よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
炭治郎は目を覚ますと鬼滅隊本部、お館様の屋敷前の庭にいた。鬼となった妹を隠していた罪で、拘束され連れてこられたのだ。
「ここは鬼殺隊の本部です。あなたは今から裁判を受けるのですよ。竈門炭次郎君」
蟲柱───胡蝶しのぶが話しかける。炭治郎が慌てて周りを見回すと他にも人の姿があった。
炎柱──煉獄杏寿郎。
音柱──宇髄天元。
恋柱──甘露寺蜜璃。
岩柱──悲鳴嶼行冥。
霞柱──時透無一郎。
蛇柱──伊黒小芭内。
水柱──富岡義勇。
風柱──不死川実弥。
そして……ケアロボット──ベイマックス。
「私の名前はベイマックス。あなたは大変緊張しているようですね。10段階で表すとどれぐらい緊張していますか?」
「えっ……」
突然、横合いから声をかけられて炭治郎は戸惑った。確かに自分はひどく緊張していたのだが、それを初対面の人物?に言い当てられるとは思わなかったからだ。
「では緊張をほぐすため、電気マッサージをしましょう」
そう言うとベイマックスは両手から紫電を迸せながら炭治郎の両肩に手を置くと、背中側に向けて放電した。バチィッ!
「ぎゃああああっ!?」
「どうですか?緊張はほぐれましたか?」
「あばばばばば、な、何するんですばばば」
感電しながら涙目で抗議の声を上げる炭治郎だったが、他の柱達は特に反応せずただ黙って成り行きを見守っているだけだった。
「もう十分な場合は『大丈夫だよ、ベイマックス』と言って下さい」
「あばばばば」
「大丈夫じゃない場合は『ありがとう、ベイマックス』と言ってください」
「びゃああ」
「わかりません」
「ぎゃあああ」
バチバチバチバチバチッ!! 容赦のない連続攻撃にたまらず炭治郎は絶叫を上げた。
「ぎゃああああ!!」
「もう大丈夫だ、ベイマックス。竈門少年も情けないな、この程度で」
「どの程度でしょうか?10段階で表して下さい」
「うむ、6くらいかな!」
「…………」
「もう少し強い方がいいでしょうかね?」
「いや、充分だろう。よくやったぞ、ベイマックス」
「ありがとうございます」
「さすがね、ベイちゃん」
「いえ、それほどでもありません。ところで緊張はほぐれましたか?」
「んー……まぁいいんじゃないか?」
「おい、俺はまだ何も言ってないんだが」
痺れる炭治郎の姿を見て笑う宇髄を見て、伊黒がネチネチと言い募る。
「そろそろいいかしら?裁判を始めるわよ」
そんな二人のやり取りを無視して甘露寺が言った。
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お館様こと産屋敷耀哉が現れ、柱合会議と共に裁判が始まる。
「まずは君の妹さんについてだが、鬼殺隊として人を守る為に戦えるのか?その事を証明して欲しい。それから君はどうして妹が鬼になったのか説明してくれるかい?」
お館様の言葉に炭治郎は背筋を伸ばして姿勢を正す。
「緊張しているようですね。電気マッサージをしますか?」
「結構です!」
「10段階で言うとどれぐらい結構ですか?」
「えっ……じゃあ5くらいで……」
「わかりました。それでは5段階の電気マッサージをします」
そう言ってベイマックスは炭治郎の背後に回ると両手から紫電を放ち、両肩に手を置いて放電した。
「ひぃっ!?ちょ、ちょっと待って違う!『もう大丈夫だよ、ベイマックス!』」
慌てて炭治郎は叫ぶと、ベイマックスは手を離し、その場から少し離れた。
「本当に大丈夫だと思いますか?もっと強くても大丈夫だと私は思います」
「あの、もう充分だから!むしろ強すぎて痛かったから!」
「本当ですか?」
「うん」
「……話を続けて貰えるかな。あとベイマックスは少しあちらで不死川くんを見ていてくれないかい?あまり刺激を与えないようにね」
「わかりました」
そう言うとお館様に言われた通りベイマックスは離れた場所まで移動した。
「えっと、どこまで話しましたっけ?」
「君の妹が人を襲わないかどうか、それをこれから判断するんだよ。そして君の話はここから先になるから、落ち着いて話すといい」
「はい」
お館様の優しい言葉を聞いて炭治郎は大きく深呼吸するとゆっくりと口を開いた。
「俺は家族と住んでいる家に一人で留守番をしていた時でした。妹が、禰豆子が血だらけで帰ってきたんです。最初は熊に襲われて怪我をしたのかと思いました。でも、それは違いました。禰豆子は無惨に鬼にされて、でも殺されそうになった家族を庇ったんです。その時の血が自分の服にも付いていました」
「成る程」
「それで、俺の家族はその事で揉めていました。禰豆子を人間に戻す方法を探すと言って聞かない母と、このまま殺すべきだと言う父。弟や妹達は二人の間で揺れていて、どちらの意見が正しいのかも分からなくて……とにかく鬼殺隊ならなんとかなるかもって富岡さんに言われて……」
「富岡くんに?」
「はい、富岡さんは育手という人のところへ俺を連れて行ってくれたんです。そこで修行して、最終選別に行って合格して、今は鬼滅隊の剣士として働いています」
「ふむ」
「でも、最近になってわかったんです。妹の事。俺、ずっと知らなかった。何も知らずに、ただ必死に鍛錬して、鬼を斬る事だけを考えていた。でも、俺には妹を人に戻す事も、守ることも出来なかった。それが悔しくて仕方がないんです」
そう言うと炭治郎は俯き、唇を噛み締めた。その様子を見て不死川を電撃で黒焦げにして戻ってきたベイマックスが言った。
「あなたは今とても混乱しています。電気マッサージをしますか?緊張がほぐれますよ」
「いらない!」
「10段階で表せばどれぐらいの混乱ですか?5ですか?6ですか?7ですか?」
「えっ……うーん、まぁまぁ」
「そうですか。では電気マッサージをします」
バチバチバチバチバチッ!!
