ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー   作:やーなん

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Topic:用語解説

用語:魔王一族
女神リェーサセッタによって産み出された彼女の化身にして代行者。竜の暴力性と闘争本能、神の傲慢さと権能、人間の残虐さを併せ持つ、半神半龍の肉を持った神同然の存在である。一族と言うだけあって、五百人以上居るが、これでも人手不足。
彼らの仕事は、今作のような統治任務と、”伐採”である。
伐採とは、女神メアリースに依頼され、彼女が創造した不要な世界の消去である。
その際にただ一方的に滅ぼすのは憐れだと、全人類の総力でギリギリ勝てるレベルの試練を課す。
最終的に魔王に打ち勝てば消去は撤回されるが、その事例は全体の約3%に過ぎない。
彼らは本能的に強者を求めており、自分に挑むに相応しい勇者との戦いを今日も玉座で待っている。

ちなみに序列は女神メアリースへの貢献度によって決まり、累積なのでだいたい年上が上に来る。
なので、魔王ローティは実に稀有な存在なのである。


2レス目

 

 

 

270:名も無き住人

 おい、すぐじゃねえか!! 

 

271:名も無き住人

 面白くなっててきました

 

272:名も無き住人

 ksk

 

273:名も無き住人

 加速

 

274:名も無き住人

 魔王モードでも“にぃに”と呼ばせる

 

275:名も無き住人 ID:AnZCaN

 もっとブラコンになるまで可愛がる

 

276:名も無き住人

 ワンちゃんと普通に遊ばせる

 

277:名も無き住人

 情操教育ならペット(意味深)を飼うのがええやろ(ゲス顔

 

278:名も無き住人

 ってか、魔王様で遊ぶなし

 

279:名も無き住人

 はやッ、もう埋まったんか

 

280:名も無き住人

 あれだけ隠れてたならなぁ

 

281:名も無き住人

 もっと悪乗りが多いと思ったが意外だな

 まあ、鉱山労働送り事件があったからなぁ

 

282:運び屋

 ブラコンになるほど可愛がるって

 何をすればいいだよ

 

283:名も無き住人

 別に今まで通りお世話すればええんやで

 

284:名も無き住人

 そうそう

 お前は俺らにてぇてぇを供給し続ければそれでいいんだ

 

285:名も無き住人

 もうすでに甲斐甲斐しく世話してるしな!! 

 

286:名も無き住人

 お前らが優しくて気持ちわる・・・

 

287:名も無き住人

 安価は絶対!! 

 と言いたいところだが、パワハラになるからな!! 

 お前のできる範囲でローティ様を立派な魔王様にするんや!! 

 

288:運び屋

 もうマジで教師とか雇おうかな・・・

 ちょっと配達先の孤児院の先生に相談してみるわ

 

289:名も無き住人

 てか、何故に運び屋がローティ様を? 

 たしか、もう別の魔王様が着任してるんだろ? 

 

290:名も無き住人

 言われてみれば確かに

 

291:名も無き住人

 運び屋がフリーなのはわかるが、同僚ちゃんが居たよな? 

 彼女はどうしてるんだ? 

 

292:運び屋

 同僚は今、別の仕事を任されてるんよ

 以前から滞っていた仕事があるとかなんとか

 

293:名も無き住人

 くそ真面目そうな見た目してたもんな、同僚ちゃん

 

294:名も無き住人

 俺は神官様だって言われても納得するぞ

 基本くそ真面目じゃないと神官に成れないし

 

295:運び屋

 魔王様留守番させてちょっと相談してくる

 子供たちの顔も見たいから顔出してくるわ

 

296:名も無き住人

 行ってら

 行動が近所の世話焼き兄ちゃんなんだよなぁ

 

297:名も無き住人

 こりゃあローティ様じゃなくてもブラコンになるわな

 

298:名も無き住人

 あああああぁっぁあーーー!! 

 そうだ、思い出した!! 

 

299:名も無き住人

 ど、どうした急に

 

300:名も無き住人

 何があったし

 

301:名も無き住人

 なんだ、急に叫びだして

 

302:名も無き住人

 >>275だよ!! 

 この変なID、どこかでみたことがあると思ったら、あんこ板だ!! 

 

303:名も無き住人

 あんこ板? 

 掲示板でTRPGみたいなことしてるところだろ? 

