よろず短編集   作:機械学習はいいぞおじさん(仮)

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⿴⿻⿸前回までのあらすじ⿴⿻⿸
クィディッチの練習の帰り、日頃の疲れからか部員たちは黒塗りの高級魔法生物に追突してしまう。
後輩をかばい全ての責任を負ったハリー・ポッターに対し、魔法生物飼育学の教師、タニオカが言い渡した示談の条件とは……。


ハリー・ポッター ファンタスティックビースト先輩と黒い魔法使い

「で、ポッターくん。どう責任を取るつもりかね」

タニオカは机の上に足を投げ出し、腕組みをして言った。

 

「まさかこのまま泣き寝入りするつもりではあるまいな?」

 

ハリーは顔をしかめて部屋を見回した。

天井は高くて広く、壁には古い羊皮紙やら何やらが雑然と貼られている。

部屋の真ん中には大きな暖炉があり、火は消えているが、灰の中には何かの燃え残りがあった。暖炉の脇の壁には、箒置き場のような棚があって、そこに大小さまざまな箒が並んでいる。

 

その反対側には本が何列も立ち並び、ハリーの座っている椅子のすぐ後ろにあるテーブルにも本が山積みになっていた。

そして、床には毛むくじゃらの巨大な生き物が横たわっていた。

 

「君の後輩たちについては、怪我はなかったし、まあ、大目に見ようじゃないか」

タニオカはテーブルの端に置いてあった杖を取り上げながら言った。

 

「だが、君は責任を負わなければならない」

「あの――先生?僕はただ――」

 

「口答えをする気かね?」

タニオカは冷たい目でハリーを見た。

 

「ポッターくん、私は君から自ら責任を負うと聞いたのだ。だからこうして、わざわざ私の部屋まで来てもらっているのではないかね?さあ、早く座りなさい」

ハリーは仕方なく席に着いた。

 

タニオカは相変わらず厳しい顔つきのままだ。

 

「ポッターくん、君のことはよく知っているよ。去年一年間、ずっと観察してきたからね。しかし、私が聞きたいのはそういうことではないんだ。わかっているだろう?」

「えーっと……僕が……何をすればいいのかってことですよね?」

「そうだ」

「つまり――罰則ですか?」

「当然だ!」

タニオカはピシャリと言った。

 

「本来ならグリフィンドールを10点減点するところだが、君の場合はそうもいかん!まったく!どうしてこんなことになったのかね!?」

「すみません……」

 

「謝る必要はない。むしろ褒めるべきことだ。後輩を庇うとは何と自己犠牲に溢れた行動ではないか!それともなんだね、ポッターくん、君の後輩たちも、わざとやったんじゃないだろうな?」

「そんなわけないじゃないですか」

ハリーは憤慨して言った。

 

「そりゃあ、ちょっと疲れていたかもしれませんけど……。でも、わざとなんかじゃありません」

「それは結構」

タニオカは少し機嫌をよくしたようだ。

 

「とにかく、ポッターくん、まずは私に詫びるところからだな。私が君の立場だったら間違いなくそうするはずだ。君もそうしろ。わかったか?」

ハリーは返事をしなかった。

この男はなんでこう高圧的なのだろうかと思った。

 

「ポッターくん、聞いておるのか?」

「はい、もちろんです」

 

「よろしい。では、もう一度言うぞ。私が君の立場だったら間違いなく、詫びを入れる。そして心の底から後悔するだろうな。ああ、なぜあんなことをしてしまったのだろうと。それで許してくれるかどうかわからないが、とりあえず、自分の非を認めるところから始める。わかるかね?」

ハリーは黙っていた。

 

「ポッターくん、私が言いたいのはこういうことだ。君は後輩を庇った。実に素晴らしい。しかし、それが間違いのもとになった。君はその行為によって自らの首を絞めることになったのだよ。これは大変な過ちだ。君にもわかっているはずだ」

「はい」ハリーは力なく言った。

 

「まあいい。これからは気をつけるように。さて、ポッターくん、ここからが問題なのだ。今回の件について、学校側はどう対処するかということだ。生徒一人一人の安全を確保する義務がある。それに、ホグワーツでは魔法生物飼育学はとても人気の授業だ。もし、生徒が危険な魔法生物のそばにいて事故が起こったとなれば、他の授業への悪影響も計り知れないものになる。そのあたりはどう考えるかね?」

「はい、先生。その通りだと思います」

 

「よし、そこでだ。我々が取るべき手段は二つある。一つは、このまま何もなかったことにして、この件については一切触れないこと。もう一つは――」

タニオカは杖を振り上げ、暖炉の上に置いてあった砂時計を引っくり返した。

 

「――『魔法生物規制管理部』に連絡することだ」

ハリーは思わず立ち上がった。

タニオカの言った言葉の意味がよく理解できなかった。 

「どうしたね、ポッターくん?座らんか」

 

「あの――どういう意味でしょうか?」

「そのままの意味だ。君も知っての通り、魔法省には、『魔法生物規制管理部』というものがあって、その名の通り、魔法省の所有するすべての生き物を管理している。魔法動物、マグルのペット、それから……」

 

「待ってください。僕が言ってるのはそうじゃなくて、どうしてその……その人たちに話す必要があるんですか?」

「ポッターくん、何を馬鹿げたことを言うのだね。これは君の起こした事件ではないのか。君が責任を取らなければならん」

 

