よろず短編集 作:機械学習はいいぞおじさん(仮)
炭治郎は目を覚ますと鬼滅隊本部、御館様の屋敷前の庭にいた。鬼となった妹を隠していた罪でここに連れてこられたのだ。
「ここは鬼殺隊の本部です。あなたは今から裁判を受けるのですよ。竈門炭次郎君」
蟲柱───胡蝶しのぶが話しかける。炭治郎が慌てて周りを見回すと他にも人の姿があった。
炎柱──煉獄杏寿郎。
音柱──宇髄天元。
恋柱──甘露寺蜜璃。
岩柱──悲鳴嶼行冥。
氷柱──童磨。
霞柱──時透無一郎。
蛇柱──伊黒小芭内。
水柱──富岡義勇。
風柱──不死川実弥。
そして……鬼柱───鬼舞辻無惨。
この場にいる全員が『柱』と呼ばれる最高戦力であり、最強の剣士達だ。そんな彼らが一様に険しい表情で炭治郎を睨みつけている。
その威圧感に気圧されながらも炭治郎は口を開く。
「裁判を行う必要などないでしょう!俺の妹は人を喰ったりしない!」
「お前の話を聞くつもりはない」
無情にも告げられる言葉。だがそれでも食い下がるように言葉を紡ぐ。
「聞いてください!俺は禰豆子を治すために剣士になったんです!禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことで、その間人を食べたりしていない!」
必死になって叫ぶ。しかしそれを遮るようにして声が上がる。
「くだらない妄言を吐き散らかすな。そもそも身内のことを庇うなどまともじゃない。まず自分の罪を自覚しろ。その上で処罰を受けろ。話はそれからだ」
蛇柱である伊黒の容赦のない物言いに炭治郎の心は折れかけるがなんとか踏み止まる。
(諦めちゃダメだ……。俺は何としても禰豆子を助けるんだ)
「そもそも童磨さんも無惨さんも鬼じゃないですか!?なんでシレッと柱としてここに紛れ込んでるんですか!?」
至極真っ当なツッコミをして見た。そもそも何故彼らはこの場にいるのだろう。そもそも童磨に至ってはまだ出番はずっと後のはずだ。
「いやーごめんね?でもなんか面白そうだったからつい……」
「ええい黙れ戯け者!!今はそんなことどうでもいいだろう!!」
「そうだぞ貴様らァッ!今はそこの鬼を斬首するかどうか決めるべきだろうがァッ!」
「そうだぜェ。さっさと始めようじゃねぇか」
だが炭治郎のツッコミは華麗にスルーされ、童磨の言葉を皮切りに次々と反対意見が出てくる。
そんな中、無惨様が静かに手を挙げた。
「少しいいか?」
「むぅ!なんだ無惨さんよ!何か意見があるのか!?」
「ああ。こいつの処遇についてなのだが……私は反対だ。生かすべきだろう」
「!!!」
まさかの反対の意見にほかの柱達全員が驚愕したような顔をする。それは炭治郎も同様であった。
「理由をお聞かせ願おう!」
「理由は二つある。一つはこの少年が言ったことが本当であるという可能性だ。もしそれが事実ならば鬼殺隊にとって大きな利益となる」
「ほう……続けろ」
「二つ目はこの少年だ。彼は私を見ても恐怖心を抱いていないように見える。それどころかどこか親近感のようなものを抱いているようにすら見える。おそらく彼が言っていることは真実に近いのではないかと私は思うのだ」
「……なるほどなぁ。無惨さん、お前にしちゃあ随分と気色の悪いことを言うじゃねえか」
「おい不死川、余計なことは言わんでいい」
無惨様の提案に反論するものはいないようだ。それに安心しつつ炭治郎は次の言葉を待つ。すると今度は耀哉の声が上がった。
「ふむ……ではこうしようじゃないか。竈門炭次郎は監視付きではあるが引き続き鬼狩りを続けてもらう。そしてその間にもしも彼の妹に人に害を及ぼす兆候が見られた場合はその場で斬ってしまっても構わないことにするというのはどうかな?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は納得できないぞ!なんでそんな条件になるんだ?」
炭治郎の主張に耀哉は首を振った。
「残念だけど君の要望を通すことはできない。これは決定事項だと思って欲しい。それにこれは君の為でもあるんだよ。君はこれから先も今まで通りに戦うことができるという保証が得られるかもしれない。そうなれば君は妹の為に全力を出すことができて鬼を倒すこともできる」
「そ、そんな……」
確かにこの提案は悪くないように思えた。だがそれでも釈然としないところはあるし、このまま何もせずに引き下がれないと思った。その時だ。
「お言葉ですが御館様。私にはどうしてもその案を飲むことができない理由があるのです。よろしいでしょうか」
「うん、言ってごらん。しのぶ」
蟲柱である胡蝶しのぶだ。彼女はいつもの穏やかな微笑みを消し去り真剣そのものといった顔で口を開いた。
「竈門炭次郎君の話が本当だと仮定した場合、鬼滅隊の存続に関わる事態に陥りかねません。なので彼に関しては私が預かるべきだと思います」
その言葉に炭治郎は目を見開いた。それは他の柱達も同じだ。しかし無惨様だけは違っていた。
「ふむ。お前は彼を信じると言うのか?」
「はい。信じたいです。例えそれがどれだけあり得ない話であっても、私はこの人を信じます」
真っ直ぐとした視線が突き刺さる。そのあまりにも力強い瞳に一瞬言葉を失う。
「…………わかった。ではお前に任せるとしよう。だが、万が一の場合は……」
「承知しております」
「……ならいい。好きにするといい」
それだけ言うと無惨様は目を閉じた。これでこの件については決着がついた。
「……って待ってください!なんで無惨さんが仕切ってるですか!?御館様の出番は!?」
「もう終わってしまったことだからね。諦めよう」
「ええぇ〜……」
完全に空気と化していた御館様は無惨様とそのまま屋敷の奥へと消えていった。後に残ったのは不満げな童磨だけだ。
無惨様は積極的に前に出ないので場面としてはカオスにならないようです。