 

304:名も無き住人

 あんこ板のアーカイブは名作揃いだぞ

 それより、IDがどうした? 

 

305:名も無き住人

 どうせ見てるんでしょ、アンズ様!! 

 潜伏してないで名乗り出てください!! 

 

306:ダイスの女神アンズちゃん

 ふっふっふ

 バレてしまったのなら仕方ない

 

307:名も無き住人

 !? 

 

308:名も無き住人

 げッ、まさか

 

309:名も無き住人

 アンズ様って、あのアンズ様かよ!! 

 

310:名も無き住人

 ・・・ああ、あのメアリース様とくっそ折り合いが悪いっていう女神の

 

311:名も無き住人

 俺も思い出した

 めっちゃ危険人物・・・人物? じゃないか!! 

 

312:名も無き住人

 何年か前、資源採掘用の世界を木っ端みじんにしたらしいからな

 

313:名も無き住人

 帰っていただけませんか(震え声

 

314:名も無き住人

 これ以上運び屋を弄ばないでください

 お願いします

 

315:ダイスの女神アンズちゃん

 失礼な!! 

 私はサイコロの神器を持つ運命の女神

 私が弄んでるのではなく、運命に弄ばれているから私がここにいるんです

 

316:名も無き住人

 おうふ

 運命の女神直々に、数奇な運命をたどることを保証されてしまった

 

317:名も無き住人

 かわいそうに、運び屋

 アンズ様に目をつけられて、酷い目に遭わなかったものは居ない

 

318:名も無き住人

 流石、ダイスの女神様よ

 

319:ダイスの女神アンズちゃん

 鶏か卵かの話になりますけど

 人間は運命を擬人化し、その命運を見て女神がほほ笑んだとか、見放したとか

 また、サイコロ遊びの土壇場でドラマティックな場面でファンブルを出すと、運命の女神が腹を抱えてわらっているだの言いますよね? 

 だから私は人間出身で、ご想像の通り人様の運命を見て面白がってますww

 

320:名も無き住人

 草生やすな

 

321:名も無き住人

 想像するのと、マジもんの運命の女神に笑われてるのとは違うから!! 

 

322:名も無き住人

 所詮、運命の女神云々も、人がどうしようもできない物に納得するためだからな

 それそのものが理不尽を与えてくるのは全く違うぞ

 

323:ダイスの女神アンズちゃん

 誤解なんだけどなぁ、まあ理解してもらうつもりもないですけど

 

324:名も無き住人

 てか、なんでわざわざ運び屋の安価にスナイプしたんだ? 

 どうしよう、猛烈に嫌な予感がする

 

325:名も無き住人

 運命の岐路の前に立つ者に、アンズ様は現れるとされる

 マジかよ、運び屋、無事でいてくれ・・・

 

326:ダイスの女神アンズちゃん

 まあぶっちゃけ、今回彼は関係無いんですけどね

 

327:名も無き住人

 関係ないんかーーい!! 

 

328:名も無き住人

 でも、無意味に出てくる御方じゃないんだよなぁ

 

329:名も無き住人

 あらゆる物事には意味があるってやつ? 

 それを信じる気にはなれんな

 ・・・だって俺が無意味な存在だし

 

330:ダイスの女神アンズちゃん

 >>329 そのまま真面目に仕事を続けてればあなたを理解してくれる女性に出会えますよ

 

331:名も無き住人

 えッ、マジ? 

 やっぱこの世は最高だわ

 何事にも意味はあるんだな!! 

 な!! 

 

332:名も無き住人

 >>331 酷い掌返しを見た

 

333:名も無き住人

 羨ましいやら、運命を教えられるのは怖いやら

 

334:ダイスの女神アンズちゃん

 所詮、私は“振り直し”担当なので

 結果を確定したりできないから、私が言った通りになるかは自分次第なんですよねぇ

 

335:名も無き住人

 おい、話をそらされてるぞ

 

336:名も無き住人

 せや!! なんでわざわざこんなところに? 

 あんこ板の住人と普通に遊んでてくれませんかねぇ

 

337:ダイスの女神アンズちゃん

 あ、バレちゃいました? 