「でも――でも、僕たちはただクィディッチの練習をしてただけです。本当にそれだけなんです。それなのに――」

「ポッターくん、君はまだ子供だ」

タニオカは冷たく言った。

 

「だから知らないのだろう。物事にはルールが必要なのだ。君には少し難しかったかな?君のような子供が事故を起こした場合、学校の規則に従って処理されなければならない。これは絶対のルールだ。そうしなければ、保護者や世間は納得しないし、私自身も困ることになる」

「僕はただ――」

 

「ポッターくん、言いたいことがあるのならはっきり言いたまえ。無言は美徳でない。特に、こういった場合においては。君の言い分を聞かせてもらおう」

「あの――先生、僕はただ――」

 

「ポッターくん、君は先ほどから同じことしか言わない。いい加減にしなさい。君は何が望みなのか?君の主張を聞こうじゃないか」

ハリーは口をつぐんだ。

そして、椅子に座り直した。

「僕は――」

 

「ポッターくん、君は自分が悪いことをしたとは思っていないのかね?私は君を信じられない。君は何かを隠しているのではないか?たとえば、君は後輩を庇うふりをして、実は自分が助かりたかっただけなのではないかと疑っている。違うかね?」

「違います!」ハリーはカッとなって言った。

「僕はただ――」

 

「ポッターくん、君は少し感情的になっているようだな」

 

タニオカは暖炉の方へ杖を振った。

すると、灰の中から大きな金色の卵のようなものが現れた。

ハリーは目を丸くしてそれを見つめた。

 

「さあ、ポッターくん、これを見たまえ」

タニオカは机の上の箱から小さなガラス瓶を取り出し、蓋を開けて中の粉をパラパラとかけた。

 

「ポッターくん、この鳥を見たまえ」

ハリーは机の上に載っていた大きな生き物を見上げた。

生き物は長い首を伸ばし、ハリーを見下ろしていた。

まるでハリーを観察しているかのようだった。

頭は金色で、目は真っ黒だ。

背中は茶色の羽毛で覆われ、翼は小さく畳まれていた。

足は短く、体に比べて大きすぎるように見えた。

 

「ポッターくん、この生き物はフェニックスだ」

タニオカが静かに言った。

 

「不死鳥とも呼ばれている。私が飼っているんだ。いいかね?私は魔法使いだ。魔法を使う。そして、魔法を使えば、このような生き物を手懐けることも簡単だ。ポッターくん、私は君に期待していた。君の態度からは、君は心根の優しい人間だという印象を受けた。しかし、今の君の様子を見ると、その考えを改めざるを得ないようだ」

「あの――先生」

 

「ポッターくん、私は君が心配でならない。君がこれからも、同じような失敗を繰り返すのではないかということがだ。そして、そうなれば、ますますホグワーツの名声は落ちていくことになるだろう。君の後輩たちの将来にも関わることだ」

ハリーは目の前にいる生きものを見つめたまま、何も答えなかった。

「ポッターくん、君ももうすぐ五年生だ。そろそろ自分の言動に責任を持つべきだと思うがね」

「先生――」

 

「ポッターくん、私は君がただ罪を認め謝罪さえしてくれればいいのだよ。分かるかね? 簡単なことではないか。私は君の味方だ。だから、安心したまえ」

「僕――」

 

「ポッターくん、何だね?」

「僕――僕、そんなつもりじゃ――」

 

「ポッターくん、はっきり言いなさい」

「僕――そんな――」

 

「ポッターくん、君は――」

「ごめんなさい!」

 

ハリーは立ち上がり、タニオカに向かって深々とお辞儀をした。

「すみませんでした!」

 

「よろしい」

タニオカは満足げに微笑み、杖を振って、フェニックスを暖炉の中に戻した。

 

「ポッターくん、無知は罪だが、学ばさることもまた罪だ。君は今一つ学びを得たね。さあ、座りなさい」

ハリーはおずおずと腰を降ろした。

 

タニオカは杖を暖炉に向け、もう一度振った。

今度は、暖炉の火が再び燃え上がった。

「さあ、ポッターくん、これですべて元通りだ」

「あの……先生……」

 

「なんだね?」

「僕の処分は……」

 

「ああ、そうだな」

タニオカは少し考える素振りを見せた。

「うむ、そうだな。君は自己犠牲を学び、真摯に謝罪することを学んだ。よってグリフィンドールに10点!それとは別に、君には反省文を書いてもらうことにしよう」

ハリーはホッとしてため息をついた。

 

「それから、君には罰則を与えることにする」

「えっ?」

 

「当然ではないか。君は罰を受けなければならない」

「で、でも――」

 

「もちろん、軽いものだ。今日のところは寮に戻って休みたまえ。明日の夕方六時に私の部屋に来るように」

 

ハリーは立ち上がった。

そして、もう一度お辞儀をしてドアに向かった。

 

「ポッターくん」

タニオカの声だ。ハリーは振り返った。

 

「君がやったことは褒められた行為ではないが、しかし、君のような生徒がいることは喜ばしいことだ。これからも学び続けなさい」

 

ハリーはニッコリ笑って、もう一度お辞儀をし、タニオカの部屋を後にした。




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