
こうして浅草の連続爆破事件は幕を下ろした。犯人であった臭い男の鬼は討伐され、事件は解決した。
無惨さん達は事件に巻き込まれた人達を介抱し終えると、再び旅路についた。炭治郎は別れ際に無惨さんに向かって言った。
「またいつでも来てくださいね」
「……ああ、機会があればな」
無惨さんはそう言うと、善逸たちの方を見て言った。
「では、さらばだ」
「ええ、お気をつけて」
「ああ、炭治郎。それから……ありがとう」
「え?」
「……いや、なんでもない。それじゃあな」
無惨さんはそれだけを言うと、去っていった。炭治郎は呆然とした顔で無惨さんの後ろ姿を見送っていると、不意に善逸に声をかけられた。
「なぁ、炭治郎」
「ん?なんだ?」
「あの人、最後なんて言ってたと思う?」
「さぁ、よく分からなかったなぁ……」
「だよねぇ」
「それよりも、早くうどんを食べに行こうじゃないか」
「うん、そうだね」
善逸はそう言って歩き出した。炭治郎はその後ろ姿を微笑ましく見つめた後、自分もうどん屋に向かうべく、歩みを進めた。
「ウホホゥウホホゥ」
「え、ゴリラ滝さん、何ですか?」
「ウホホゥ」
「え、"俺の事は気にするな"って?でも、まだ奢ってもらっていないですよ」
「ウホホゥウホホゥ」
「え、"俺の分も一緒に奢る"って?いやいや、いいですよ。流石にそこまでしてもらうわけには……」
「ウホホゥウホホゥ」
「え、"俺を信じろ"って?……分かりましたよ。それなら一緒にうどんを食べに行きましょう」
こうして炭治郎一行は浅草でも有名なうどん屋に向かうのだった。――その後、うどん屋の店主がゴリラ滝さんの姿を見て驚いたいう噂が流れたとか流れないとか……。
ウホホ、ウホホホホ。