 でもほら、さっき言ったじゃないですか

 彼の運命を弄んでいるのは私じゃないって

 

 

 

 

「ねえ、そうでしょう? ROM勢(読者)の皆さん」

 

 

 

 

 

 

 §§§

 

 

 

 自分は何をしているんだろう、私は星の見えない空を見上げてそう思った。

 

 魔王憎しで、これまで生きてきた。

 だが、あの時、あの親切なひとの家にいた魔王を斬れなかった。

 

 あんまり頭が良くない私でも知っている。

 女神メアリースに逆らった人間がああなってしまうことを。

 

 結局その時は状況が許さず、流れてしまった。

 あの人が、まさか魔王の四天王だったなんて……。

 

 魔王の四天王は、敵だ。

 倒すしかない。その筈なのに。

 

「家畜の餌なんて食べれるか!! 

 なんで、なんで魔王の手下であるあなたが私に親切にするんだ!!」

 

 路地裏で何か食べ物が無いか探していた私に、固形携帯食料を彼は差し出してくれた。

 

「今のお前が、見てられないからだ。

 理由や立場なんてどうでもいい」

 

 彼はそう言って、食料を置いて去っていった。

 ……私は、ただただ惨めに栄養価だけを目的としたそれを貪った。

 

 聖鎧の使用には、リチャージが存在する。

 私にはよくわからない原理で、無限のエネルギーが生成されるらしく、どれだけエネルギーを使用したかで次に全力で使えるかが決まる。

 省エネモードならともかく、フルパワーならエネルギーは全快でないといけない。

 

 魔王を仕留められなかった以上、潜伏してエネルギーをチャージしないといけない。

 そうして、公園らしき場所で身を潜めていると、翌日子供たちに石を投げられた。

 

「あいつ、IDが表示されないぜ!!」

「じゃあサルじゃん!!」

「知ってる、神様に逆らった奴でしょ!!」

「俺たちでやっつけようぜ!!」

 

 無邪気で、残酷な、子供たちの敵意だった。

 

「痛い、痛い、やめて!!」

「こいつ、サルのくせに人間の言葉しゃべってるぞ!!」

「じゃあ犯罪者だ!! 警察呼ばないとってママが言ってた!!」

「私知ってる、こういうの社会のごみっていうんだよ!!」

 

 やり返すのは、簡単だ。

 この子供たちを怒りのままに暴力で解決するのは、実に容易い。

 だがそれは正義ではない。

 何があっても、子供に手を上げることはあってはならない。

 

「こらッ、何やってるお前たち?」

「あ、配達屋の兄ちゃんだ、見てみて、あれ犯罪者だよ!!」

「ああ、本当だな、兄ちゃんが通報しておくから、お前たちは危ないからあっち行ってろ」

 

 顔を上げると、あの人が子供たちを帰らせていた。

 子供たちは彼の言葉に素直に従っていた。

 

「大丈夫かお前、あいつらガキだから容赦を知らん。

 手当してやるから、ちょっとついてこい」

 

 私はその時、悲しくて悔しくて泣いていたので素直に頷くしかなかった。

 

 彼に連れてこられたのは、孤児院だった。

 

「マザー、こいつの手当をしてくれないか?」

「あらあら、どうしたのかい、女の子の配達は頼んでないんだけどねぇ」

 

 出てきたのは、老齢のシスターだった。

 

「まったく、近頃の子供は生意気だねぇ」

 

 彼女は私に手当をしながらそう言った。

 

「マザー、ガキども寝かしつけたよ」

「そうかい、ありがとさん」

「あ、配達屋の兄ちゃんじゃん!! 

 ねえ、遊んで遊んで!!」

「……しょうがねぇな、ちょっとだけだぞ」

 

 彼は奥から出てきた子供と一緒に外に行ってしまった。

 

「あの、ここは」

「ここは孤児院だよ。

 あんたみたいな、市民IDの無い子供たちの面倒みてるのさ」

「私みたいな……」

 

 私はこの世界に来て、思い知った。

 IDとやらが無いことが、どれだけ惨めな生活をしないといけないのか。

 

「親に認知されないと、IDは交付されないからねぇ。

 メアリース様が制度を変えてくださるそうだが、まだ時間がかかるみたいだし」

「……マザーはあんな神を認めるんですか、シスターなのに」

「昔はよくあったことさ、うちの宗教ではよその神は自分たちと同じだって言い張って併合したりね。

 それが今度は、メアリース様になったって言うだけの話さね」

 

 長年の信仰を否定されたというのに、彼女の態度はあっけらかんとしていた。

 

「それが今、いざ自分たちがそうなったら逆上する連中もいる。

 まったく、情けないったらありゃしない。同じ神を信じてたとは思えないね」

「……」

 

 私は、その逆上した連中が町を更地にしたのを見ていた。

 おそらく、私が協力することになっていた人たちだ。

 今となっては、そんな人たちと連絡を取る気も起きない。

 大義とは主義主張だけではない、行動が伴って初めて意味を成すのだから。

 

 魔王には、私一人で戦うんだ。

 

「あんた、行く場所無いんだろ? 

