幻想郷ー現実の世界と切り離され、結界に護られた小さくて大きな楽園。そこには様々な人間の他に、妖怪、鬼、妖精、吸血鬼、蓬莱人など様々な生きとし生けるものが住み着いているー
そんな幻想郷の東に位置する神社、博麗神社で巫女がのんびりとしていた。
「はぁ〜。今日もお茶が美味しいわ。天気もいいし、人里にお団子でも買いに行こうかしら。」
とある日の昼前、太陽が暖かな光を放ち、春告精が呑気な声を出して飛びまわるそんな日、楽園の巫女こと博麗霊夢はいつものように神社の縁側でお茶をすすっていた。
このところはこれといって大きな異変もなく、あるとしても妖怪の仕業のものでは無い。思い込みであったり、家の古いが故のことだったり、はたまた座敷童子のようなむしろ幸運な事物であることがほとんどである。
先に解決した大異変の効果で多少なりとも増えた参拝客も今や見る影もない。雨が降っていればそれこそ一日中外に出ることもなかったりするが、今日のように晴れていれば、境内を掃除し、お茶を飲み、魔法使いと駄弁り、お茶を飲み、湯浴みをし、そして床に入る。そんな平和とも怠惰とも取れる生活を今日も今日とて送っていた。
そして今日みたいに晴れていると大抵空から黒い影が降りてくる。
「おーい、霊夢ー。いるかー?」
黒を基調とした服に白いレースをあしらった服。長い黒帽子を落ちないように抑えながらほうきに跨りゆっくりと降りてくるのは、普通の魔法使いにして、博麗霊夢の腐れ縁。霧雨魔理沙である。
「あら魔理沙。今日は早いわね。」
「そうか?どーせ今日も暇だろうと思って来てやったんだ、なんかあるだろ?」
あっけらかんとした態度で、箒から降りながら霊夢と魔理沙がまたいつものように言葉を交わす。
「まったく、あんたは...はいはい。今お茶を持って来ますよ。」
「おう!いつも悪いな!」
「そう思ってるんだったら、たまにはお茶を持ってきてくれてもいいのよ?」
「それは遠慮させてもらうぜ。面倒だ。」
「はぁ...よいしょっと」
脇にお茶を置き、億劫そうに立ち上がった霊夢はそのまま食器棚にある魔理沙の湯呑み、そして居間の机にある急須と適当に見繕った茶菓子を持ってもどってくる。
「もう、こっちだって忙しいの、なんの用もないのにどうしてここにわざわざ来るのよ。」
昼下がりののどかな時間を分かっていたとはいえ邪魔された霊夢は、心無しか鬱陶しそうに魔理沙に話しかける。
「忙しいって?ははっ、さっきまでのんびりと茶を飲んでるやつのセリフとは思えないな。」
「うるさいわね、忙しいものは忙しいの」
「客人に対してそんな言い草はないだろー?」
霊夢と魔理沙が社交辞令と言ってもいいような会話をしていると突然
「そうですわ。お客様はきちんとおもてなししなさい、
霊夢。」
と、美しく、気高さを感じる声が2人の後ろから聞こえる。
「...あぁもう。急に出てくるんじゃないわよ、紫。」
「ふふ、ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったのよ。それにどうせ影で気づいていたでしょうに。」
八雲紫。幻想郷の大賢者にして大妖怪である。その紫が霊夢たちの後ろ、縁側と居間の間に立っていた。
「紫じゃないか、どうしたっていうんだ?異変ならとっくに解決してるぞ?」
八雲紫は普通、日の高い間は活動をせず眠り、夕暮れから明朝にかけて活動をする。昼に起きているということは大抵暇を持て余しているか、異変が起きているかのどちらかだ。
「そんなのわかっていますわ、魔理沙。あの時は2人ともどうもお疲れ様。もはや慣れたものだったのだろうけどね。あぁ、そうだ。近いうちにあの子たちにもお礼参りでもしようかしら。」
「そんな気持ちないくせによく言うわ...じゃあなんの用なのよ、何にもないなら帰った帰った。」
「酷いわ霊夢。私だってここにやってきた客人というのに、お茶すら出してくれないなんて。それにちゃんと今日は用があって来てるのですわ。」
「用事?」
「ええ。異変...という訳じゃないのだけれど、ちょっと結界がおかしくなっていてね。」
幻想郷には博麗大結界という、
「結界が?また人が出入りしたからブレてるんじゃないの?」
「いいえ。それくらいのことならわざわざここに出向かないわ。人や妖怪が出入りした時よりも大きい結界のブレよ。それこそ、大きな建物丸々入っくるようなね。」
紫はいつものゆったりとした雰囲気とは異なる口調で話す。
「建物だって?そんなこと今までなかったよな。」
「えぇ。今まででは1回もそんなことは無かったわ。そもそも、結界にブレを生じさせるほどの影響の強い何かがこちら側に来ることすら稀なのだから。」
「ほぉーん。ほんとになんか建物でも入ってくるのかもな。」
「その結界のブレはいつから?」
と霊夢が先程のつっけんどんな態度と打って変わって真剣な眼差しで紫に尋ねる。
「4日くらい前からかしら。1度大きくブレたあと元に戻ったから少しだけ意識していたけれど、日に日にブレが大きくなってきてさすがに看過するのはと思ってね。」
「あんたが考えるに、どうなると思う?」
「そうね...ブレが大きくなってるとはいえ毎回そう時間を取らずに元に戻るし、結界を破壊する意思は感じられないから、魔理沙の言う通り何かしら建物が結界内に紛れてくるんじゃないかしら?どういう理屈で入り込んでくるかは全く分からないけれど。」
「何もしなくていいってこと?結界の確認も?」
「えぇ、その辺はもう藍にやらせてあるわ。問題ないって。」
「...そう。ならいいわ。」
と霊夢から放たれていた張り詰めた空気が溶け、いつもの空気感となる。ある意味霊夢が自分の仕事がないことに安心したか、問題がないとわかって興味を失ったかである。
「なにか変化があったらまたよろしく。...はい。」
と霊夢は手早く湯呑みを持ってきてお茶を汲み、紫に差し出す。
「あら、どうも。」
紫が霊夢の隣に腰掛け、茶を受け取る。そしてまたゆっくりとした時が流れる。
尚この日常が終わるのは、このわずか3日後のことである。
注意書き 本作品はウマ娘と東方Projectのクロスオーバーとなっております。キャラクターのイメージなどにはできるだけ配慮していますが、解釈違いやカップリングの違和感などあるかもしれません。そんなときは、どうか「こういう解釈の人間もいる」ということでご容赦ください。
完全な序章です。続き更新は多分しますがいつかは未定ですゆるして。あと、幻想落葉日記もそろそろ更新するのに書き始めているので、見てくれてる方はどうかお待ちください。
タイトルの読み方は「とうほうてんぴしょう」です。