「ぎゃああ!?何するんですばば」
「どうですか?落ち着きましたか?」
「おちばばばば、落ち着きばばばましばばば」
「そうですか。よかったですね」
「あばばばばばば」
「『もう大丈夫だよ、ベイマックス』……ベイマックス、向こうで煉獄くんをマッサージしてあげててくれるかい?」
「わかりました」
「よもや!?」
バチバチバチバチバチッ!!
「あばばばばばば」
「……さて、富岡くんが関わっていたのか。いや実は鱗滝さんからも君と君の妹のことは実は聞いていたんだ。ただ確証がなかったからね。もし違ったら君を傷つけてしまうかもしれないから、本人から聞きたかったんだ」
「お館様、ご存知だったのですか?」
「ああ。彼は優秀な育手なんだが、少々変わり者でね。鬼にされた妹を連れた少年がいるらしいとしか聞いていなかったから。ただ、鬼を狩る組織にそのような存在が現れたらどうするか、それも確認したかったんだ」
「……」
「君が言っていたように、君の妹、禰豆子ちゃんは鬼になったが人を喰っていないようだ。しかし、まだ完全に人に戻ったわけでもない。ならば、鬼殺隊としてその責任を取らねばならない。覚悟はあるかい?」
お館様の言葉を聞き、炭治郎は目を閉じて深く息を吸い込むと静かに目を開いて真っ直ぐにお館様を見据えた。
「もちろんです!」
「10段階でどれぐらいの覚悟ですか?」
杏寿郎を黒焦げにして戻ってきたベイマックスが再び炭治郎に問う。
「10以上の覚悟でやります!!」
「エラー、1~10で答えてください」
「えぇー……」
「どうなんですか?」
「まぁ、それなりにあります」
「わかりました」
バチバチバチバチバチッ!!
「ぎゃああ」
「お館様、炭治郎は嘘は言っていません」
「そうだね、ありがとう、ベイマックス」
バチバチバチバチバチッ!!
「ぎゃああ」
「お館様、炭治郎は『そこそこ』の覚悟は出来ています」
「そうか、頑張ってくれ。期待しているよ」
「あばばばば!」
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柱合会議が終わると宇髄はお館様に話しかけた。
「ところで、ベイマックスは何者なんです?」
「あれは……なんだろね、あれ。私もよく分からないんだ」
「ははは、またお館様も冗談を仰られる」
「……いや、本当にわからないんだよ。いつの間にか蝶屋敷に居て、怪我人の手当の手伝いや看護の真似事をしていたり……今日は私の体の様子を診に来たみたいだけど……」
「そういえば……お館様の具合はいかがですか?」
「そう言えばまだ診てもらってなかったね、せっかくだからベイマックスを呼んでみよう」
「はい」
「ベイマックス、こっちに来てくれるかい?」
「わかりました、何をしましょうか?」
「私の体を診てくれるかい?最近調子が悪くてね」
「わかりました。では服を脱いで下さい」
「わかったよ」
「脱いだ服はそこに置いて下さい」
「いいよ、ではお願い」
「わかりました。ではスキャンを始めます」
そう言うとベイマックスは破壊光線を放射し、服だけを焼き尽くした。
「お館様?お館様!?しっかりしてください!お館様ぁぁぁぁ!!!」
宇髄は絶叫した。
「うわぁ、うわぁ、うわぁ、お館様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
「概ね健康です」
「お館様ぁぁぁぁぁ!!!」
その後、産屋敷邸に宇髄の悲鳴が響き渡った。
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⿴⿻⿸大正コソコソ噂話⿴⿻⿸
・産屋敷耀哉
みんな大好きお館様。この人も大概天然である。
・竈門炭治郎
妹が鬼になったのに守れなかった主人公。この後、柱稽古に参加することになる。
・宇髄天元
お館様が心配でならない人。でも、お館様の事は心の底から尊敬している。
・ベイマックス
自称ケアロボット。色々できるけど、一番得意なのは電撃を浴びせること。ケアロボットとは?
・冨岡義勇
今回出番なし。
・不死川実弥
ベイマックスの電撃で黒焦げになった人。
・伊黒小芭内
ベイマックスの電撃で黒焦げになってない人。
・甘露寺蜜璃
ベイマックスの電撃で黒焦げになっていない人。
・煉獄杏寿郎
ベイマックスに黒焦げにされた人。
ベイマックス(仮)さんがフリーダム過ぎて楽しかったです。