 洗濯とか、子供たちの世話をしてくれるなら、面倒見てやってもいい」

「良いんですか?」

「あたしもこの年だからね、腰にフレームを入れるカネもありゃしない」

 

 そうして、私は彼女の元へやっかいになった。

 子供たちの世話は大変だったけど、久しぶりに人間らしい生活ができた。

 

 それを、私が自分の手で壊した。

 

 マザーに、教団からの連絡網が回ってきたのが切っ掛けだった。

 教団の過激派狩りが始まったのだと。

 

 しばらくは外出を控え、もし疑われたらIDを提示しろ、との指示だった。

 私は、彼女がテレビでニュースを見ているのを横で見ていた。

 

 そこでは、惨劇の光景が報道されていた。

 その殆どがモザイクで処理されていたけど、魔王の手下たちは残虐な方法で彼らを殺した。

 そして、それを指揮したのは、新しく就任した四天王であると。

 

 あれを、あれを、彼がやったのか!! 

 あんな人の道に外れたことを!! 

 

 私は、激情のままに彼を問い詰めた。

 私はここまで、はじめはここまでするつもりはなかったのに。

 

 この世界の建物は簡単に立て直せる。

 お金も書類も、とっくに電子化されていて管理されている、そう聞いた。

 だから家具などを買い替えるお金を女神に補償してもらえば、生活は元通りだ。

 

 だけど、あの子供たちにはそれがない。

 IDがないから、市民じゃないから、失ったものは補填されない。

 ……私が、壊したからだ。

 

 彼らが書いてくれた、私の似顔絵も。

 一緒に廃材から作った、私の分の椅子も。

 

 私が、壊してしまった。

 魔王と戦ってたなんて、言い訳にもならない。

 彼らとの思い出を、私が無為にしてしまった。

 

 私は、もう孤児院にはいられなかった。

 子供たちに、マザーに、あの人に顔向けできない。

 

 皆を守るために、身を挺して捧げたあの人に……。

 

 私は、戻る場所も無く当ても無く、今だなじまない街を彷徨い歩いていた。

 そうしているうちに夜になり、私は火に誘われる蛾のように明るい場所を求めて歩いていた。

 

 やがて、私は歓楽街のような場所に辿り着いた。

 規則正しく並んだビルに、猥雑なネオンの看板が所せましと並んでいる。

 人々はどの店に行こうかと、立体映像で解説される店の案内を見比べながら歩いていた。

 

 私は、人目を避けて路地裏に逃げた。

 私がID未所持なのは、なぜか見ればわかるらしい。

 マザーが言っていた。モニター網膜投射タイプの生体デバイスを脳にインプラントするのは子供でも当たり前のことなのだと。

 それで通行人のIDや名前や年齢、性別や職業を把握できるそうだ。

 

 ここは女神メアリースによって管理された世界。

 いつだか、博士が言っていた。

 

「女神メアリースの目指す社会は、完全なる閉塞と完全な管理だ。

 彼女のことを、本物の悪魔はなんて呼ぶか知っているかい? 

 ──“ディストピアメイカー”さ。

 狂ったコンピューターなんだよ、あの女神は」

 

 何でもかんでも管理しないと気が済まない、狂った女神が我らの造物主なのだ。

 だから、それから逃れるのは犯罪者か、人間で無くなったものか。

 

 人目から逃れたい心理は誰でも同じなのか。

 路地裏の先も、集落のように時代錯誤のバラックが立ち並んでいた。

 そしてそこも一つの歓楽街のように、人々で賑わっていた。

 

「お前さん、見ない顔だな」

 

 女神メアリースの手で一掃されたという浮浪者のような格好の男が、地べたに胡坐で座っていた。

 私は思わず身構えたが。

 

