異世界召喚系のよくあるやつ 作:リボのガガを許すな
魔人、それは動物と違い傷ついたり死んだり老いたりという変化をしない生命体、不変で完璧で生まれた瞬間に世界が終わるまで、あるいは終わった後も生き続ける事が義務付けられた不死なる存在。
数多の魔人が生きるこの世界では不変ゆえの退屈が蔓延しておりますわ。
長い時を生きる魔人は色々な事を試しては極め、試しては極め、そのうちに飽きてやる事がなくなっていきますの。
どんどん新しい事を試し多くを極め三千年もした時には皆退屈に殺されて何も考えない置物になります。
最初は楽しく感動した劇場の出し物は100年で既視感に溢れるお話しか存在しなくなる。
音楽も同様で100年もすれば全て既視感が邪魔をして楽しめなくなりますの。
詩を読んでも、踊っても、戦っても魔法の研究に没頭してもやがては渇きに呑まれます。
多くの同胞が退屈に呑まれて何をしても反応を示さず動かない置物になったのを見てまいりました。
私もいつかああなるのでしょうか?なってしまうのでしょうね。
何の反応もしなくなる生きた人形、ただずっと地面を見つめて何千年と動かない魔人。
そうはなりたくないと思っても心は徐々に渇いて行く、この世界の全ての未知が消え失せて既知だけになった時、私も彼らと同じ選択をするのでしょうか?
知る事でああなってしまうというのならわたくしは知らない事を選ぶという方もいらっしゃいます。
ですが結局退屈には勝てませんの、あの忌々しき我ら魔人の怨敵たる退屈には。
今日も魔界の中で過ごし未知を既知に少しずつ変えて行く毎日、いつか破綻すると知りながらも退屈には勝てずに多くを知り、学び、遊び、退屈に抗う。
退屈に発狂しないように、退屈に押しつぶされないように、退屈に殺されぬように、無限の寿命を持つ不死たる欠陥品は今日も生きる喜びを求めて死なないだけの生を謳歌する。
そんな時にふと風に吹かれて目の前に現れた紙、中身を見ればわたくしの知らない文字。
翻訳の魔法を使いて中身を見れば給仕の仕事を求める求人でありました。
勤務地は魔界の全てを旅したわたくしが知らぬ場所、ありうべからざる所在地。
魔界中の伝承や国を調べ尽くしたわたくしが知らぬ文字で書かれた内容。
魔法で翻訳できるという事はデタラメに地名や文字らしきものを並べた物ではないという事。
これは一体何なのでしょうか?わたくしの好奇心を掻き立てますわね。
久々に胸の鼓動が高まります、たとえいたずらだとしてもついつい乗ってしまいたくなるお手紙。
私はほんの少しの笑みをこぼしながらその手紙にある応募者の欄に自分の名前を書き込みました。
わたくしの知らない場所が本当に実在して、わたくしの知らない言語が存在して、本当にそんなところがあって働く事ができたのならさぞ楽しい事でしょう。
多くの未知がありそうなその場所にほんの少しの期待をよせて紙に名前を書く。
そんな感傷に急に引っ張られるような感覚が私を襲いそして気づいたら私知らない場所に居ましたの。
ここは何処ですの?