由比ヶ浜の恋と勿来ヶ崎奇譚   作:taka2992

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第二章 勿来ヶ崎奇譚
小町と八幡の【ぎみあぶれいく】②


「小町、今回はよくやった! 大儀であった。その働き、ほめてつかわす!」

 

「えへん! さっすがこまち~! でも、いくら良く働いてもお兄ちゃんは何もくれないので~す! ほめてつかわすなんて言うくらいだったら大判小判の一枚でもくれるのが普通なので~す」

 

「だってよ、神に等しいお前に何をささげろと? 生け贄か? ヤギの生首とか? アステカ文明みたいに若い娘の心臓か?」

 

「ま~た、くだらないことをほざいて~。女心のわからない兄を持つと妹は苦労するのです」

 

「おまえ、俺とお前の関係において、女心という表現を使うな!」

 

「私は女だよ。女の心だから女心じゃん? 間違ってないも~ん!」

 

「日本語は文脈抜きでは使えないだろ! そういうこと言うんだったらな、おまえを『16年ものの哺乳類のメス』と言うぞ。間違っていないだろ?」

 

「まぁそうだよね。でも女心がわからないお兄ちゃんにいつまでゆっきーは我慢できるかな~。シミュレーションしちゃおうかな」

 

「ドキッ……。おまえ、未来が見えても、絶対言わないでくれよ。お兄ちゃんショックで死んじゃう」

 

「シミュレーション開始まであと5秒。カウントダウン開始~!」

 

「おい! 待て! バカ、小町、バカ。ストップBKB!」

 

「うろたえない! 小町も怖くてそのへん見れないから。これからお兄ちゃんの部活がどうなるか近未来を透視してみましょう!」

 

「ワナワナ………」

 

「ん? あ~! ええ~! そんなことになるの!? ゆっきーが? まさか! うわっ! ほげぇ~! ぐふぅん!結衣さんもそんなことを? え? あのセクシーお姉さんがお兄ちゃんと? まさか!」

 

「どうした? 何が起こる? いや、言わなくていい……。俺は過去を振り返らないし、未来を気にして生きることもしない!」

 

「冗談だよ! シミュレーションなんてしてないから」

 

「よかった。やっぱり未来がわかってしまったら、面白くないよ。ただ、今回みたいに命にかかわるときだけ、教えてくれ」

 

「それはお安い御用だけど、ディスプレイがないと教えられないんだよ? 気づいてた?」

 

「そうだな。それが不安だ。でも、おまえ、今回は眠っているときじゃなく、真ッ昼間から脳へ強力な干渉をしてきたじゃないか」

 

「あれはね。マスターの許可があったからできたの!」

 

「マスターって誰だ? ふうせんかずらのことか?」

 

「そう。変な人だよ。今でも何人かのシミュレーションやって遊んでるし」

 

「俺たちの誰かか?」

 

「違うよ、まったく関係ない人」

 

「そうか。ところでさ、全地球のシミュレーションは可能なのか?」

 

「理論的にはね。でも、パラメータが1000兆じゃ足りないよ。それに時間がかかるし。パラメータが少ないと正確じゃなくなるし」

 

「由比ヶ浜の予測は、正確だったんだろ?」

 

「まず99・999%はあの通りになったはずだよ」

 

「やっぱり死んでいたのか」

 

「間違いないよ~!」

 

「おまえ、量子コンピュータのエキスパートだな。そのまま転送してもらってこの世界で人類の役に立てよ」

 

「人類の未来が気になる? お兄ちゃんってセカイ系?」

 

「違うと思うぞ。俺は早い段階から、自分が死んだって世界は無関係に動き続けると悟っていたからな」

 

「ふ~ん」

 

「ところでさ、茅ヶ崎と由比ヶ浜はどうなるんだ。それくらいの未来予測だったら許すぞ」

 

「気になる? あの茅ヶ崎って人は、ダークヒーローから正真正銘のヒーローになりえる人だよね~」

 

「俺もそう思う。葉山よりモテるかもしれん」

 

「ちょっとワルぶったところ、不良っぽいところがあるほうが、女子は惹きつけられるからね~」

 

「見事に由比ヶ浜が引っかかっちまったな」

 

「でも、最後は結衣さんの純真さがあの人をブチのめしていたよね」

 

「うむ。恐るべし、由比ヶ浜。どうしてあいつは、そうやって自分の感情に従って素直に、ストレートに行動できるんだろう。俺は昔からそれが不思議だった」

 

「きっとお兄ちゃんにはわからないよ! 女心だもんね~! きっと心が熱いんだよ、ホットなんだよ」

 

「うらやましいわ。心のままに何かにぶち当たって、傷ついて、それを跳ね返して、またぶち当たって……。きっと幸せになるんだろうな」

 

「ふむふむ。あのお兄ちゃんのお言葉とは思えないな~」

 

「俺は由比ヶ浜から教わったことがたくさんある」

 

「ゆっきーにもぶち当たらないとダメだよ? ぶち当たるという表現はちょっとおかしいけど、とにかく、綺麗なお花には水を毎日あげないと、しおれちゃうんだよ?」

 

「ああ、なんとなくわかる」

 

「理論的に物事を考える人でも、根っこには女心があるんだよ?」

 

「そんな気がする。なんかおまえ教訓臭いな。まさか……」

 

「もしかして警告していると思ってる? 未来を見てしまったもんだから」

 

「そうなの? そうなのか?」

 

「うひひひ」

 

「おい! 小町! 遊ぶな!」

 

「じゃあ、またね~!」

 

「頼む。小町、答えてくれ。お前は未来を見たのか!?」

 

「……………」

 

「うう、悪魔のように消えたか。兄の心にでっかいトゲを突き刺して……」

 

「えへへ、うっそ~ん! 未来なんて見てませ~ん!」

 

「よかった。お前の警告をしかと受け止めた」

 

「ただ、これから物語は新しい段階に突入するみたいだよ。お兄ちゃんが調べていた、女子学生集団溺死事件があったじゃん? あれを追いかけて色々あるみたいだね」

 

「そうか。危なくなったら教えてくれ」

 

「りょ~かい! じゃあ、小町は宇宙に戻りま~す!」

 

「じゃあな!」

 

「………………………」

 

 

 

 

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