「そう警戒するな、ここは神の管理から逃れた連中のたまり場だ。

 どいつもこいつも脛に傷がある連中ばかりよ。

 だから、ここにいるのは全て自己責任だ。覚えておきな」

 

 男はそれだけ言うと、酒を呷った。

 私は足早に、そこから去った。

 

 

 私が辿り着いたのは、無法地帯のスラムだった。

 ここはある程度容認されているらしく、女神の定めるコンプライアンスに違反しなければ存在に目を瞑ってもらえているようだった。

 つまり、私が潜伏するにはもってこいだった。

 

 私は今夜の寝床をどうするか、人気のないところを探していると。

 

 

「いやぁ、やめて!!」

「大丈夫? レイアちゃん!!」

 

 人目のつかないスラムの端で、追われている少女二人を見てしまった。

 

「いい加減にしろよ、こら!! 

 てめぇらには借金がたんまりあるんだよ!!」

「カネが払えねぇってんなら、体で払ってもらうのみよ。

 お前のようなガキでも、買い手は見つかるんでな!!」

 

 追っているのは、いかにもチンピラという風体の二人だった。

 

「やめないか、お前たち!!」

 

 やっぱり、私はダメだ。

 考えるより先に、手が出てしまった。

 

「いってぇ!? なんだてめぇは!!」

「こっちは遊びじゃねぇんだ!! ぶっ飛ばすぞ!!」

 

 だが、この程度のチンピラ、私の敵ではなかった。

 ちょっと叩いただけで、彼らは涙目になって逃げていった。

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 足元のおぼつかない少女が、頭を下げてきた。

 私は反射的に悟った。

 

「目が見えないのかい?」

「ええ、一応視覚補助デバイスをインプラントしているんですけど、旧式すぎて灰色のポリゴンみたいにしか捉えられなくて。

 細かいものとかよく躓いちゃうんです」

 

 もう一人に支えらえて立っている彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。

 ……なぜだろう。その笑みに、見覚えがあったのは。

 

「私はキョウコって言います。

 助けてくれてありがとうございました。お姉ちゃんのお名前は?」

「私はクラリスだ。礼には及ばないよ」

「あ、申し遅れました、私はレイアと言います。

 キョウコちゃんも、さっき初めて会ったばかりなのに巻き込んじゃってゴメンね」

「ううん、気にしないで」

 

 目の不自由なレイアが、一緒に逃げてきたキョウコにも頭を下げていた。

 それから、私たちは安全な場所へと移動することになった。

 

「私、クラリスさんみたいなお姉ちゃん欲しかったんです。

 よかったらお姉ちゃんって呼んでいいですか?」

「あ、ああ、別に構わないが」

「わあい、よかった♪」

 

 キョウコの押しの強さにちょっと困惑していた私だった。

 でも目が痛いほどカラフルな髪の色をしているこの世界の住人達に比べて、彼女の黒髪は落ち着く。前髪にひと房だけメッシュを入れてるのもおしゃれだ。

 

「ふふ、じゃあ私は妹かな?」

「ううん、嫁で」

「嫁!? なんでお嫁さん!?」

 

 そんな軽い掛け合いを横目で見ていると。

 

「レイアッ!!」

 

 向こうから、レイアそっくり(・・・・)の少女が駆け寄ってきたのだ。

 

「あ、お姉ちゃん」

「あんた大丈夫だった!? 

 あの借金取りども、私たちを探してたみたいだったから!!」

 

 私は、彼女を見た瞬間、猛烈な既視感に襲われていた。

 

「ッ、あなたは……」

 

 それは、彼女も同じだったらしい。

 私たち二人は、鏡合わせのように呆然と固まっていた。

 

「お姉ちゃん、どうしたの? 

 借金取りには会ったけど、この二人が私を助けてくれたんだ」

「あ、そうなんですか。

 ありがとうございます、私はクラリッサと言います」

「そ、そうか。私はクラリスだ」

「えへへ、なんか名前も似てますね。初めて会った気がしないや」

「そうだな、私もだ」

 

 不思議な、不思議な感覚だった。

 まるで初めから知り合いだったかのような、そんな奇妙な既視感がクラリッサとレイアの姉妹には有ったのだ。

 

「……じゃあ、私の家はあっちなので。

 家族も心配してるかもですし、帰りますね」

「うん、キョウコちゃんもありがとう。

 私の家はそこだから、いつでも遊びに来てね」

「うん、じゃあまたね」

「妹が世話になりました」

 

 キョウコがそう言ってあらぬ方向を指さすと、手を振って彼女は去っていった。

 姉妹がそれを見送ると、私の方へ向き直った。

 

「どうか、お礼をさせてください。

 何にもないところですけど、食べ物はありますんで」

「ああ、それはありがたい。丸一日何も食べてないんだ……」

 

 こうして、私は双子の姉妹にご厄介になることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふんふーん」

 

 スラムでも指折りに薄暗く危険な場所を、キョウコは一人スキップで歩いていた。

 

「兄貴、見つけたぜ!! さっきのガキだ!!」

「てめぇのせいで、シノギが台無しだ!! 

 どう責任取ってくれるんだ、ええ!!」

 

 そんな彼女の前に、先ほどのチンピラたちが現れた。

 

「誰でしたっけ、あなた達?」

 

 キョウコはごく自然に、つい先ほど会ったばかりのチンピラを記憶の外へと追いやっていた。

 

「てめぇ舐めてんのか!!」

「……おい、よく見たらこいつ、純血の日本人っぽいぞ」

「へぇ、そいつは珍しい!!」

 

 昨今、この日本では海外との移動時間が短縮され混血化が進んでおり、純粋な日本人は良家のお嬢様ぐらいだろう。

 

「さっきの落とし前は、お前を売ったカネで賄わせてもらおうか」

 

 そう、だからつまり、IDの無い純粋な日本人なんてまず存在しないのである。

 それに思い当たらなかった彼らは愚かで、なにより不運で、運命の女神にため息を吐かれていた。

 

「はあ……親切心で言っておきますけど、私に触ると酷い目に遭いますよ」

「はっはっは!! 周りに誰も居ねぇだろ、ここには監視できる電子機器もねえしな!!」

「お前は俺たちの飯のタネになりゃあそれで良いんだよ」

 

 心底可哀そうな目で見られている二人のチンピラが、キョウコの両肩を捕まえた瞬間だった。

 

 

 ──視られていた。

 

 それは、視線だ。

 

 二人はその視線だけで全身の細胞ひとつひとつまで解剖され、元通りにされた。

 その精神を余すところなく解体され、調べつくされ元通りになった。

 まるで、面白半分で人間を弄ぶ邪神に興味を持たれたかのような、宇宙的恐怖を目の当たりにした。

 

「あ、がッ」

「ひッ、ひえぇ」

 

「ほら、言ったじゃないですか」

 

 顔面蒼白になり、穴という穴から液体を垂れ流して震える二人に、少女は肩を竦めて苦笑した。

 

「あ、そうだ!!」

 

 ぽん、と彼女は思い付きで手を叩いた。

 

「ねえ、これからちょっとしたお願いを頼んでも良いですか?」

 

 ずいっと、少女の顔が二人の目をのぞき込むように近づいた。

 二人は気づいてしまった。

 少女の瞳の奥には、何もない。虚無の深淵だけがそこにあることを。

 

 彼らは悲鳴を上げて、ひれ伏す他なかった。

 

「別にそんなまるで邪神に遭遇して一時的発狂したみたいな態度しなくても」

 

 可愛らしく唇を尖らせた、人の形をしただけの少女は不満げに二人を見下ろしていた。

 その手でじゃらじゃらと、いくつものダイスを退屈そうに弄びながら、視線を上に向ける。

 

 先程彼女が指差した、聖なる地の門の奥へと。

 そこからジッと彼女を見つめる視線と、目が合って微笑んだ。

 

「軽々しく本名を名乗るなって?

 あ、それ嫉妬ですか? 流石は私のダーリン、かわいい♪」

 

 

 

 

 

 

 




作者のシリーズお馴染みのアンズちゃんの登場です。
つまり、今章の主人公はワンちゃんになります。
運び屋がローティを可愛がるのはしばしお待ちを。

ちなみに、前回のアンケートがどんな結果をもたらすのか、次回に判明します。
なぜかって? だって、選んだのはあなた達じゃないですか。
作者と一緒に楽しみましょう?

ではまた次回!!

「ステンバーイ、ステンバーイ」byダイスの女神

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